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2009.05.30 mellow・13
 健は手繰り寄せていたシーツから手を離して、光の背中に腕をまわした。
「いいよ、動いて」
「うん」
 光がゆっくりと腰を動かして抜き差しを始めると、健は未知なる感覚に体が貫かれると思った。
かなり奥まで茎が入り込んでいるので挿入されるときのタイミングに上体を反らす。

「あ、ああ…体が熱い」
 
 のけぞる胸元を見て、光はいよいよ興奮を抑えきれなくなる。
健の中に茎を入れたまま健のシャツを脱がせ、胸を揉んだ。
「あのさ、女じゃないんだか…」
 言いかけて健は口を抑えた。
光が健の乳首を指で扱いたからだ。
薄茶色のそれは固くなっており、光に愛撫されるたびにきりりと立った。
「可愛い…」
 光は健の乳首を甘噛みして、舌先でちろちろと舐めた。
「やっ!」
「ここも感じるんだ?健、もっとよくしたい」
 光は健の乳首にも興味を持ったようだが、健は自分の中で再度大きくなろうとする茎がじれったい。

「…母さんが帰ってきちゃうよ、光!」
「遅番だろう?」
「もう、焦らさないでくれよ!」
 
 耐え切れない健は光の肩を噛んだ。
「やだ!」
「うん、わかった」
 光は健の腰をつかむと引き寄せて、自分が動くのではなく健を動かして抜き差しを再開した。
これには健も慌てて「つ、貫かれる!」と叫び「やだ、こんな奥まで」と涙を浮かべた。
「することが無茶だ、光は!」
「でもスムーズに入るよ?あ、いい感じ。俺ももうもたないかも」
「じゃあ、出して。楽にさせてよ」
 健が首を振ると腰から手を離した光が「愛しいんだ」とその頬を撫でる。

「このままつながっていたい」
 
 そして光は今までに無い激しい突き上げを始め、健はそれに振り回されてしまう。
「や、やだっ」
「どこがいい?教えて」
「そんな…わかんないよ!」
 同性とのセックスが初めてな健はいつもの勝気さを失い、ただ光に「く、ううん」と甘い声で喘ぐ。
「凄く気持ちがいいよ、健。もっと突かせて」

「…好きにして」
 
 荒い息を吐きながら、健は光に身を委ねた。
すると光はさらにスピードを上げて突き上げ始め、「健が、好きだ」と叫ぶ。
「好きなんだ」
「何度も言うな…」
 健は光の突き上げを受け入れて、蕩けそうな目で光を見た。
「おなかに…出して」
「中じゃダメ?」
「僕を汚してよ」
 健の誘いに光は乗り、茎を抜くと健のおなかに精をかけた。
思いのほか量があり、健の胸までそれは届いてしまった。

「気持ちよかった…」
 光も息を荒くしながらつぶやいた。

「健の中、俺は好きかもしれない」
「中だけかよ」
「い、いや違う。俺は健が好きなんだ。健の全部が欲しいんだ」

 慌てる光に、健は身を起こしてキスをした。
「僕も気持ちよかったよ」
「健、嬉しい!」
 光は健を抱き締めてしばらく何も言えずにいた。
ただ鼻をすすり、健の髪に顔をうずめる。
 しかし健は鼻声が聞こえたので「泣いているの?」と光に聞いた。
「泣くようなことかなー」
「感激したんだ。俺は健を愛している、間違いないと思う」
「…好きからいきなり愛に変わったのか。いい加減だなー」
 健は苦笑しながら挨拶のように光の唇を吸った。
「あのさ。僕は光の特別な存在になれるのかな?」
「当然だよ。俺は健しか見えていないんだ」
 ここまで言うとはと、健は驚いた。
そして恥かしそうに光の手をにぎると「これからも一緒だな」と言ってその手にもキスをした。


「まるで熟れるまえの果実みたいだ」
 光が身支度を整えながら健のことを絶賛する。
「おじさんみたいなことを言うなよ」
「だって、そう思ったんだ」
「熟れるまえの果実なんて固い。食えないじゃないか」
「誰にも食べさせない。そういうつもりなんだけど」
「あ、そうなんだ」
 健はそれを一応誉め言葉と記憶して部屋着に着替えた。

 光は「泊まって行けば?」と健に誘われたが「泊まるとまたセックスがしたくなるから」と赤面しながら出て行った。
 あの初心さには程遠い手馴れたセックスだったと健は思うが、先の行為を思い出すと自分も取り乱しそうで、健は頭を振って「はあ」と一息ついた。
 そして冷蔵庫に入れていたお茶を出して一気に半分ほども飲んでしまう。
なんだかやたらと喉が渇くのだ。
 濡れた唇を手で拭うと、光が触れた自分の体を撫でてみる。
自分の手では興奮しないどころか何も感じない。
相手がいないと体は疼かないようだ。
「はー」
 健は長いため息をつき、キッチンの流し台に寄りかかるとその冷たい感触に心地よさを覚えた。



 翌朝、どうも体がだるい健を元気な光が迎えに来た。
「おはよう、健。一緒に行こうよ」
 はつらつとした笑顔に負けた健は上着を着ながら門を出た。
「おはよー…」
「健、あれから体は平気?」
 光はいきなりそんなことを堂々と聞く。
まだ自宅前だ、空気を読めと健は言いたくなるが腰をおさえて光を見上げた。
これで少しは黙るだろうと思ったが、光は「あ、やっぱり腰が痛い?俺もそうなんだ」と、
とんでもないことを言い始めた。
「慣れていないからかなー」
 そして健の前で腰を揺らしては「右に回すと痛い」などと言う。
もはや目も当てられない状況だ。
「それ以上は言うな!」
 健は口をとがらせて光の腕を取った。
「な、なに?」
「学校へ行くに決まっているだろう!急ぐぞ」
 早歩きでも走っても腰に響くが、ここは我慢だと健は耐えた。
光も同じ気持ちなのか文句を言わずについてくる。
 しばらく駆け足で歩道を抜け、駅に着くと2人は呼吸を整えるためにもゆっくりと歩き始めた。

「健、日曜日は空いてる?」
「光に誘われそうだと思ったから空けてある」
 健は熱い頬を手で扇いでいる。
その様を見て、光は嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、どこかに行こうよ」
「どこだよ」
「一緒に決めようよ」
 やたらと近くに来る光を、健は「近すぎ」と体を押した。
昨日は並んで歩き、しかもセックスをしたのだが、かえって意識してしまうようだ。
 しかし光はひるまない、なにが『近すぎ』なのかとまた近寄っていく。
「どこがいい?」
「光と一緒ならどこでもいいよ」
 健は近寄る光に諦めを感じて、そうつぶやいた。
「この話はここまでだからな。電車の中で言うなよ?」
「え、なんで?まだ場所が決まっていないよ」
 光はこの話がしたくてたまらない様子だ。
まるで遠足前の子供のように目を輝かせている。
身長の高い大きな子供だ、そう思うと健は笑いがこみ上げてきそうだ。
「…あのさ。急ぐ事はないだろう。日曜日まであと2日もあるじゃないか」
「そうだけど決めておきたいよ」
「2人だけのときに、な?」
 健は光のお尻を軽く叩いて、駅のホームに入ってきた電車に2人揃って乗り込んだ。


終わり

読んでくださってありがとうございました!
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2009.05.29 mellow・12
 いつもと同じ帰り道を歩いているのに、健と光はどこかぎこちなかった。
すれ違う人を避けようとして、ふと手が触れると「ご・ごめん」と慌てる始末だ。
相手を意識しないようにと思っても、かえって頭が混乱してしまいさらに意識してしまう。
そのせいで帰り道は途方もなく長く感じたが、背中に汗を感じるころにようやく駅まで来た。
 
 17時を過ぎた駅の構内は帰りを急ぐOLさんたちが早足で歩いている。
その流れに逆行して改札を抜けてホームに立つと、健はこの重い空気を打開すべく口を開いた。
「あのさ。…たまには家に来ない?」
「あ、いいの?」
「今日は母さんの仕事が遅番なんだ。1人でご飯を食べるより2人のほうがいいんだけど」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 光があまりにも嬉しそうな笑顔を浮かべるので「子供のころはよく来ていたじゃん」と健は光を見上げながらつぶやいた。
「そうだったね、よくお邪魔していたよ。健のお母さんの作るハンバーグが好きでさ」
 光は「懐かしいなー」と言いながら腕を上げて伸びをした。
緊張感に包まれた空気は消し飛んだようだ。
「でも2人分の食事はないだろう?コンビニに寄ろうか」
「そうしよう」
 2人はようやく来た電車に乗り込み、ドアの近くに並んで立ちながら窓に映る自分たちの姿を見た。
身長差のせいか、なんともアンバランスな2人だ。

「昔は同じ背丈だったのに、僕は背が伸びなかった」
 健がぼやくと光が口角を上げて微笑んだ。
「これから伸びるんだよ」
「もう高3だよ?無理っぽい。はー、一緒にいると差が目立つなー」
 健がぼやくと光はうなづく。
「これからも、ずっと一緒だよ」
「…ここで言うなよ。マジで空気が読めないんだから」
 すると「ごめん」と光が頭を下げる。
「そこまでしなくていいから。もう、困った奴だ」
 健は吹き出しながら幸福感に浸った。
眠れないほど悩んだ時間は長すぎたが、やっと思いを伝えることができ、2人の絆が強くなった気がしたのだ。



 電車を降りると2人はコンビニに立寄ったが、空腹ではないのでペットボトルのお茶を買い、健の家に向かった。
「いつも歩いている道なのに、なんか緊張する」
 光の言葉の意味が健にはわからない。
 家に着くと健は「あがってよ」と光に声をかけ、部屋に入ると上着を脱いでハンガーにかけた。
「光も脱げば?暑いだろう。すぐにエアコンを入れるけどさ」
「健、俺はさあ…」
 口ごもる光に、健は首をかしげた。
「どうかした?」
「あのさ」
 光はつぶやきながら健に歩み寄り「抱きたいんだ」と急に健を抱き締めた。
「はっ」
 健が見上げると光は苦しげな表情を浮かべている。
「どうし…」
 いいかけて健は言葉を呑んだ。
おなかに当たる固いものに気付いたのだ。
「こ…」
「ごめん!」
 光は健を抱き上げるとベッドに運び、そして圧し掛かった。
「わ!」
 髪を乱された健はシーツの上で、ただ光をながめて途惑う。
「ここ、触れる?」
 光は健の手を取って自分の股間に当てた。
健はその固いものに指が触れると感電したかのようにびくりと肩を震わせた。
「恥かしいけど、健を想うとこうなっちゃうんだ」
「僕も、そうだよ」
 光はそれを聞いて思わず健の股間に触れようとして「こら」と健に止められた。
「触るなよ。…零しそうなんだから」
 この声に光の箍が外れた。
「健!」
 名を叫びながら健を抱き締め、股間を擦り寄せていく。
「や、ちょっと!光、当たっているから!」
 健が逃れようと光の背中を叩いても、光は抱き締める力を緩めない。
そればかりか頬を赤くしている健の目をみて穏やかに微笑むと唇を重ねて吸った。
体が触れ合っている、そう感じた健は抗うのを止めてキスを受け入れた。
「…は、光」
 体の芯をくすぐるようなキスに健は焦らされたように熱くてたまらない。
すると自分の股間が苦しくなっていき「はあ、はあ」と息が荒くなる。
「ううん、光」
 火照った健に気付いた光は身を起こして健のベルトを外した。
そしてぐいっと力任せにボトムを下ろすと下着の中をまさぐり、勃起した茎をつかんだ。

「あ、嫌だ!」

 健の脳裏に加賀にされた手コキが浮かぶ。
まるでトラウマのように健は怯え、体が震えた。

「健?大丈夫だよ、俺だから」
「は…」
 光は健が加賀に何をされたのか知らないはずだ。
いつも勝気な健が怯えたので、セックスが怖いことではないと言いたかっただけだろう。
健はそれでも自分の気持ちを察した光に感謝したくなった。
しかし普段は空気すら読めないのにと、健は苦笑した。

「なんで笑うの?」
「もう、なんでもないよ。光が優しいからさ、僕なんかでいいのかなって」
「健が、いいんだ」
 そして光は健の茎を扱き「あ・あ…」と健を喘がせる。
「も、嫌。そ、そんなところまでっ…」
「健、もっと早くからこうしたかった」
「光?…あ、ううん!や、やっ、ぐ・ううん!」
 健が体をぐんと反らして爆ぜた。
「は、はあ…」
 手足をだらりと伸ばして息を整えるが、体中が熱い。

「は、キツイ…」
 荒い息を吐きながらシーツを手繰り寄せて少しでも冷えた場所を探す。
光はその仕草を見ながら健の下着を脱がせた。
すっかりあらわになった下半身を恥じて、健が膝を折って股を閉じると光が手で割って入る。
 精を放った茎が力をなくしている様を見ながら、光は健の秘部に指を入れようと試みた。
「は!光、なにを?」 
 冷たい感触と痛みを感じて健が叫ぶと、光は思わず指を抜いた。
「ごめん、入れたいんだ。どうしても1つになりたい」
 そんなことを言われて拒否ができない。
健は「したことがないからわからないんだけど」とぼやくのが精一杯だ。
「俺もそうだよ。でも挿入したいんだ」
 挿入を欲するのは男の性だ。
健は「うん」とつぶやくと開脚して「これでいい?」と聞いた。
「僕も、1つになりたい」
 その声に光はうなづいて秘部に指を入れて徐々にかき回し始める。
健は痛みをこらえてシーツをつかみ、下唇を噛んだ。
「痛かったら俺を噛んで」
 光が片手で上着をずりおろしてシャツ姿になり、肩を健の手が届くように近づけた。
「噛めないよ」

「もっと刺激が欲しいんだ」

 光のつぶやきに健はひるんだ。
そして力の抜けた体を光が撫でて、自分の茎を取り出した。
「は。でかっ…」
 自分のものより大きい茎を見せ付けられて、ますます健がひるむ。
「そんな大きいの、入らないよ!」
「入ると思うけど」
「なにを根拠に…あっ!あ、こら!く・ううん!」
 光は健の秘部に茎を挿入し始めたのだ。
健はなにかが自分の体を裂こうとしているかのような痛みを覚え、シーツを叩いて抗った。
しかし光は腰を揺らしながら茎を進め、「キツッ…」とぼやく。
「健、もっと力を抜いて」
「やだっ、無理だって」
「させてよ、健。もう戻れないんだ」
 光は健の腰をつかんで自分のほうにぐいと押すと「ぐっ!」と健が悲鳴を上げた。
「はあ、入ったよ、健」
「…そう」
 健は額に汗を浮かべている。
その汗を光は手で拭うと「動くよ」と言って微笑んだ。

13話に続きます
2009.05.28 mellow・11
 バスの中でショートカットのJKが5.6人の男に囲まれてスカートをまくられ、股間を撫でられている。
JKが助けを呼ぼうと叫ばないように男が口にハンカチをかませて、慣れた手つきでシャツを脱がす。
そして露出した胸を男たちがこぞって揉みまくる。
いつの間にか外されたブラジャーが足元に落ちていた。

「接写ばかりで、たいしたカメラマンだなー」
 呆れた健が立ち上がった。
「な、いいだろう?この動画」
「どうして僕を誘うんだ!こんなもの昼間から見たくもない!」
 健が怒ると動画を見ていた連中が肩をすくめた。
「直江が元気になるようにと思ったのにー」
「その気持ちだけもらっておくよ。ありがとう。次は本当に猫の動画を見せてくれ」
 
 これで2度も『猫の動画』と嘘をつかれてしまった健がため息をつきながら席につくと、振り向いていた光と目が合った。
 どうしたものかと健は苦笑いで手を振ったが、光はなにもせず、ただ健を見ていた。
責めているのか、それとも健という人間を理解できなくなったのか複雑な表情を浮かべている。
「…はー。困ったな」
 その独り言を聞いた隣の席の女子が「悩み事ー?相談に乗ろうか?」と無責任なことを言う。
ただ閑なんだろうと、健は首を振って相手にしなかった。
 
 1人の友人を失ったと健は思った。
しかもそれは大事にしてきた幼なじみだった。

 今日までのことを思うと寂しくて泣けそうだが、意外にも涙が出なかった。
光に告ってふられる覚悟はとうに出来ていたらしい。
強くなったものだと、健はまるで他人事のように落ち着いていた。



 放課後になり、クラスメートが帰りだすと健は光に呼ばれた。
「何の用事?」
 ごく普通に話を振ったつもりだが、光が首をかしげた。
「返事を待っていたんじゃないの?」
「は?返事?」
 健は目を丸くした。
あの告白の返事なんてありえないと思っていたからだ。
しかも振られたと受け止めている、これ以上なんの言葉があるのだろう。
「俺は、健に担任と付き合って欲しくない」
「はー。その話か。それは終ったから気にしないで」
 健が手を振ろうとしたら光が「まだ話がある。俺は返事をしていない」と言い出した。
光は真面目なのだ、返事をしなければ健に対して失礼だと思っているのだ。
「俺は、健が好きだよ」
「…うん。聞いたよ」
「違うんだ。健と同じ感情の『好き』だと思う」
「はあっ?」
 健は途惑って二の句が継げない。
 しかも教室内にはまだ帰り支度途中のクラスメートがいる。
聞かれたらいけないと、健は光を廊下に連れ出した。

「結局エアコンはまだ直らないんだなー」
 健はわざと世間話をして、廊下を歩く子たちに注目されないよう気遣った。
しかし空気を読めない光は「そうじゃなくてさ」と続けようとする。
 ここもダメだと、健は屋上に光を連れて行った。


 屋上に立つと吹き抜ける風が涼しくて、うだうだと悩んでいた心が洗われるようだ。
健は深呼吸をして「光は一時の感情に振り回されているんだよ」と言いはじめた。
「僕が光を好きだと言ったから、混乱しているんだろう?ごめん」
 しかし光は首を振った。
「混乱していないよ。俺は気がついたんだ」
「何に?」
「側に健がいないと困るんだ。また俺の知らないことを1人でフォローしそうで、そんな気遣いはしなくていいのに…そう思いながら頼ってしまう俺自身が情けない」
 光は混乱していると健は確信した。
こうなると言いたいだけ言わせないと、ますます混乱して1人相撲になってしまう。
「健じゃなきゃダメなんだ」
 そう言われても健は腕組をしたまま動けない。
目線は光を見れずに屋上のコンクリートの地面に注いでいる。
 光は自分の思いに気付くような子ではないと思っているからだ。
「俺は、昔から健が好きだった。これは友情だと思っていたけど恥かしいことがあったんだ」
「は?」
「健が出てくる夢を見て…その、夢精したんだ」
 こう言われて言葉をすぐに返すことができる人が果たしているだろうか。
さすがの健もこれには顔が熱くなり、思わず手で扇いだ。
「光、それは…子供じゃないんだから…」
「俺、健が好きだよ」
 光が1歩、また1歩と健に歩み寄る。
「だから健に告られて嬉しいんだ。俺たち、同じ気持ちなんだよ?」
「は、同じ気持ちって…」
 すると光が膝を折って、赤い顔をした健に目線を合わせた。
「キスしたい」
「そんなの、承諾がなくてもいいんだよ」
 健は目を閉じて顎を上げた。
そこに光の唇が重なる。
しかし光は体勢がきついのか・もしくは不慣れなのか舌を入れてこない。
 健は薄目を開けて光を見た。
こんなに近くで光を見たことがない気がするのだ。
見れば見るほど男前で、健は自分を好きだと言うのはにわかに信じられなかった。
「…健」
 ようやく離れた唇が濡れていた。
光も舌を入れたかったのだ、しかし体勢が苦しくて出来なかったのだろう。
健はそれと知ると「ちゃんと立って」と促した。
「じゃあ、健も俺を見てくれよ」
 健は誘われるままに光を見上げると、光が健のお尻をつかみ、つま先立ちにさせた。
「凄く好き」
 光はそう言いながら再び健を抱き締めた。
「誰の誘いにも乗らないで欲しい、俺の側にいてくれたらそれでいいんだ」
 
 その言葉を健は夢でも聞いたことがなかった。
ランドセルを背負って一緒に通学路を歩いた日々、そして堅苦しい学ランを来てカバンをたすき掛けにしていたあの頃。
それに受験する高校が同じだと知った日、そして今のこの時間が健の脳裏を駆け巡る。

「ずっと好きだった!」

 健は光の背に腕をまわして、思いのたけを口にした。
そしてこの激情にとらわれ、視界が歪んできた。
「は…もう…光が見えないよ」
「ここにいる。側にいる」
 互いの体温を感じながら、しばらく2人は離れようとしなかった。

12話に続きます
2009.05.28 mellow・10
 健は担任という権力を行使して欲望のままに自分を捕まえておこうとする加賀が許せない。
元は自分を好きらしい加賀に交際を申し込まれて興味を持ち、承諾した自分が悪いのだが、
まさか手コキまでされるとは思わず、自らの思慮の甘さが悔しい。
 だからこそセックスは拒んだ。
体の関係を持つつもりは毛頭なかったからだ。
 今では加賀が憎らしい。
光を委員長から降ろすつもりの加賀に、一言いや二言言わなければ気が済まない。
鬼の形相で廊下を走る健を誰も咎められない。
なにごとかと皆は遠巻きに健を見るだけだった。

「失礼します!」
 健は大きな声で挨拶をして職員室に入り、まっすぐに加賀の元に行った。
そこには健の姿を見て驚く光と、椅子に腰掛けた加賀がいた。
「直江!」
 加賀が嬉しそうな声を上げ、椅子を回して体ごと健に向けた。
「体調はもういいのか?心配したぞ」
 加賀が妙に親しげに甘い声で聞いてくる。
「はあ。もう平気です」
 健はこうして会話をするだけでも腹が立つ。
苛立ちを隠せずにいる健に、光が肩を軽く叩いた。

「どうしたんだ、そんなに息を切らして。何をしに来たんだ?」
「光が委員長を降ろされるって聞いたんだ。それの抗議に来た」
 健の言葉に光は「抗議って。先生が決めたことだから」となだめようとする。
「俺は構わないけど、健の負担が増えるからどうだろうと疑問には感じたよ」
「…わかっていない」
 健は光を見上げてつぶやいた。
「僕はいつも側にいるのに、光はわかっていない」
「どうして?どういうこと?」
 光が慌てだすと健は「任せろ」と言って制した。
そして加賀に向き直ると息を深く吸い込んだ。

