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 杏樹が目を覚ましたとき、時計は21時をまわっていた。
夜勤に行く凱を起こそうと隣を見ると、もぬけの殻だ。
寝ている自分を起こさずに夜勤に行った凱に優しさと心配りを覚えるのだが、
どうせなら見送りたかったなあと杏樹は思う。
 タオルケットを体に引き寄せて膝を抱えると寂しさが募る。
しかし明日になれば1日中一緒にいられるのだ、そう思うと杏樹は1人寝に耐えることができた。
 それにこのベッドには凱の体温が残っているようで、杏樹は凱の寝ていた跡を撫でた。
恋しさがこみ上げてきてしまい、杏樹は涙腺が弱くなる。
だが、これもぐっとこらえて明日を待つことにした。



 朝の6時に再び目が覚めた杏樹は大急ぎで洗濯やら掃除を済ませた。
いつも散らかっている部屋なので、2人で過ごせるなら少しは綺麗にしようと思い立ったのだ。
 しかし慣れないことは急いでするものではない。
杏樹はぐったりと疲れてしまい、ソファーに深く腰掛けた。
「あー。もうダメ」
 手足を伸ばしてもたれていると呼び鈴が鳴った。
凱だ、そう思った杏樹は疲労を忘れて立ち上がり、ドアを開けた。

「おはようございます。ちゃんと眠れました?」
 夜勤明けの凱が清清しい風とともに現れた。
朝日を背に受けた凱は、いつもより眩しく感じられる。
「お、おはよ」
「今日はいい天気になりそうですね。早く出かける準備をしてくださいよ?」
 疲れているだろうに笑顔を見せる凱に、杏樹は見とれて照れてしまう。
「いまさら照れることもないでしょうに。可愛いなあ」
「それ、言いすぎだよ」
「本当のことだから何回も言いますよー」
 ふざけた調子で言うが、視線は穏やかだ。
「あがって待っていて。すぐに支度をするからさ」
「はい、お邪魔します」

 凱はいつ来ても礼儀を忘れない。
その姿勢にも杏樹は惚れているのだ。
 
「あれ、珍しい。掃除をしたんですか」
「うん。いつも散らかっている部屋しか見せていないからさ…」
「俺、掃除をする気で来たんですけど」
 よく見ると凱は雑巾を手にしていた。
「そこまでさせないよ!」
 杏樹は急に恥かしくなって顔を赤らめた。
「支度をするから、リビングで待っていてよ」
「はい、わかりましたー」
 凱は「ふふ」と笑いながらリビングに入っていく。
それを見て杏樹も部屋に入り、着替えを始めた。
自分よりも年下の凱と出歩くなら、どんな服がいいのだろう。
考え始めるときりがない。
姿見の前で悩んでいると、堂々と凱が入ってきた。
「まさかスーツを着ませんよね?」
「着ないよ!あれは仕事用なんだから」
 杏樹はTシャツを脱ぐとクローゼットから別のシャツを取り出した。
そしてジーンズを履くと「ふう」と一息ついて、凱を見上げた。
「こんな感じでいい?」
「十分です」
凱はそう言いながら杏樹のシャツの襟を直した。
「俺はあなたと出歩けることが嬉しいんですよ」
 
 そんなことを間近で言われると照れるどころか顔から火が出そうだ。

「なんか、口説かれている気がする」
「それは気のせいです。俺だって空気を読みますから」
 凱は微笑みながら「時と場所を選ぶんです」と続ける。
「杏樹さんだって、会社では欲情しないでしょう?」
「当然だよ」
「ムキになっちゃって。口説いて欲しかったんですか?でも出かける約束ですからねー」
 凱は杏樹の髪を撫でると「じゃあ、行きましょうか」と手を取った。
主導権はあっさりと凱にさらわれたが、杏樹は悪い気がしない。




 日曜日の繁華街は恋人同士はもちろん、家族連れもいて賑わっている。
そんな中を男2人で歩いていても別段目立つ様子はなかった。
人々は自分達のことで頭がいっぱいなのだし、他人をじろじろ見ることはしない。
 杏樹と凱はウインドーショッピングをしながら、互いのいきつけの店に行き、物色した。

「白があったんだ!感激だなー」
 革製品の専門店で凱が手にしたのは革でできたキーケースだ。
「前から欲しかったけど、白があるなんて嬉しいな。買っちゃおう」
 あまり悩まずにキーカバーを購入している凱を見て、杏樹もこっそり同じものを別のレジで購入した。
キーカバーは入用ではないのだが、1つ思い立ったことがあるからだ。
なので買ったことは秘密にしたい。
「このまま使われますか?」と店員に聞かれ、慌てて「袋に入れてください」と頼んだ。
 これは自分用ではなくて、実は凱に使って欲しいからだ。
杏樹は凱に見つからないようにそれをカバンにしまいこんだ。
「少し休みましょうか?いいカフェがあるんです」
「でも、混んでいない?」
「大丈夫です。裏通りにあるので隠れた名店なんです」

 凱の薦めたカフェはたしかに人がまばらだった。
しかし注文したコーヒーもクロワッサンサンドも美味しくて、杏樹は喜んだ。
「ケーキとか、食べないんです?」
 凱が妙なことを聞き始めた。
「僕は甘いものはあまり食べないよ」
「甘いものが好きそうな感じなのに意外です」
「あー。よく言われる」
 杏樹は指についたパンくずを舐めながら「会社でもおやつが出るんだけど食べないし」と続けた。
「ハーゲンダッツは好きなんですよね?」
「うん、アイスは好き」
「話を聞いていると、可愛いなあーって益々思います」
 凱が微笑むので杏樹はどんな表情をしたらいいのかわからない。
「もっと杏樹さんのことを知りたい」
 杏樹はテーブルの上で手を組んでいる凱を見ながら、言うなら今だと腹を決めた。
カバンからキーカバーの入った袋を取り出してテーブルに置くと口を開いた。

