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人を騙すのではないから警戒しなくていいんだ。
実輔には、生徒をコントロールしてもらうつもりだ。それだけだ。
簡単だろう?
お前も気がついているはずだ。
つまらない世の中、くだらない世の中。
金は汚いことをしている奴らが抱え込む。
国の羅針盤も汚い奴らが抱え込んでいる。
そんな世の中だからのし上がらないと沈むだけ。
金がなければ生きられない。
上にいなければ見られない景色がある。
下で満足していると言う奴らは欺瞞だ。
なんの努力もしないで上にいけるチャンスをうかがっている。
落ちてくるおこぼれを待っている。

待っているだけで何が動くか。
何かが落ちてくる前に死ぬだけだ。
つまらない人生送るなんて、生きられないものに対しての最大の冒涜だ。
生を受けたのだ。
歩けない道なら開拓だ。
努力だ。
それこそ自分の思うままの世界が作れることに気がつかないか。
勿論ひとりではなしえない。

そのための兵隊を作るんだよ。
お前の思うままに動く兵隊を。

思うままにいきたければ私の言うとおりにしたら可能だ。
すべてが手に入るさ。
ゲームを始めよう。
私の手持ちのコマは、実輔。おまえだ。
実輔には、私の思うままに動いてもらう。
私の作り上げた台本どおりに・・・・明日からはおまえが

あの教室での権力者だ。

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樫木先生に連れられて教室に入ってきた実輔は、クラス全員の注目を集めていました。
「今日からこのクラスになる転校生だ。藤井実輔。」
名前を言われて一礼します。
「みほ?」
クラスの一人が思わず聞き返します。
「そう。覚えやすいだろう。」
樫木先生は少しも笑わずに流しました。

自分を欺くためにつけられた女の子のような名前。
だがこれも利用できる。藤井がどんなに悔しがろうとも、
お前たちがやってきたことがいかに無意味か思い知らせてくれる。

              「俺の名前に似てる。」
              瑞穂が呟きました。
              「橋本。名前が似ていても
              頭の出来は天地の差だ。」

       「・・顔もじゃねえ?」
       教室はざわつき始めました。

「・・くだらない。」
実輔がぼそっと独り言を言いました。
隣の樫木先生にしか聞こえないはずと思いましたが、ずっと実輔から目を離せないでいた明が。
唇の動きを読みました。


             「なんだあいつ・・?」

             このクラスも学校も好きじゃない。
             だけど転校早々の奴に、
             そこまで言われたくも無い。
             生意気な奴が来た。

      明がそれでも目を離せないのは何故でしょう。
実輔も視線に気がつきました。
「・・・先生。あのひとは誰です?」
「・日比野。あいつも頭がいい。」
「そうですか。じゃあ、敵かライバルかのどちらかですね。」
実輔は明をじっと見ました。
「友人なんていらないからな、実輔。」
樫木先生が騒ぎ続ける教室を眺めながら言いました。

「先生。うるさいですよ、こいつら。」
「静かにさせてみるか?」
「反感買うのはまずいでしょう。
俺が今から始めることに対して、疑問をもたれては困ります。」
2006.07.12 エゴイスト。9
煩い瑞穂の相手をしたくないのもありましたが気になるあの生徒。
2Fの教室から見下ろす明を、ふいにその生徒は見上げてきました。
「え・。」
見ていた明が、ぶるっと震えました。

ミディアムレイヤーの茶色い髪が風に揺らいでいます。
意志の強そうなくっきりとした二重の瞳。
白い肌がまるでお人形のような顔だちを際立たせています。
やがてその瞳は明をじっと見つめてきました。
ひとに見下ろされるのが気に入らないのでしょうか。
ネコに威嚇されるときの鳥肌の立つ感覚です。
「誰?あいつ・・。」
きゅっと結んだ唇が濡れているのか、やけに赤く感じました。

「転校生って・・あれ?」
明は誰に聞くのでもなく、呟きました。
夏休みに入る前にわざわざ転校して来るなんて、普通じゃない。
時期をずらして当然なのに。
おかしくないか。なんだ、あいつは?