「委員長は光だ。これは譲れない!」

「それが言いたくてわざわざここに来たのか?私が了解するとでも思うのか?」
「…縛らないといいましたよね!」
 この健の言葉に職員室にいたほかの先生方がにわかにどよめきだした。
「健、それって」
 いくら鈍い光でも、なにかを感じたようだ。
「僕は先生の言うとおりにはなりません。他を当たってください」
 そして健は光を連れて職員室を出ようと、向きを変えた。
そのとき、加賀の手が健をつかまえる。
「離せよ!」
「私の気持ちを知りながら、どうしてそんなに冷たいんだ?」
 加賀はすがりつくような目で健を見る。
「昨日のことが気に障ったなら謝る、少し急ぎすぎた。だから…」
「先生。他を当たってくださいと言いましたよ!」
「じゃあ、どうして付き合ってもいいと言ったんだ!」
 加賀は健の腕を撫でている、この行為だけで健はぞっとした。
しかも光がそれを見て、眉間に皺を寄せ不愉快そうな表情を見せる。
「先生が変態だと知らなかったからですよ」
 健は加賀の腕を振りはらった。
「直江、私が変態だって?」
「とぼけないでください。昨日の行為は暴行です。警察に行ってもいいんですよ?」
 健はそう言い切ると、光を連れて職員室を出た。

 すると後方から「加賀先生、今の話はなんですか?!」「あなた、生徒に手を出したんですか」と、
騒ぎ出す教師の声が聞こえてきた。

「健、まさか担任と…?」
 光が小声で聞いてきた。
「もう終ったことだ」
 健が一言で片付けようとしたら、光が「ちゃんと話してくれ!」と問い質す。
「側にいるのに俺はなにもわかっていないって、健は言ったよね。だけど言ってくれないとわからないことがあるんだ」
 光が珍しく声を荒げた。
「今だって『もう終ったこと』の一言で片付けようとしているけど、話してくれよ!」
「…光は知らなくていいんだよ。僕のミスなんだから」

「またそう言ってはぐらかす。距離をとらないでくれ」

 光は言いながら興奮してしまったのか胸を抑えている。
「あのさ、光…」
 健がようやく口を開いたとき「俺たち、幼なじみじゃないか」と光に抱き締められた。
「く、くるしっ…」
 光は力をこめて健を抱き締めていた。
おかげで健は光の胸板に圧迫されたようで呼吸が苦しい。
しかし光はそれに気付かずに顔を伏せ、健の髪の中に顔を埋めた。

「健は俺にとって特別なんだ。健のことなら何でも知りたい。はぐらかされるのはごめんだ」
 その声に健は光の腕の中でもぞもぞと動き、ようやく顔を上げると息苦しさに頬を染めていた。
「なあ、健」
「光。僕が光を好きだと言ったらどうする?」
「え。幼なじみだから好きなのは当然だろう?」
 健は思わず吹き出して「その『好き』じゃないんだ」と苦笑いをしながら言う。
そして光を見上げたまま、腹を決めた。

「僕はずっと光が好きだった。だけどこんなことを言ったら光は困るだろう?
だから…担任と付き合おうかと思ったんだ。光に似たところがあったから。
でも光の代わりなんて、どこにもいないんだ。僕はようやくそれを知ったんだ…」
 
 言い終わると健は「離してくれ」と光に言い、自ら光の胸を押して体を離した。
「ごめんな?僕なんかに好かれちゃって、気分悪いよな」
 健はうつむいたままそんなことを口走り、「教室に戻る」と言って歩き始めた。
その健を光は追えない。
健の告白を受け止めきれずに、ただ呆然としてしまっていた。

11話に続きます
2009.05.27 mellow・9
「JKよりも女子中学生だよなー。胸はないけど初心な顔をしてやることが大胆」
「それを言うならOLさんだろー?制服姿がたまらん」
「やっぱ、ストッキングだよなー」
 おかしな会話が聞こえてきて健が目を開けると見慣れない天井が見えた。

「お。起きたか、直江」
「心配したぞー」
 なんとハメ動画を見ていた連中が、健の寝ているベッドを囲んでいた。
「…どこ?」
「保健室だよ。委員長がここまで運んできたんだぜ?」
「光が?」
 健は飛び起きたが寝ていたせいなのか頭がクラクラする。
「無理すんなー。大丈夫だよ、直江は俺たちが守ってやるからさー」
「は?守る?」
 聞き捨てならない言葉だ。
「本当は委員長が側につきたかったらしいけど、クラスをまとめる役目だからな、俺たちが代わりに来ているってこと」
「…誰にも咎められずにエロ動画を見たいだけだろう」
「それもあるなー」
 連中は「あはは」と笑うが、ふと真顔になる。
「うちの担任、変態みたいだから気をつけろよ?」
「どうして知っているんだ?」
 健が聞き返すと「あ、知ってた?」と皆が目を見開いた。

「直江をここに避難させたのは正解だったな、さすが委員長」
 そうこぼすと「とんだいきさつがあるんだよ」と健の目を見た。

「直江が倒れてからすぐに担任が来てさ、どうしても直江を家まで送り届けるってきかないんだ。
それも委員長から直江を取り上げようとしながらだぜ?
態度が尋常じゃないからさ、いつもはおとなしい委員長も疑ってかかって直江を抱えて守ったんだ」
 そんなことを聞かされて健は頬が熱くなってきた。
「で、委員長が直江を保健室に連れてきて、俺たちに『悪いけどここにいて欲しい』って頼むからさ、
まあ、俺たちも担任の執着ぶりがおかしいと思ったからここで見張りをしていたってわけ」
 
 胸を張る連中に、健は頭を下げた。
「ごめん、ありがとう」
「わー。気の強い直江に謝られると気持ちが悪いなー」
「なんだよ!」
「あはは、そうでなくちゃ」
 連中は手を叩いて喜ぶが「気をつけろよ、マジで」と忠告してきた。
「俺たちは女子を見て喜ぶけどさ、あの担任は直江を狙ってる」
「これだけ可愛い顔をしていたら気の迷いもあるかもしれないけどさ、おかしいよ加賀の奴」
 連中が自分を心配してくれるのはありがたいが、健は自分が倒れたことで光に迷惑がかかっていないか不安になった。
「委員長は大丈夫かな」
「ああ、その委員長だけど交代だってさ」
 連中の言葉に健は耳を疑った。
「え、誰がやるんだよ」

「直江だよ。担任が決めた」

 暫くの沈黙が保健室を包み、誰も声を出せなかった。

「直江のほうが適任だって担任が言ったんだよ、俺たちはそこまで聞いて保健室に来たからその後はわからない」
 健は加賀が自分目当てで自己中心的な人選をしたと感じた。
「委員長なんて引き受けられない。光が続投するべきだ」
「あのさー、直江。おまえのフォローあっての委員長だぞ?それでもいいのか?」
 連中も健のフォローに気付いていたのだ。
「僕がフォローしておさまるなら、これからも続ける」
「なんで?」
「光は僕の大事な幼なじみだからだよ!空気が読めないし統率力もないけど、
その分は僕がフォローするんだ」
 健の力強い言葉に、連中は「そうか」とうなづいた。
「じゃあ応援してやるよ。直江もそうだけど委員長を・な!」
「ありがとう」
 健がはにかむと連中が「おお」と低い声を出す。
「なんだよ、気色が悪い」
「直江が女子に人気があるの、わかる気がした」
「うらやましー」
 思わず皆で笑うと、健は気持ちが少し軽くなった。
そして担任と一戦交える気力が沸いてきた。



「直江ちゃん、お帰りー」
 笑顔を浮かべた女子に出迎えられて健は教室に戻った。
「直江ちゃん、とんでもないニュース!直江ちゃんが委員長だって!」
「あ、皆から聞いたよ。その役目はお断りする」
「でも担任が決めたんだよ?大丈夫?」
 女子が不安がるが「委員長は光だから」と微笑んで見せた。
しかしその光が見当たらない。
「あのさ、光は?」
「担任と一緒に職員室に行ったよ?委員長降任だから話があるって言われてさ」

「冗談じゃない!」

 健は職員室を目指して駆け出した。
「おい、直江!病み上がりなんだから無理をすんな!」
「直江ちゃーん!」
 皆の声を背に受けながら、健は走った。
どうせ担任に暴力を振るった身だ、このまま決着をつけてやる・その思いだけで健は廊下を走りぬけた。

10話に続きます
2009.05.27 mellow・8
 目を閉じて唇を突き出した健に、加賀はこの上ない喜びを感じた。
そして健の顎を指でくいと上げ、唇を重ねようとしたそのときに、健が加賀のみぞおちを殴った。
「うっ!」
 体を折り曲げる加賀を見て健は立ち上がり、ドアを開けて駆け出した。
精液のついたボトムを隠すべく、上着を脱いで胸に抱えると歓楽街を駆け抜けていく。
 この夜の街を支配しているキャバ嬢やホストたちはこんな光景を見慣れているのか、
もしくは校則違反で捕まった生徒と思ったのか「早く逃げろよー」と笑顔で手を振っていた。
 健はこの街に来たことがないが、車の中から外の景色を見ていたので、記憶を頼りにして無事に歓楽街を抜けた。


「はあ、はあ、は…」
 横断歩道の前で体を折り、膝に手を当てて荒い息を吐く健を、サラリーマンたちが珍しそうに見ている。
「こんなところに子供が来るもんじゃないよ」
 誰かの声がして、健は『好きで来たんじゃない』と心の中で反論する。
濡れたボトムが気色悪いが、しかし相手を甘く見ていた罰だと健は項垂れた。
 やがて信号が青に変わったので健は身を起こして虚勢を張り、姿勢を正して歩き始めた。
しばらく歩くと駅が見えてきた。
ようやく逃れられたと健は安堵して、ホームに入ってきた電車に乗った。


 健は家に着くと妙に寂しさが募り、1人では辛いと感じた。
こんなときに親がいれば虚勢を張るのだが、まだ親は帰宅していなかった。
時計を見るとまだ19時だ。
 耐え難い寂しさに任せて、健は携帯をつかんだ。
そして携帯を開くと着信が3件もあった。
見れば全部光からだった。
 健は今すぐ光に頼りたくなった。
だがしかし、担任の加賀と性行為をしたことなんて口が裂けても言えやしない。
よりどころのない寂しさと虚しさを感じて、汚されたボトムを洗濯機に入れると部屋着に着替えてベッドに横たわった。
 まったく、自分は何をしているんだろうと自分自身に毒づく。
セックスは愛情あっての行為であり、愛情がなければそれは性欲処理の虚しい行為だ。
「愛している」と加賀は言った、しかし強引にセックスに持ち込んだあたり、愛情はないだろう。
 健はふと加賀が自分の姿を隠し撮りしていたことを思い出した。
あれは単なる変態ではないか。
これ以上関わりたくないと健は背筋に寒気を感じながら思った。



 翌朝も快晴で日差しが一段と厳しかった。
健が家を出ると、なんと光が門の前で待っていた。
「おはよう、健」
「お、おはよう…どうしたんだ、光?」
「たまには一緒に登校したくてさ」
 今の健には光の笑顔が最大の癒しだ。
「子供の頃みたいだな、いいよ、一緒に行こう」
 建もつられたように笑顔になり、2人並んで歩き始めた。

「昨日、電話したけど」
「あ、ごめん。ちょっと折り返せなくて」
「なにかあった?そういえば今日の健はやつれて見える」
「えっ?」
 光に洞察力があったとは驚きで、健は目を見張った。
健は光を空気も読めない・とんでもない子だと思っていたのだが、どうやら違うらしい。
「鏡を見てみなよ、目が充血しているし頬がこけてる」
「それは言いすぎ」
 健は朝起きたときに自分の顔は確認している。
目が充血しているのは事実だが、頬はこけていないはずだと健は思う。
「僕の心配なんかしないでいい。委員長はクラス全体のことを見ていればいいんだ」
「それがなかなかできないんだよなー」
 光がため息をついた。
「俺、やっぱり委員長に向いていないよ」
「情けないことを言うなよ。頭のいい光が選任されたのは当然だ」
 選んだのはクラスの全員ではなく担任なのだが、健はそこまでは言わない。
「俺、知っているんだよ」
「は。なにが?」
 すると光は前屈みになり真剣な眼差しで健を見た。

「健がフォローしてくれているってこと」
「…は」
 
 知られたくないことだった。
健は光のフォローをすることが光のためだと思い、黙っていたのだ。
それなのに本人が知ったとは、誰かが話したのだろうか。
「僕はなにも…」
「担任から聞いたんだよ、健が気配りしているからこのクラスはまとまるんだって」
「加賀?」
 建は昨日の恐怖を思い出して身震いをしてしまう。
「え、どうした?健?」
「なんでもないよ、平気。で、担任が言ったことなんてあてにならないよ。現に僕は思ったことを口に出すから、そんな奴がクラスをまとめるなんて出来ないだろう?」
「…そうかな」
 光はまんまと健に言いくるめられた。
しかし担任には2度とそんなことを言わないように口止めしなければならない。
 顔を見るのも嫌なのだが、光がらみなので健は担任に直接会うことにした。


「ホームルーム前になんの用事?」
 加賀は不機嫌そうに健を見た。
「謝りに来たのか?」
「そうではありません。光に色々吹き込まないでください」
「光?委員長のことか」
 加賀は興味が湧いたのか、健の目を見た。
「僕がフォローしているとか、2度といわないでくださいよ」
「事実じゃないか。どうしていけない?」
 健が言葉につまると、加賀は健の手首をつかんで手を撫でた。
「えっ?」
「滑らかな肌だなー」
「触らないでください!」
 健は加賀の手を振り切った。
「変態ですか、先生は」
「失礼だな、まっとうな人生を歩んでいるよ」
 健は「わき道にそれています」と断言した。
すると加賀は健をあざけるように鼻で笑う。
自分を見て顔を赤くした担任はもはやただの変態に成り下がっていた。
 こんな態度を取るのは、昨日逃げたせいかと健は不愉快になる。
一瞬でも光と似ていると思ったことが自分でも許せない。
光の代わりなんて存在しないのだ。

「付き合うって言ったくせに。直江はあいつが好きなのか」
 加賀は急に勢いをなくし、顔を曇らせて寂しそうな表情になった。
「はい」
 健は正直に答えた。
「光は大事な幼なじみです。あいつを馬鹿にする奴は、たとえ先生でも許さない」
「私が・いつ馬鹿にした」
 のらりくらり話す加賀に健の怒りは沸点に達した。
加賀のデスクを拳でガツンと叩き、加賀をにらみつけた。
「僕がフォローしていると本人に言ったじゃないですか!失礼ですよ!」
「しかし真実だ」
「知らなくていい真実はあります」
 そして加賀の頬を打つと「昨日の分です」と言い放つ。
何も言わない加賀の前で「失礼しました」と頭を下げて健は職員室を後にした。
教師を殴るのは許されない。
恐らく自宅謹慎を言いつけられるだろう、それを覚悟の上で健は行動をしたのだ。

 何があろうと自分がいる間は光をフォローする。
それが健の決めたことだ。
 恋人になれなくてもいい、今のこの状態でいい、健はそう思いながら教室を目指して歩いたが、
頬に何かが流れていく。
「直江ちゃん!」
 廊下にいた女子たちが健の異常に気付いて駆け寄ってくる。
「どうしたの、直江ちゃん」
 その騒ぎに光が気付いて廊下に出てきた。
「健!」
 光がハンカチを取り出して頬を拭った。
「女子は教室に入ってくれ、こんな姿を見せたくないんだ」
 珍しく指示をだした光に圧倒されて、女子はわらわらと教室に入っていく。

「どうした、何があった?」
 聞かれても健は首を振るばかりだ。
とても言えやしない、それでも光は健の気持ちを読めずに「なんでも話してくれ」と言う。
「手が赤いじゃないか!どうしたんだよ、健!」
 親身になって聞く光に、健は「いろんなことがありすぎて疲れた」と答えると、そのまま光に体を預けるように倒れてしまった。


9話に続きます
2009.05.27 mellow・7
 健の脳裏にはハメ撮りの娼婦めいた女子中学生の画像が浮かんだ。
華奢な体を自慢げに揺らして、悦に入った視線を送る姿だ。
あれは明らかに援助交際で、金をもらっているから裸体を投げ出したのだろう。
そこに愛情はない、ただ湧いて出るような欲望の処理だ。
健はまさか自分にそんな危機が迫るとは予想もしていなかった。

「先生、淫行ですよ」
 健は冷静を装いつつ、担任の加賀をちくりと刺した。
しかし彼は首をかしげる。
「直江は18才だろう?淫行にはならないよ」
 
 健は『やられた』と舌打ちをしそうだった。
たしかに淫行条例が適用されるのは18才未満の青少年と淫らな行為をした場合だ。

「僕はセックスをしたくありません!」
 はっきりと断るが、加賀は「なにを今更」とぼやいた。
「じゃあ、なぜ私と付き合うと決めたんだ?」
「先生が僕のことを好きだからですよ」
「直江に口では勝てないな」
 赤信号で車を停めて、加賀が健に向き直った。
「私に好意をもってもらいたいんだ。そのためにもセックスをしたい。これ以上言葉を重ねる気はない」
 そしていきなり健のボトムの上から股間を握った。
「うわっ!なにをするんですか!」
 健が思い切り手をはねのけると、加賀が忍び笑いをする。
「緊張しているのか?ここが萎縮しているぞ、いつもの直江らしくない」
「触らないでください!」
 健は怒鳴りながらも恐怖を感じていた。
まさにとって食われる空気だ。
健はシートベルトを外して逃げようとし、とっさに動いたのだが車は青信号で発車してしまった。
いくら勝気な健でも走行する車から飛び下りる勇気はない。

 万策尽きたとばかりにシートにもたれると「腹をくくったのか」と加賀が横目で見る。
「その生意気そうな顔も好みなんだ。いつこの手に抱けるか、ずっと思いを募らせていたんだ」
 相手は違うが健も似たようなものだ。
光に対しての気持ちは友情を越えて恋情になっている。
告る勇気がないだけで、健は自分よりこの加賀が場数を踏んでいると改めて思わざるをえない。



 車はとあるホテルの駐車場に入り、ようやくエンジンが止まった。
ここまで来たらまな板の鯉だ、このまま付き合わざるを得ないだろう。
諦めた様子の健を見て、加賀が腕をとった。
「私は縛らないから安心してくれ」
「はっ」
 その意味がわからず、健は加賀を見上げた。
「こまめに連絡をして欲しいとか、休日は会いたいとか、そんなことは言わないよ。付き合うといっても自由にさせてあげる」
 加賀は矛盾している。
今この瞬間こそ『縛り』ではないだろうか。
健はそれと気付き加賀をにらむが、加賀は健を見ていなかった。

 
 ホテルの一室に入ると、大きなベッドとジャグジーに健は目を丸くした。
湧いたジャグジーから湯気が上がっているのを遠めに見て、体が動かない。
「直江」
 名を呼ばれたせいかぞっとして健が肩を抱いたとき、加賀が健を抱き上げてベッドに運んでしまった。
 そして加賀は圧し掛かると健の前髪をかきあげて「可愛い」とつぶやく。
「先生、触らないでください!」
「触らないと何もできない」
「だから・したくないんです!」
 しかし唇が加賀のそれでふさがれた。
舌が健の中に入りたがり歯列を舐めるが、健は強情に拒んだ。
健が拒んでいると知ると、加賀は健のわき腹をくすぐり腰を撫で上げた。
「あっ」
 感じてしまった健の口内にようやく加賀の舌が入り込んだ。
それを押し戻そうと健は試みたが、かえって絡められてしまい、唾液が流れ落ちていく。
「ああ、キスだけでも感じてしまう」
 加賀は唇を拭わずにそのまま健の耳たぶを甘噛みし、首筋を舐めた。
そのたびに健は指先を震わせて「嫌だ!」と叫ぶが、火のついた加賀を止めることはできなかった。
 加賀は健のボトムに手を伸ばしジッパーを下ろすと中をまさぐり、健の茎を取り出した。
「せんせ…!」
 屈辱を感じて健が顔を真っ赤に染めるが、加賀はその逆に悦に入った表情だ。
「これを見たくて、何ヶ月もチャンスを狙っていたんだ…」
 まるで小鳥でも愛するかのように加賀は茎に頬ずりをして愛でている。
この光景に健はぞっとして腰がひけた。

 しかし加賀は性欲に取り付かれていた。
自らの勃起した茎を取り出すと、健のそれと合わせて手で扱きだす。
「わ、あああ!」
 初めての行為に健がベッドの上で叫び声を上げる。
「な、なにをしているんですかっ…嫌だ、ゴリゴリするっ」
「早く起たないかなー。直江の茎」
 嬉しそうに扱く加賀の表情ときたら、至極満悦の様子だ。
「こんなに可愛い…全部私のものだ」
「先生のものじゃなっ…あ、ああん!やだ、嫌だ!」
 健の嫌がる声すら加賀を刺激するらしい。
興奮した加賀は耳まで顔を赤く染めて前屈みになり、健の茎の先端に舌を這わせるので、健は不本意ながら勃起してしまった。
「よし、一緒にイこう」
「やだ、絶対にやだ!」
 健が抗っても相手は大人だ。
いくら拳で叩いても揺るがないし、それどころか健が叩くたびに嬉しそうな顔をする。
「まるで子猫の相手をしている気分だ」
 加賀は容赦なく健と自分の茎を扱き続け「はあ、は」と荒い息を健にふりかける。
健も相当息が上がっているが両手で口をふさぎ、喘がないように自分を保っていた。
「ああ、早く・早く1つになりたい」
 加賀の声にぞっとした衝撃で、健は爆ぜた。
それを後追いするように加賀も爆ぜ、互いの服に飛沫がついてしまった。

「ああ…」
 健は自分が愚かだったと思う。
加賀を甘く見ていた自分が情けないと、頭を抱えた。
「気持ちがいいか?直江」
 健は勘違いをしている加賀の頬を強く打つと立ち上がろうとしたが足元がふらつき、ベッドから転がり落ちた。
「いたー…」
 しかしこうしてはいられない、早く逃げなければと体を起こすが大人の腕が伸びてきた。
「直江、愛しているよ」
 この囁きにさえ健は恐怖しか感じなかった。
襟首をとられ、強引に体を引き起こされてしまい、健は下唇を噛みながら覚悟を決めて目を閉じた。


