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「いや、そんな。店長さんだけが頼りなのにそんなことを言われると僕は…」
 創の目の前で琉が顧客と電話で話し込んでいる。
しかも目を潤ませて「お願いです」と話しているあたり、注文がキャンセルなのかと創は思った。
だがそれだけの理由で涙をこぼす理由になるだろうか。
大の男がみっともないと、創は呆れていた。
 無言でテイッシュを箱ごと琉のデスクに置くと、琉が一瞬だけ創を見上げた。

「ん?」
 なんと泣いているはずの琉が微笑んだのだ。

「ええ、店長さん。僕にできることならなんでも。ええ、はい」
 顧客には涙声で訴えるのだが、どうやらこれは演技だと創は気付いた。
「とんでもない俳優だ…」
 
 創が驚いていると部長が「今日も切れ味がいいな。これでまた注文をとるぞ」とにやりと笑う。
「部長、これは…」
「なんだ。知らなかったのか?秋山の隠し技・泣き落としとすがりつきだ」
 あまりにもあっさりと部長が言うので、創は目を丸くした。
「秋山は小顔で可愛い容姿だろう?それに背が低いのを武器にして顧客の懐に飛び込むんだよ」
「えっ?」
「顧客には元々可愛がられているから、お願いをすれば十中八九・注文を取れる」
 創は「なんてあざといんだ」と言葉を失う。
「ははは。1度秋山と一緒に顧客に挨拶したらどうだ?」
 部長は満足げに笑うと「うちのエースだな」と琉を見てうなづいた。

 その言葉に創は心中穏やかではない。
自分がナンバー1だったのに、覆される日が間近に来ていたのだ。
しかもそれが出世欲のない琉だとは。
 
 混乱しかけた創の前で受話器を置いた琉が「なに?」と聞いてくる。
「僕の顔ばかり見て、どうかした?」
「いや、なんでもない」
「あ、そう」
 琉は立ち上がると部長のデスクに駆け寄り「のし紙ライターの注文を受けました」と報告した。
「おお!凄いじゃないか!あれは130000円の機械だぞ?」
「あ、1台じゃなくて5台です。他店にも使ってもらうことになりました」
「素晴らしい!」
 部長が喜んで立ち上がり、琉に拍手をした。
「ありがとうございます。ちなみにのし紙も当社で請け負うことにしてもらいました」
「そつがない」
 部長は深くうなづいて背の低い琉の頭を撫でている。
「これでわが部署の今月の成績は昨年割れを回避したぞ」
「わー。部長。髪が乱れます」
「元々くしゃくしゃじゃないか」
 事務員たちも一斉に拍手をして「さすが、やるわねー」と賛辞の声を惜しまない。
 
 しかし創は複雑な気持ちでいた。
携帯を持って喫煙室に向かうと顧客に連絡を取る。
買い物カゴの件で色よい回答が欲しいのだ。
だが、店長は忙しいらしく取り次いでもらえなかった。
 
 琉のように姑息な手段で注文を受けるのは邪道だと創は思っている。
だが逆に、今まで正攻法で受注してきた自分が馬鹿らしくも思う。
 ナンバー1の実力を持つはずの創は、追い込まれた気がした。
これで買い物カゴの注文を取れなければ今月の営業成績は2番手に落ちることだろう。
 男としてのプライド、そして出世欲。
創は心の中で葛藤しながら、それでも不思議と琉をうとましくは思えなかった。
毎日口ケンカをしている割に少しは琉のことをかっていたようだ。

 それが同僚だからなのか、それともデスクがお見合い状態なせいなのか。
創ははっきりとしないこの想いを持て余していた。

4話に続きます
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男はどうやらマッサージを職とする・昔で言う「アンマさん」なのだろう。
熱心に人妻の足を撫でるようにマッサージを続けるが、やがてその手は股間に達した。
「やめて」
 人妻の声は男を制することができない。
哀れにも人妻は股間はおろか胸元まで乱されて、豊かな乳房が男にわしづかみされた。


「何を見ているんだ!」
 帰社した創が眉間に皺を寄せながら、先に帰社していた琉を叱りつける。
「たまにはいいじゃん。人妻ものだよ」
 敵はあっけらかんとしたものである。
「会社のパソコンを使ってエロ動画を見るとはたいした度胸だ」
「まーね。これくらいの息抜きをさせてもらわないと気力が続かないよ」
「何を言っているんだ。仕事場だぞ!さっさと消せ!」
 琉は「今からいいところなのにな」と不平をこぼしながらサイトを閉じた。

「まったく。そんなものを昼間から見る奴の気が知れない」
 創は眼鏡を外してクリーナーでレンズを拭き始めた。
その顔を琉が珍しそうに眺めている。
「…なんだ?」
「目、切れ長なんだねー。こうしてじろじろと見たことがなかったからさ、初めて知った」
「…切れ長だったらなんだって言うんだ」
「そうカリカリするなって。ああ、どうしてそんなにいつも苛立つの?」
 琉はからかっているわけではない。
興味を持ったので聞いただけだ。
しかし年中苛立つ創にとっては、火に油を注ぐようなものだった。
 創は眼鏡を拭き終えて再びかけると、目の前で頬杖をついている琉をにらんだ。