「一緒に暮らさない?」
「えっ?」
 
 凱は突然の誘いに面食らっている。
しばらく何も言わずにただ杏樹だけを見て、飲みかけのコーヒーをぐいっと飲み干した。
「ど・どうかな」
「杏樹さんの部屋で・ですか?」
「うん、あ・あのさ、迷惑なら今の話はなしに…」
「迷惑じゃないですよ、凄く嬉しいです」
 そして凱はテーブルの下で足を伸ばして杏樹の靴に触れた。
「いつも一緒、なんて禍福な気がする。でも側にいたいから、俺からお願いしたいくらいです」
「あ。ありがとう…」
 杏樹は胸が一杯になってもう食べることができなかった。
そんな杏樹を見て凱はキーカバーを受け取った。
「合鍵、1度断りましたが使わせてください」
 凱はいつの間に買ったのかと聞かない。
それは杏樹が胸を抑えて、見るからに安堵しているからだ。
「可愛いことをしてくれますねー」
 杏樹のすることすべてが凱には癒しのようだ。
「俺、あなたに会えて毎日が楽しくなりました。これからもそうです」
 凱の気持ちに杏樹は顔を上げ「僕もそうなんだ」と笑顔で応えた。
 


 街から部屋に帰ると杏樹は凱のためにお茶を入れた。
「今日は楽しかったよ、ありがとう」
「そう言われると俺も嬉しいです。お茶、いただきます」
 2人は服の入った紙袋を並べて置き「結構買いましたねー」とのんびりした会話を楽しんだ。
「さっそくですけど、泊まっていいですか?」
「あ、うん。ここに住むんだからいちいち聞かなくてもいいのに」
「そうでしたね。あ、なんか嬉しさがこみ上げてくる」
 凱は珍しく頬を染めた。
「明日にでもすぐに荷物を持ってきます。と言ってもたいした量じゃないんですけど」
「早くおいでよ。僕は早く一緒に暮らしたいんだ」
 杏樹はトレーを持ちながら窓を開けて空を眺めた。
梅雨らしく曇天の空だ、明日は雨が降るかもしれない。
「荷物が濡れないようにね」
「はい、旅行用の大きなキャリーケースで来ますから大丈夫です」
 これで話は決まった。
杏樹がカーテンを閉めると凱が「お風呂を沸かしましょうね」と立ち上がる。
「ありがとう」
「一緒に入ります?」
 凱の誘いに杏樹は胸のときめきを抑えきれない。
「うん、そうしよう」
 そして靴下を脱いで裸足になると凱に続いてバスルームに向かった。


終わり

読んでくださってありがとうございました
 
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「杏樹さん、いつもより触っていいですか?」
「聞かないでよ。凱になら、なにをされても構わないんだから」
 杏樹は凱の腕の中にいながら、興奮して呼吸が荒くなっていた。
上気した頬が赤い、しかも体を擦り合わせようと足を絡めている。
つま先立ちをした杏樹の股間が凱のそれに近づき、杏樹は凱を見ながら腰を揺らした。
「も、我慢できない!」
 杏樹は凱のジーンズのジッパーを下ろして下着の上から茎をつかもうとした。
「あ、杏樹さん」
 しかし凱の茎は大きくて長い。
下着の上からはなかなかつかめるものではなかった。
「これが欲しいのに…凱、早く欲しい!」
「杏樹さん!」
 凱は焦る杏樹の唇をふさぐと、片手でボトムを脱がせて細い腰を撫でた。
「んん!」
 それだけでもびくりと体を震わせる杏樹を見て「感じやすくなりましたね」とささやく。

「最初から、でしたっけ?」
「意地悪だな、焦らしてばかりだ」
 
 真っ赤な顔をして唇を尖らす杏樹に、凱は「焦らすと大胆に乱れるから」と微笑む。
 言葉どおりに杏樹は待ちきれなくて股間を抑えながら下着を脱ぎ去っていた。
「その脱ぎ方も好きだなー。俺が焦らされてしまいます」
 凱は自分でシャツを脱ぐと引き締まった体を杏樹に見せ付けた。
その姿に目を潤ませる杏樹を抱き上げると、ベッドに運んで組み敷いた。
「凱、早くなんとかして」
 杏樹は股間を両手で隠しているが、指の間から精が漏れてきている。
「あ、もうダメ。もたないよ」
 恥かしそうに股間を抑える仕草が凱の心に火をつけた。
「杏樹さん。綺麗にしてあげます」
 凱は杏樹の両手を股間から離させて、爆ぜた精を舐めていく。
精の飛び散ったヘアーにも舌を這わせて内腿も丹念に舐めるので杏樹は身をよじり、また勃起してしまう。
「感じちゃう、なんか辛い!」
 杏樹はシーツを手繰り寄せながら勃起した茎を震わせていた。
屹立したそれは今にも爆ぜそうだ。
「我慢できないって!凱!」
「もう、本当に可愛い人ですね」
 凱は杏樹の茎を口に含むとフェラを始めて、片手で秘部に指を入れる。
「アッ!な、なにをしているのっ」
 前からも後ろからも攻められて、杏樹はひくひくと腰を動かしながら快感を覚えた。
「凱、ん・いい。なんかいい感じがする…」
 しかし凱のフェラの勢いが激しくなり、まるで絞り取るような吸い方に杏樹は上体を反らす。
「や、ん!凱、くるしっ…凱!」
 杏樹は悶えながら凱の髪をつかむ。
「も、止めて!出ちゃう!」
 叫んでも凱はフェラを止めず、とうとう杏樹は凱の口の中で爆ぜた。