8話に続きます
2009.05.26 mellow・6
 画面いっぱいに女子中学生の裸体が映り、そこに男の腕が伸びていく。
女子中学生は怖がることもなく、むしろ微笑みながら待ち受けていた。
まだ胸も平に近く、興奮したのか乳首だけが立っているが、その細い体に似つかわしくなく浮かべる微笑は娼婦のようだった。
「ヤバイ画像」
 健は立ち上がると「捨てたほうがいいんじゃない?」と画面に見入るクラスメートに忠告した。
「直江、おまえも見ておいてそれはないだろう」
「そうだよ、せっかく見せてやったのに」
「猫の動画だって言うから見に来たんだよ!この嘘つき」
健が怒鳴ると画像を見ていた男子達が項垂れて静かになった。
「もう信用しない」
「な・直江ー!頼むからこのことは黙っていてくれよ」
 すがるような言葉に「関係ない」と健は切り捨てた。
 
 放課後の健は忙しかった。
担任の元に行く前に心のうちを光に話そうと思ったのだが、すでに光が担任に日誌を届けに行ったあとで、これでは話ができないと職員室の前で光の出待ちをした。

「直江ちゃーん、どうしたの?」
 ミニスカートをひるがえした女子達が興味深げに健に歩み寄る。
こんなときに女子たちにつかまるなんて、今日はついていないと健は思う。
「なんでもないよ、早く帰れ」
「ほらねー。私のいったとおり」
 得意げに胸を張る1人の女子に、健は「は?」と聞き返した。
「直江ちゃんのほうが委員長に向いているのよ。なんだかんだ言っても統率力があるし」
「光が適任だよ。変なことを言っていないで帰れ!」
「きゃー。怒られた」
 
 女子達が騒ぎながら去っていくのを見て、健は安堵した。
あんなことを光に聞かれたらどうフォローしていいものかわからないのだ。
 健の心配をよそに、光は担任と話しこんでいる、そして光は2回も頭を下げていた。
またなにか責められたのかと健は下唇を噛んだ。
 委員長と言う立場でも、人間のすることだからミスもあるだろうし見過ごしてしまうこともあるだろう。
特に、光だ。
空気を読めないしクラスをまとめることも出来ない。
そんな子に説教をするのは筋違いだと健は苛立った。

 数分後に光が職員室から出てきたので健は「光!」と呼び止めた。
「あ、健!待っていてくれたのか?」
 嬉しそうな笑顔を見ると健は癒されるような気がした。
そう、この笑顔だ。
健には真似のできない穏やかな笑顔が、健は気に入っている。
「数分でいいんだ、少し話ができないかと思ってさ」
「話してくれるのか、ありがとう!」
 健は光と一緒に教室に戻った。
そこにはもう人影がない。
胸のうちを話すなら今だと・健は確信した。

 近場の席に座ると「昨日のことなんだけどさ」と健が切り出した。
「寂しいのは本当なんだ。光が委員長になってから、僕は光が遠い存在になった気がしたんだ」
「それは俺も同じだ」
 光はうなづき「同じことを考えていたんだ」と微笑んだ。
「これからはもっと互いのことを話そうよ。そうしたら寂しくない」
 まるで付き合い始めたカップルのようなことを光が言うので、健は吹き出した。
あの眠れない日々は光の一言で解決してしまったのだ。
 だが健はもう1つ・胸のうちを話さなければならない。
「あのさ…」
 言いかけて『好きだ』と告ったらどうなるんだろうと健は一瞬言葉につまった。
この友情を壊したくない、そんなブレーキをかけてしまい、健はうつむいた。
 しかし光は健の悩みに気付かない。
「子供の頃みたいに遊びに行こうよ、受験シーズン前に」
 その誘いに健は軽くうなづくしかなかった。
いざというときに光に対して勇気を出せない自分が歯がゆかった。

 一緒に帰ろうと言う光に「悪いけど先約がある」と断って、健は裏門へ走った。
当然、前言撤回するつもりだったが、担任の加賀は車の中で健を待っていて窓をノックしても「ん?」と問い返すだけで出てこない。
 仕方なく助手席のドアを開けると「早く乗れ」と急かされた。
「違うんですよ、先生!僕はことわ…」
「車を出すよ?」
 言葉を遮られたので渋々シートに座り、シートベルトを着用した。
それを見て担任が車を発車させた。
 見慣れた町並みを抜けながら、健は落ち着かない。
「先生、僕は話があるんです」
 隣の担任を見やると楽しそうに鼻歌を歌っている。
「あのですね、先生!」
「直江は誘いに慣れていない感じがするな」
「はっ?」
「今更お断りなんて聞かないぞ?私はもうその気なんだから」
 そして急にスピードを加速させると、車は明らかに歓楽街へ向かった。
「先生!なんのつもりですか」
 健が慌てると担任は平然と「セックスがしたいんだよ」とさらりと言ってのけた。

7話に続きます






2009.05.26 mellow・5
 校内には当然女子がいて、しかも男子の人数よりも多いと聞いていた。
廊下を歩けば男子よりも女子が目につくし、彼女たちは競って花を咲かすように日ごと輝いていく。
その姿はまるで熟す前の青い果実だ。
誰だってその姿に引き寄せられるだろうし、関心を持つだろう。

 しかし健は違っていた。
幼い頃からただ1人をずっと見てきたのだ。
 『好きな人はいる?』の問いに答えはある。

 だがだんまりを決め込んだ健に担任は目を細めた。
担任の指が健の髪をつまみ、焦れたように「付き合いたい」と繰り返す。

「どうして女子じゃないんですか」
 ようやく口を開いた健に担任が缶コーヒーを渡した。
健はそれを1口飲むと、「うん」とパンを飲み込んで担任を見上げた。
「可愛い女子、いっぱいいますよ?」
「私は女系家族で育ったせいか昔から女性が苦手でね、この年で交際したことがないんだ」
「へえ。じゃあ童貞ですか」
 率直な健の言い方に担任は吹き出した。
「それは卒業している。思い出すだけで吐きそうだが処理しておかないといけないからね」
「ふうん…」
 健は立ち上がり「ごちそうさまでした」と頭を下げた。

「直江、いつでもいいから返事を聞かせてくれないか?」
 慌てる担任に、健は首をかしげて「名前、何でしたっけ」と聞いた。
「加賀だよ。加賀総一郎」
「じゃあ加賀先生。僕は先延ばしにしたくないんです、返事は了解・でいいですか」
「あ・ありがとう…」
 感激したのか頬を赤く染める担任を見て、健はこれでいいとうなづいた。
幼い頃から好きな人は自分の気持ちに気付かない。
もっともそれは健が本人に言わないから気付かれないのだが、健はそこに思い当たらない。
側にいればやがて気付くと勝手に思い込み、何年も過ぎていた。
「直江?」
 担任に声をかけられて健は、はっとした。
好きな人のことを考えてしまい、泣きたい気分になっていた。
そんな顔を誰にも見られたくない、健は自分の頬を叩いて「ふう」と息を吐いた。
「あ、じゃあ僕はこれで失礼します」
 出て行こうとする健に担任は「放課後、家まで送るから」と裏門に来るように言った。
「定期があるから電車で帰りますよ」
「つれないな」
 担任が顔を曇らせて寂しそうな表情を見せるので、健は思いとどまった。
健は担任と光が同じ系列の人間だと感じたのだ。
どちらも手がかかって情けない、だけど器量は良い。
「わかりました」
 健は何を思ったのか担任の手に自分の手を重ね、職員室を後にした。
この行為はどうしてしたのか、健は自分でもわからない。

「あ、そうか」
 幼いころ、サッカーの試合前に友人達と円陣を組んで手を重ねあい「ゴー!」と気合をいれたものだ。
「でもあの人は勘違いをするだろうな」
 
 健は独り言をぼやきながら廊下の壁にもたれて涼んだ。
周りは女子ばかりだが、健はまったく気にしない。
むしろ女子のほうが健に興味を持って「どうかしたのー直江ちゃん」などと話しかけてくる。
「暑いからだよー」
「わかるー。教室は暑すぎ」
 1人の女子が健をからかうつもりでスカートの裾を少しだけ持上げた。
しかし健は気付かず、女子は頬を膨らませた。
「据え膳食わぬはなんとやらだよー」
「は?据え膳?」
 健は目を見張った。
どこに据え膳があるのかと辺りを見回すが、同じクラスの女子しかいない。
「直江ちゃん、女嫌い?」
「そんなことはないよ。中学のころに付き合った子がいたし」
 健がとぼけると女子は「あーあ」と力の抜けた声を出す。
「もう。直江ちゃんと付き合えるのはどんな子だろうねー?私たちが側にいても関心を寄せてくれないんだから」
 
 女子の追及に嫌気がさした健は暑い教室に戻った。
そして光を探すと自分の席で本を読んでいた。
見かけがホスト風情なので読書なんてそぐわない姿だ。
 健は光の席に寄り、下敷きで扇いだ。
「暑くないの?」
「あ。健…」
 顔を上げた光は額に汗を浮かべていた。
「暑いけどどうしても読みたい本だから我慢していた」
「…風邪をひくぞ?」
 健はハンカチを差し出した。
すると光は「自分のがあるから」とカバンを開けてハンカチを取り出す。
「汗をかいていたなんて知らなかった」
「熱中症になるよ?気をつけろよ」
 健の言葉に光がうなづいた。
「昔みたいだなー。ほら、中学のときに俺が熱中症で倒れたときのこと、覚えている?」
「ああ、覚えているよ」
「あのときも健が助けてくれたんだ」
 嬉しそうな笑顔の光に、健はタイミングが悪いと自覚しながらも「用事ができたから一緒に帰れない」と告げた。
「え、どうして」

「悪い、電話をするよ」
 健は軽く頭を下げるが、光は納得しかねる顔つきだ。

「やっぱり距離を感じるよ」
「えっ」
「なんか…健が遠くに行くような気がする」
 光は伏目がちに言った。
こんなとき、いつもの健なら「そんなことはない」と言い切るのだが、なにも言えなかった。
何故か担任と付き合うことに負い目を感じたのだ。
 光と似ているから付き合うのか?と自問自答していた。
好きな人は目の前にいるのに、とんだ遠回りを選択したものだった。

6話に続きます
2009.05.26 mellow・4
 衣替えが待ちきれない女子が上着を脱ぎ、ブラウスの袖もまくり上げて廊下に並んで涼んでいる。
ブラウスの袖から見える細い手首が目を惹き、しかもチェックのスカートがいつもより大胆にも短くなっている。
この一瞬しか見られないもののように、彼女たちは日影でも存在感を放っていた。
 教室に入らないのは窓辺からの日差しを避けているからだろう、
それにこの光景を見る限りでは教室のエアコンはまだ直っていない。
 健は業者はいつ来るんだと朝から苛立ちを覚えた。
暑いと苛立ちは増すばかりで集中力が欠ける。
またあの無力そうな担任を急かすしかないかとため息をついた。

「おはよー直江ちゃん」
 女子に挨拶されて健も「おはよー」と返した。
「なんか今日はスッキリしているねー」
「そうか?」
「いつもは眠そうなのに、今日は起きている感じ」
「へえ…」
 
 女子は観察力がずば抜けていると健は思った。
たしかにここのところ寝つきが悪く、結果毎朝眠気が抜けずにふらふらと登校していたので、
今日の頭の冴えときたら女子の言うとおりに『起きている』感じなのだ。
 決して昨晩十分に眠れたわけではないのだが、昨日光に『寂しかった』と告ってから少し気が楽になったのだ。
 うっかりキスまでしてしまったが、ノンケで鈍い光がそれを気にしていないだろうと健は思っている。
本音は少しは気にして欲しいのだが、光にそれを期待するのは間違いだと諦めていた。

「ねえねえ直江ちゃん。黙っていないでさ、今度合コンしない?」
「あー。俺はパス」
「なんでー?」
 まだ話したがる女子に手を振って教室に入ると「おはよう、健」と光が歩み寄ってきた。
「おはよー」
 健は普通の態度を装ってカバンを机上に置いて席に座ると、いきなり光が「寂しいってなに?」と直球を投げてきた。
「はあ?」
 教室内には他の男子や廊下から戻ってきた女子もいる。
こんな中でそんな話題を振られたら健は困る。
「なんのこと」
 首をかしげてとぼけようとしたが光は健に目を合わせてくる。
「昨日、そう言ったじゃないか。あれから俺は気にして…」
「…ここでは言うな」
 
 まったく空気すら読めない委員長だと健は光をにらみつけた。
 大体、せっかくの男前なのにホストのような盛った髪をしていること自体が呆れる。
だが、先程の女子のようにシャツの袖をまくっている姿に健はときめいた。
細すぎる体つきからは想像できない、ごつごつとした男らしい指や手首に目を見張ったのだ。
 小学生のころはぷよぷよした子供の体で、健の頭の中ではその姿が今の光に重ならない。
大人に成長しつつある体を目の当たりにして、健は胸の鼓動が高鳴った。

「健、どうして怒るんだよ」
 光はまだ空気を読めないらしい。
「俺は心配しているんだ」
「ありがとう。でも大丈夫だよ、昨日のことは忘れてくれ」
 こう言わないと去らないこともわかっている。
健はわざと笑ってみせ「なんでもないから」とダメ押しをした。
 これで引き下がると思ったのだが、光は「嘘だ」と言う。
「なにかあったら相談してくれって、言っているじゃないか」
「うーん…」
 こんなに粘るとは予想外だった。
「わかった。帰りに話すから、とりあえず席に戻ってくれ」
「うん、帰りだね」
 ようやく光が席に戻ったが、それを眺めていた男子はともかく女子が気になるようで視線を送ってくる。
 いちいち対応できないので健は目を反らし、ため息をつきながらカバンを机の横に掛けた。

 ホームルームで担任がエアコンは今日修理すると言うが、誰もあてにしていなかった。
下敷きやノートを団扇のように仰ぎながら、皆は口をまっすぐに閉じている。
担任は光と同様に皆から信頼を得ていない。
 健は昼休みにでも担任を再度急かそうと決めた。
初夏とはいえ25度を越しており暑くてたまらなく、我慢も限界だった。
いつまでも袖をまくって授業を受けるのは空気が重苦しいし、エロなことばかり考える奴らには女子の姿が格好の餌だとも思うからだ。
他人事ではあるが、いやらしい視線を見ていられないのだ。
「暑苦しい」
 健はぼやきながらノートで扇いだ。


「俺、担任に再確認してくるよ」
 昼休みになり、職員室へ行こうとした健に光が駆け寄ってきて珍しいことを言う。
「エアコンの件、絶対に今日直してもらうんだ」
 光の決意は喜ばしいが、光では無理だと健は思った。
なにしろあの担任は自分の写真を隠し持っていた、それなら自分が確認に行けばことが治まると健は考えている。
「委員長、ここは僕に行かせろ」
 健はそう言って光を教室に残して職員室に向かった。

「直江?」
 健の姿に担任が驚き、持っていたパンを落としそうになった。
しかも座っていた回転椅子を足で回してしまい、なんともおかしな事態だ。
この動揺ぶりからして、健はここに来たのは正解だと確信する。
「先生、本当に今日こそエアコンが直るんですよねー?」
「あ、ああ。間違いない」
「そうかなー?ちゃんと確認してくださいよ?僕たちは今のままでは暑苦しくて授業に集中できないんですから」
 すると担任がすぐに携帯を取り出して業者にかけた。
「今日で間違いないですね?お願いします」
 そのやり取りを見て、これは信じるしかないなと健が思ったとき電話を切った担任が健を見上げながら「一緒にパンを食べないか?」と誘ってきた。
「まだ昼ごはんを食べていないんだろう?よかったら」
 そう言って薦めてきたのはこの界隈でも美味しいと評判のパン屋のものだった。
「お言葉に甘えて、いただきます」
 健は床にしゃがみこみ、サラダが挟んであるロールパンをかじった。
「美味しいか?」
「ええ、美味しいですよ」
 すると担任が健の髪を撫で始めた。
健は正直ぞっとしたが、いいようにさせていた。
それはエアコンの件があるからだ、なんとしても直させないといけないと思う健は自分の言うとおりに再確認した担任にお礼のつもりで触らせていた。
 髪くらいなら安い、そこまで楽観していた。
しかし担任は「柔らかい髪だなー」や「黒髪がよく似合う」などと言い出したので健は間違えたかと思い直した。
「先生、猫でも飼っているんですか?」
「いいや?」
「その割りに、僕を触りすぎですね」
「あ、すまない、ちょっとのつもりが…」
「別に、髪くらいならいいですけど」
 これ以上エスカレートすると困る、その意味をこめたのだが担任は読めなかった。
「直江、変なことを聞いてもいいかな」
「なんですか?」
「好きな人はいる?」
 この問いかけに健は計算間違いをしたと悟った。
そして答えを言えずに押し黙った。
 甘く見すぎていたのだ、相手は大人だ。
「付き合って欲しいんだ」
 担任の小声に健はびくりを体を震わせた。

5話に続きます
2009.05.25 mellow・3
 駅の階段の隅で中学生らしい女の子が下着を握っているのを健は見かけた。
女の子の隣に同じく小柄の男子が座っており、女の子のスカートをじわりじわりとめくっている。
 性に目覚めて盛りがついたのかと、健は呆れた。
あんなところでまさかセックスはしないだろうと思い、やり過ごしたが駅員が気付いたらしく2人に駆け寄っていく。
 
 注意できる大人がいてよかったと健は感じた。
しかしクラスメートの盗撮と彼女らが健の脳内で重なり、他人事とは言え、嫌な気分だ。
性に群がるものは人目を気にしないのかと、ため息をついた。
恥じらいがないと、ただ性欲にまかせて動物のようにセックスをするだろう。
こんなことを考えるのも無駄だと健は思い、改札を抜けてホームに立った。

 上り線のホームで電車を待っていると「健!」と声をかけられた。
見ると光だ。
嬉しそうに歩み寄ってくる光を見て、健はくすぐったい気持になる。
「今日は何もおとがめなし?」
「ああ、すぐに帰れてよかった」
 委員長である光は担任に学級日誌をつけさせられていて、この提出と報告にいつも時間がかかる。
なのでこうして健は光と一緒に帰るなんて珍しいことなのだ。

「いつも思うけどさ、どうして時間がかかるんだ?」
「日誌の内容を先生が読んで『それで授業中に騒いでいた奴をどうして注意しないんだ』とか言われるんだ。だけど俺はどうしてもクラスの状態に気配りができなくて」
 
 健は「あ、そう」と聞き流したふりをしながら、別のことを考えていた。
たしかに授業中に誰かが騒げば注意をするのは委員長の仕事でもある。
しかし光はいつも「じきに静かになるだろう」と思うらしく、それではクラスはまとまらないし光に人望は集まらない。
 建はそのことに気付いているが指摘をしなかった。
授業中に騒いだ奴は光のいないときに「騒ぐんじゃねーよ」とにらみをきかせているからだ。
 健は身長が160センチほどしかなく、おまけに小顔で童顔だが、そんな子が怒ると迫力があるらしく、大抵の奴はそれでおとなしくなっていた。
 たまに刃向かってきて手をだしてくれば頬を叩いてやる。
そして「委員長に迷惑をかけるな」とすごみ、場を終結させていた。
 こんな影の努力を光は知らなくていい・健はそう思っている。
無事に卒業して進学するのみだ、そのために光の経歴に傷があってはならないと健は拳を握り締めた。

 やがて電車は2人が降りる駅に到着し、2人は並んで歩きながら帰途についた。
「電車の中で、ずっと黙っていたね」
 不意に光に声をかけられて健は驚いて光を見上げた。
「やっぱり、なにか悩みでもあるんじゃないか?」
「なにもないよ」
 即答したが光は口をとがらせて、健の言葉を信じていない表情だ。

「幼なじみだからわかるんだよ。健は悩んでいる。だけどそれは俺に言えないこと」
 光がまだ明るい空を見上げながらつぶやく。
「あー。まだ眩しいね。暮れていく夕方の空が健は好きなんだよね」
「…そんなことを言ったっけ」
「小学生のころだよ。俺、忘れないんだー。健が言ったことって」
 そんな昔のことを出されてもと健は口を閉じたが、それを見てなぜか光は「それでさ」と続ける。
「オレンジとか紫とか色々な色が一度に見れるからって、健が言ったんだよ?」
「覚えていないよ」
「でも夕方の空は好きだろう?」
「まあね」
 光は「ほら、やっぱり」と笑顔を見せる。
その笑顔さえ、健の心を惑わせてしまう。
胸の鼓動が激しい、今夜も眠れない夜を過ごすのかと思うと息苦しくなる。
 健は思わず自分の胸を抑えた。
この鼓動を知られたらこうして並んで歩けないだろう。
 焦る健とは対照的に光は空を見上げて楽しそうだ、健の異変にも気付いていない。
隣にいる自分のことさえ気付かないのだからクラス全体が見られなくて当然だなと健は皮肉まじりに思う。
「覚えていてよかった。俺、最近…本当に健とは距離を感じていたんだ」
「まだ言うのか」
「うん、なんだか遠くに感じたよ」
 素直な光の言葉に健は心を動かされた。
「それは…僕のほうだよ」 
 健は胸を抑えながらつぶやいた。
しかしその声は通り過ぎるトラックの走行音にかき消された。
「どうしてかなー。健が遠くに感じるって」
 光はのんきに話を続けている。
健は大きくため息をつくと胸から手を離し、背を正した。
「ん?どうかした?」
 今頃気付くとは鈍感もいいところなのだが、健は救われた気がした。

「もう、家に着いたから」
「あ、そうか」
 健は「じゃあ」と手を振る光に手を振りかえして家に入ろうとした。
しかし、急に胸の鼓動が高鳴った。

 今日も眠れない夜を過ごすのか?気持ちを押し隠したままでいいのか?と自分に問う。
とても耐え切れない、健は家のドアを開けずに門を開け、遠ざかる光の姿を見つけて駆け出した。
 歩みの遅い光にはすぐに追いついた。

