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「へえ。沢山CDを持っているんだね」
 湊が僕の部屋に来るのはこれで二度目だ。
 折角学校で我慢させていたのに、帰宅したらパートでいないはずの母がいて『今日は休み』と言うから、がっかりしてしまった。
 湊はきっと僕以上に落胆しただろうに、頭の切り替えが早いのか、CDに夢中だ。

「これ、借りてもいい?」
 湊がクイーンのベストアルバムを手にしていた。
「いいよ、良かったら他も貸すよ」
「ありがとう。俺、あまり洋楽を聞かないからさ、お勧めはある?」
「じゃあ、サヴェッジガーデンとか」
「それは踊れそうな感じ?」
「いや、リラックスできる」
「眠くなるの?」
 素直に聞くから吹き出してしまった。
湊はホストみたいに踊れる曲がいいのかと、笑いがこみ上げてしまったのだ。
「あ、酷い。笑っている」
「ごめん。でも、こういう関係もいいなあ。そうは思わない?」
「これでは友人でしょう。俺は嫌だよ? 触りたいもんね」
 ストレートに言われて照れてしまった。
身の置き場に困ってベッドに座ったら湊が圧し掛かってきた。

「ダメだよ」
「声、我慢して。そうしたら出来る」
「……音がするだろう!」
 頬を軽く打つと湊が膨れっ面を見せた。
この子供っぽさに翻弄されそうだ。
「じゃあ、音楽でも聴こうか」
 CDをかけたときに、鳥肌が立った。
こうすればセックスの音も声も隠せる……。

「やーらしー。悠里」
 湊に気付かれていた。と、言うか導かれた気がする。

「今日はゴムもオイルもあるから、昨日みたいに痛くさせないからね」
「……準備がいいね。それを持って学校に来ていたのか」
「当然」
 そう言うと湊はゴムのパッケージを開けた。
「早くつけたいから、起たせて」
「う、うん」
 流されている気もするが、サイドの髪を手で押さえて湊の茎を口に含んだ。
「え! いきなりなの?」
 湊を驚かせたかったのだ。
目的は達したがここまでしたらイかせたくなる。
茎を舌で舐めると口で何度も吸った。

「あ、そこ。悠里……」
 段々大きくなる茎にギブアップだ。もう舐めるか、手で扱くしかない。
「ああっ。不慣れな感じが……クる!」
(げ。大きな声!)
 
 

 結局、CDの音よりも激しく湊が吼えたので、今日は中止だ。
「明日は俺の家に来てよ」
「あ、うん」
「親は追い出しておくから」
 そう言って、キスをした。
「あ、ちょっと苦いね」
 顔を見合わせて笑ってしまった。
 


 我侭な湊と繋がったこの季節が、冬支度を始める。
 僕は今、湊の部屋で毛布に包まっているが下は裸だ。
曇った窓から冷気が流れてくるようで、床に座ると鼻がむずむずした。
「くしゃん!」
「あ、寒い? 悠里」
 湊が暖房をつけようとするが断った。
「……側にいてくれないかな?」
 すると湊が、履いたばかりの下着を脱ごうとする。
「や。そういう意味じゃなくてさ!」
 立ち上がって湊のお尻を軽く叩くと、不満そうな表情だ。
「肩を抱いて、湊の体温で暖めてほしいんだ。無理?」
「いいけど。誘われたと思ったのにさ」
 肩を抱くだけでは済まないだろうが、既に二回もしている。
早々は起てないはず。
「わー。細い肩」
「あまり嬉しくないな」
 湊が言うとおりにしてくれているのは嬉しい。幸せな気分だ。
「ねえ、来年の今頃はどうしているのかな」
「来年?」
 湊が首を捻る。
「来年よりも、今日。明日でしょう? 俺は毎日が楽しくて、そんな先のことまで考える余裕がないよ」
「ああ。わかる気がする」
「あ、何か、嬉しい。同意されると自信がついちゃう」
「ふふ」と微笑む湊の体が暖かい。
「僕達、同じ年だよね?」
「誕生日、いつ?」
「僕は十二月」
「俺は八月だったから、年上か! ああ、これなら伝説に乗ったね!」
「はああ?」
 