「は…んん。凱、吐き出して」
 杏樹は額の汗を手でぬぐいながら凱に声をかけるが、凱は慣れた感じで口元を舌で舐めている。
もう精を飲み込んでしまったのだ。
「そんな焦った顔をしないでください。さっきまで舐めていたんですから慣れました」
「そう、なんだ」
 
 杏樹は体勢を変えようとして違和感に気付く。
まだ秘部に凱の指が入っているのだ。
凱の茎の大きさを知った秘部は、指1本では反応が鈍くなっていた。

「指じゃイけないんだ。凱のものが欲しい」
 ためらいもせずに杏樹が欲しがると、凱は微笑んだ。
「大胆になりますね、本当に」
「ねえ、笑っていないで入れてよ?ずっと欲しかったんだ」
 杏樹は凱に体を寄せると腕をまわして、ぎゅっと抱き締めた。
しかし力が入りすぎて爪を立ててしまう。
 
 凱は痛みで一瞬怯んだが、すぐに口角を上げてみせる。
「もったいぶっていると、俺が負けそう」
 そして体を起こしてジーンズを下着ごと脱ぎ、勃起した茎を杏樹に見せた。
この大きさに杏樹は体を震わせる。
ようやく入れてくれるのかと期待に満ちて、泣いてしまいそうな衝動に駆られたのだ。
「そんなに興奮してくれるんですか?可愛いなあ」
 凱は杏樹の股を割ると、ゆっくりと杏樹に体重をかける。
「俺以外の人に、そんな顔を見せちゃダメですよ?」
「そんな顔って…?」
「欲しくてたまりません・みたいな顔です」
「意識していないんだけど」
「それは罪ですねー。誰かにさらわれないようにしなくちゃいけません」

 凱は杏樹の首筋を舐めてそのまま胸元に舌を這わせる。
どうやら杏樹の乳首が気に入っているようで、舌で転がしたり口に含んで吸ったりする。
凱が吸うそのたびに杏樹は「ああんっ」と喘ぎ、腿が震えてしまう。
「杏樹さん、艶がありますねー。乳首が立っていますよ、凄くそそられる」
「凱、早く入れてっ!」
 この叫びに顔を上げた凱は、杏樹の乳首に唾液をこぼした。
唾液は杏樹の滑らかな体をつつ・と下りていき、おへその辺りで止まった。
 それも凱が舐めてしまう、この感覚に杏樹は耐えがたい。
「意地悪だ…」
 杏樹がため息をつくと凱が「じれったそうな顔もいいですね」と胸を撫でる。
そして指先で乳首を回すと「クウンッ!」と杏樹が喘いだ。

「凱はそこばかり…もう耐えられない」
 体をよじって枕を引き寄せると、そこに突っ伏した。
「杏樹さん?」
 うつぶせになった杏樹は肩を震わせている。
泣いているのだろうかと凱は心配になり「杏樹さん」と何度も呼ぶが、応えがない。
 凱は自分に向けられた杏樹の柔らかいお尻を撫でてみる。
すると「入れて」とつぶやく声がした。
「激しくしてほしい」
 そして杏樹は膝を立ててお尻を突き出した。
きっと真っ赤な顔をしていることだろう、そう思った凱は自分の茎をつかむとようやく挿入した。
そして自分の腰を使って緩やかに根元まで入れてしまうと、杏樹のお尻を軽く叩いた。
「動きますよ」
 凱は杏樹の顔が見られないので今ひとつ乗り気になれないが、柔らかなお尻も魅力的だ。
抜き差しをしながらバックも悪くないなと思い始めた。
それは枕に突っ伏した杏樹が「ん・ん・あ、ううん…」と喘ぎ続けるからだ。
「杏樹さん、凄い」
 思わず凱がそう漏らすと杏樹が身をよじって顔を見せた。
「もっと突いて?」
 この魅惑的な姿に、凱は目眩がしそうだ。
高ぶる感情のままに肌を合わせて突き上げていくと「あ・あ・あ…」と杏樹が搾り出すような声を出す。
「凄く、いい」
 凱は杏樹のお尻を両手でつかむと、自分に引き寄せながら突いた。
「アッ!あー!も、もうダメかも」
 淫靡な音が秘部から聞こえる。
凱の茎は杏樹の中で先走ったのだ。
その精が潤滑油になって、凱が突くたびに淫靡な音を立てている。
「凱、も・もうもたない!」
 杏樹の叫びと同時に凱が中で爆ぜた。
急に力の抜けた凱は杏樹のなかから茎を引き抜き、杏樹の体の上に重なった。

「凱?」
 杏樹が呼んでも返事がない。
「凱、大丈夫?」
「…はあ、目の前が暗くなりました…」
 どうやらイッた衝撃で軽い目眩を感じたらしい。
「俺、杏樹さんが好きです、誰にも渡さない」
 そう言うと凱は寝転んで、すぐに寝息を立てた。
日頃の疲れもあって、寝てしまうのだろう。
 杏樹は少し物足りなかったが、凱の寝顔を見ると安らかな気持ちになれた。
「こうしてみると子供みたいだ」
 自分の声に思わず吹き出すとクーラーを<お休みモード>に切り替えて、杏樹も寝転んで瞼を閉じた。

22話に続きます
 1人寝の夜は長くて寂しい。
杏樹はベッドの上で寝返りを打ったり、不意に起き上がったりして全く眠れずにいた。
 部屋を暗くしていてもこの有様なので、杏樹はベッドに腰掛けて暗闇の中で携帯を開いた。
凱にメールを打とうと思ったのだ。
時刻は午前1時、凱はコンビニで働いていることだろう。
休憩時間に見てくれたらと思い、杏樹は『頑張ってね』と一言だけメールを送信した。
 本当は『早く会いたい』とか『凱がいないと眠れなくて困る』などと書きたかったのだが、我慢した。
凱を困らせるだけだからだ。
「…甘えん坊か」
 凱によく言われる言葉を思い出して吹き出した。
「そうかも知れない」
 