「どうかした?」
 走ってきた健を見て、光は目を丸くしている。
声をかけられても息が荒い健は膝に手をあててがくりと腰を折り、息を整えるのに必死だ。
「もしかして、俺に相談事?話してくれるのか?」
 しかしまだ健の息は上がっている。
黙ったまま数秒が流れ、健がようやく顔を上げると心配そうな光と視線が合った。

「なにかあった?」
 光はアスファルトに片膝をついて、健に視線を合わせようとしていたのだ。
すると健はまるで誰かに背中を押されたかのように光にキスをしてしまった。
 それは3秒ほどの短いものだったが、健自身も驚いてしまい声が出ず、光は健以上に衝撃を受けたようで両膝をアスファルトにつけて視線が泳いでいる。

「な…なにが…」
 光が声にならないほどの小声でつぶやく。
「今、なにが起きたんだ…?」
 健は胸を抑えながら光を見た。

「距離を感じていたのは僕のほうだ。離れていたくないんだ」
「えっ…」
 光は何度も瞬きを繰り返して、緊張していることをその仕草で健に伝えてくる。
「僕は寂しかったんだぞ」
 そう言うと健は光に背を向けて再び走り出し、家に着くと門を閉めてドアの向こうに姿を消した。
残された光は思わず唇に指をあて、途方に暮れてしまった。


「寂しいって…」
 そう言われても光にはわからない。
よろよろと立ち上がり、カバンを持ったつもりが指が滑って落としてしまい、自分が混乱していることを理解した。
「寂しいって言われても…」
 光は残念なことに思い当たる節がない。
健をどう慰めていいのかさえわからない。
 勉強はできても光は洞察力が欠けていたのだ。
カバンをはらいながら光は歩き出し、明日健に具体的な悩みを聞こうと決めた。

4話に続きます

 
2009.05.25 mellow・2
 いくら生意気そうなJKでもチェックのミニスカートを履いていたら可愛く見えるらしい。
そんな中年のおじさんたちが話すようなことをクラスメートは「いひひ」と笑いながら話している。
「なあ、直江。1口乗らないか?」
「まだ寝ぼけているのか?」
 健が目を覚ましたのは授業が終わってからだった。
しっかり約1時間の睡眠をとったわけだが、クラスメートに起こされたので機嫌が悪い。
「なんの話だっけ?」
「聞いていないのか。盗撮に決まっているだろう」
「あ、僕はパス」
「つれないなー」
 クラスメートはそれでも諦めきれずに健の机の周りを囲んでいた。
また誰かに盗撮を依頼するにもお金が必要だからだろう。
1万円なんて高額を、高校生が何枚も持っているはずがなかった。
「見たくないのか?無防備に脱ぐ姿を」
 小声で囁かれてしまい、健はますます気分を害された。
「僕は興味がないしお金もない。他を当たれよ」
 建が「しっしっ」と手を振るので、クラスメートはようやく諦めて教室の隅にたむろした。

 女子の下着姿にそこまで興奮するあたり、奴らは童貞なのかと健は思う。
しかも盗撮に熱意を注ぐなんて、人としてどうなのか。

「健、悪いけど手を貸してくれ」
「ん?」
 健が顔を上げると光が側に来ていた。
「担任が机の移動をするから手伝えって言われているんだ。俺1人じゃ力になれないから」
 意外な誘いに健は「はあ?」と前髪をかきあげた。
理解できず、乗り気のしない仕草だ。
「僕だって力はないよ。…それにしても光」
「ん?」
「担任の手伝いをするなんておかしくない?手伝う前にエアコンの修理だろう」
「でも急いでいるらしいんだ」
「こっちだって急ぎだよ、委員長!」
 健が怒鳴ると教室内がしん・と静かになった。
女子たちが遠巻きに健と光を見て「なに、どうしたの直江ちゃんは」などと話しているのが聞こえる。
 健はおおごとにしたくないので咳払いをした。
「ギブアンドテイクだろう?そうじゃなきゃ手伝わない」
「わかったよ。手伝う条件にエアコンの修理を依頼する」
 光は「じゃあ、行くぞ」と健の腕を引っ張った。
「触るなよ、ただでさえ暑いんだから」
 健は光の腕をはらって椅子から立ち上がると「行きますか」と、光と連れ立って職員室に向かった。


「悪いなあ、ありがとう」
 担任は眼鏡を指で直しながら光と健を出迎えた。
「書類が多すぎてね、1人ではなかなか出来なかったんだ」
 その声を聞きながら、健は『自分で処理ができない書類なんて持っていても意味がない』と心の中で思った。
 どうも最近、健は世の中を舐めてかかっている節があった。
それも睡眠不足のせいだろう、先のように怒鳴るのもうなづける。
 健はため息混じりに机の上に積まれたファイルを箱に入れ、書類はクリップで留め、机の中のものを全部出そうとして、ふと手が止まった。

「なんだ、これ」
 引き出しの奥に1枚の写真があったのだ。
「あれ?」
 よく見れば自分の写真だ、しかも目線が合っていないし、第一こんな写真を撮られた覚えが無い。
これは恐らく隠し撮りだろう。
だがなんのつもりで所持しているのか健には理解ができない。
見なかったことにして箱に入れると、その上に事務用品をぶちまけて蓋をした。

 健と光の活躍のおかげで机の移動はたやすく完了した。
早早に引き上げようとする光を健が呼びとめ、「エアコンの件は?」と聞いた。
「あ、言うのを忘れてた。先生!お願いがあるんですけど」
 
 慌てて担任に駆け寄る光を見ながら、健はため息をついた。
移動したあとでは言い出しにくいし、相手も了解しないだろう。
 しかし健はあることを思い出した。
引き出しの中に入っていた自分の写真だ。
もしかしたらの希望を持ち、健は自ら担任の元に行った。
 すると案の定、光は断られていたが、担任は健の登場に目を奪われてしまう。

「直江、何か用事か?」
 上ずった声に、健は今だとばかりに口を開いた。

「エアコンを直してくださいよ。机の移動を手伝ったじゃないですか」
 健がそう切り出すと担任は何故か慌てて携帯をつかんだ。
そして健と光の前で業者に連絡をし、今日中に修理に来るように手筈を整えた。
 この様子に健は呆れながらも1つ確信を得た。
どうやらこの担任は自分に気があるらしい・と。
しかし健は担任に興味がないし、女子のように担任の気を惹くことはしたくない。
 ましてや大学卒の新人教師だ。
女子には受けるが、男子には舐められるタイプだと健は思う。
「ありがとうございました」
 健が頭を下げると「いやいや」と担任は首を振った。
「これは私の仕事だから」

「ま、そうですけど、なかなか動いてくださらないので困っていましたから」
 健はちくりと刺して職員室を後にした。
すると光が追いかけてくる。

「俺より健のほうが委員長に向いている」
「そんなことはないよ。僕はクラスをまとめられない」
 健は光のことを立てるような位置がいいと思っていた。
副委員長でもなんでもいい、課せられた問題は解決してみせるから、光と距離を感じるのは嫌だと思うのだ。
「これでエアコンが直るよ、よかったじゃない?」
「でも不思議だなー。俺が何度頼んでも無理だって言われたのに」
 光が首をかしげている。
その姿を見上げながら「機嫌がよかったんだよ」と健は言う。
「人のやることだからタイミングをみはからって言えば済むことじゃね?」
「そうだなー」
 同意しながら光が吹き出した。
「どうかした?」
「いや、やっぱり健は凄いなと思って。昔からそうだよ、俺がてこずることをさらりと解決させちゃうんだから」
 そう言われて健は昔を思い出さずにいられない。
幼い頃から健は光のサポートをしてきた。
光は子供の頃から頭がよくて、よく委員長を任されてきた。
しかし人望が厚いわけではない。
クラスをまとめきれずにずるずると日々を過ごす中、痺れを切らした健が皆をまとめるのが常だった。
 それは同じクラスのときだけだ。
しかし他のクラスになっても、健はそれとなく光の評判を気にしたりして落ち着かなかった。
「俺は光に補佐をやってほしいな」
「無理を言うなよ」
 サポートするのはあくまでこっそりと・だ。
面だってしまうと光の立場がないからだ。

「はあ」
 健はため息をついたが光はそれを『まだ眠いのか』と解釈した。
しかし健はこんなに近くにいるのに光に心のうちを話せないのが辛く、ストレスを感じていたのだ。

3話に続きます
2009.05.25 mellow・1
 わざとサイズが小さいブラをつけているのか、寄せられた胸は今にもはみ出しそうだ。
細身の体にはアンバランスな巨乳に続き、彼女がチェックのミニスカートを脱ぐと形の良いお尻が映し出され『待っていました』とばかりに「おおー」と低い声で皆がうなる。

「しーっ!ばれたら殺されるぞ」
 小型のビデオカメラを持つクラスメートが口元に指を当てたので、皆が無言でうなづく。
「女子に1万円も払って隠し撮りさせたんだからな。貴重な画像だぜ」
 その貴重な画像を見るために集まったクラスメートは5人もいた。
同じクラスの女子の着替えを隠し撮りさせて喜んでいる図を、直江健(なおえ たける)は窓辺で遠目に見ていた。
 うらやましいのではなく、そんなことに1万円を使ったクラスメートの心境が理解できないのだ。
 じきに女子が体育の授業を終えて、制服に着替えてこの教室に戻ってくる。
そのとき、彼らはどんな目で女子を見るのか・見られるのかと、健は腕組をしながら眺めていた。
クラスメートとはいえ、まるで他人事だ。

 高校3年生ともなれば性欲に多少の落ち着きもでてくるはずだが、クラスメートは今が盛りらしい。
梅雨の前に真夏日が続く中で、健は閑そうにあくびをした。
 昼間の日差しは厳しく、健の黒髪は熱を浴びている。
それでも眠気がするのは最近寝付きが悪いせいだろうと、健は思った。
特別悩んでいるわけではないのだが気になることがあり、それを思い出すとなかなか眠れないのだ。

「こんな暑い場所によく立っていられるなあ」
 健に声をかけてきたのは真田光(さなだ こう)、このクラスの委員長で健の幼なじみでもある。
光は健よりも背が15センチも高く、成績も学年で5本の指に入る秀才だが、見た目で損をしている。
 後ろ髪が肩にかかるほどの茶色い髪、しかもホストのように盛っている。
それに体を鍛える気がないのか筋肉のなさそうな細身で、どうも頼りない雰囲気を醸し出していた。
鼻筋のとおった男前なのにもったいないことだ。

「健はときどきおかしなことをするなあ。この窓辺は日差しが眩しいのに?」
「違うよ」
 健はあくびをしながら面倒くさそうにカーテンを引いた。
これで日差しは届かなくなったが、風も入ってこなくなる。
「あれ?なんか暑くね?」
「あー!直江!暑いからカーテンを開けろよ」
 ビデオカメラを持ったクラスメートが騒ぐが、健は一向に相手をしない。
「直江ー」
 うらめしそうな声にも健は動じない。
「そろそろ女子が戻るよ?」
 健のその一言でクラスメートは慌てだした。
「早く隠せ!」
 集団はすぐに解散して、それぞれの席に戻っていく。
しかもかなり焦ったようで、ノートを団扇代わりに振っては「ふーふー」と息を吐くものもいる。

「なんだ、あいつら?」
「さあねー。なんでしょうか?」
 光の問いかけにも健ははぐらかすような言い方をした。
委員長である光に言っても無駄だと思っているからだ。
たとえ光がそれを知っても先生に言えないだろうと健は踏んでいる。
 お互い高校3年生だ。
ほんのわずかな罪でも進路に関わることくらい、健は知っていた。
ましてや盗撮だ。
金をもらった女子も先程の集団もいもづる式につるし上げられるだろう。
 
 健は正義の味方ではない。
見てみぬふりをするのもありだと、この年で悟っていた。
健にとっては所詮、他人事なのだ。

「委員長。そんなことよりエアコンの修理を早く先生にお願いしてくださいよ」
 健が光に話を振った。
「お願いしているよ。でもなかなか業者がつかまらないんだって」
「もう1週間になるのに。委員長でも解決できないんじゃ困りますねー」
「あのさ、健。『委員長』呼びと距離を感じる言い方を止めてくれよ」
 光がため息をついた。
「なんか最近、おまえとは距離を感じるんだ」
「へえ?」
 健ははぐらかそうとしたが光が「ふざけるなよ」と続ける。
「なにかあったなら俺に相談して。これでもクラスをまとめなくちゃいけない立場なんだから」
 委員長である光の真剣なまなざしに、健は見ていられなくて視線を外した。
「光はそんなに気負わなくていいんじゃない?なるようになるって」
「楽観しすぎじゃ?」
「幼なじみだから言えるんだよ。信じていいよ」
 健は光に手を振って自分の席についた。

 やがて賑やかな声を上げながら女子が教室に戻ってきた。
体育の授業のあとだから汗をかいていると思ったが、彼女たちはそつがなかった。
制汗剤の爽やかな匂いが漂う中、健は何気なく後ろを振り返った。
 盗撮を頼んだ男子たちが目配せしながら健の隣の女子の後ろ姿を食い入るように見ている。
女子なら他にもいるのに彼らは特定している。
性欲にとりつかれた情けない姿に、健は呆れていた。

 そして授業が始まって10分後には健は眠りについていた。
睡眠不足が続いている、その結果が昼間の居眠りだ。
 健自身もよくない傾向だとわかっているのだが、1つのことに心がとらわれて以来眠れないのだ。
それは光と同じクラスになってから、とある感情に気付いてしまったのだ。
自分の手が届かない『委員長』という場に立つ光に、寂しさが募っているのだ。
 距離を感じるのは自分のほうだと、健は思っていた。


2話に続きます


いつもエロ動画だの・JKだのと、エロい話ばかりですが、読んでくださってありがとうございます!
感激しました
「楽しい」とか「面白い」と言われると、嬉しくてたまりません

趣味で書いているものですが、頑張っていたら誰かが見てくださるんだなと実感しました

本当にありがとうございます!

次のお話も気合を入れますので、お時間がありましたら読んでいただけると嬉しいです
明日スタートの予定です


余談

今日の晩御飯は麻婆豆腐を作りました
しかし調子に乗って、かなりの激辛です…
家族にダメだしされないか不安でいっぱい

2009.05.23 RUSH・10
「恥かしいけどさ、櫂はセックスだけじゃないんだね」
「はあ?」
 櫂が蓮音の秘部から流れる精を拭き取り、かいがいしくスーツを着せようとするので蓮音は吹き出した。
「体がだるくて動けないだろう?だから俺がしているんだ」
「ありがとう」
 お礼を言いながら蓮音は両頬を手で隠すように覆った。
「もういいよ。服なら自分で着れる」
「そうか?」
 櫂は顔を上げて不満げな表情だ。
これは自分に服を着せたいのだなと蓮音は気持ちを読み「やっぱり着せて」とお願いをした。
すると櫂は楽しそうに鼻歌を歌いながら再びスーツを着せ始めた。
「下着は自分で」
 蓮音が下着を履こうとしたら手首をつかまれた。
「いいじゃん。俺がやるよ。さんざん見たんだし」
「そんな言い方をするなよ!」
 蓮音は顔が熱くなり、思わず櫂の頬を軽く叩いた。
「あはは。女の子とセックスするより充実するなあ」
「比べるなって」
 蓮音がため息をつくと足を上げさせられて下着を履いた。

「ねえ。今度どこに行こうか?」
 櫂が自分のスーツの身支度をしながら元気よく尋ねた。
「まるでデートみたいな言い方」
「そのつもりだけど?」
 蓮音は「本当に付き合っているんだな」と思わず笑みを浮かべた。
「公園でも行く?」
「健全だなー…」
 櫂は気に入らないらしい。
「公園なんて子供と犬の散歩で大賑わいだぞ。そんなところに行く気がない」
「ふうん。じゃあ、買い物でもしようか」
「それならいい。俺も欲しいものがあるから、そろそろ街に行きたかったところだよ」
 櫂は「2人で行くなら楽しいぞ」とまで言う。
「そうだねー」
 蓮音は同調しながら、これからの日々に幸せを感じた。



 翌朝は蓮音がメーカーに商品を引き取りにいくことになっていたので、蓮音は慌しく社用車に乗り込んだ。
 さあ、行こうとしたときに窓を誰かがしきりに叩く。
なにかと思えば後輩だ。
「営業部で取りに行くことになったのか?」
 蓮音が聞くと「同行します!」と、とんでもないことを言い出した。
「おまえ、閑なのか?人手が不足しているからとか忙しいって言うから僕たちが動いているのに」
「その引取りの商品は自分の担当するお客様のものなので、同行したいです」

「それならおまえが行け」
 
 いつのまにか櫂が駐車場に来ていた。
「商品部だって忙しいんだ。じゃあ、蓮音、部署に戻ろう」
「うん。じゃあ、よろしく」
 蓮音は車から降りると鍵を後輩に渡し、櫂の後を追い始めた。
「…どうして2人でいるんですか?」
 後輩の声に「は?」と蓮音が振り返る。
「仲がいいんですね!」
「ありがとう。おまえも早くいい人をみつけろよ。あんなエロ動画を見ていないで」
「えー!」
 後輩がガクリと肩を落として立ちすくむのを見て、蓮音は向き直り櫂の後を追った。

「あいつ、何を叫んでいたんだ?」
 櫂が不思議そうに蓮音に聞く。
「さあねー」
 蓮音ははぐらかして櫂の手首をつかんだ。
「手、つないだら?」
「櫂は人目を気にしないんだな」
 蓮音は吹き出してしまうが、手首をつかんでいた手を離し、改めて互いの手をつなぎ直した。
「会社に着くまでだよ」
「わかっているって」
 櫂は膝を折って蓮音の顔に唇を近づけた。
「こら!」
 蓮音が避けると櫂は口角を上げて微笑んだ。
「部長にでも見られたら首が飛ぶぞ」
「人の恋路を邪魔する奴はいないよ」
 櫂はそう言って指をからめてきた。
しっかりと握られたようで、蓮音は胸の鼓動が高鳴り、顔が熱くなる。
しばらく2人で歩き、いよいよ会社が見えてきた。
「さ、仕事・仕事ー!」
 いつもよりやる気が感じられる声だが、蓮音は焦る。
「櫂、そろそろ…」
「まだ離さないよ?部署に着くまでいいじゃないか」
「無理」
 蓮音が慌てて手を離そうとするが、櫂は面白がって離さない。
「離さないと別れるよ!」
「げ」
 櫂が驚いて手を離すので蓮音はツボに入り、大笑いだ。
「蓮音。笑うところじゃないだろう?」
「笑えるよ。本気で僕のことが好きに思えたから嬉しくて、さ」
 2人は照れながら歩き、会社のドアの前に来ると揃って咳払いをした。
「今日も頑張るか!」
 櫂の声に蓮音はうなづく。
付き合いだした2人は同じ部署で席が近い。
どこに行こうとも、離れることはないのだ。

「そろそろ父の日の包装資材の注文が入る時期だ。忙しくなりそうだね」
「ああ。でも急ぎの依頼は蹴ってやる」
「またか。櫂が蹴ると僕の仕事が増えるんだけど」
「蓮音も蹴ればいいのに」
 蓮音は「まさか」と笑いながら櫂の隣を歩き、自分の席につくとパソコンを立ち上げた。
櫂はFAXの受信を見ている。
「今日も頑張ろうね」
 蓮音が声をかけると櫂が苦笑いだ。
「どうかした?」
「営業部から急ぎの注文ばかりだよ。これは蹴りがいがある」
 蓮音は「そうかー」と上着を脱いだ。
そして櫂から受信紙を受け取ると「半分は受けろよ?」と櫂に釘をさした。
「3分の1の間違いだろう?」
 口の減らない恋人だが、蓮音は窓からさす日差しのように穏やかな気持になった。

「じゃあ、やりますか」
「今日もよろしく」
 挨拶を交わして2人は業務にとりかかった。
階段を下りてくる足音が響く、また営業部だろう。
今日も忙しくなりそうだが悪くないと蓮音は感じた。


終わり

読んでくださってありがとうございました
2009.05.23 RUSH・9
 歓楽街では胸の谷間を鮮やかなドレスで強調させたキャバ嬢や、清潔感のないホストなどの客引きが歩道を占拠している。
 更けていく夜でもまるで昼間のように明るいのはいかがわしい照明のせいだろう。
 酒を飲んで上機嫌のサラリーマンを客引きがつかまえては店内に押し込む。
ふらふらとした足取りの女性にホストが声をかける。
 その光景を眺めながら、蓮音は自分たちは場違いではないかと思う。
共にブランドのスーツを着た2人はこの淫猥な雰囲気から浮いていると感じるのだ。
蓮音がふと隣を歩く櫂を見上げると「どうかした?あ、そういえば」とカバンを脇に挟んでポケットを探り始めた。

「今日はプレゼントがあるんだ」
 櫂がポケットから小さな布の袋を取り出した。
「なに?」
 蓮音は受け取りながら不審顔だ。
「プレゼントって言っても、僕の誕生日はまだ先だし」
「いいから、開けてみろって」
「ふーん」
 蓮音が歩きながら袋を開けるとシルバーのピアスが入っていた。
「わ、これ!もしかしてあのブランドの?」
「そう」
 櫂が満足げに微笑んだ。
蓮音の『あのブランド』とは若者に絶大な支持を受けているデザイナーのものだ。
<生と死>をテーマにかかげており、ドクロもあれば十字架・百合の紋章を主に扱っている。
蓮音に渡されたのは百合の紋章だった。
これもなかなか入手困難なアイテムで、しかも値が張る。
「耳に穴を空けなくちゃ」
 蓮音はこのプレゼントに興奮した。
「ありがとう、櫂。凄く嬉しい」
「その笑顔が見たくて奮発しちゃったよ。失くさないでよ?」
「大事にする」
 
 櫂が照れているのを見て、蓮音は『櫂でよかった』と思う。
男同士で付き合うなんて世間からはみ出しているようだが、蓮音は後悔していない。
自分も櫂が好きだからだ。

「お返しは何にしよう」
 ピアスを袋の中に大事そうに戻しながら蓮音がつぶやくと「いらないよ」と櫂は言う。
「付き合えるだけで俺は嬉しいの」
 蓮音は今どきこんな男気を見せる同世代がいるとは思わなかった。
お返しを期待しない懐の深さが、蓮音は気に入った。
「ありがとう。…凄く照れるんだけど」
 蓮音が耳まで赤く染めてうつむくと、櫂がふと立ち止まった。
「え、なに?」
「あはは。素直だね、俺にはもったいない子だけど出会いに感謝したい。あー、告ってよかった」
 そして再び歩き出し、2人はこの先にあるホテルに向かった。