 僕視点ならそうかもしれないけど、同性だから結婚は法律上有り得ないし、先ず皆に全く祝福されない。
親は泣くだろうし、親戚も怒るだろう。

「バイトしたお金で、お揃いを買おう」
「お揃いなら、携帯があるじゃないか」
(しまった。あのオレンジ色の携帯の電源を切ったままだったな)
「もう、声が聞きたいだけじゃないんだよ。悠里と繋がっていたいんだ。これも同意してくれる?」
「……うん、喜んで」
 湊が拳をそっと出したので、僕も拳を握り、コツンと当てた。これが約束の証だろう。

 
 それから二週間後に、あの拳に光る指輪をつけて貰えた。
百合のモチーフで、照れくさくて仕方が無い。
「伝説一組め」
「あのさ」
 見返ると顎を指で上げられてキスをされた。
 先のことは知らない。
だけど今はこのまま感じていたいんだ。湊と同じだよ。



終わり

ありがとうございました!
またお付き合いいただけると嬉しいです


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 翌朝、いつもどおりに登校したら、友人が駆け寄ってきてやたらと心配された。
「南波が煩くてさ、自宅を教えちゃったよ、ごめん」
「いいよ、別に」
 頭をかく友人に構わず席に座るが、内心は落ち着かない。
「でも、昨日おまえ達だけ休んだから、心配したよ」
「あ。そ、そうなんだ? 僕達だけか?」
 鼓動が高まってしまう。
顔が赤くなりそうで焦ってきた。
「家に押しかけてきたから、何となく話をしていて、さぼっちゃったんだ」
 背中を冷や汗が伝う。
苦しいいいわけだが、通るだろうか?
「ありがちだなー、森下。あれ、どうした?頬が赤いぞ?」
「あ、暑いね、今日は」
 下敷きで扇ぐと冷風が発生して、ぞくりとした。
「え。今日の最高気温は十五度だぞ?」
「あ、ああ、そう?」
「森下。いい加減にあの南波を甘やかすのを止めろよ。調子に乗りそうだから」
 友人の忠告はありがたいが、遅かった。
 昨日のセックスは互いの想いが成就した結果だと思うが、リードがやや湊よりな気がしていた。

「はよー」
 湊の声に反応してドアのほうを見てしまう。
「あ、南波だ」
「湊、おはよう」
 平常心を自分に言い聞かせて、声を掛けた。
「……悠里!」
 教室に入ってきた湊は一目散に僕の元に来て、友人を押しのけると、座っていた僕に抱きついた。
「は、離せ!」
「はよー、悠里」
 湊は愛おしそうに僕の項を撫でる。
「おいおい、南波―! 何をしているんだよ、おまえの彼女じゃないんだぞ」
「寝ぼけているな? よく見ろ。森下だぞ」
 友人が呆れて湊の肩をぽんと叩く。しかし湊は離れない。
「湊!」
 僕が叫ぶとようやく離れてくれた。
「え。迷惑だった?」
急におどおどとした態度に力が抜ける。
「悠里、怒っているの?」

(この自己中野郎―!)

「湊、席に着けよ! そろそろ厄介な日本史の先生が来るぞ」
「あ、そっかー」
 相槌を打つとようやく自分の席に向かうが、周りの友人達とのおしゃべりが始まる。
反省の色が見えない湊に、どうしたものかと余計な不安がこみ上げてくる。
 あの性格では僕との関係を言い出しかねないのだ。
秘密にして欲しいのは当然だが、口止めするのを忘れていた。
 あの天然な湊は、きっと口を滑らかす。
そうしたら僕の人生は、まっさかさまに落ちていくのだろう。
他人に後ろ指を指されては生きられない、おしまいだ。

「湊、どうして昨日休んだんだよ? 水族館もなかなか楽しめたぜ? 白熊が獣臭かったけどさ」
 のん気な声が聞えてきた。
しかし僕はそれに反比例して鼓動が高まる。
嫌な予感がする。
「白熊って言っても、汚れてベージュ色だけどな。可愛げがないよなー」
「ふーん」
「ん? どうしたんだよ、湊。マジな顔をして、何かあったか?」
「白熊よりも優先したいことがあったんだ」
 
 湊の声にどきりとした。
この展開では、僕との関係を言い出しかねない!