 携帯を閉じると杏樹は背中からベッドに倒れた。
そして両手を広げて「暑い」とぼやいた。
 クーラーは<おやすみモード>に切り替えてあったので、とうに運転を止めている。
杏樹は「はあ」とため息をつきながらリモコンを取り上げ、スイッチを入れた。
 数秒待つと冷風が送られてくる。
その風を浴びると気持ちがよくなってきた。
 杏樹は再びベッドに倒れこみ、瞼を閉じて凱のことを想った。


 梅雨の時期といえども朝方は冷える。
あまりの寒さに杏樹は飛び起きて、まずクーラーを切り、大きなあくびをした。
時計を見ると午前5時だ、もう一眠りしようとベッドに横になったが凱に会いたいと思い直し、
まだはっきりしない頭を振って起き上がった。

 空は曇天で今日は雨が降るかもしれないと思いながら、杏樹はコンビニへ向かった。
外から店を覗いてみると、またしてもあの店長がレジにいた。
店長に顔を見られたくないのでこれでは店内に入れない。
 無駄足を踏んだと肩を落としながら歩き出すと後方から話し声が聞こえてきた。
段ボール箱を潰す音がするので、ゴミの処理をしているのだろう。
「杉本の奴、とうとう断るんだってさ」
「ああ、あの可愛い子?早朝に杉本に会いに来るくらいだったから、相当惚れてたのになー」
「なんか、もったいなくね?」
 杏樹の足は凍りついたかのように動けず、振り返ることもできなかった。
「しつこくされるのが嫌だって言ってたぞ。杉本、禍福じゃね」
「そうそう。ま、あいつくらいの容姿なら誰でも釣れるだろうからいいんじゃね?」
 杏樹は一息吐くと駆け出した。
真実とは残酷なものだ。
惚れていたのは僕だけか・と杏樹は溢れそうな涙をこらえて部屋に帰った。


 杏樹はリビングの床に座り込むと足を抱えた。
静かな空気が耐え難くてテレビをつけたが、画面を見る気になれない。
 しかもぼんやりとしているうちに時刻は8時を過ぎた。
もうすぐ凱が来ることになっているのだが果たして来るのだろうか。
そして「別れましょう」などと言い出すのだろうか。
 杏樹の視界は歪み始めた。
頬を伝う涙はなかなか治まりそうにない。
「好きだったのにな」
 つぶやいた言葉にまた泣けてしまう。
こんなに恋焦がれていたとは、自分でも思わなかっただろう。
セックスだけじゃない、付き合うと決めた相手なのにセフレ扱いを受けたのだろうかと疑問が残る。
 そして時計は9時を指した。
しかし凱は来なかった。


 杏樹は気持ちを入れ替えようと服を着替えて、街に出ることにした。
本来なら明日、凱と出かけるはずだったが来ないのだろうと思ったのだ。
 街に出ると百貨店のショーウインドウに黄色いバラが飾られていた。
父の日はもうすぐだからだろう、気合の入ったディスプレーを見ると自分もなにか贈ろうかと思う。
ふらりと百貨店に入ると、すぐに男性の店員が歩み寄ってきた。
眼鏡をかけて理知的なイメージだが年は20代だろう、下手をしたら同じ年かもしれない。
「いらっしゃいませ。父の日の贈り物でしょうか?」
「はい、どんなものがあるのかなーって」
「ご案内します、どうぞ」
 その店員に案内されて売り場を見ていると携帯が鳴った。
見ると凱からだ。
とても出る気になれず、杏樹は携帯を切った。

 杏樹は買い物にも没頭できず、結局その店員がお勧めするシャツを買うことにした。
「喜ばれると思いますよ」
「はあ、そうだといいな」
 適当に話していると店員が首をかしげた。
「失礼ですが、どこかでお会いしたことがありませんか?」
「え?」
 杏樹はまじまじと店員の顔を見たが、記憶にない。
「会っていないと思いますよ?」
「それは失礼いたしました。お客様の華やかな雰囲気に惹かれたみたいです」
「はあ?」
 誉め言葉なのだろうか・それともからかわれたのかと、杏樹は瞬時に対応ができなかった。

「私はこういうものです」
 店員が差し出したのは名刺だ。
<紳士服売り場担当 副店長 郷田宏>と明記されている。
「若いのに副店長なんですか…」
 杏樹が驚いている郷田は指をくるりと回して見せた。
そのとおりに名刺の裏を見ると、メールアドレスが書かれてある。
「これは?」
「私個人のメアドです。御用がありましたらなんなりとお申し付けください」
 杏樹はこの名刺をお客全員に渡しているのかと勘違いをして驚いていた。
「行き届いたサービスなんですねー」
 郷田はそう言われて杏樹が鈍いと悟る。
そして咳払いをすると「いつでも呼んでいただいて構いません」と言葉を添えた。
 明らかに誘われているのだが、こう言われても杏樹はピンとこない。
そればかりか平然と「じゃあ、発送をお願いします」と送り状を受付からもらい、書き始めた。
 郷田は『やれやれ』と心の中で毒づいたが、様子を見ようと杏樹の側に立つ。
隙あらば再度誘おうという魂胆だ。
 しかし杏樹の携帯が再び鳴り始めて空気が変わった。
杏樹は何気なく携帯を取り出して凱からと知ると、ため息をついて出た。