 ホテルは昨日の車内とはうって変わって広い部屋だ。
蓮音は大きなベッドに腰掛けながら戸惑ってしまう。
「場慣れしていないのか」
 櫂が珍しいものを見るかのように蓮音の顔を覗き込むので「悪いか」とその頬に触れた。
「いつもセックスはどこでするの?」
 櫂は蓮音のその手に自分の手を重ねた。
この行為だけでも蓮音の心拍数が上がってしまう。
「いつもって…学生時代は自分の部屋だったよ」
「あ。過去に嫉妬しそうだ」
 櫂がそのまま蓮音に顔を近づけてキスをした。
蓮音は目を閉じてそれを受け入れ、2人は互いの舌を絡ませあい、こぼれそうな唾液を吸った。
「脱げよ」
 櫂に言われて蓮音は指先が震えるのを認めながら上着を脱ぐ。
そしてシャツに手をかけると櫂がそれをまくりあげて、蓮音を押し倒した。
「焦らすのが上手いなー」
「えっ、そんなつもりはないよ!櫂が辛抱強くないからだろう!」
「言うね」
 櫂は蓮音の胸元をゆっくりと撫でて、乳首を指で擦った。
「昨日は陥没していたのに立っているじゃん。これも慣れなのかな」
「変なことを言うな」
 しかし蓮音は早くも息が上がっていた。
乳首をいじられるのも悪くないが、もはや体が疼いて仕方がないのだ。
「そんなところより、あのさあ…」
 苦しげにぼやくと櫂が微笑んだ。
「わかっているって」
 櫂は素早く蓮音のベルトを外し、スラックスを下ろして下着も脱がせてしまう。
「早い…」
「慣れてきたからね」
 櫂は得意げに笑顔を見せ、固くなっている蓮音の茎を手で扱き始める。
「あっ、そ・そこが…」
 蓮音はぐいぐいと扱かれるよりも、先端を攻められると弱いらしい。
「勃起したー。蓮音も慣れたな」
 櫂はその茎をさらに扱いて攻め立て、爆ぜさせた。
「は、はあ…」
 早早に精を放出した蓮音は、昼間のこともあって放心状態になってしまった。
このままでは寝てしまいそうだ。
「う…ん」
 眠そうに目を擦り始め、体がシーツに沈んでいる。
「蓮音、寝るな!」
 櫂が慌てて叫ぶので、蓮音は目を見開いた。
「な、なに?」
「起きていろよー。俺はまだなんだから」
 蓮音は「うん」とうなづきながら、もぞもぞと足を動かしている。
かなり眠いのだろう。

「蓮音!」
 櫂は自分の茎を取り出して蓮音の顔に近づけると「フェラをして」と言ってきた。
「あー、うん」
 蓮音はゆっくりと起き上がると櫂の茎をつかみ、そこでようやく目が覚めた。
自分のものより大きい茎・しかもすでに勃起しているものをつかんで、その熱さに驚いたのだ。
「すご…」
 つぶやきながら蓮音は茎を舐め始め、そして先端を軽く押して放出させようとした。
「あ、そこまででいい!」
 櫂は体勢を変えると蓮音に開脚させて、その秘部に茎を挿入した。
「アッ!ちょ、ちょっと早くない?」
「でも昨日よりスムーズに入るよ?」
「そんな…」
「蓮音が濡らしてくれたからね」
 櫂にそんなことを言われて蓮音は顔が熱くなる。
思わずシーツを引き寄せ、挿入されるこの刺激を甘受しようとするが、櫂の茎は中で暴れた。
ぐんぐんと蓮音の中を進みながら中を突くのだ。
「ぐっ…」
 蓮音はこの衝撃に耐えながら腰をひねる。
すると櫂も感じるらしく一瞬目を閉じて体を反らした。
「いい。凄くいい…」
 櫂は目を開けると蓮音を見つめた。
「虜になりそうだ」
 そして唇を舌で舐めると、腰を動かし始めて蓮音を揺さ振る。
「あ、あ・あ・も。もう!キツイよ!」
 蓮音は腰が揺れるたびに茎が奥へ進むこの感触に悶えた。
「そう?俺はご機嫌だけど」
「櫂!櫂ー!」
「ここにいるよ。何度も呼ぶなって」
 余裕を見せながら櫂が蓮音に突き立てる。
そして中を擦りながら蓮音の膝を曲げさせ、さらに密着すると遠慮無しにぐんぐんと突き上げた。
「わ、あああん!櫂、いい加減にっ…」
「いいだろ?これだけ密着していると凄く感じちゃう」
 それは蓮音も同じだが、抜き差しをされるとたまらない。
体の力が抜けてしまい、櫂にもたれた。
「もうちょっと、させろよ」
「櫂ー。も、無理」
「ねえ。俺のことが好きでしょう?」
「は」
 蓮音が顔を上げるとしたり顔の櫂と目が合う。
「好きだよ」
「やっぱりね」
 櫂は「ふふ」と笑うと、また真面目そうな顔に戻って蓮音を突き上げ、中で爆ぜた。

10話に続きます
2009.05.22 RUSH・8
「まったく盛りのついた子供は手に負えない。エロ動画をみたことを反省しないんだからな」
 部長が呆れ顔で商品部に戻ってきた。
「営業部の三郷(みさと)ですか」
 蓮音が聞くと「ああ」と部長がうなづく。
三郷とは後輩の苗字だ。
「懇々と説教をして、会社のパソコンで動画を見ていたことを確認し『2度としません』と約束させたよ」
「それだけですか?」
「生ぬるいかな?罰則をかける前に注意をしておかないとな」
 部長はそう言うとお茶を一気に飲み干した。
「うちの社員は大貫くんと植田くんをはじめ、優秀で助かるよ。手がかからない子が1番だ」
 蓮音は誉められても三郷に罰がくだらなかったことに意外な気がしたし、櫂は納得しかねる表情だ。
「それからメーカーからの引き取りはしばらく商品部で対応してほしいと言われたよ」
 部長の力のなさに櫂がため息をついた。
これではなんのために営業部に行かせたかわからない・元の木阿弥だ。
「また時期をみて相談するよ」
「はあ…」
 気の抜けた声を出す櫂を見て、これは期待できないなと蓮音も感じた。
部長は楽観しすぎなのだ。
2人の思惑に気付かずに部長は時計を見て「そろそろあがりだぞ」と声をかけて、湯飲みを洗いに給湯室へ行った。
 

「俺たちの上に立つ人間がこんな甘さでどうするんだ」
 櫂は明らかに不服だった。
「三郷はヤバイものばかり見ていたんだろう?会社の風紀を乱しているんだぜ?」
「…それはあまり僕たちは言えないんじゃないの」
 蓮音が椅子にもたれながらつぶやいた。
「セックスのことなら就業後と休憩中だ。会社に迷惑はかけていない」
 胸を張ってそう言い切る櫂に、蓮音は「まあ、そうだけど」と続けた。
「定時までに片付けなくちゃ」
 蓮音は書類をまとめてファイルをし、机上を片付けた。
櫂も時計を見ながら少々焦り気味に片付けている。

「そんなに慌てなくても」
「1分1秒が惜しいんだ、時間がないから」
 櫂が書類をまとめてクリアケースにしまいこみ、カバンを持つと階段を駆け下りる足音が聞こえてくる。
「あいつか?」
 櫂が階段のほうを見ると、予想とおりに後輩の三郷がやってきた。
そしてまっすぐに蓮音の元に来ると「お願いします」と注文書を差し出す。
「もう定時だぞ?そんなに急ぎの注文なのか?」
 蓮音が注文書を見ると納期が1週間しかない。
「こら、何度言えばわかるんだ。納期1週間なんて無理だ、工場に頼めないよ」
「そこをなんとか!お願いします、大貫さん」
 蓮音が渋っていると櫂が苛立ったのか「早く帰るぞ」と大きな声を出した。
「なにをしているんだ?見せろよ」
 櫂が注文書を取り上げて納期を見ると益々苛立ちを隠せない状況になった。
「こんなものが受けられるか!納期を修正しろ」
「でも急ぎなんです」
「いつも急ぎなんておかしくないか?工場はフル稼働しているんだ。おまえたち営業部のおかげでな。これ以上は会社の人間として無理はとおせない!」
 櫂は三郷に注文書を突き返すと蓮音に「帰るぞ」と声をかける。
蓮音はカバンを持ち「明日の朝、修正してもう1度持っておいで」と三郷に指示すると会社を後にしようとした。

「大貫さん!」
「は、まだ用事?」
 蓮音が見返ると「植田さんと仲がいいんですね」と、妙なことを言い出した。
「まさか、植田さんを好きじゃないですよね?」
「おまえに言うことじゃないよ」
「教えてくださいよ!自分も大貫さんが好きなんですから!」
「またその話かー」
 蓮音は「聞かなかったことにしただろう」と三郷をにらんだ。
普段は怒りの感情を面に出さない蓮音だけあって、三郷は怯んだ。
「おまえとは会社だけのつきあいにしたいんだ。もうこれ以上言わせるなよ」
 蓮音はため息をつきながらドアを開けると、側に櫂が立っていた。

「後輩に好かれているの?」
 櫂には丸聞こえだったらしい。
「蓮音はもてるなあ」
「止めろよ。嬉しくない」
 蓮音は櫂の手首をつかんで「どこに行く?」と聞いた。
「また車じゃ嫌だろう?」
「あんな狭い場所は動けないから辛い」
「じゃあ、歓楽街まで足を伸ばして休憩するか」
 櫂が歩き出したので蓮音もつられた。
しかし人通りの多い道だ。
人目を気にして手首を離すと「なんで?」と櫂が蓮音の顔を覗き込む。
「別にいいじゃん。見る人なんていないよ」
 蓮音は櫂こそ楽観しすぎだと思った。

「そういえば俺は蓮音から『好きだ』って言われたことがない」
 櫂がいきなり話を振るので蓮音は驚いた。
「俺のこと、好き?」
「そんなことをこの往来で聞くなよ」
「じゃあ、後で聞かせろよ」
 櫂は命令調子だが、笑顔を見せている。
嫌われていないと確信があるのだろう。

「後で何度でも言うよ」
 蓮音がつぶやくと櫂が「1回でいいよ」と笑った。

9話に続きます
2009.05.22 RUSH・7
「どこに行っていたんですかー?せっかくJKのハメ動画を見つけたのに」
 櫂と蓮音が会社に戻ると、なんと蓮音の席に後輩が座っていた。
しかも堂々とエロ動画を見たと言っている。
「凄かったんですよ、ブラジャーからはみ出る巨乳が!」
「…部長に聞かれたら首が飛ぶぞ。それに僕はそんな動画を見たくないし聞きたくもない」
 蓮音が穏やかな口調で注意をするが、後輩は頬を膨らませた。
「JKのハメ動画は貴重なんです」
「おまえの言っている事はさっぱりわからない!部署に戻れ!」
 櫂が怒鳴ったので後輩は顔をひきつらせて席を立ち、階段を駆け上がって行った。

「…蓮音のパソコンで見た・って言うことか。本当に迷惑な奴だな」
 櫂が蓮音のパソコンを操作すると、画面にJKの乱れた姿が映し出された。
後輩が言うようにぐいと上げられたブラジャーから巨乳が飛び出しているが、撮影されているとは知らないのだろう。
喘ぐこともなく、表情はなにをされても変わらない。
しかも体つきからしてどうやら相手は中年の男らしい、これは援助交際だろう。

「こんな画像が出回る世の中なんだなー」
 櫂が呆れて画面を消した。
そして仕事用の画面に切り替える。
「あいつ、こんなものばかり見ていたら痴漢でもしないか?なんか心配だな」
「そうだねー…」
 蓮音は同意しながらも、今朝抱き締められたことを思い出した。
そしてわざわざ自分の席に座っていた事実が恐ろしく、蓮音はまた鳥肌が立つ。
なにを考えながらここに座っていたのだろう。
 側にいる櫂に相談しようかと思ったが、騒がれそうなので止めた。
自分の身は自分で守るしかないと蓮音は感じ、後輩とは距離を置こうと考えた。

 だがしかし、仕事場なので後輩と会う確率は高かった。
仕事開始のチャイムが鳴ると、さっそく後輩が階段を下りてくる。
「足音でわかるなあ」
 櫂がつぶやくと同時に後輩が蓮音の元に駆け込んできた。
「これをお願いします!」
「また急ぎかー?あれっ?これは納期が2週間ある…。やればできるじゃないか!」
 蓮音は素直に喜び「これなら間に合わせられる。工場に手配しておくよ」
「ありがとうございます!あと、これも!」
「まだあるのか。…はあ?」
 2枚目はメモ紙で『今晩空いていませんか』とだけ書かれてある。
「これはいただけない。無理だよ」
「えー!急だからですか?」
 蓮音が珍しく断るのを聞いて、櫂がそのメモ紙を取り上げた。
「あ」
 蓮音が遮る前に櫂は目をとおしてしまう。
「…おまえは仕事中になにを考えているんだ?部署に戻れ!」
「うわ、は・はい!」
 後輩が逃げていくのを見ながら、蓮音が「そんなに怒鳴らなくても」とぼやく。
「僕は断ったんだから」
 しかし櫂は腕を組んだまま怒りがおさまらない様子だ。
「俺がいないと変な虫がつきそうだ。まったくあいつはー。パソコンを取り上げたほうがいいんじゃないのか!」
「無理なことを…」
 蓮音は櫂に「仕事だよ」と言って肩を叩いた。
「あいつのことは部長に任せたらいい。部署が違うんだから」
「蓮音は楽観しすぎじゃないか?」
「そうかな」
 櫂が明らかに疑いの目つきだが、蓮音は知らん顔で注文書をFAKし始めた。

「私語は慎めよ、植田くん」
 部長に注意をされて「すみません」と素直に謝る櫂を見て、蓮音は吹き出した。
自己中心的な考え方や行動をとる櫂だが、素直なところがあって憎めないのだ。
それにこの容姿だ。
見てくれもよくて性格もまあ、許せる範囲のわがままだから蓮音は惹かれたのかもしれない。
「雰囲気を変えましょう。お茶でも入れましょうか?」
 話しかけてくる女性社員に「じゃあ、お願いします」と蓮音は笑顔で頭を下げた。

 
 昼を過ぎると工場から納期の再確認や、仕上がったものの連絡が入るので商品部はいよいよ忙しくなる。
 櫂も蓮音も電話を受けたりメールを送ったりで、定時の17時までに終らせようと必死に業務に打ち込んだ。
「大貫くん、きみの電話の最中にメーカーから『折り返し電話が欲しい』と言ってきたぞ」
「あ、部長、すみません。すぐにかけます!」
「それから植田くん、明日も引き取りしてほしいと営業部から内線があったぞ」
「ええ?すぐに断ります!そんな毎日出かけられませんよ!」
 櫂が商品の資料を片付けながら反論すると、部長が頭を抱えた。
「きみは本当にわがままだなー」
「違います。正当な対応ですよ。引き取りは営業部が行けばいいんです」
 そんなことを討論しても答えはすぐに出ない。
しかも明日の話なら、時間がない。

「僕が行きますよ」
 蓮音が手をあげると部長が安堵した表情だ。
「でも部長。近日中に営業部と話し合ってください。僕たちも閑ではないので」
「わかった、大貫くん。きみがそこまで言うなら私が解決しよう」
 部長はご機嫌になり、自らメールの確認を始めた。
「…大貫くん。おかしなメールが来ているがわかるかい?」
「え?」
 蓮音がパソコンを覗くとエロサイトからのメールが30件も届いていた。
「誰かが変なサイトを見たんだな。そうでなければおかしい」
 後輩の悪行を蓮音が話すと部長はすぐに階段を駆け上がって行った。

「お年なんだから無茶はしないといいけど」
 蓮音がつぶやくと櫂は「へーき」と笑っている。
「たまには運動させないと。あ、それよりも蓮音、今日もいいよね?」
 お誘いだなと蓮音は理解した。
「いいよ。早く仕事を片付けよう」
 そう言いながら蓮音は耳まで熱くなった。

8話に続きます



2009.05.22 RUSH・6
「いつもなら後輩が隣で無修正のエロ動画を見ているから、雰囲気が変わっていいなあ」
 櫂がクロワッサンサンドを食べながらしみじみと言う。
「たまにはカフェだよね」
 蓮音が続けると「違う。たまには2人だよ」と櫂が口を尖らせる。
そんなことを面と向かって言われると恥かしいものだ。
蓮音は「うん」と咳払いをして話題を逸らすべく「あいつ、また動画を見ているのかな」とぼやいた。
「あの馬鹿は言ってもきかないから、構わないことだなー」
 櫂は指についたクロワッサンのパンくずを舐めた。
「じゃあ、行こうか」
「え。もう?まだ時間はあるよ」
 昼休みはまだ20分ほどある。
蓮音が驚いていると櫂に急かされた。
「用事があるんだ」
「ふうん」
 
 慌しくレジを済ませた櫂はカフェを出ると会社とは逆の方向に歩き始めた。
「櫂?」
「いいから、ついてきな」
 蓮音がなんの用事だろうと思いながら櫂の隣を歩くと「そっちは車道側だから、俺の右を歩けよ」と腕を取られる。
「僕は女の子じゃないから、そんな気遣いは無用だよ」
「俺は心配なの!いいからこっち」
 
 蓮音は強引に櫂の右隣を歩かされて、挙句に櫂が足を止めたのは入居者募集中の看板が立つ新しいマンションだ。
「ここで、なんの用事だよ?」
 蓮音が櫂を見上げると、櫂は口角を上げて微笑んでいる。
「なんだよ?」

「10分だけ、俺に時間をちょうだい」
「はあ?」
 
 蓮音はわけがわからずに戸惑うが、櫂にまた腕を引っ張られてマンションの中に入り込んだ。
真新しい集合ポストの前を通り過ぎ、エレベーターの前まで来ると、ようやく腕を離された。
「ここは誰も来ないから」
「えっ」
 櫂の意図することに感づいた蓮音は「昼間からなにを考えているんだよ!」と赤面して怒鳴る。
「怒るなよ。俺はお盛んな時期なんだから」
「同じ年だろう!」
 蓮音は抵抗を試みて櫂から遠ざかろうと1歩下がったが、櫂にたやすく抱き締められた。
「もしも誰かが来たらエレベーターに乗っちゃえばいい」
「そういうことじゃない。外でセックスするなんて、おかしいよ」
「時間が無いんだ」
 抵抗もむなしく、蓮音は壁に押し付けられると上着をはだけられ、スラックスのジッパーを下ろされた。
「まだ勃起していないのかー」
 櫂が残念そうに蓮音の股間を下着の上から撫でている。
「時間がないのに」
 そして焦ったのか蓮音にキスをしながら股間を撫でるので、蓮音は身をすくめながらも次第に体が熱くなる。
「あ、固くなってきた」
 櫂が嬉しそうに笑顔を見せるが、その手は蓮音の股間をまさぐり、茎を取り出していた。
「やめろって…誰か来たらどうするんだよっ」
 息が上がる蓮音に「色気づいてきた」と櫂が笑う。
「俺に股間をまさぐられただけで感じちゃうんだ?いいね、そそのかされたみたいで抱きたくなる」
「ばかっ…」
 蓮音は身をよじるが、櫂の手から逃げられない。
「俺のも触っていいよ」
 無理矢理に手を櫂の股間に押し付けられて、蓮音はすでに勃起した茎に指が震えた。
「そのまま出して」
 櫂に指示をされ、まるで操り人形のように蓮音は櫂の茎を出した。
「よし、そのままじっとしてな」
 櫂は蓮音の茎と自分の茎を片手でつかみ、ぐいぐいと擦り始めた。
「わっ!や、嫌だよ!」
 蓮音は腰がひけて自分の足で立っていられない。
目の前の櫂にもたれながら「はあ、はあ」と荒い息を吐く。
「も、少しかな」
 櫂は容赦なく蓮音を急きたてている。
時間がないのはわかるが、配慮がなさすぎる。
蓮音は『誰かに見られたら困る』と思いながらも、この手こきに集中力を奪われたようだ。
誰かに見られる恐怖より、性欲が勝ってしまった。

「櫂、お願い。解放して」
 とぎれそうな声で櫂に頼むが、頬を赤くして目元もとろんとした蓮音を放すはずがない。
「今やめたら苦しいよ?」
 櫂は吹き出しながら蓮音に言う。
もう蓮音の欲情に感づいているのだ。

「いいから俺にしがみつけよ」
 蓮音は櫂の言うとおりに体が動き、櫂にしがみつくとその肩に口元を押さえつけた。
声を出さないよう、これが蓮音の精一杯なところだ。
 しかし櫂は力を抜くことなく茎を扱き、蓮音が苦しげに「あああ!」と叫んだときに2人の茎が爆ぜた。
「…今、何分?」
 思考がぼんやりとした蓮音が聞くと「あと10分で昼休みが終る」と櫂が応えた。
櫂のその声もかすれていて、互いに汗を浮かべていた。

「じゃ、行こう」
 櫂は急いで身支度を整え、蓮音の身支度にも手を貸すと2人並んでマンションを出た。
「誰にも見られなかったかな」
 蓮音はそれだけが心配だった。
「そんな心配は無用だよ。現に誰も来なかったじゃないか」
「まあ、そうなんだけど」
 昼間から手こきをされるとは思いもしなかった蓮音は、やや疲労を感じていた。
このままでは仕事に差し支えると思い、蓮音はコンビニに寄ると缶コーヒーを買った。
これを飲んで精を放出したあとの眠気を解消しようというわけだ。
もちろん、櫂の分も買ってある。
「じゃあ、仕事頑張ろうか」
「ああ、そうだね」
 蓮音は缶コーヒーを頬に当てた。
この冷たさが火照る体を鎮めてくれる気がした。