「みな……」
 注意しようとしたら日本史の先生が入ってきた。
「起立―」
 がたがたと椅子を動かして皆が立つ。
「礼―。着席―」
「おお。資料を忘れた。悪いが誰か、取りに行ってくれないか?」
「えー?」
 皆が、自分で行けよといわんばかりの表情を浮かべたとき、湊が手を上げた。
「資料なら図書室ですか? 行きますよ」
「悪いな。貸し出しの窓口に三冊置いてあるから、頼む」
 険悪の仲だったのにレポートの成果か、あの下種な先生が湊を頼っている。
それが面白くて眺めていたら、何と湊が僕に手招きした。
「悠里も行こうよ」
「三冊なら一人でもてるだろう」
「いいじゃない」
 何がいいんだ、と呆れていたら「誰でも良いから早く行け」と先生が言う。
 その言い方に何だか腹立たしくなり、僕は立ち上がった。
「じゃあ、行ってきます!」
 


「何を怒っているの?」
 廊下を歩きながら、湊は僕の機嫌ばかりを気にしている。
「湊は、先生にあんな言われ方をして頭に来ないのか?」
「別に? 先生はお年寄りだから、仕方ないんじゃない? 逆に生徒に気遣うような教師はおかしいと思うし」
 言われて見れば、納得できた。
「……そうだね。何か、僕はダメだ」
「昔の俺みたいだよ、悠里」
「あ」
 確かに、あの先生に憎まれてレポートを強要されたあの頃の湊と同じかもしれない。
「だけど昔って。そんな前じゃないだろう」
「まあまあ。俺はじっとしていられない性分だからさ、あの先生には嫌われたし、俺も嫌いだけど。でも、俺は悠里のお蔭でこれでも丸くなったんだよ」
 何だか恥かしくて咳払いをした。すると湊が手を繋いでくれた。

 図書室に着くとドアが開いていて、あの先生が慌てていたのが手に取るようにわかった。
 言われたとおりの窓口に本がある。
これを持っていけばいいのだな。
「行こうか」
 湊に声を掛けると「えー」と言う。
「どうかしたのか?」
すると湊が僕の腰に手を回して「十五分、くれない?」と聞いてくる。
「な、何が?」
「んー。どうしてわかってくれないのかな。俺の欲望が今ひとつ伝わらない」
 そんなことを言われて平常心でいられない。
 まさかとは思うが、これは誘われている。
「あのさあ」
「なあに?」
 見上げると微笑まれた。
「あの先生を待たせたら、また余計な作業を押し付けられるよ?」
「そうか。じゃあ、昼休みならいい?」
「……欲望に取り付かれたのかよ?」
「悠里を見ていると落ち着かないんだ」

 この自己中な湊には勝てない、惚れた弱みにつけこまれている気がした。

「……毎日は嫌だ」
 わざとささやかな抵抗を試みた。
「毎日じゃなきゃ、嫌だよ。どうして突き放すんだよ?」
「とりあえずここは学校だから。目を覚ませよ、湊」
「何処でも構わないんだけど」
 その我侭な言い方に、気持が救われていると気がついた。
 本当は強引でもいいんだ。
何処でも一緒にいたいし、触れていたい。
我慢してきた分が昇華されつつある。

「……家に来る?」
「うん」
(そんな、あっさり)
 誘うだけで意識してしまって、心臓に悪いのに、湊は平然としている。
場数を踏んでいる奴は違うと、自分の振り絞った勇気を無碍にされ、少しへこんだ。
「俺、悠里に誘われるのも好き」
 そんなことを言われて顔が熱くなり、気持が浮上する。
想いが伝わっているのを実感できて、とても幸せな気分になれた。
「早く教室に戻ろう」
 本は湊が持ってくれた。


14話に続きます


「セミダブルか。広いから大胆に動いてね」
 部屋に入ると湊が囁きながら、僕の下着を剥ぎ取った。
そしてベッドに寝かせると、目の前で堂々と自分も下着を脱ぐ。
 それは隆起していた。
逞しい茎を屹立させながら僕の側に寄り添い、腿を撫でてきたので、逃げるように開脚した。