「もしもし」
『杏樹さん、今どこにいるんですか?』
 凱の声だ。
昨日から焦がれていた凱の声を聞いてしまうと、心が揺さ振られる。
「買い物をしているんだ、凱はどうしたの」
『俺、杏樹さんの部屋の前で待っていたんですけど、今日は会えませんか?』
 ふと杏樹は腕時計を見た。
もうお昼を過ぎている、凱と会う時間が限られてしまう。
「ごめん、すぐに帰るよ!」
 あんな噂話を耳にしても、杏樹は自分の気持ちを変えることができなかった。
本気で惚れて、側にいて欲しいと願う相手だからだ。
 杏樹は急いで送り状を書き終えて精算を済ませると百貨店を飛び出した。
そして土曜日の昼間で賑わう繁華街を駆け抜けて、一路、自分の部屋を目指した。



「ご、ごめん」
 杏樹が息を切らしながら走りこむと、部屋の前で携帯を眺めていた凱が振り向いた。
「そんなに急いでこなくてもよかったのに、杏樹さん、どうかしたんですか?」
 約束を違えたことを責めずに、凱はまず杏樹の身を案じた。
「朝から、もしかして朝からここで待っていたの?」
「あ、はい。でも1時間も遅刻したから待ちぼうけは仕方ないです」
 微笑む凱に杏樹は胸が痛くなった。
「じゃ、じゃあ…凱は3時間も…?」
「ここは日差しが眩しいから日焼けしそうでした。あはは」
 屈託無く笑う凱に、杏樹は抱きついた。
「ごめん!本当にごめん!」
「杏樹さんが謝ることじゃないですよ。俺が遅刻したんですから」
 ふと杏樹が凱の顔を見上げると左の頬が赤くなっている。
「どうしたの、その頬」
「あー、ちょっと揉め事がありまして。でも無事に解決しましたから」
「まさか!麻人がまた来たの?」
「え?昨日のあの人のことですか?来ていませんよ。これは俺が悪かった印です」
 杏樹はなんのことかわからないまま、凱を部屋に招いた。
凱はスニーカーを脱ぎながら「遅刻した理由を言います」と話し始めた。

「俺、深夜に買い物に来る女性のお客さんに好かれていたんです」
 自分目当てで買い物に来ているのはわかったが、だからといって邪険にもできないし雑談もしない。
そんな日々が続いて、とうとう相手が「付き合って欲しい」と言い出した。
言われるたびにやんわりと断ったのだが早朝にも来店するようになり、凱は精神的にまいってきた。
 そこで今朝きっぱりと断ったら平手打ちを食らったというわけだった。

「僕のことじゃなかったんだ…」
 杏樹はコンビニで聞いたことが自分を指しているとばかり思い込んでいたのだ。
しかし人違いだった、おかげで杏樹の気は晴れてきた。
「ん?どうかしましたか?」
「なんでもないよ、あー、よかった」
 両手を頭上に挙げて「うーん」と伸びをしたら名刺が落ちた。
「なんですか、これ」
 凱が拾いあげて急に頬を膨らませた。
「どうしてプライベートのメアドつきの名刺を持っているんですかー?」
「あ、これは売り場でもらったんだ」
「…誘われていたんですよ!自重してください!」
 凱は杏樹を抱き締めて「本当に危ない。1人歩きもさせられない」と言う。
不安がる凱をよそに、杏樹は凱の心臓の音が伝わって体が熱くなってきてしまった。


21話に続きます
「どうしたんですか、そんなところに座り込んじゃって」
 ドアを開けて入ってきたのは凱だった。
まだ明るい空の光を背中に浴びながら、上がり口にしゃがみこんでいる杏樹を見ている。

「ん?さては抱き起こして欲しいのかな?」
 床に膝をついて杏樹を見ながら首をかしげる凱に、杏樹は無言で抱きついた。
「甘えん坊さんだなー」 
 よしよしと背中を撫でる凱に、杏樹は首を振る。
「違う、凱が心配だったんだ」
「そうですか?俺は平気ですよ」
「…とんだ修羅場で、ごめん」
「謝らないでくださいよ。俺が守るって言っているじゃないですか」
 凱は杏樹を抱き締め返すと「こんなに可愛いんだから隙を伺う奴らがいて当然ですね」と言う。
「でも振り切れてよかった。俺のほうが安心しましたよ」
「え?」
「俺はいつも側にいられないじゃないですか。側にいないときは不安でたまらなかったんですよ、
変な人に目をつけられていないか、襲われたりしていないか」
「僕はそんなに…」
 杏樹は『自分はちょろいのだろうか』と背筋が寒くなった。
「それに、寂しがっていないかなって。ずっと思っていました」
 凱の告白に杏樹はくすぐったくなる。
言当てられて恥かしい気持ちと、理解してくれていたありがたさだ。

「凱、ありがとう」
 腕の中で目を閉じると凱が額にキスをした。
「俺、凄くあなたのことが好きなんです」
「会うといつも『好き』って言ってくれるんだね」
 まるで『好き』の攻撃だが、杏樹は嬉しくて顔を上げた。
「僕も好きだよ。側にいて欲しい」
 自然に2人は唇を重ねると、凱は杏樹を抱き上げてリビングに運んだ。
杏樹はすでにその気なのだが「蒸し暑いですね、クーラーを入れましょう」と凱は平然としている。
肩透かしをくらった杏樹は、それでもセックスを期待して凱にしがみつく。
しかし凱はソファーの上に杏樹を座らせると、床に膝をついて「明後日の日曜日に先約はありますか?」と聞いた。
「ないよ?」
「じゃあ、デートしましょうね。俺、バイトが休みなんですよ」
 健全な誘いに杏樹は目を丸くした。
しかしこれは杏樹が望んでいたことでもある。
「せっかくの休みなのに、いいの?」
「側にいたいんです」
 微笑む凱に杏樹は息が苦しくなる。
この焦れる想いはどこからくるのか。
「凱、嬉しいよ。もっと力強く抱いて」
 目を潤ませて喜ぶ杏樹を見ながら凱は「でも今日は時間がないな」と残念そうにぼやく。
「えっ」
 杏樹は思わず時計を見た。
あんな騒動のせいで時間を浪費し、時計の針は19時を指している。