7話に続きます
2009.05.21 RUSH・5
「またエロ動画を見ているのか。会社では止めろって言っただろう」
 翌朝出勤した蓮音を待ち構えていたのは後輩だった。
階段の踊り場で携帯を片手ににやにやと妖しい微笑を浮かべていたので、
蓮音はまたしてもエロ動画を見ていると思い、すれ違いざまに肩を叩いて注意した。
「だって毎日更新されているんですよー。こまめにチェックしないと追いつかないんですよ」
「追いつかなくていい」
 蓮音が呆れながら振り返ると、後輩が「今朝は植田さんがいませんね」と聞く。
「商品を取りに行くらしいから、朝は不在だよ」
「やった!じゃあ、注文は全部大貫さんに頼めばいいんですね!」
「あのさあ。僕だから全部受けるとは限らないよ」
 喜んでいる後輩にちくりと釘をさすと、蓮音は営業部の部署に入って行った。
営業部の部長に呼びだされていたからだ。

「ああ、大貫くん。わざわざ悪いね」
「いえ。どんな用件でしたでしょうか?」
 すると部長が頭をかきながら「本来はきみに言うべきじゃないんだけど」と断りを入れた上で、
「営業部としては困惑しているんだ」と切り出した。
「なんのことでしょう?」
「ここではまずいな。会議室へ行こう」
 どうも雲行きが怪しい。
蓮音がそう感じながら部長の後について会議室に入ると、すぐに椅子をすすめられた。
腰掛けながら部長の様子を伺うが、思い当たるのは櫂のことだ。
 櫂は営業部の注文をすぐに跳ね除ける。
それが問題になっているのではないかと推測した。
「実は植田くんなんだけど、どうしてああも大きな態度を取るのかな」
 やはりそうかと蓮音はため息をついた。
「我々の仕事が円滑に進まないんだ。だからほうぼうから苦情が来ていてね」
「あの、部長。お言葉ですがそれならうちの・商品部の部長に話していただけませんと。
僕では櫂…植田櫂に対して指導することはできません」
「あまりおおごとにしたくないんだ。大貫くんからちらりと話してもらえないかな」
「話すだけでしたら」
 
 蓮音はこれで解放されたが、営業部の重圧を感じた。
おそらく部署内で櫂のことが取りざたされているのだろう、これはもはや自分の手にあまるので部長に相談しようと思いながら歩いていると後輩が駆けてきた。
「さっそく注文なんですけど!」
「部署で預かるよ」
 蓮音がそっけなく言うと後輩が「じゃあ、ついていきます」と言い出した。
階段を並んで下りながら、後輩は蓮音の横顔ばかり見ている。
蓮音はてっきり自分の顔色を伺っていると思い当たり、踊り場で立ち止まった。
「そんなに急ぎの仕事なのか?」
「ええ、まあ…」
 蓮音が仕方なく注文書を受け取ろうとすると、後輩が急に蓮音の腕を取り、引き寄せて抱きしめた。
「は?なにをしているんだ」
「少しだけでいいんです、このままにさせてください」
「嫌だよ、暑い!」
 蓮音は後輩をふり払うと「なんのつもりだ?」とにらみつけた。
「僕はそんな趣味はないよ」
 腕組をして口を閉じると後輩は赤面しながら「あ、あのですね」と言い始めた。
「あのっ。自分は大貫さんが好きで…」
「はあ?」
「憧れているんです」
 そんなことをエロ動画ばかり見ている後輩に言われても嬉しくない。
そればかりか、もしや自分を性欲解消の対象にしているのではないかと鳥肌が立つ。

「聞かなかったことにする。おまえもそうしろ」
「そんな!大貫さん!」
 
 蓮音はスタスタと階段を下り、商品部に戻ると後ろから後輩が追いかけてきた。
「注文書をもらおうか」
 何もなかったかのように振舞う蓮音の前で、後輩は赤面したまま注文書を差し出した。
「…今週は連休を挟んでいるから、納期1週間なんて厳しすぎるな」
「大貫さん、そこをなんとか!」
「むずかし…」
 言いかけた蓮音の手から注文書を誰かの手が取り上げた。

「無理!こんなものは工場に相談もできない!」
 そして机に注文書をたたきつけた。
「…櫂」
 乱暴を働いたのは櫂だった。
「連休を挟んでいることくらいカレンダーを見ればわかるだろう?それとも営業部にはカレンダーがないのか?」
「す、すみません!」
 先程まで蓮音に甘えようとしていた後輩がしきりに頭を下げている。
「とにかく無理!検討しなおせ!ついでにカレンダーも持って行け」
 怒鳴る櫂の迫力に押されて、後輩は慌てて階段を上がっていった。

「櫂、言い過ぎ」
 蓮音が小声で言うが、櫂はむすっとしていて注意を聞こうとしない雰囲気だ。
「…朝から疲れているのか?」
「商品を取りに行かされたから」
 その程度でイラつくのかと蓮音は呆れた。
しかしよくよく考えると朝1番でメーカーに行かされるのは気分が悪い。
なぜなら商品の引き取りは元々営業部の仕事だったからだ。
営業部が引き取ってそのままお客様に納品に伺えば済むことだからだ。
 それがいつからか『営業部は人手不足だから』と商品部に丸投げされて今や商品部の仕事の1つで、いきさつを知る櫂は納得できないまま引き受けたのだろう。
「仕事は納得した上で引き受けたいよな」
 蓮音がこぼすと、櫂が「そうそう」としきりにうなずく。
「やっぱり蓮音はわかってくれるなあ。だけど次の引き取りはきっと蓮音だぜ?」
「仕事だから構わないけどさ」
 蓮音にとって頭が痛くなるような問題の続出だ。
商品部も人が多いわけではないので、営業部と話をつけなくてはと蓮音は思う。
「それも何とかしなくては」
 ため息混じりに蓮音がぼやくと、櫂が目を丸くした。
「それも? 『それも』ってなんだよ」
「ああ、後で話すよ。今は仕事中だし」
「ふーん」
 櫂は納得していないようで口を尖らせたが「昼休みはカフェに行こう」と蓮音が誘ったので、すぐに笑顔になった。
「たまには、あいつ抜きで昼ごはんだよなー」
「ああ、あいつね」
 まさか告られるとは思わなかったので、カフェに行くのは後輩からも逃げられるし、なんだか櫂の機嫌もよくなったので蓮音は一石二鳥だなと思った。



 慌しく仕事をこなすとじきに昼休みになり、櫂と蓮音は近場のカフェに行った。
しかしそこは女性客ばかりで社内の休憩室かと思うほどだ。
「場所変える?」
「いいよ、時間がもったいない」
 櫂が先に入り、2人でランチを注文すると「苦情がきたんだ」と蓮音は切り出した。
「営業部から?」
「うん、櫂が断りすぎだって」
「そういうことは部長を通すべきじゃないのか?まったく、営業部は蓮音になんでも任せて」
「まあ、確かにね」
 蓮音はこれ以上言う気はまったくなかった。
ただ伝言をしただけで、まるで子供のおつかいだが立場をわきまえていた。

「その件は部長から聞くよ。あと、俺がいない間になにかあった?」
「いや、別に」
「そう、よかった」
 櫂が楽しげに微笑むので、後輩から告られたことは黙っていようと決めた。
「しかし『俺がいない間に』って、心配しすぎじゃないか?」
「それはだって…」
 櫂は言いかけて口を手で隠した。
「なんだよ?」
「気になるからだよ」
 何故か櫂が照れている。
蓮音はその様子を見ながら昨夜の『俺のものにしたい』とか『付き合おう』の声を思い出した。

「櫂にも可愛いところがあるじゃん」
「なにが?」
 わかっていながら問い返すのはどうかなーと蓮音は吹き出した。
「なにを笑うかな」と櫂は不思議そうだが、相変わらず頬が赤いので蓮音は愛しさが募る。
「櫂。忘れないうちに携帯のアドレス教えてよ。何かあったときにメールができないと困る」
「なにかあった?」
「いちいち聞き返すなよ。ウザイぞ」

6話に続きます




 



2009.05.21 RUSH・4
 蓮音の脳裏に後輩が見ていた電車内での痴漢行為のエロ動画がよぎる。
まさか自分もあんな風に犯されるのではないかと、背筋が寒くなった。

「なにを考えている?」
 櫂が蓮音の前髪をかきあげながら甘い声で聞いてくる。
「教えてよ。少しなら待てるから」
「なんでもないよ」
「嘘だな。蓮音は俺を疑っている。その証拠にほら、眉間に皺」
 指摘されて蓮音は口をつぐむ。
「そんな顔をしないで。俺は蓮音が好きなんだ、好きだから欲しくなるんだ」
 蓮音は何度も「好きだ」と言われて感覚が麻痺してきた。
どうせほぼ全裸にされたのだから逃げようがない。
シートをつかんでいた両手を櫂の背中にまわして抱きつき「好きならいいよ」とつぶやいた。
「僕も櫂が嫌いじゃないから」

「ようやく落ちたか」
 櫂が満足そうに蓮音を見つめ、その耳たぶを甘噛みした。
「あっ」
 蓮音は感じたままに声を出す。
この裏返った声が恥かしいのか、櫂の胸元でごそごそと顔を隠す。
「それじゃ顔もあそこも見えないじゃん」
 櫂は蓮音の顎を指で上げて、自分に抱きついている腕を緩めさせる。

「足、俺の肩に乗せな」
「り、両足?」
「そう」
 蓮音が両足を上げて櫂の肩に乗せると、櫂は蓮音の体に圧し掛かり、股間を舐め始めた。
「あ、やだっ!」
 櫂が股間の際を舐めていると気付いて櫂の髪をつかんで「やめろって」と叫ぶが、櫂は止めようとしない。
 柔らかいその際は未だかつて誰にも触れさせなかった場所だ。
まさかそんなところから攻めてくるとは蓮音は思いもしなかった。
 そして櫂の舌は蓮音の秘部に到達した。
舌先で舐め始めると蓮音がいよいよ足をばたつかせて嫌がる。
しかし櫂は冷静に「緩くしないと痛いよ?」と試すようなことを言う。
「い、痛い?」
「そう。ほぐさないと俺の茎が入らない」
 櫂は舌では濡れるだけだと気付き、今度は指を使って秘部をこじあける。
その行為に蓮音は再び痴漢行為の動画を思い出し、あの女の子も指で秘部をかき回されていたと反芻する。
 決してこれは気持ちのいい行為ではない、秘部を広げられるのは恐怖に近い感情が生まれる。
「やだっ、やだ…」
 蓮音の体の中に櫂の指先が入り込んでかき回している。

「もういいかな」
 不意に指を抜かれて蓮音は「はん…」と喘いだ。
その声に櫂が顔を赤らめてまじまじと蓮音を見つめた。

「な、なんだよ」
「凄く可愛い」
「はあっ?」
「ごめん、もう止まれない!」
 櫂は自分の茎を蓮音の秘部の中に押し込み始めた。
「うっ!あああ!い、痛い!やだ、やだぁ!」
 蓮音が目に涙を浮かべているが、櫂は蓮音の腰をつかんで引き寄せながら茎を押し込む。
「櫂!櫂、無茶するな!痛いってば!」
「も、もう少し…力を抜けよ、蓮音!キツイって」
「や…」
 嫌がる蓮音に櫂はキスをした。
そして舌で歯列をなぞり、唾液を吸った。
すると蓮音が力を抜いて櫂に見を委ねてきた。
毎日キスをされて抵抗感が薄れたのだろう、荒い息を吐きながら「いいよ」とつぶやいた。
 それを逃す櫂ではない。
櫂は茎を根元まで挿入すると肌をぴたりと合わせて少しずつ腰を振り始めた。
「ん、ん、ん…」
 まるで波のように打ち寄せる腰と、中で突く茎の動きに蓮音は翻弄された。
「は、ん…」
 喘ぐ声が櫂にはたまらず「もっと動くよ」と前置きをしてから腰を大きく振った。
「あっ!あ・あ・あ・も、もうダメ!そんなに動くな!」
 体を揺らされながら蓮音が叫ぶ。
「動かないとっ、イけないでしょう?」
「やっ、ううん!櫂、櫂ー!」
「いいよ、もっと俺の名を呼んで?蓮音、愛しているからっ」
「や、やだぁ…」
 蓮音は櫂にしがみつきながら茎の動きにとろけそうな自分を感じた。
櫂の茎は奥まで入り込み、蓮音の実にいいところを突くのだ。
「くっ、ううん!」
 次第に痛みはなくなり、代わりにくちゅくちゅと淫猥な音が聞こえてきた。
蓮音が肩で息をしながら結合部を見ると、突かれるたびに自分の茎が精を放っていた。
その精が秘部に流れて、櫂の茎がスムーズに動けるようになっていたのだ。
「あ、やだ。なんか、体が熱いっ」
「いい顔になってきたなー。もっとしようか」
 櫂はさらに突き上げ、蓮音はそれに耐え切れずにぐったりと櫂の体に身を預けてしまった。
「もうイッちゃった?」
「…ん、んー」
「蓮音、もう少し」
「も、無理」
 櫂は「しょうがないなー」と言いながらしばらく蓮音の中を抜き差しして、ようやく爆ぜたようだ。
「先にイかれると辛いなー」
「そう言われても、僕は、無理…」
 蓮音は櫂に抱きついたまま動けない。
秘部からは白い精がこぼれてくるが、それを拭くわずかな労力さえ奪われた気分だ。
「蓮音、気持ちがよかった」
 櫂がそう言って蓮音を抱き締めた。
「なあ、俺たち付き合えるよな?」
「無理…僕は男だから…櫂はいい女の子を見つけ」
「蓮音がいいんだ!」
 櫂の我侭な主張が始まった。
「蓮音が好きだからセックスしたんだ。だからわけのわからないことを言うな、俺と付き合えって」
「…毎日会社で顔を見ているのに?」
「蓮音は特別なんだ」
 櫂の真剣なまなざしに蓮音は負けた気がした。
「いいよ」
 蓮音はため息混じりに口を開いた。
「櫂のことは好きだから、いいよ」
「…やった」
「は?」
「ようやく俺のものにできた」
 櫂は茎を抜くことすら忘れて蓮音を抱き締め、胸を撫でたり首筋にキスをしたりしてなかなか離そうとしない。
「なにをしているんだよー」
「可愛くてたまらないんだ」
 櫂の愛撫に蓮音は呆れながらも受け入れていたが、ふと時計を見て目を丸くした。
「も、帰らせて」
 蓮音が言うまで櫂は時間に気付かなかったのだ。
「あ、もう21時?」
「頼むよー、もう。櫂に付き合うと時間が早いんだから」
 蓮音は櫂を押しのけるとシャツを着て上着を羽織った。
そして下着とスラックスを履くと「お疲れ」と櫂に声をかけて車から降りた。

「明日、朝1番でメーカーに行くんだよね?頑張って」
「ありがとう」
 櫂も身支度を整えていたが、蓮音は櫂を置いて先に駅へと向かった。
電車を待つ間に櫂が来ると思ったが、なかなか来ない。
そして櫂が来ないまま、蓮音は電車に乗り込み帰宅した。

5話に続きます 



2009.05.20 RUSH・3
「俺は蓮音が好きだよ。キスどまりじゃなくて、セックスしたいと思っている」
 櫂の真剣なまなざしに蓮音は体が強張った。
まるでとって食われるような予感がしたのだ。
「蓮音、そんな野良猫みたいに警戒して動きを止めるなよ」
「おかしなことを言い出すからだろう」
 
 蓮音は顔が熱くなっていたが悟られないようにうつむく。
櫂の誘いに乗るか反るか、すぐには判断ができない。
蓮音の頭の中では男同士のセックスはありえないとの思い込みと、それでも櫂ならいいとほだされそうな感情が支配していた。

「わかっていたでしょ?俺の気持ち」
 櫂が一歩近寄り膝を折って蓮音の顔を覗き込んだ。
「…からかうなら止めろ。僕は男だし」
「マジだって。じゃあ試す?」
 
 いきなり櫂が蓮音の腕を取って走り出した。
夜道を歩く人の波を抜けて、着いたのは会社の駐車場だ。
「明日、メーカーに直接取りにいく商品があるんだ。朝1番に行くからって総務から鍵を預かっている」
「で、どうしてここに?車で居酒屋に行くのか?」
 蓮音が聞くと腕を引き寄せられて唇をふさがれた。
いつもの挨拶みたいなキスとは違い、蓮音の中に櫂の舌が潜り込んでくる。
「はっ」
 蓮音が離れようと体を押すが櫂は足元がふらついただけで、またキスをした。
舌を絡められ唾液が糸を引いても櫂は愛おしそうに蓮音の唇を軽く自分の唇で挟んだ。
「やっ」
 ようやく体を離すと、蓮音は息が上がっていた。
「どういうつも…わわ、どこを触っているんだよ!」
 なんと櫂が蓮音のお尻をぐっとつかんでいたのだ。
そしてぐいと持上げられて、つま先しか足がつかない。
「櫂!いい加減に…」
 持っていたカバンを櫂に当てるが、櫂は「いてっ」と言う程度でびくともしない。
「カバンは邪魔だな」
 櫂が蓮音のカバンを取り上げて、車内に放り込んだ。
「わ、何をするんだ!」
 蓮音が慌てて車内に顔を突っ込むと、櫂がお尻をぐっと押した。
「うわ!」
 車内に体を入れてしまった蓮音は、文句を言おうと振り返るがそこには櫂の姿がない。
「ど・どこに」
 すると運転席のドアが開いて櫂が乗ってきた。
「櫂!どこに行くつもりだよ」
「ここ。ここで抱きたい」
「抱くって…」
 躊躇する蓮音の唇に櫂が人差し指を当てた。
「俺のものにしたいんだ」

「櫂にはセフレの女性がいるんだろう?その子に処理してもらえ」
「冗談を本気にしてる?そんなに交友関係広くないよ」
 蓮音は入社当時に「セフレを紹介しようか?」と櫂に声をかけられたことを覚えている。
なぜならそれが1番最初に交わした会話だったからだ。
 とんだ女好きだと櫂に呆れたが、一緒に仕事をしていくうちに血気盛んな性格も悪くないし、
なにより容姿が優れているのでどうしても視線が櫂に向けられてしまう。
 櫂に惹かれているのは事実だ、しかしセックスをしようなんて思わなかった。

「黙り込んでいても時間がすぎるだけだよ」
 櫂はおとなしくシートに座り込んだ蓮音を見つめる。
「俺、マジだから」
 いきなりシートを倒されて蓮音は「わっ!」と声を上げた。
「な、なにを」
 言いかけて言葉につまる、なんと蓮音の体の上に櫂がまたがってきたからだ。
「好きだよー。蓮音」
 不敵な微笑をして櫂が蓮音の上着を脱がせた。
そしてネクタイを払い除けてシャツのボタンを外す。
 その間、蓮音は指1本も動かせられなかった。
なにをされるのかと怯えてしまい、櫂の思うままにシャツを脱がされた。
「ふふ。可愛いな」
 櫂が蓮音の胸を撫でて親指で乳首を刺激した。
すると陥没していた乳首が顔を出す。
「綺麗な肌だなー。そそられる」
 櫂は蓮音の乳首を指で扱き、声を出さないように抑えている蓮音の手を取った。
「声が聞きたいんだ。感じているなら喘げよ」
「か、感じるか!」
「顔を真っ赤にして。嘘はつけないねー。声を出させてやる」
 そして蓮音が「あああ!」と叫ぶほど櫂は乳首を吸った。
舌で舐め、そして舌先で持上げるような愛撫を続けて、蓮音は次第に息が荒くなっていく。

「や、やだ…なんか変な感じ」
「ん?」
 櫂が顔を上げると蓮音が両手で口を抑えて震えていた。
「体が疼くんだ…」
「いい調子」
 櫂は微笑むと蓮音の両手を取った。
「狭いから暴れるなよ?」
「暴れないよ、手を離せって」
「よしよし、いい子だ」
 櫂は蓮音にキスをしながら股間を摺り寄せた。
その固い感触に、蓮音は背筋に寒気すら感じた。
「も、もしかして僕に欲情しているの?」
「当たり前。今更聞くかなー?」
 そして櫂はジッパーを下ろして自分の茎を取り出した。
それは勃起しており、蓮音は胸が高鳴った。

「蓮音のも見せてよ」
「あっ!こら、探るなよ!」
 櫂は蓮音のスラックスを脱がせると下着の中をさぐり、萎縮していた茎をつかんだ。
「興奮していると思ったのに、残念。なかなか火がつかないタイプ?」
「知らないよ!」
「じゃあ、大きくしようか」
 櫂は自分の茎と蓮音の茎を併せ持って、扱き始めた。
「わ、あ・あ・あ・ちょっと、ちょっと待って!無理、無理!」
「無理じゃないよ。もっと力を抜いて感じろって」
 櫂は強引に蓮音の茎を勃起させ、そして爆ぜるように扱いた。
蓮音は声を押し殺し「ん、ん、んー!」と啼き、体を反らす。
「やりすぎだ、櫂!」
「こうしないと出さないだろう?早く出しちゃえよ」
「櫂ー!」
「大好きだよ、蓮音。だから出せって」
「やっ…やだっ!」
 しかし蓮音の茎は爆ぜて櫂の上着を濡らした。
「あー。しまった。脱ぐべきだった」
「ごめん、拭くよ」
「いいって。お楽しみはこれからだから」
 櫂は蓮音の下着を下ろしてスラックスごと脱がせると、足を持上げた。
「や、やだ!何をするんだよ!」
 ネクタイとシャツの襟だけが残るほぼ全裸状態の蓮音は、開脚させられて顔が火照る。
「入れさせて」
 櫂が耳元で囁き、それにびくりと反応した体は汗を浮かべていた。

4話に続きます


2009.05.20 RUSH・2
「こんな納期の注文は受けられない。お客様に相談して出直してこい!」
 仕事が始まると決まって櫂の怒鳴り声が商品部に響き渡る。
「急ぎなんだよ。どうにかならないか?」
 営業部の人間が頭を下げても櫂は引き受けない。
「工場は今フル稼働なんだ。これ以上の無理は言えないぞ」
 そして注文書を机にたたきつけた。
「納期をずらせ。そうしないと手続きをとらない」
 櫂はまだ20代だが、頭を下げている営業部は30代。
年下の櫂に怒鳴られて、感情をおさえてはいるが怒りを覚えた表情だ。
「櫂、それを貸して」
 前の席に座っている蓮音が手を出した。
「僕から頼んでみます。だけど楽観はしないでください」
「大貫くん、よろしく頼むよ」
 営業部は安堵した様子で商品部から出て行った。