明が実輔を疑ったのはこの瞬間からでした。
そしてその疑いは一向に晴れないまま、実輔の選択した闇に巻き込まれて行くときも。
ともに堕ちると決めたときも。

明は今のように実輔から目が離せないでいました。
2006.07.12 エゴイスト。8
新しく出来た学校に進路を決めたのは、自分の記録を残せるかもしれないと思ったから。
思春期にありがちな自分の過大評価をしてしまう生徒が多い中で、本当に自分ができる人間だと思い込むのは一握り。
その中に、日比野明 がいました。
黒い髪は毛先を跳ねさせるチョップカット。
切れ長の一重の瞳に青いフレームの眼鏡をつけています。

<ここもくだらない学校なんだな。>

新しければ期待もする。
でもそんなものはすぐに単なる願望であって、叶わないものと知りました。

<あと2年と半年も、ここか。>

うんざりでした。
テストをやれば自分は学年5位の中に入ります。
成績がいいからって、何が得かな。
進学の際に有利。でもその先は?
一部上場企業に推薦してもらえるわけでもなし。
縁故も聞かない。
生活を営むために成績を上げるのか?
明は自問自答を続けていました。
明確な答を誰かが持っているのなら聞いてみたい。
そもそも企業に入ることがゴールでもない。
そこで自分の行動力が問われるだろう。
なら勉学よりも大事なものってなあに。
明が自分の生き方を模索し始めた初夏の頃でした。

校庭を横切って歩いてくる少年が見えました。
誰でしょう?
遠くてあまりはっきり見えませんが、知らない子。
知らない顔をしています。
「・・女の子か?」

「日比野くん、今日うちのクラスに転校生がくるんだって!」
同じ年にしては子供っぽいクラスメートの 橋本瑞穂 が騒いでいます。
「知ってた?ねえ知ってた?」

2006.07.11 エゴイスト。7
「実輔にいい話があるんだ。聞きなさい。」
「・・は?」
警戒を解かない実輔に、ここは嘘をついてもなにをしても効果がない。
なら、正直に包み隠さずに交渉してやろう。

逃がす気はない。

「実輔はこの町の高校に通っているんだな?」
「ええ。それが何ですか。」
「私は・・ご両親から聞いていないのは無理も無い。
今どんな職業についているか知らないが、
かつては共に教員を目指した仲間だった。
・・私だけが今も教師として人を指導しているからね。
話すこともない。そう思ったのだろうさ。」
実輔の瞳が意外そうに揺れました。
「教師?・・聞いたことも無い。」
嘘ではありませんでした。
教師を目指したのは半年ばかり。
あとはなんの情報も知りません。
知りたくも無い。
ただ落ちていけばいい。そうは、願いました。

「実輔はご両親が嫌いかい。」
「・好きではない。いつもなにかにおびえて暮らしてきたみたい。・・落ち着かない家だ。」
おや。少しづつですが話に乗ってきています。
樫木先生はこのタイミングを外しませんでした。

「転校しなさい。」
「は?」
「隣町に新設校が出来たのは知ってるな?私はそこの教師だ。
実輔はそこに通いなさい。」
「言ってる意味がわからない。」
実輔が声を荒げます。
つっぱっていてもやはり子供でした。
まだ感情のコントロールができていません。
それこそ・・・・樫木先生の思う壺なのですが。

「学校に近いマンションを一部屋渡そう。
そこで一人暮らしをしなさい。どうだ?親から離れたいだろう?
それにこの高校では新しい授業体勢を始めようと模索しているんだ。
実輔。成績がいいらしいな。
頭のきれる、容姿も優れた、上にたつべき人間を探していたんだ。
おまえの力が必要だ。」



2006.07.11 エゴイスト。6
かつて自分が愛した女性の顔がそこに生きていました。
少年は写真で見たときよりも、より鮮明に未央の生き写しとわかりました。
「・・藤井実輔くんだね。」
樫木先生は喜びに胸が震えました。

「はい。あなたは?」
声も聞いたことがあるような懐かしさを感じます。
顔が似ているから声も同じに聞こえてしまうのでしょうか。
しかし少年の不審な表情は消えません。
「私は樫木。実輔のご両親の大学時代からの友人だ。」
「うちの親の?」
親のことをよく思わない多感な時期にあるようです。
ますます不審な顔つき、しかもいらだたしそう。
「俺は会ったことがありませんよね。」
「ああ。そうだね。はじめまして実輔。よろしく。」
よろしく・の言葉に深みをもたせるように言いました。
その言い方に気付いたのか、ちらっと視線を送ってきました。

「警戒しすぎだな。知らない人はまず睨めとでも教わっているのか?」
樫木先生はわざと微笑んで聞きました。
「・・俺を知っていて、あったことがないのに・・
何故名前を知ったのですか。
母さんは俺の名前を知る、見知らぬ人間には気をつけろと
俺が幼い頃からずっと言っていた。
あなたは・・本当にうちの親の友人ですか?」
実輔は距離をとりながら睨みをきかせています。
まるで野良猫に威嚇された気分です。
綺麗な顔して、ものすごくガードが固い。

「なるほど。幼い頃からずっとか・・。」
樫木先生は笑い出しそうでした。
自分にそんなに恐れて生きてきたんだ。
ろくな人生送れていないじゃないか。
それみたことか。
自分を捨てるから天罰だ。



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