「せめてあなただけでも、イかせたい」

 凱は杏樹の靴下を脱がせると、その指を舌で舐め始めた。
「いっ!な、なに、この感じ!」
 悶える杏樹に「じっとしていてくださいね」と凱は唾液を乗せた舌を見せながら言う。
「杏樹さん、指も綺麗だから」
「や、止めて!なんか変な感じがするっ!」
「慣れていないだけですって」
 
 凱は指の股も舐めてじわじわと杏樹を追い込んでいく。
やがて全部の指を舐め終わると凱は立ち上がり、杏樹のスラックスのジッパーを下ろした。

「あ、感じました?嬉しいな」
 杏樹の茎は下着の中で大きく膨らんでいたのだ。
「やだやだ!凱、恥かしい!」
「その首を振る仕草も好きなんです。あー、俺はもうあなたしか抱けないな」
 
 凱は下着の上から勃起している杏樹の茎にキスをした。
「うううん!」
 それだけでも悶えてしまう杏樹は指を噛みながら開脚して凱を招き入れる。
「早く触って?どうにかして!」
 凱は杏樹の要望に応えた。
杏樹の茎を取り出すと口に含み、舌で舐めるとフェラを始めた。
「くっ、うううん!凱、凱ー!」
 のけぞる杏樹は早くも爆ぜてしまう。
「あ、あー…」
 凱は口元を拭うと「じゃあ、俺バイトに行きますから」と言い出した。
「えっ、もっとしたいよ」
「俺もしたいんですけど時間が無くて」
 そして杏樹をぎゅっと抱き締めた。
「すみません、杏樹さん」
「…謝らなくていいよ。仕方ない」
「明日も来ます。杏樹さんはお休みでしょう?9時には来れますから」
「う、うん」
 火照る体を持て余しながら杏樹はうなづく。
しかし立ち上がると凱の腰に手をまわして「離れたくない」とわがままを言う。
「重なりたいよ…」
 か細い声に凱は応えたいのだが、下唇を噛んでこらえた。
「夜勤が終ったらすぐに来ますよ」
 凱は杏樹の手を離させると頬を撫でた。
「杏樹さんが寝ていたら起こしてあげます」
「起きて待っているよ!」
 杏樹は離れがたくて凱の側につきまとうが、凱はスニーカーを履いて「行ってきます」と笑顔で出て行ってしまった。

 1人ぽつんと残された杏樹は、裸足で歩き回り、冷蔵庫からエビアンを出して熱い頬に当てた。
ひんやりとした感触が心地いいが、しかし体の火照りは治まらない。
「凱…」と名を呟きながらジャケットを脱ぎ、スラックスもその場に脱ぎ捨てると冷蔵庫に寄りかかり下着の中に手を入れた。
「ん」
 自慰をするのは久し振りで、しかも高ぶってしまっているので自分の手では快感を得られない。
勃起はするのだが、どう擦ってもイけそうにない。
 仕方なく下着を脱ぐと、今度は秘部に指を入れてみる。
すると異物が入ろうとするこの感じに、胸の鼓動が高鳴った。
「凱、凱のものがいいのに」
 あの熱さが恋しい。
突き上げてくる波が欲しい。
冷蔵庫に寄りかかりながら杏樹は茎を扱き、そして秘部に指を出し入れする。
「どうしたらイけるんだよ…」
 杏樹は高ぶりすぎて涙をこぼした。
そして床に力なくしゃがみこむと寂しさがこみ上げてきて冷蔵庫のドアを叩いた。


20話に続きます
 凱が恋しくて眠れず、睡眠不足の体に梅雨入りした独特の風がだるさを倍増させる。
スーツにまとわりつくようなこの湿気にもうんざりだ。
杏樹は出勤してからため息を何度ついたことだろう、朝から覇気のない様子を麻人が見つけた。

「やる気あるの?」
 杏樹は麻人の上からものを言う態度が憎らしい。
「今日1日頑張れば、明日は休みじゃないか。ちゃんと仕事をしろよ」
「言われなくても」
 杏樹がにらむと麻人は笑う。
「なにがおかしいんだ」
「いや、杏樹はすぐにむきになるなあと思ってさ。こんなことを知っているのも俺だけ」
「…なにが言いたい?」
「言っていいの?」
 なにやら含みのある言い方だ。
杏樹はその態度にさえ苛立ちを覚えたが「言えば?」とぼやいた。
自分にはなんの落ち度もないと思うからだ。
仕事は毎日こなしているし、ミスもないと自負している。

「杏樹の部屋から男が出てきたのを見ちゃった」
「…はあ?」

 杏樹はこの麻人が自分の部屋を知っていたことを忘れていた。
こそこそと見に来ていたのも許せないし、プライベートをとやかく言われる筋合いはない。

「あんなちゃらそうな男がいいわけ?」
「僕の勝手だ。関わるな」
「まさか…もうセックスをしているとか?」
「関わるなって言っているだろう!」
 杏樹が拳で机を叩くとようやく麻人は口を閉じた。
「朝から嫌な気分にさせるな。自分こそ部署に戻って仕事をしろ」
 麻人は勝てないと踏んだのか、素直に出て行った。
「はあ」
 杏樹はまたため息をついてコーヒーを1口飲んだ。
仕事でストレスを感じるのはまだしも、麻人のせいで心労を重ねるのは困ると思う。
隙を伺うようなあの態度、まるでハイエナだ。
自分がしっかりとしていないと、取って食われそうな気がするのだ。
 杏樹は麻人に早く相手ができることを願った。
それ以外に逃げ切る道がないとさえ思ったからだ。
幸いにも麻人は男前なので、彼がその気になればすぐに相手はできるだろう。
早くそんな日が来ないか、杏樹はパソコンを開きながらぼんやりとしてしまった。