「ねえ。腰を浮かせてよ」
「え?」
「折角開脚してくれているけど、腰を浮かせてくれないと入れにくいなあー」
「だ。だから、何が!」
 大体の見当はついている。
挿入したいのだろう。
だけど、興奮している湊の茎が入るはずがない。
僕の体が裂けてしまう。

「そんなに不安そうな顔をしないで。腰を浮かせてくれたら、後は俺がするだけだから」
 そんなことを言われて恥かしくなった。
両腕で顔を隠したら、湊が触れてきた。
「俺のこと、嫌い?」
 まただ。どうして聞いてくるのだろう。
ここまで来たら拒むはずもないのに。
「そうじゃなくて」
 たまに僕をこうして大事に扱おうとするのが、堪らないんだ。
「抱かせて。もう、止まれない」
「あ!」
 返事を待たずに湊は僕の秘部を指で広げると、強引に茎を突っ込んだ。
「いいいい! 痛い!」
 この異物感と裂けそうな感覚は、痛みしか与えてくれない。
「みな……」
 止めさせようとして、湊の表情に絆された。
紅潮した頬が男のくせに可愛くて、僕の眼をみながら腰を動かす魅惑さに胸が熱くなる。
僕は爪先立ちで腰を浮かせて、湊を招きいれた。
「大丈夫? 痛くないの?」
「い、痛いけど、でも」
 シーツを掴みながら、尚も進んでくる湊のもたらす衝撃に耐える。
腕が震えるけど、少しずつ湊と重なるのがわかるから、僕は痛みを受け入れた。
「ァア、ハア、アアアッ!」
「半分入れた! 悠里、気持いいよ」
 僕の中で湊の茎が動いている。奥を目指して進んでくるのがわかる。
 痛いけど、もっと感じたい。シーツを握り締めて、腰を揺らした。
「アアッ、は・はあ、んっ、ん……」
「悠里ぃ、あ、もう……」
振動に体を反らせて湊の名を呼んだ。 
「嬉しい」
 耳元で息を吐きながら湊が囁いた。
そして「ううんっ」と唸り、押し込んだ。

「あああんっ! み、湊。あ、ああ……」
「可愛い。いいよ、悠里。全部入ったから、楽しもうよ。もっと腰を動かしてみて」
「ウ、ううん!」
 言われるままに振ったら湊が奥を突いた。
「ァアア!」
「いい。凄く感じちゃう」
 湊が僕の頬を撫でたけど、僕は下半身を湊に攫われた感覚がしていて体を反ってしまう。
「ああ! いい。これも、いいよ……」

(そういいながら、おへそを触るなー!)

「はっ、は、うううん!」
 耳たぶや脇も触られて、声を出したいのに息が切れそうで言葉にならない。
「悠里、いい」
 湊が「あ、ああ」と激しく腰を動かして、互いの肌が音を立てて擦れ合う。
突かれる度に僕は我慢できない精を流し、湊のおへそや茂みを汚してしまった。
「ごめん」
「あ、謝らなくって、いいん、だよ! ウッウウン!」
湊が僕の中に暖かいものを流し込んだ。
「はっ。……ああー……」
 そして僕の体の上に重なってくれた。

「体位を教える楽しみを覚えた」
 湊は中出しした精を拭き取ると、思い出したように「ふふ」と微笑んだ。
「……腹立たしい!」
「え、怒った? 悠里?」
「怒っていないよ。もう、湊! 恥かしいからあんまり顔を見るなって!」
 セックスの最中、そして今も湊は僕から視線を外さない。
それが嬉しいけど、恥かしいような……。