「植田、言いすぎだぞ」
 経緯を聞いていた部長が釘を刺す。
しかし櫂は納得できないようで「自分の仕事をしているだけです」と言い切る。
「まあ、たしかにメーカーや工場に急ぎの仕事ばかり押し付けては貸しができてしまう。
いつなんどき『先日の急ぎを引き受けたから』と言って価格交渉をしてくるか知れたものではない。
だが、おまえはやりすぎだ」
 
 部長も憤慨している中で蓮音は工場に連絡を入れて納期の確認を取っていた。
しかし当然ながら工場側はいい返事をしない。
だが蓮音は頭をひねり、先に入れた注文を後回しにして、こちらにかかって欲しいと願い出た。
『大貫、先にもらった注文は納期が2週間しかない。これもやらないとまずいだろう?』
「工場長なら1週間でできますよね?それを踏まえたうえでお願いしています」
『大貫には敵わないなー。わかった、すぐに工場に注文書をメールしてくれ』
「わかりました。工場長、ありがとうございます」
 蓮音が電話を切ると部長が「おまえも困った奴だ」と笑った。
「あの工場長を動かせるのは大貫くんしかいないな」
「そうなんですか?」
「工場長には娘さんがいてな、その婿に大貫くんが欲しいと相談されたことがあるんだ」
「えー?」
 蓮音には初耳の話だ。
「僕は婿になりませんよ。長男なので」
「ははは、そう言っておこう。しかしそれで納期が延びたら大変だから、片付いてからにしよう」
「部長も悪い人だ」
 蓮音も笑うと櫂が「あのさあ」と割り込んできた。
「いつも無理をとおしていたら相手が甘えるだけだぜ?」
「わかっているよ」
「蓮音はわかっていない。営業部に一言言うべきだ。そうですよね、部長」
 部長は話を振られて苦い顔だ。
「まあ、そうだが。あまりカリカリするなよ植田くん」
 櫂がむすっと口を結んでいると、部長は「さー、仕事だ」と明らかに話をそらした。
そのせいで櫂の怒りの矛先がなくなってしまった。

「櫂、円滑に進めばいいんだよ」
「円滑じゃないよ。いつ無理がきかなくなるかわからないぞ」
 まだこだわる櫂に、蓮音は「お茶でもいれようか」と声をかけた。
すると横で聞いていたのか女性社員が「おやつがありますよ、私がお茶を入れましょう」と嬉しそうに給湯室に入って行った。
「昼ごはんを食べたばかりだから結構ですよ」
 蓮音が慌てて追いかけると、女性社員は「お取り寄せしたんです。食べましょうよ」と誘う。
どうやら女性というものは食事を終えたあとでもスイーツが胃袋に入るらしい。
蓮音は苦笑いをしながら「あとでいただきますから」とやんわり断った。

「大貫くんは植田くんとタイプが違うのね」
「そうですか?同じだと思いますが」
 女性社員は首を振る。
「こう言うと悪口に聞こえるかもしれないけど、出世するのは大貫くんだと思う」
「はあ?」
「メーカーや工場に迷惑はかけているけど、お客様には喜ばれているはずだから」
 お客様の示した納期を守るのは営業の仕事だ。
しかしそれを支えるのは商品部であり、本来ならば無茶な納期でない限り受けるべきなのだ。
「難しいですね」
 蓮音は自分のすることが正しいとは思っていない。
櫂が言うようにメーカーや工場と円滑な取引をするため、極端に短い納期の注文は再度検討すべきなのだ。
「櫂のしていることも正しいと思うんです」
「あら、大貫くんは大人なのねー」
 女性社員は「ふんふん」とうなづきながら蓮音の話を聞いた。
「だったら植田くんをフォローするのは大貫くんの役目ね。私は止めておくわ」
「はあ」
 入れかけたお茶をそのままにして女性社員は席に戻っていく。
蓮音は迷ったが、お茶を入れて櫂に渡した。
「さんきゅー」
 そして湯飲みに添えられたメモに気付き、すぐに目をとおした。
読み終えた櫂は蓮音を見た。
「…別にいいよ」
「ありがとう」
 メモには『今夜は飲まない?』と蓮音が書いていたのだ。

 そのメモを読んでからの櫂は、やや落ち着きを取り戻していた。
営業部からくる注文には「納期が厳しい」と相変わらずの態度だが、「検討しなおせ」と言わずに保留扱いにして工場やメーカーに連絡を取るようになった。
 おかげで蓮音は自分の仕事に集中でき、注文した商品の納期確認や納品のチェックなどの作業が進んだ。

 作業をひととおり終えると丁度定時だった。
蓮音が机上を片付けて帰り支度を始めると、櫂がその姿を眺めている。
「櫂も帰る準備をしなよ」
「疲れて動けない」
「はあ?」
「普段、蓮音がしているようにメーカーや工場に連絡をし続けたから疲れたー」
 甘えているのかと蓮音は耳を疑った。
普段はクールな態度を取りながらもすぐに怒る性格なのだが、甘えてきたのは初めてだ。
 対処に困った蓮音はカバンを持ちながら「…それならおいて帰る」と言う。
「冗談だよ、俺も帰る」
 櫂がため息をつきながら立ち上がる。
今日はやけにため息をつくなあと蓮音が思っていると、櫂は「うーん」と腕を伸ばした。
疲労したアピールのようだ。
「仕事をしたら誰でも疲れるよ。じゃ、行こうか」
「ああ、そうだな」
 蓮音は櫂と連れ立って会社を後にした。

「どこに行く?」
 初夏の爽やかな夜風を受けながら櫂が聞いてきた。
「このまえ行った居酒屋でいい?」
「あそこか。近いからいいよ」
 居酒屋はリーズナブルな値段でお酒が飲めるので、薄給の2人には丁度よい店だ。
「その前にさあ」
「なに?」
「俺、間違ってる?」
 唐突な問いかけだが、仕事のことだろうと蓮音は気付いた。
「間違っていないよ。櫂の取る方法もありだと僕は思っている」
「ありがとう。よかったー」
 櫂がようやく笑顔を見せたので、蓮音は嬉しくなった。
「蓮音に言われると自信がつく」
「そうか?」
「俺、蓮音が好きだからさ」
「…は?」
 風がそよぎ木々の葉を揺らす中、さらりと告白された蓮音の足が止まった。

3話に続きます
2009.05.20 RUSH・1
 画像が荒くて見づらいがショートヘアーの女の子が電車内で胸を揉みしだかれ、下半身は脱がされた状態で複数の男に手を出されているのはわかった。
 女の子は恐怖のあまり顔をひきつらせ声も出ない。
電車内には人がいるだろうに、皆遠巻きで眺めている様子だ。
音声はまったく聞こえなかった。

「そんな変なもの、昼飯どきに見るなよ」
 大貫蓮音(おおぬき れおん)が呆れて隣にいる後輩を肘で突く。

 すると前の席から「なーに。またエロ動画を見ていたのか、こいつ」と口を開いた男がいた。
蓮音の前に座っているのは植田櫂(うえだ かい)。
櫂は蓮音と同期入社で、2人揃ってこの商社の商品部に所属している。

「これは会社のパソコンだぞ。それを使って動画を見るなんておかしいよ、自分」
 櫂は容赦なくエロ動画を見ていた後輩をなじった。
「すみません、ちょっと興味があって」
「会社ではやめておけ。ただでさえこの会社は女性が多いから、こんなことが知れたらシカトされるぞ」
「あ、はい」
 後輩はそれでも名残惜しそうにノートパソコンを閉じるので、蓮音はそれを横目で見ながら後輩の頬を軽く叩いた。
「わ、大貫さん、なんですか?」
「反省していないみたいだから」
「は、反省なら…しますよ」
「口が減らないなー」
 蓮音が思わず吹き出すと、櫂は「蓮音は甘い」と文句を言い始めた。
「もっと厳しくしないと、こいつに舐められるぞ」
「そうなのか?」
 後輩は蓮音に見つめられて、何故か顔を赤く染めた。

「そんなことはないですよ!大貫さんにはいつもフォローしてもらっているし」
「慌てるあたりが怪しいな」
「マジですって!」
 両手をばたばたと振りながら後輩が弁解するが蓮音は「櫂の言うとおりかも」とぼやく。

「この休憩が終ったら、もっと厳しくしよう。商品の納期は急ぎであっても縮めない・とか」
「困りますよー!」
 後輩が机を叩きながら反論するが、櫂にちらりと見られて肩をすくめる。
 
「それくらいしてもいいんじゃない?いつも蓮音は社内の人間に優しいからな」
 櫂がポテトを食べながら賛同している。
「しかしメーカーさんや工場には厳しい納期を言い渡す」
「仕方ないよ。営業部はいつも『急ぎ』だって言うんだから」
 蓮音はハンバーガーの袋を丸めてゴミバコに捨てた。

「櫂。昼休みのときくらい仕事の話はやめないか?」
「はー。そうだな、しかし昼休みだって言うのに落ち着かないな」
 この会社にはテレビも備えた休憩室があるのだが多数の女性社員に陣取られており、男性社員はいつも自分の部署で食事を取るはめになっている。
「煙草も給湯室で吸うしかないもんな」
「嫌なら女性陣に加われば?」
 蓮音の言葉に櫂は「嫌だよ」と即答した。
「そんなことを言って、蓮音は行かないんだろう?なら、俺もここでいい」
「なんだ、それ」
「1人じゃ、行きづらいよ。わかるだろう?」
「あーそうだね」
 櫂が煙草を持って席を立ったので、蓮音もそれにつられた。
2人並んで給湯室で煙草を吸うと「男性蔑視されているよなー」と櫂がぼやく。
「この会社に入って集団の女性は怖いと初めて知ったよ。女性恐怖症になりそう」
「櫂はならないよ。女好きだから」
「蓮音ー」
 櫂の情けない声を聞いて、蓮音は思わず煙を吸い込みすぎてむせた。
「けほけほっ!」
 しかも火のついた煙草を持っているので今度は煙が目にしみた。
「いっ…てー!」
「ほら、煙草をよこせよ」
 櫂が蓮音の煙草を持ってやり、時折、その灰を流し台の三角コーナーに捨てた。
「大丈夫か?」
「ん、あー、もう平気。悪いね」
 蓮音が煙草を受け取ろうとしたら、櫂が顔を寄せてきた。
「な、なんだよ。近い!」
「涙がこぼれてる」
「ああ、煙が目にしみたからね」
 蓮音が頬を手で拭うと、櫂が不意に煙草を三角コーナーに捨て、それはじゅっと音をたてた。
そして蓮音の顎を指でくいと上げると唇を重ねてきた。
「んっ」
 急にキスをされたので驚いた蓮音が櫂の体を押しのけると「ヤバイ?」と櫂が小声で聞く。
「ヤバイよ。僕は女じゃないからね」
 蓮音は濡らされた唇をぬぐうと、ため息をついた。
「僕は男性が苦手になりそうだ」
「俺のせい?」
 櫂が面白そうに口角を上げながら煙草を持った。
そして火をつけると「ふう」と白い息を吐く。
「自覚があるならキスをするなよ」
「うーん。どうしてだか、突然したくなるんだ」
「…後輩のことが言えないぞ」
「自重する」

 そうは言っても蓮音は毎日のように櫂にキスをされる。
最初は冗談めかして「俺より背が低くて茶髪の可愛い子だから」と言ったが、蓮音が怒りもせずに拒まないせいなのか先程のように予告なしでキスをしてくる。
 櫂は黒髪で目鼻だちの整った誰が見ても眉目秀麗な男だ。
この会社に入る前は住宅情報誌でモデルをしていたほど、クールな顔だちで女性受けがいい。
 そんな櫂にキスをされて蓮音が怒れないのは、容姿に惹かれているからだ。
自分よりも背が高い・これは憧れか、羨ましいとしか言えない。
 
 しかしその気持ちが少しずつ違う方向へ傾いているのを知った。
いつも堂々とした態度でいる櫂が気になり始めたのはいつからか、蓮音はわからなかった。
きっかけはキスに違いない。
しかし惹かれたのは櫂という人間がどんなやつかを知ってからだろう。

 誰に対しても間違っている事は許せない櫂と、それを受け流す蓮音。
相反しているようで自分と似ている部分がある・そう蓮音は感じたのだ。

「昼休みが終るよ。女性陣が帰ってくるから戻ろう」
 蓮音の声に、なぜか櫂がため息をついた。
「ああ」
 そっけない返事の裏には蓮音の知らない、高まる感情をおさえた姿があった。


2話に続きます
自宅から3キロ先の小さなパン屋さんなんですが、
パンの味と種類が市内でも抜きん出ていると思います

店内には文字通りパンがところ狭しと並んでいて、
選ぶ楽しみがあるし圧倒されます
デニッシュはまるでテーブルに飾られているかのように並べられ、
店内の照明に輝いていたりするんですよ
すげー!と心の中でいつも叫んでいます

しかもここのパンはそれを食べてもハズレがない!と言いますか、
今注目のマカロンを作ったりして常に新しいものを取り入れる姿勢・
そして無愛想だけどきびきびと働く職人肌的な店員さんが気に入りまして、
ちょくちょく通っています

会話は無いけど「美味しいからまた来ましたよ」オーラをふりまいているせいか、
驚くことに笑顔を見せてくれたりするんですよ
それがちょっと嬉しかったりします

もう少し近かったら毎日でも通うのにな~~
でもそんなことをしていたら散財だな…
パンも安くはないので悩みどころです



では次からまたエロな話に戻ります
お時間がありましたら読んでいただけると嬉しいです



第734回「行きつけのお店はありますか?」

「言うことをきかせるなら家出少女だろうなー。寝る場所を与えたら自分から開脚しそう」
「年下は無理だよ。やっぱ年上。キャバ嬢でもいいな」
「キャバ嬢を騙して撮影部屋に連れ込むか?そのほうが無理っぽい」
 ひひひと下卑た笑いをしている煌の元仲間に姿に「静かにしろよ」と叱り飛ばす声がした。
彼らが声の主を探すと、目の前に匠が立っている。

「な、匠か。そんなに怖い顔をしないでくれよ」
「怖い顔なんてしていないよ。おまえたちが僕を怖がるからそう見えるんじゃないの?」
 匠は腕組みをしながら彼らを見渡した。
「今から郊外学習の班を決めるんだから、騒ぐんじゃない」
 そして匠は「始めて」と煌に合図を送った。
「ありがとう」
 煌は壇上に立ち、各列に<郊外学習の件>と題したプリントをまわさせた。
昨晩作ったプリントだ、そこにはわざわざ郊外に出て学習する意義を説いていた。

「真面目だねー、上原」
「しかしこんなことをするなんて初めてじゃね?」
 女子が先に関心を持ち「なにこれ、哲学?」と周りに聞いている。
煌は郊外学習で集団行動をとることによって、社会でも通じる協調性を育むためだと書いたのだ。
「固いな。でもわからなくもない」
 男子はうなづくものが多々だった。
元々、男子は女子のように群れないので集団行動が苦手な子もいるのだ。
これを克服すると説いた煌の意見は賛同を得た。
「学校は集団活動ありきだもんな」
「社会に出ても、そうなんだろう?慣れるべきかな」
 同時に「お飾りの委員長じゃなかったな」と、ようやく信頼も得そうだ。

「じゃあ、班を決めるから」
 いい頃合に匠があみだくじを皆にまわす。
皆は興味を持ち、率先して自分の名を書き始めた。

「いい感じだね」
 匠が煌を見上げた。
「煌ならきちんとできると僕は思っていたよ」
「いや、これは匠のおかげで…」
 煌は昨日念願叶った匠とのセックスで自信を持ったのだ。
自分よりも世間に通じた匠を思うように喘がせたことが男としての自信につながり、
おかげで匠をはじめクラスメートは煌がいつもよりも精悍な顔立ちに見えた。

「今日の上原はどこか違う」
「ああ、頼れる感じ」
 男子の言葉が煌の耳にはくすぐったい。

「聞こえただろう。僕じゃない、今日はいい顔をしているよ」
 匠が煌の肘を突き、吹き出した。
「立派な委員長さんだ」
 匠はご機嫌らしく足元も軽やかに騒いでいる皆のところへ行った。
そしてあみだくじをひろげて「班が決まったぞ。黒板に貼るから確認して」と皆を誘導する。
 それを見て煌は委員長は匠のほうが適役ではないかと思う。
自分のサポートというよりも全面的に動いているからだ。
そんな匠と付き合える自分が誇らしくも思える。
胸を張っていられそうだ。

「なるちゃんと一緒の班だー!」
「あ、私も」
 女子の嬉しがる声に匠は笑顔を見せながら「あー、うるさい。確認したら帰れよー」と追い立てる。
「匠、俺は?」
 煌が気になって匠に聞くと「ちゃんと見ろよ。僕と同じ班」とうるさがる。
「へえ、凄い偶然だ」
「そんな偶然はないよ。誰がこれを作ったと思うんだ?」
 煌が「あ」と声を出すと匠が口角を上げて微笑む。
「ありがとう!俺、匠と一緒がよかったんだ」
 思わず煌が匠の手を握ろうとすると、その手をはたかれた。
「大きな声を出すなよ!」
「あ、ごめん」
 首をすくめた煌に、匠は「勘違いをしていない?」と聞いた。
「え、どういうこと?」
「同じ班にしたのは、いい体をしている煌にかばん持ちをさせたいからだよ」
「えっ?」
「僕たちは楽がしたいからねー」
 匠が同じ班になる女子と一緒になって「あはは」と豪快に笑った。
煌は舐められた気がするが、しかしこんな爽やかな気分は初めてだ。
「いいよ、もってあげるよ」
「…少しは断れよ」
 ツボだったのか、匠はなかなか笑いがおさまらなかった。



「今日はいい感じだった」
 園芸部の部室で軍手をはめながら匠が煌を誉めた。
「やればちゃんとできるんだから、自信を持っていればいいんだよ」
「ありがとう」
 煌はお礼を言いながら匠が気になってしかたがない。
しかし放課後はバスケ部に行かなくてはならないので時間がない。
「匠、あのさ、セックスがしたいんだけど今日は無理?」
 すると匠が目を丸くした。
「あ、やっぱダメかな。普通に付き合いたい気持ちもあるけどセックスがしたくて」
 肩を落とした煌のお尻を匠が叩いた。
「…だから!自信を持てって言っているだろう!」
「なんで怒るんだよ」
「付き合うって言っただろう?練習が終ったら部室に来いよ」
「あ、ありがとう!」
 煌は胸を弾ませながら軍手をはめた匠の手をにぎり「必ず来るから待っていて」と念を押す。
「わかったから!」
 匠は照れたのか頬が赤く染まった。
それを見て煌はますます匠が愛おしくなる。
 しかし匠の思惑は少し違うようだ。
手を離させると両手で払った。
「待つけどさ。遅いようなら帰るよ」
「えー!」
「変な声を出すな!…もう、面白すぎる」
 匠は吹き出して「煌といると楽しいや」と言った。
それが煌にとって、最大の賛辞だった。

「じゃあ、また後で」
 煌が手を振ると匠が手を振りかえした。
「後でね」
 その声を心の支えに、煌は体育館へ急いだ。
匠のおかげで煌は変わりつつある。
離れていても、もっと積極的に・もっと自信を持ってと匠の声が聞こえてきそうだ。
「早く会いたい」 
 ふと独り言をつぶやいてしまい、額に汗をかいた。
それを拭いながら煌は体育館に駆け込み、部活に励んだ。




「カオルちゃん、あいつらのことを言わなかったんだって?」
 匠が花壇の手入れをしながらカオルに確かめた。
「言ったほうがいいのに」
「あの件は終わり!と言うか恥かしくて言えないのよ」
「そんなに気が弱かった?」
 匠がカオルの顔をまじまじと見た。
「体をどうされたとか、何をされたとか、話すのがおっくうなの。はー、私も女なのねー」
「僕が付き添うから言いな」
「そういうことじゃないのよ」
 乱暴されても恥かしくて泣き寝入りをする女の子は多いことだろう。
その気持ちはわからないでもないが、匠はカオルにかける言葉を見失った。

「でも委員長さんは許す」
「あ、煌?」
「悪い人ではないし。私を見て興奮しなかったから」
「それって…女としてどうなの」
 匠が笑い出して、カオルもつられて笑った。
「あー。あと1時間ってところかな」
「誰かと待ち合わせ?」
「まあね。手のかかる子なんだ」
 匠が楽しそうに鼻歌を歌うので、カオルはなにも聞かなかった。
一緒に花壇の手入れをしながら、ふと「うらやましい」とこぼしたカオルに、
匠は「早くいい人を見つけな」と声をかけた。

 初夏の夕方は明るくて日差しもある。
「今日も暑かったねー」
 カオルの声に匠はタオルで汗を拭きながら「これからもっと暑くなるけど悪くないな」とつぶやいた。


終わり

読んでくださってありがとうございました






 匠が先に感触を確かめたせいなのか、取り出した煌の茎はすでに勃起していた。
「固いねー。なんだかこの茎、僕を見ているみたい」
「そんなことは…」
 言いかけた煌はすぐに「ウッ」とうなる。
なんと茎が先走り、その精は匠の胸を点々と汚した。

「あららー。我慢のできない子ですねー」
 匠が口角を上げて煌を見つめる。
「ちょっといじめちゃおうかな」
「え、えっ?」
 匠は片手で茎を扱きながら、睾丸を軽く揉んだ。
「ァアア!そ、そこは!匠、そこは無理!」
「わかっているよ。同じ男だもんね」
 煌は余裕をみせる匠が遊んでいるとしか思えない。