 そんなときに杏樹の携帯が鳴った。
見ると凱からで『お仕事頑張ってください。おやすみなさい』とある。
 夜勤のために今から寝るのだろう、杏樹はその文字を見ただけで安堵した。
守られているような気さえしたのだ。

 おかげで午後からの仕事は身が入った。
入力をこなしては<済み>の印を打つ杏樹を見て、部長も負けじと入力を進める。
「よくもまあ、毎日新しい商品があるものだな。来月の棚卸しで誤差がなければいいが」
 この会社では2ヶ月に1度、倉庫の棚卸しがある。
これはパソコン上の在庫数と倉庫内の実在庫を照らし合わせる作業なのだが、
最近新商品の登録が多すぎて、この作業の難関さを知らしめている。

「長時間の作業になりそうだ。今から憂鬱すぎる」
 部長はそう言って嘆くが、杏樹も7月の倉庫の暑さを1度体感している。
空調のきかない倉庫は息苦しいサウナだ。
「廃番になった商品を確認してデータから消しておこう。それだけでも当日の作業が減る」
「そうですね」
 杏樹は明日から計画して行おうと決めた。
とにかく今日も定時であがること、それしか頭にはなかった。
 できれば明日の土曜日か日曜日に凱と街に出かけたい。
しかしローテーションが合えばいいのだが、などと考えつつも指はミスタッチもなしに動いている。
杏樹は最後の1枚を入力し終えて印を打った。




 杏樹は定時であがり、部屋まで急ぎ足で帰るとドアの前で今日も凱が待っていてくれた。
「お疲れ様です」
 笑顔で迎えてくれる凱に、今日の疲れが吹き飛ぶ。
杏樹は嬉しくてたまらず、ドアを開けると凱を先に部屋に入れた。
「お邪魔します」
 そして自分も玄関に入り、ドアを閉めようとしたらガツンと音がした。
見ると靴が片方入り込んでいる。
その先の尖った靴に杏樹は見覚えがあった、間違いないと思いながら顔を上げると果たして麻人がいた。
「俺も入れてよ、杏樹ー」
 杏樹はなにも言わずに靴を踏みつけた。
「いてえ!」
 思わずひっこめた麻人を見て杏樹はドアを閉めて鍵もかけた。

「どうしたんですか」
 凱が驚いて目を丸くしている。
「大丈夫ですか、杏樹さん?誰か…知り合い、ですか?」
 杏樹は知らぬうちに肩で息をしていたのだ。
それほど麻人の執着ぶりが恐ろしく、また苛立ちも感じた。
「あんな奴は気にしないで。凱、おなかがすいたよ」
 杏樹は冷静さを取り戻したかのように振舞うが、声が震えてしまった。

「もしかして、あなたを辱めた奴なんですか?」
 凱は杏樹が体中に赤い跡をつけられていた日を忘れていなかった。
「辱めたなんて…店長じゃあるまいし。ねえ、凱、おなかが…」
「なら、元彼なんですか…?」
「そんなものじゃなくて、あのさ…」
 杏樹の返事を待たずに凱はドアを開けようとする。
「待って!なにをするつもりなんだ!」
「2度と来ないように話をつけます」
「…凱が言って、言うことを聞くような奴じゃないんだよ!」
 叫ぶ杏樹に凱は振り向いて口角を上げた。

「あなたを守るって、言ったでしょう」

 そして凱はドアを開けて通路に立って煙草をふかしていた麻人と対峙した。
「なんだよ?おまえには用事がない。杏樹を出せよ」
 麻人は凱をにらみながら白煙を吹き出した。
「すごんでも無駄です。2度とここに来ないでください」
「偉そうな言い方をするじゃないか」
 癪に障ったらしい麻人は煙草を通路に捨てると靴で揉み消した。
「おまえが杏樹の彼氏ってわけ?こんなちゃらい男のどこが…」

「うるさい!」

 杏樹は部屋から飛び出して麻人の頬を叩いた。
「麻人には関係ないと言っただろう!しつこくここに来るな、僕は相手にしない」
「あーき。隙だらけなんだよ」
 麻人は杏樹を抱き寄せると尻を揉んだ。
「わっ!」
「いいものだろう?俺の指から逃げられないくせに」
 そして麻人は挑発的に凱を見て笑う。
「こいつは俺とのセックスに溺れているんだよ。ここから立ち去るのはおまえだよ、学生さん?」
 麻人は楽しそうに杏樹の上着をまくり上げて腰の隙間から手を入れた。
「やだっ!触るな!」
「こういうシチュエーションが好きなんだよな?誰かに見られそうな場所でセックスするのが」
 杏樹は身をよじって逃れようとするが麻人の腕の力が半端では無い。
それに悔しいことに腰を撫でられて感じてしまった。

「杏樹さん、顔を伏せて」

 凱の声がしたかと思うと、ガツンと鈍い音がした。
見上げると麻人の頬が赤く腫れている。
「俺は杏樹さんをいいようにしない。こんな恥かしい真似をさせるなんて許せない」
「いてえな!このガキ!」
 麻人は凱に殴りかかろうとして杏樹を手放した。
それを見て凱は麻人から身をかわすと杏樹の腕を取り、部屋に押し込んだ。
「守るって、言うこと?」
 麻人はかわされて不満そうだ。
「杏樹さんを玩具扱いして楽しいんですか?」
「聞いているのは俺だ!」
 忌々しげに麻人が通路を蹴り靴を鳴らした。
「怒鳴ったら言うことを聞くと思うんですか。甘いな」
「…このガキ」