「悠里も見てくれていたのに? このアンバランスさが、心をくすぐるね」
 項や胸元、脇や腰。腿の内側まで、湊が触れなかったところはひとつも無い。
 雨に濡れて冷えたはずの湊の指が熱くなっていって、僕は蕩けそうな感覚がしたんだ。
触られて嬉しいなんて、初めての経験だ。
「悠里、俺のことが好きでしょう?」
「……好きだよ。ずっと、好き」
 ようやく言えたので、自分のことながら泣きそうになってきた。
「やったー! 嬉しい! 俺も悠里が好き」
「それは先に聞いていたよ」
 慣れたつもりだったが、二人きりの場で言われると恥かしくなってくる。
「ねえ、悠里。具合がいいよ?」
「そんなこと、真顔でいうな……」
「だって、凄い締め付けで」
「初めてだからだろー! もう、止めろ!」


13話に続きます



 家に戻ると母は出かけた後だった。
静かな室内に、僕の期待は高まるばかりだ。

「とにかく、濡れた制服を乾かさないと。湊、脱いで」
 言ってから耳まで赤くなってしまった。
「ねえ。脱いでいいの?」
「ぬ、脱がなくちゃ乾かせないし。そのままでいたら風邪をひくだろう?」
「んー。何か、可愛いな」
 湊が唇をなぞりながら僕を見ている。
試されているようで、居た堪れない。

「先に脱ぐから」
 背中を向けて上着を脱ぎ、ためらいながらボトムも脱いだ。
 それをハンガーに掛けて窓際に干す。
エアコンをかければ乾くはずだ。

「シャツは? 脱がないの?」
 いつの間にか背後に湊が来ていた。
濡れた上着が触れて「ひゃっ」と声を上げてしまう。
「み、湊も脱いで。乾かすから」
「はーい」
「はーい、って。馬鹿にしているのかよ」
「違うよ。ドキドキするんだ」
 それを言わないで欲しい。
下着の中で窮屈さを感じている僕の茎が反応してしまう。

「じゃ、俺も脱ぐよ」
 湊の裸を初めて見た。
同じ男の体なのに、誘いをかけるような艶を感じてしまう。
「悠里、緊張しないで」
 ぼんやりしていたら僕のシャツを脱がしにかかっていた。
「自分でするから」
 湊の指を払うと残念そうな表情だ。
手持ち無沙汰なのか、今度は僕のお尻を撫でている。

「靴下も脱ぎなよ。濡れているだろう?」
 僕が腰を屈めて脱ぐと、それを湊は見物していたようだ。
「凄い、何か興奮しちゃう」
「同じ体だろう! 変なことを言うなよ」

「違うよ? いい香りがする。こことか」
 首筋を撫でられてぞくりとする。
「こことか」
 脇を突かれてくすぐったくて苦笑した。
「ここも」
「え?」
 湊は僕の乳首を指で挟んで刺激し始めた。
「な、何を?」
「あ。固くなってきた。凄い……」
 そのまま口に含まれて、ちゅっと吸われた。
「アアッ」
 体が痺れたような衝撃だ。
「悠里―。声、大きいんだ? 刺激的だね」
 湊は僕の下着を腿まで下ろして、直に茎を掴んだ。
そして力強く、性急に扱き始める。

「や、やだ。何で?」
 全身に汗をかきそうだ。
何故なら僕の茎はもう硬くなって破裂しそうなんだから。
「すご。悠里も感じていたんだ? 嬉しい」
「嬉しいって……」
 誉められているのか唆されているのかわからない。
「男は初めてじゃないのかな……」
「初めてだよ! 何を言っているんだ!」
「俺も初めてだけど、普通のセックスよりも興奮する」
 そして硬い僕の茎を撫でて筋をなぞる。
「あ、それ。ちょっと……」
 手で気持ちよくされるのも初めてだ。
「悠里、出しちゃおうねー」
「えっ?」
 手で攻め立てられて、早くも出そう。
声が漏れないように口を手で抑えていたら、湊は不機嫌そうに睨む。
「何だよ……」
「悠里。気持が良いなら声を出して。もっと興奮させてよ」
「な。……ァアアア!」
 湊が急に茎を強く握り、擦り始めていた。
「やだっ! あ、ああん、い、いや」
 忘れていたけど、湊は僕を気遣うときもあるが、元々は自己中心の性格だ。
自分の好きなように僕を弄ぶ気なのか。
「ねえ、イくとき、どんな顔をするの?」
「そんな。何を考えているんだよ」
「見たいなあ。……見せて」
 先端を指で弾かれた衝撃で「くっ、アー」と僕はあっさりと、放出してしまった。
「……はあ」
 大きく息を吐いて見上げると、湊と目線があった。
「いい顔」
「なにが?」
 ふふっと口元を緩めて満足そうな湊の思考が読めない。
僕は息が苦しくて体に汗を浮かべていた。しかも体が火照る。
「ベッドに行こうよ」 
 僕は再び言葉を詰まらせた。
「抱っこしてあげるから、案内して」
 軽々と抱っこされた僕は、リビングを出たすぐの右側のドアを指した。