「…焦らすなよ、早く」
「早く、なに?」
「わかっているくせに…」
 煌は興奮のあまりに目が潤んできてしまった。
「わかったよ。だから泣かないで」
 匠は手で茎を扱き、また勃起させると今度は煌のほうに前のめりになりながら煌の股の上に座る。
そしてお尻を上げると、煌の茎を自分の秘部に差し込んだ。
「くっ。あ、ああっ!…い、痛いな。大きいだけあって飲み込めないや」
「なにをしているんだ、匠?」
「煌の茎をもらうよ。う、ううん。も、もう少しほぐすべきだったかな…ま、いいや。煌、腰を振って」
 煌は動揺しながら腰を揺らした、すると匠の体がぐんと反り返った。
「な、匠!」
「はあ、大丈夫だって。もう少しかな…もっと腰を振りなよ」
 言われるままに腰を揺らすと「う、うん」と匠も腰を振る。
「も、もう少し。もう、大きいなあ煌の茎は!」
 匠が汗を浮かべながら腰を細かく振る。
その姿の淫猥さに、煌は興奮した。
思わず匠の腰をつかんで、ぐいぐいと揺らしたのだ。
「あっ!あ・あ・あ・も、もう!ああああん…このっ、煌はー」
 煌は匠の苦しげな声を聞いてさらに盛り上がってしまった。
言われていないのに腰を揺らし、どうにか自分の茎をすっかり挿入させた。

「痛い…?」
 うつむいている匠に恐る恐る聞くと「いい感じ」と顔を上げた。
しかし匠はうっすらと汗をかいていて、挿入がきつかったことを思わせる。
「じゃあ、動くよ」
 匠は両手を煌のおなかにつけて、腰を上下に振り始めた。
「くっ、う、う、ううん。は、はあ…ううん」
 喘ぐ姿はカーテンの隙間から伸びる夕陽の光にさらされて、煌にはいつもより綺麗に見えた。
こんなに可愛い子とセックスをしている自分が信じられない。
それに匠も感じてきたのか、匠の茎も屹立している。
煌はそれに触れたくて手を伸ばすが「こらっ」と匠に払われた。
「おさわり厳禁」
「どうしてだよ」
「これは…自分でするから。触らせないよ」
 そう言われると触りたくなるものだ。
煌は再度手を伸ばして今度は匠の胸を揉んだ。
「アッ!も、もう我慢のできない子だなー」
 言いながら匠は頬を紅潮させていた。
「好きにしていいよ」
 その言葉を待っていましたとばかりに、煌は自分のヘアーに擦れている匠の茎をつかんだ。
体に似合う細さだが長い。
片手で扱こうとしても体勢が悪く、なかなかできない。
 その間にも匠は「ウン、ウン」とかすれた声を出して今にも倒れてきそうな雰囲気だ。
「あ…もう、なんて元気な茎なんだ!」
 匠が床に手をついて、結合部が煌に見えるようにしながら抜き差しを続けると、ようやく爆ぜた。
煌が結合部を見て興奮したからだ。

「はー…。元気すぎる。これだから体育会系は…」
 秘部から白い精を垂らしながら匠がため息をついている。
その隙に煌は体を起こすと匠の両足を持って引き寄せた。
「えっ!」
「まだ、したい。いいよね?」
「いいよ。負けたよ、煌に」
 煌は匠の秘部に再度挿入して、ぐいぐいと突き上げた。
「アッ、アッ…」
 耳元で喘ぎ声を聞くとさらに燃えるようだ、煌は何度も強く突き上げていく。
「ううん…煌、あ、もう…いい!」
 力の抜けた匠の中に煌は精を放った。
しかしまだ抜けない。
匠の中をかき回し、「もっと欲しい」と攻め立てた。
「もう、無理!やめ…こら、煌!」
 匠が拒んでも煌は再び中で暴れまくるので、匠は涙をにじませながら煌の肩を噛んだ。
「あ、いたっ!」
「そこまでだよ。一体…僕を壊す気?」
 匠が汗を浮かべながら煌の頬を軽く叩いた。
「セックスを覚えたての猿じゃないんだから。セーブしてよ」
「あ、ごめん。気持ちよかったから…」
「ふうん?それはよかった」
 匠は不意に煌にキスをした。
「相性がいいね、やっぱり。童貞卒業おめでとう」
「これで?」
「そんな寂しそうな顔をするなよ」
 匠は吹き出しながら下着を身につけた。
そしてシャツを着ながら「昼間に言われた件だけどさ」と言い出した。
「付き合ってもいいよ。ただし植物を優先するけどね」
「ま、マジで?」
「嬉しそうな顔だなー。ま、いいか」
 匠は唇に人差し指を当てて「内緒だよ?」と念を押した。
そして携帯の番号とアドレスを煌に渡した。
「いつでもかけていいよ」
「ありがとう!」
 願が叶った煌は、帰宅しても笑顔のままだった。
親が不思議がるほど夕食をたくさん食べて、そしてすぐに自室にとじこもった。

さっそく携帯を取り出して匠に連絡を取ってみた。
「上原です」
『あ、煌?どうかした?』
「匠、ありがとう。なんか自信がついた気がする」
『それはよかったね』
 そんな会話をしながら、煌はすぐにでも会いたい気持ちにかられる。
「今から会える?」
『時計を見ろ。今日はおしまい、早く寝ろ!』
 匠に切られてしまったが、煌は興奮が冷めやらない。
ネットでも見て長い夜をすごそうかと思い、パソコンを立ち上げると動画サイトに行ってみた。
いくら可愛い女子が胸を揉まれていても、人妻が乱れていても、煌は性欲を感じなかった。

「こんなものが流行るんだなー」
 まるで他人事のようにぼやく。
そして悩み続けた日々は、霧が晴れたように清清しい1日に変わった。
「次は俺が変わる番なんだな」
 ひと息ついた煌はワードに文章を打ち始めた。


9話に続きます

 煌の脳裏には以前仲間に見せられたハメ撮り動画の画像が浮かぶ。
しかもそれは公園での堂々としたセックスで、男の上に女性がまたがって喘ぎながら腰を震わせるものだった。
 胸をあらわにしてスカートもまくりあげている女性に男が突き上げて続けている。
騎乗位と言うセックスの体位は知っていたが、それを初めて見たので驚いた記憶がある。
 なぜか女性に興奮を覚えない煌は、その動画しか見たことがない。
しかし世の中にはさまざまな体位があることは知っている。
エロ本でも、スポーツ新聞でもネットでもそれくらいの情報は流れているからだ。
意識しなくても目に入るので覚えてしまうのだ。

「エロいことでも考えている?」
「はっ!」
 匠に声をかけられて煌は冷や汗をかいた。
それは緊張しているからで、まるで頭から水をかぶったかのように滝の汗を流していた。
「汗、拭きなよ」
 匠がタオルを渡してくれた。
それを使いながら煌は落ち着かない。
タオルから匠の香りがしそうだからだ。
「これくらいで汗をかかれては困るなー。園芸部に向いていないや」
「俺はバスケ部だよ」
「お。言い返した。いいねー、ちゃんと言えるじゃないか」
 そんなことを言われて煌はようやく今まで反論していなかったことに気付いた。
言い返そうとして言葉を噛む事は多々あったが。
「自分の思う事はちゃんと言わなくちゃね。黙ってやり過ごしたら相手には伝わらないから」
「そうだね」
 煌は仲間に参加しないと言えなかった事、カオルを酷い目に遭わせてしまった事、そして匠にフェラの続きをしたいと強引に言えなかった事を思い返した。
 別に勇気の要る事ではなかったのに、言えないのは度胸が無いからだろう。
煌はようやく気付いたが、時すでに遅しだろうか。
それともまだ間に合うのか、やり直しができるのか。

 匠は考え込む煌を見ずに植えた花の根元がぐらついていないか点検を続けている。
そして枯れた葉をむしったり、虫を駆除したりして手のかかる作業だが楽しそうだ。

「頭がよくても世間を渡る術がないんだな。ま、そんなところも面白くていいけどさ」
「面白いって…」
「ん?」
 匠が顔を上げて煌を見た。
「面白いってなんだよ。俺はいつでも真面目に生きているつもりなのに」
「言い方を間違えたね、ごめん。僕は煌が好きだからさ、どうしても興味が湧いてしまう」
 そして「ふふ」と笑った。
「馬鹿にしているつもりはないよ。気分を害したなら謝る、ごめん」
「あ、いいよ。そこまでは思っていなかったから」
 煌が慌てて弁解すると匠が「男らしくていい」と言い出した。
「なにを思ったのか知らないけど、この数分で煌が変わった気がする。あ、もしかしてセックスができるから?」
「や、そ・そうかな…」
「あはは。やっぱり興味を持ってしまう。ところで煌は女子が嫌いなの?」
「いや?興味はないけど、嫌いではないな」
「ふーん。それなのに僕としたい?」
「好きだから・だよ」
「いい顔」
 匠は煌を見つめながら「僕の言うとおりにしてごらん。大丈夫、愛しているから」と小声で言った。

 
 時計が17時を指すとどこの部活の子たちも帰り支度を始める。
匠も軍手を外して「そろそろあがろうか」と言い出した。
2人そろって手を洗いながら「教室は施錠されるから校舎の裏側かなー」と匠がぼやく。
「なんのこと?」
「セックスする場所。校内は無理かなー」
「あるよ。ある、バスケ部の部室とか!」
 煌は自信を持って薦めたが、匠が鼻を押さえている。
「汗臭そうだなー」
「じゃあ、園芸部の部室とか…ダメ?」
「植物に見られながらのセックスか。悪くないね。じゃ、先に行って。僕は鍵だけもらってくるから」
 
 匠は職員室で鍵を預かり、理由として部室の掃除をあげたらしい。
「1時間で片付けますからって言ったからね」
「そうなんだ」
 セックス未経験の煌にはどの程度の時間がかかるのか想像ができない。
「余裕でしょう」
 しかし匠は鼻歌を歌いながら窓のカーテンを閉めてシャツを脱ぎ始めた。
「煌は脱がなくていい。ほら、床に寝なよ」
「う、うん」
 言われるままに固い床に寝転ぶと、なんと匠が馬乗りになった。
これは騎乗位ではないか。
「な、匠…これって」
「僕を触りたいんだろう?遠慮しなくていいよ」
 そして煌の腕を取ると、自分の胸に押し当てた。
「撫でて」
 言われるままに恐る恐る撫でると乳首が立った。
「揉んでもいいよ」
「匠、これを摘みたい」
 煌は匠の薄茶色の乳首に触れた。
「いいよ。好きにしなよ」
 かすれた匠の声に、早くも煌は体が熱くなってしまった。
「摘んで、ひっぱって。吸ってもいいけど遠いかな?」
 匠は前のめりになって胸を煌の口元に近づけた。
煌は興奮してしまい、乳首を指で挟むとぐりぐりと扱き、そしてそれを口に含んだ。
小さいが固くなっている乳首を舌で舐めて、そして吸った。
「うっ、うん!」
 匠の喘ぎが聞こえ始め、煌は夢中になってきた。
乳首を吸ってはもう片方の乳首を指で扱く。
そしてそのまま体に舌をはわせておへそのまわりも舐めた。
「ほ、本当に初めて?」
 匠が改めて聞くほど、煌は愛撫に夢中だ。
「跡をつけてもいい?」
「いいよ」
 匠がうなづくと煌はなんと乳輪を吸った。
そこには赤い跡が残り、匠は目を丸くする。
「こんなところにされるの、初めてだよ」
 そして姿勢を正すと自らボトムを脱ぎ、下着姿になった。
「煌のを先にしないとね。1時間しかないから」
 匠は煌の股間を撫でて「固い」と微笑みながらジッパーを下ろし、茎を取り出した。

8話に続きます

 煌は自分にブラジャーに包まれた巨乳を見せたカオルと、フェラだけでおあずけをした匠の思惑は同じではないのかと考えた。
 なんて情けないことだろう、嘲り、そしてからかわれているのだと思うと胸が張り裂けそうだ。
しかしことの発端は自分に責任があるので、なにも言い返せないし匠への想いも消せない。
息詰まった感情は煌を疲労させていた。

 放課後になり、煌が帰宅しようとカバンを持つと匠が歩み寄ってきた。
「副委員長の件は聞いた?」
「え?」
 唐突な質問に煌は首をかしげる。
「煌がいない間に副委員長を決めなおしたんだよ。で、僕がそれになった」
「はあっ?副委員長は女子じゃないのか」
「元副委員長の彼女によれば我慢も限界、『委員長のサポートができかねます』だって。
たしかに煌は自己主張がないし、今日みたいに授業をサボり続けたら誰でもそう思うだろうね」
 匠は腰に手をあてて「でしょう?」と賛同を求めるが煌はどう対処していいのか、言葉に詰まる。
「優等生なんだから、自信を持ってクラスの連中を引っ張っていかないと評価は落ちる一方だよ」
「俺は優等生じゃないよ」
 煌がぼやくが、匠は「教師の間では高評価なんだよ?」と続ける。
「教師なんて毎日毎時間ここの教室にいるわけじゃないからね。今のうちにクラスの連中の評価を上げておかないと、ばれちゃうよ」
「キツイな…」
 匠の言い方は煌を窮地に追い込むもので、煌は目眩すら感じた。
好意を持っている相手から容赦なく冷たい言葉をかけられたら誰でも困惑するだろう。
「1人にさせてくれないか。考えたいんだ」
「そう?1人で考えていてもいい案は出ないんじゃない?僕がサポートするよ。はい、これを持って」
「は?」
 渡されたのはなんと軍手だ。
「今日はカオルちゃんが手伝えないらしいから、ピンチヒッター」
「俺が花壇の手入れをするのか?」
「そうだよ。ま、それは口実で、僕としては副委員長になったから煌と話をしたいんだけどね」
「あ、それならやるよ」 
 匠と話ができるなら花壇でもなんでも手伝おうと煌は思った。
しかしバスケ部を「体調が悪いから」と休んだのに花壇の手入れをしていたらまずいと考え直す。
「ごめん、今日はやっぱり帰る」
「それは困る。行くよ、ほら」
 匠が煌の手首をつかんで走り出した。

「あー。なるちゃん、廊下を走ったら先生に怒られるよ」
「なるちゃん、ここは運動場じゃないんだよー」
 匠の姿を見て女子が陽気に声をかけてくるが、匠は手を振っただけで立ち止まらない。
煌は匠の足が速いことに気付く。
教室から下駄箱までは階段を含めてゆうに50メートルはくだらない。
それを駆け抜ける速さはどうだ、もしかすると自分よりも早いのではないかと煌は感じた。

「…あー、苦しいっ!」
 下駄箱に着いた途端に手首は離され、匠が息を切らしていた。
「階段よりも直線コースがきつかったなー。あー、走った・走った」
「匠、あのさ」
「ん?ようやく話しかける気になった?」
「俺、バスケ部を休んでいるんだ。だから手伝えないよ」
「バスケ部の連中に悪いから?気にしないでいいんじゃない?僕たちはクラスのことを考える時間がいるんだからさ。そのついでに花壇を手入れすると思えば楽だよ」
 煌はこのままでは匠のいいように使われる気がした。
しかし惚れた弱みがある。
匠も煌を好きと言ったが、先程からの冷たい態度を受けたせいで信じていいのかわからない。
「じれったいな!僕が無理矢理誘ったって言えばいいよ」
「そ、それは」
「事実だからそれでいい。よし、花壇に行くよ」
 匠は靴を履き替えて花壇に向かう。
それを慌てて煌が追いかけて「そんな言い方をしたら匠が悪者だ」と言うが匠は見返って笑う。
「やんちゃな副委員長をおさえきれませんでしたって言うのはどう?」
 煌は負けたと思った。


 初夏の夕方は明るい。
まだ熱を持った日差しが照りつける中、2人でしゃがみこんで花壇の手入れをしながら匠は「今のままではクラスにまとまりがなくて当然」と話始めた。
「別にいつもまとまっていなくていいんだけど、一致団結する力がない気がする」
「そうかな」
「それを引っ張るのが委員長だよ?」
「うん…そうだね」
 煮え切らない態度の煌に、匠は「こら」と肩を叩いた。
「自信を持てって何回言わせるんだ。それに僕がついているから大丈夫だよ」
 匠は自分に自信があるらしく胸を張った。
しかし煌はどうしたらいいのかわからない。
「うーん…。煌がどうしたら自信を持つのか考えるべきか?」
 匠は軍手をした手を空にかざして「うーん」と唸る。
「煌、童貞?」
「えっ!」
「童貞かー。それならいまひとつ乗り切らない態度も理解できるなー」
 煌は動揺して顔が熱くなってくる。
「しかし頭がよくて容姿も文句なしの男が童貞とはねー」
 匠は煌の顔を覗き込んだ。

「僕とセックスしようか?」
「ええっ?」
「花壇の手入れが終ったらねー」
 さらりと誘いをかけられて、ますます煌は動揺した。
胸の鼓動も激しい、このまま倒れてしまうのではないかとさえ感じて落ち着かない。

「どうかした?僕が好きなんだろう?」
「え、それは、匠もそうなんだろう…?」
「好きだよ。煌は見た目と中身のギャップが面白いからね。ま、それに相性も良さそうだし」
 煌は雑草を抜きながら生唾を飲んだ。
おあずけをくらっていたものが、ようやく許可されたのだ。
「わかった、早く手入れを終らせる」
「煌?単純だなー」
 匠が「あはは」と明るく笑うが、煌は顔がひきつってしまって笑えなかった。


7話に続きます
 





 それは唇の端から唾液をこぼしてしまうほどのディープなキスで、煌は面食らった。
可愛い顔をした匠からは想像もできない誘いに煌の全身が熱くなってしまう。
特に股間だ、こんなに体は疼くものなのかと初めての経験に煌は放心しそうだ。
「…ベロチューは初めて?」
 匠は息を吐きながら煌の耳元で囁く。
「固くならなくていいよ。僕の言うとおりにしていたら楽しいから」
 そして匠が煌の襟元を広げ、首筋や鎖骨をちゅっと吸った。
この感覚でもはや煌の股間はもたない、両手で匠を押しのけると見られないように足を組んだ。
「どうしたの?」
 匠が目を丸くして煌に問うが、情けないことに煌は今の状況を言えない。
勃起したなんて元々、相手に言えるような性格ではないのだが。
「足…広げてよ」
「えっ」
 匠は見透かしていた。
言ってもなかなか足を開かない煌に業を煮やして、匠は煌の膝の上に乗ってきた。
「わ、危ない」
 足を組んでいたので匠は不安定な格好だ、慌てて煌が足を崩すと匠が口角を上げた。

「僕と、したいんでしょう?」
「な・なにを」
「セックスだよ、委員長さん?」

 匠は床に膝をつき「わわ、触るな」と慌てる煌の手を払って、ジッパーを下ろした。
するとすぐに勃起した茎の先端が覗く。
「いやらしいなあ。キスだけで勃起しちゃうんだ?」
「…そんなことを言うなよ。気持がよかったんだ、それで」
「それで?」
「…何を言えばいいのか、わからない!」
 パニックを起こしそうな煌に、匠は髪を撫でて「よしよし」となだめる。
「このままじゃ教室に戻れないから、僕がしてあげる」
「え?」
「全身の力を抜いて。そうしたらもっと気持ちがよくなるからね」
 匠は煌の下着をぐいと下ろして勃起した茎をつかんだ。
「大きいなー」
「あっ!そ、そんなに強く握られると困るっ!」
 煌が真っ赤な顔で首を振ると「あはは」と匠が吹き出す。
「平気。これからがいいんだよ?」
 匠は煌の茎を下から何度も舐め上げて、唾液で濡らした。
そして口にくわえると、じゅっじゅっと音を立てながらフェラをする。
この吸われる感覚が煌にはたまらない、腰が落ち着かずに震えてしまう。
しかも匠は煌を見上げながらフェラを続けているのだ、あの目に惹かれる煌にとっては恥かしく、そして心をかき乱された。
 麻痺したかのように足が動かない。
ずっと匠がフェラを続けて茎を離さないせいだろう。
「あ…う、うん」
 煌はだんだん苦しくなってきた。
精を出したい心境にかられているのだ。
「な、匠。離れて、すぐに離れて!」
「いいよ。出しちゃいな」
 匠は慣れているのか茎をまた舐めている。
そして「限界?」と聞きながら先端を親指で押した。
「ぐっ、ううう!」
 その衝撃で煌は爆ぜた。
びゅっと精が飛び、匠の顔にそれがかかってしまった。
「わ、ごめん、匠!すぐに拭くから」
 煌は焦ってハンカチを取り出して匠の顔を拭いた。

「慌てすぎ」
「え?」
 余裕ありげな匠が笑っている。

「茎の感じも煌そのものだね。慎重にしようと無駄な努力をしていたけど、僕には勝てないよ?」
「…匠はフェラの経験があるんだ?」
「まあね。でも誰の茎でも舐めるわけじゃないよ。好きな人にしかしない」
 この告白にも煌は動揺したが、匠は平然と立ち上がって煌の頬にキスをした。
「僕とこの続き・セックスがしたい?」
 甘い問いかけに煌は精を放出したすぐ後なのに、頭が冴えてくる。
普通ならぐったりと横たわりたいものだが、まだ「したい」と本能が訴えている。
「…匠!」
 煌は急に立ち上がり、思うままに匠を抱き締めた。

「好きなんだ」
「あ、僕もそうだよ。何回言わせるんだ?」
「付き合いたい」
「セックスがしたいだけじゃないの?」
 匠はまた笑う。
「セックスならいつでもできるけど、植物の世話は今しかできない」
 煌はとんと両手で押されてしまい、匠から離された。
そして匠は何もなかったかのように笑顔で植物に水を与えている。
「おまえたちも大好きだよ」
 ポトスに声をかける匠を見ながら、煌は対処に困った。
体の疼きが治まらないのだ。
しかし匠に言っても続きはないだろう、そう思った煌は園芸部を飛び出してトイレに走った。
そして1人で扱いて、抜いた。
「はあ、はあ、あ…」
 なんとも虚しい行為だ。
しかも扱く間、ずっと匠の顔を思い出していた。
「セックスがしたいだけじゃない…」
 煌は思わずつぶやいた独り言にさえ赤面した。
体の疼きは簡単に治まるものではなかった。
しばらくトイレから出られず、煌は頭を抱えた。

 すると誰かがドアをノックしてくる。
ノックをして返すと「煌?授業が始まるよ」と匠の声がした。
「さぼる」
「今日はさぼってばかりだね」
 匠の顔は見えないが、笑っているのだろうと煌は思った。
匠の体で達することができたなら、こんな惨めな思いはせずに済んだだろう。
「…これが罰なのか」
 煌は行き場の無い性欲を持て余し、自分の体を撫でると泣けてしまいそうだった。


6話に続きます






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