 ドアの向こうから麻人の怒鳴り声と、凱の落ち着いた声が聞こえてくる。
杏樹はタイミングを見計らって飛び出して、麻人をまた殴ろうと決めた。
しかし「帰ってください」と、凱の声がした。
「殴りあうのも悪くはないんですが、大人でしょう?振られたなら引くのが賢明です」
 凱は麻人や杏樹よりも大人びていたのだ。
「あまりしつこいとストーカー被害届を警察に出しますよ」
「…ちっ」
 ゴツゴツと憤慨して歩き去る靴音が聞こえた。

19話に続きます
「凱…激しいのは止めて」
 杏樹はスーツ姿のままで凱に圧し掛かられていた。
「スーツ、脱がせてよ」
 杏樹の荒い呼吸が凱に触れるが、凱は本能の赴くまま貪るように杏樹と唇を重ねて互いに欲しがった。

「あ、もうダメ」
 杏樹は膝を立ててスラックスを脱ぎにかかった。
しかし凱は杏樹のジャケットを広げただけでシャツの上から胸を揉み始める。

「杏樹さんのここ、凄く扇情的ですね。あー、なんか俺、止まれそうにない」
「凱、夜勤だろう?ほどほどにしないと仕事に差し支えない?」
「心配しなくていいですよ、杏樹さん」
 凱はシャツの上から杏樹の乳首を舐めた。
「く、ううん!」
 途端に杏樹は体を反らすが、凱の舌はそれでも乳首から離れない。
「凱、激しすぎっ」
 叫びながら杏樹はスラックスを下ろし、下半身は下着姿になった。
もう勃起している茎が飛び出したがっている。
「杏樹さんを乱したいんです」
「もう十分、乱れたよ!…あ、そんなところばかり責めないで!」
 
 凱は杏樹の下着の上から股間を撫で、「可愛いなあ」とつぶやく。
「俺、虜になったみたいです」
「僕の…?」
「はい。あなたのことですよ」
 凱は「杏樹さんのことしか考えられないんです」と耳元で囁くと、また唇を重ねた。
「罪な人ですねー。俺、もうかなりはまっていますから」
 そして杏樹の下着を脱がせてしまうと、あらわになった茎を握り「アッ!」と杏樹に絶叫させた。

「もっと啼かせてみたいんです」
 
 凱はジーンズを下ろすと下着の中から茎を取り出して、早くも杏樹の秘部に挿入した。
「あああ!早い、まだダメ!でも、い…いっちゃう。このままじゃ耐えられない!」
 手をばたつかせて拒む杏樹だが、秘部はなんなく凱を受け入れていた。

「やだっ…」
 杏樹は指を噛んでこらえる。
その姿を見て凱は悲しげな表情を浮かべて杏樹の頬を撫でた。
「すみません、性急しすぎました」
「いいよ…。ちょっと驚いただけだから」
「俺、杏樹さんが欲しくてたまらないんです。全部欲しいんです」
 そう言いながら凱は腰を振り始めた。
「あっ。あ、うん…ん、ん、凱、なんか気持ちいい…」
「強くはしませんから。無茶をしたらあなたが壊れそう」
 
 杏樹は揺らされながら凱を見上げていた。
緩やかな腰の動きは自分を労わるようであり、それは愛情があるからこそだと杏樹は思う。
「昨日よりもいい。だんだんわかってきた…んんっ、凱、凄くいい」
「あなたにそう言われると、嬉しくてたまりませんよ」
 凱は口角を上げて微笑むと、杏樹の中を突き上げて「ここでしょう?」と聞く。
「んっ、ん。そこ、そこがいい」
「うん、俺もだいぶわかってきましたよ」
 凱は杏樹のいい場所を探り当て、そこを集中的に突くと「たまんない…」と呟きながら爆ぜた。



「シャワーだけでいいの?体を洗いなよ」
 杏樹が心配するが「平気です」と凱は濡れた髪をタオルで巻いたままスニーカーを履いた。
「その格好で外に出ないで」
 さすがにタオルを取り上げると凱が笑った。
「恋人同士みたいですね、俺たち」
「あ、うん。そうだね…」
「否定してくださいよ、『みたい』じゃなくて、そうなんだって」
 凱が杏樹を見ながら頬を膨らませた。
「え、僕でいいの?」
「あなたしかいません!」
 凱は首をかしげている杏樹にキスをすると「また来ます」と言って出て行った。
杏樹はこの瞬間がたまらなく寂しい。
凱さえよければ、一緒に住みたいとさえ思う。
「明日にでも、誘ってみようかな…」
 杏樹はタオルを手にしたまま、閉まったドアをぼんやりと見続けていた。


 夜中に杏樹は喉が渇いて目が覚めた。
目を擦りながら歩き、冷蔵庫からエビアンを取り出して飲むと、乾いていたのは別の場所と気付く。
 昨日はこの部屋に凱がいたのだ。
2人で寝たからには、もう1人寝ができないようだ。
『甘えん坊さん』と凱にまた言われそうだが、杏樹は寂しくて膝を抱えて床に座り込んだ。
「会いたいなー」
 口から出る言葉は本音だ。
「会いたい」
 杏樹が体を持て余しているとテーブルに置いた携帯が着信を知らせた。
なんだろうと見てみると凱からだった。
『もう寝ましたか?明日も会いに行きます』
 杏樹は頬が熱くなるのを感じた。
気持ちは伝わっているのだ、そう思うとさらに寝付けなくなってしまった。

18話に続きます
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