12話に続きます
 雨が降る中、僕は湊と並んで歩いた。
ポツポツと傘を打つ音しか聞えないこの重苦しい空間は、避けたかった事態だ。

「よく、僕の家がわかったね」
「悠里と同じグループの奴に手当たり次第に電話を掛けて、教えて貰った」
「そう、か」
 そんな努力をしてくれたことが嬉しい。
しかし気まずい空気は一向に変わらない。
「水族館に行くことになりそうだね」
 この空気が辛くて呟いた。

「悠里」
 呼ばれたので湊のほうを向くと、鞄を持っていた右手を掴まれた。
「え! な、何?」
「今日、俺と付き合って」
 湊の眼がまっすぐに僕を刺した。
「学校は、郊外学習は……どうするんだよ」
「行きたくない」
「そんな、子供みたいなことを言うなよ。どうしたんだよ、湊!」
 手を離させようとしたけど、しっかり握られていた。
「悠里だって行きたくないくせに」
 そんな言い方を初めて聞いた。
湊は僕を無意識に追い込むことは多々あったが、本気で照準を合わせたのは初めてだ。
「勝手だなあ。どうしたいんだよ、湊」
「つきあってくれるなら話す」
「順番が逆だろう?」
「……悠里」
 湊を雨から守っていた傘が、急に後方へ落ちていった。
そして髪や肩に容赦なく振り続ける雨で、湊が濡れていく。

「ど、どうしたんだよ。傘が」
 拾おうと体の向きを変えたら、傘を奪われ、そのまま抱き締められた。
「湊? どうして……」
 凍える体が冷たくて、僕は抗った。
「悠里、このままでいて。もっと抱き締めさせてよ」
「何を言っているんだよ! 湊、ずぶ濡れだろう、離せって」
「嫌だ」
 湊が僕を抱く力を強めた。
「……何があった?」
 尋常ではないと思い、背中越しに聞いた。
「何もないよ。ただ、俺は間違っていたことに気がついたんだ」
「嘘付け……。何のことか知らないけど、それを言う為にわざわざ電車に乗って僕の家まで来ないだろう」
髪が濡れて雫がしたたり落ちる。濡れていく制服が重く感じる。
「湊、このままじゃ、何処にも行けないよ」
 見返ると息がまともに湊にかかった。
「あ、ごめん」
 口を抑えていると顔が熱くなる。
「別にいいよ。近いけど、嫌じゃない?」
「うん。嫌じゃないよ……」
 強気に出たのに甘い声を囁かれると弱い。
「よかった」
 安堵したのか湊が微笑んだ。
 
 駅までの道程は遠い。
それにお互いずぶ濡れで、乾かさないと風邪をひいてしまう。
「付き合うから話を聞かせろよ。その前に僕の家に行こう。制服を乾かそうよ」
「いいの?」
「良いも悪いもないよ。寒くなってきた」
 湊の懐に顔を埋めると暖かかった。
僕の髪を撫でて抱き締める、湊の気持がまだ読めないままだ。
「湊、歩かなくちゃいけないから離して」
「もう少し、だめ?」
「……風邪をひくだろう」
「看病するから」
「湊も風邪をひくんだぞ? もう、離せ」
 往来で抱き締めるなんて、本当に自己中心的な奴だ。
僕は近所の人に見られたらアウトなのに、少しは僕のことを思いやってくれてもいいだろうに!

「悠里じゃなきゃ、俺はダメなんだよ」
「……何回聞かせるんだ、その言葉を」
 その度に僕の心は湊を諦めきれずに、欲してしまっていたのに。
その罪を知らない湊は今もまた、僕を困らせる。
「好き」
「それも聞いた」
 突き放さなければいけない。
湊の『好き』は友情だろうから。僕とは違うんだ。
「湊、寒いから」
 いい加減にしろと顔を上げたら、この唇が塞がれた。
そして暖かい体温が伝わり、僕の冷えた心が動揺して気持を曝け出そうとする。

(どうしてキスをするんだよ!)
 
 唇を離そうと向きを変えても顎を掴まれてまたキスをされる。
湊は何度も僕の唇を吸って、下唇を鋏み、名残惜しそうに唇を離したときは、全身ずぶ濡れだった。
「悠里」
 僕の濡れた頬を手で拭わないで。
唇を指でなぞらないで。
これ以上僕を悩ませないで!

「好きなんだ。悠里しか欲しくないんだ」
 その甘い声に心の鍵が壊れた。
しまいこんだ想いが、もしや成就されるのか?
「……奈々さんは、どうしたんだよ」
 おおよその予測はつけていたが、湊が知っているのかがわからないので聞いた。
「俺から別れると言った」
「え、はあ?」
 振られたんじゃないのか? 僕は湊を見た。
「だって、俺……奈々さんと会っていても、悠里の話しかしないんだって。奈々さんが、そう言ったんだ」
「おまえは……何をしているんだよ?」
「合コンの場で盛り上がって、好きになった錯覚がしただけだったんだ。会っていても、俺は心ここに在らずで、それを奈々さんに指摘された。俺はようやくわかったんだ」
 僕は声が出せないでいた。
湊が何を言い出すのか、期待してはいけないと自分を押さえつけていた。

「俺にとって悠里はかけがえのない存在だ。クラスメートでも友人でもない」
 湊が僕を見ながら前髪をかきあげた。おでこを見せたその仕草に、艶を感じた。
「あー。口の中に雨粒が入った」
「早く僕の家に行こうよ」
「誰か、いる?」
「母がそろそろパートの仕事に出かけるはずだから、誰もいなくなるよ。だから別に困らない……」
 と言いかけて顔が熱くなった。
心にひた隠してきたものが、漏れてきたのだ。
 思わず顔を伏せて口を手で覆う。
知られてはいけないのに湊が本当に上手に突くので、僕は本心があからさまになるのを恐れた。

「俺、きっと今、悠里と同じことを考えている」
湊のまっすぐな言葉を聞いていられない、耳を塞ぐと腕を取られた。
「ここまで来たんだ、俺を受け止めてよ」
「ばっか……」
 言葉が出てこなかった。
ただ湊の胸に顔を埋めてしまった。


11話に続きます
 
 十九時五十分。
僕は携帯を片手に待ち合わせのファミレスに向かった。
 気持的には電車に乗って駅前のパン屋まで迎えに行きたかったが、そこまでしたら気持が高ぶる。
僕は忍耐と言う言葉を胸に言い聞かせていた。
 ファミレスに着いたのは二十時一分。
バスに乗ったせいか、早く着いてしまった。
 店内を見渡すと家族連れが目立つ。
その中に湊の姿はまだない。
 とりあえずテーブルを案内して貰い、湊を待った。

 二十時十分。
湊はまだ来ない。
 気になって携帯をちらちらと見るが着信もない。
何だか、このまますっぽかされる予感がした。
 注文したコーヒーが運ばれてきたのは二十時二十五分。
混んでいるから遅くなったのだろう。
それは構わないのだが、湊が来るか来ないかと気になってコーヒーを飲む気さえしなかった。
 僕は今までに、付き合った彼女を待った最高時間は三十分だ。それを過ぎたら「忘れているな」と判断して、帰宅する。
 湊を何分待てるだろう。
しかし今までの経験からすれば、もはや忘れているとしか思えない。
時計は二十時三十八分だ。

(会いたかったけどな)
 
 立ち上がり、会計を済ませた。
そして店を出ると、空に小さく瞬く星を眺めて、港が今頃は楽しく笑っていたらいいやと、溜息混じりに思った。
 残念なことに帰宅途中も、帰宅してからも、携帯は鳴らなかった。


 翌日、僕はそれを責めずに、いつもどおりの時間を過ごした。
授業中の教室は湊の私語で煩いし、郊外学習の件で皆が文句たらたら。
 その郊外学習は明日だ。いっそ雨でも降れば水族館にいけるかもと呟く女子に賛同したい気持だ。
(そういえばおやつかー。別に要らないけど、軽いものくらい準備するか)
 
 放課後、帰ろうとしたら湊の姿がなかった。
相当、バイトに入れ込んでいるのだろう。
奈々さんに、指輪をプレゼントしなくちゃいけないからな。
 僕は一人で帰宅の途についた。
途中でコンビニに立寄り、ガムでも買おうと店内をうろうろしていたら、聞き覚えのある声がした。
 
 その声の主は雑誌コーナーにいた。
巻き髪で頬がうっすらと赤い、奈々さんだ。
 これはもの凄い偶然だなと驚きながら、奈々さんが一人ではないとすぐに気がついた。
 スーツ姿の男性が奈々さんと雑誌を立ち読みしながら話をしている。
時折見せたあの可愛らしい笑顔が、その男性に惜しみなく注がれていた。
 奈々さんは携帯のショップで働いているのだから、相手は上司とか会社関係の人だろう。
そう思ってあえて挨拶をせずにガムを買って外に出た。
 何となく振り返って店内を見たら奈々さんと目が合った。
手でも振ろうかなとしたら、奈々さんは両手で口を抑え、目を見開いて驚いていた。

(そんなことってあるんだ)

 僕は奈々さんの左手の薬指に銀色の指輪を見た。
視力がいいことがこんなに皮肉めいたものを見せると、初めて体験した。
僕は何の合図も送らず、その場を去った。
 
 帰宅してから最初にしたのはオレンジの携帯の電源を消すことだった。
これは、湊から貰ったけど、奈々さんも絡んでいる。
僕はこの携帯を使う気になれない。
 そして前から使っている携帯はマナーモードに変更して、ベッドの上に放り投げた。
今日は誰とも話す気力がないからだ。
 明日は郊外学習だ。しかも湊と同行だ。
雨が降ればいいのにと、僕はニュース番組を眺めていた。
降水確率七十パーセントと聞いて、安心した。
行き先が変われば班も何もあったものではないだろう。
僕は湊に話しかける気力さえ失くしていたのだ。

 風呂に入り、タオルで髪を拭く。
もう寝ようとしたら携帯の着信があった。
見ると湊から五回もかかってきていた。
しかし掛け直す気になれない。
携帯に、ごめんと呟いて僕は横になった。
なかなか寝付けない夜中、枕の辺りで何度も携帯が震えていた。
 それをとらないのは卑怯だとわかっている。
堪えきれない涙が零れた。
湊が可哀想だと、心の中で叫びながら枕に突っ伏した。


 翌朝は皆の願が天に通じ、雨が降っていた。
これは水族館に行けるのかなと楽しみにしながら朝食のパンドーロを食べていたら、携帯が鳴っているようだ。
無視していたら母に「ブンブン煩いから出なさい」と叱られた。
開けると案の定、湊だ。

「はい、悠里です」
『……何回かけたと思う? どうしてシカトするんだよ』
「していないよ」
 朝から勘弁してくれと思った。
『俺、何か悪いことをした?』
 
 本当に罪のない奴だ。

「何もしていないよ」
 そう、何もしていないのが困るんだ。
『悠里』
「なに?」
 僕は努めて冷静を保ったはずだったが、横から母が「こぼすんじゃないわよ、子供じゃあるまいし」と言いながらテーブルを拭くので、笑いがこみ上げてしまった。

『悠里が遠いんだけど』
「はは、遠くないよ。同じクラスだし、今もこうして話しているじゃないか」

『茶化さないで』
 湊の声が僕の笑いを止めた。

『俺、今、悠里の家の前にいるんだけど』
 咄嗟に立ち上がった。そして玄関まで駆け出して、息を弾ませながらドアを開けた。
「……おはよう」
 携帯を耳に当てたまま、傘をさした湊がいた。
「おはよう……」
 僕は頭の中が真っ白になった。


10話に続きます

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