「おまえとは話にならない」
「ああ、そう?思い込みじゃね?」

 2人の思惑はそれぞれが違う方向を向いている。
とても相容れない状況に、またしても事務員たちが給湯室に逃げ込んでいる。

「毎日、飽きないものねー。話が合わないのに会話しようなんておかしくない?」
「秋山くんが面白がっているようにも見えるけど」
 事務員たちもいい迷惑である。
「とにかくこの空気はもたないわ。そのうち部長に相談しようかしらね」
 誰が見ても反りの合わない2人なので、デスクの場所を変えるように提案しようというわけだ。
「でも『お見合い席』でかれこれ1年以上が過ぎているじゃない?今更無理よね」
 事務員たちは「ああ」とため息をつき、2人の会話が静まるのを見計らって席に戻った。

「ところで今日の首尾は?」
 創が琉に聞くと「事務用品はすべて受け持つことになった」とため息まじりに答える。
「事務用品か。粗利が取れないな」
 
 この商社は大手スーパーの包装資材を卸している。
しかし最近のエコ活動により、スーパーではマイバッグ持参運動を行っているので大打撃だ。
 昨年割れを起こしている現状で、営業マンとしては新たな注文をとるのに必死なのだ。
粗利が微々たる事務用品であっても現状よりも1歩前進と見るべきか、
それともピッキングに手間がかかって時間の浪費と見るべきなのか。

「でもラミネートマシーンも売れたよ」
「えっ?」
 創が初めて琉を見直した。
「まさか98000円の、高いほうか?」
「うん。35000円のマシーンは家庭用だから、連続使用に耐えうるほうがいいって勧めた」
「やったじゃないか!」
 創が珍しく手を叩いた。
そして「98000円なら粗利が30000円ってところか。大きいな」とうなづく。
「それでラミネートフィルムも全サイズ注文をとったから、事務用品の粗利は少なくてもいいかなって」
 琉が続けると創はやけに喜んで「フィルムも粗利が取れる。凄いな!」と誉めた。
その姿に琉が「僕がトップに立ったりして?」と笑う。

 すると創は眼鏡を直しながら「調子に乗るなよ」と釘を刺した。
「俺はそう簡単にナンバー1の座を譲らない。出世がかかっているんだからな」
「へえ?」
「事務用品なんて細かいものじゃなくて、俺は買い物カゴをプレゼンしてきた。あれなら粗利が取れる」
「うまくいくかな」
 自信満々な態度の創に琉が口角を上げた。
「は。俺を馬鹿にしているのか?買い物カゴは1店舗につき平均500は使用するんだぞ」
「よく調べたものだねー」
「当然だ。これでおまえよりも先に上に行く」
 いかにも出世をもくろむ男の野望である。

「そんなに急がなくてもいいんじゃない?」
 琉のつぶやきに創は「はあ?」と首をかしげる。
「あ、そうか、おまえは出世欲がなかったんだな。しかし男らしくないぞ」
 創がまた説教を始めようとしたとき、部長が帰社した。
「お帰りなさい」
 2人はそれぞれ今日の首尾を部長に報告すると、結果を出せた琉が誉められた。
創の提案した買い物カゴの返事はまだだ。
この注文が取れたら自分の勝ちだとばかりに、創は隣で誉められている琉を横目で見た。
『次は俺だ』と心の中で思い、また苛立たしさを感じた。

「創、ちょっと」
 急に琉に呼ばれて喫煙室に入ると、琉は煙草をくわえた。

「怒り丸出し。みっともなくね?」
 琉は創を見上げながらぼやく。
「怒ってなんかいない。それよりも煙草は止めるんじゃなかったのか」
「3日我慢して元どおり」
「…意志の弱い奴だ」
 創が呆れていると「なあ」と琉が身を乗り出した。

「結構、僕が話したことを覚えていたりするんだねー」
「ああ、覚えているさ。ろくでもないことばかりだけどな」
「ふうん。興味があったりする?」
「誰に?おまえに?そんなことは一切ない!」
 創は切って捨てるような言い方をするが、琉は楽しそうに笑う。
「普通は興味がなければ聞き流すんじゃね?」
 腕組をした琉に、創は「なにをいっているんだ?」と理解できない様子だ。
「灰が落ちるぞ、ちゃんとしろよ」
 琉のくわえたままの煙草から今にも灰が落ちそうだ。
「おっかしーの」
 琉は笑いながら煙草を灰皿に押し付けて揉み消した。
白くて細い煙が天井に上っていく。

「自分の気持ちから逃げなくてもいいのにさ」
「逃げる?なんのことだ」
 まだ琉の言わんとするところが見えない創は眉間に皺を寄せた。
「ま、いいや。僕は毎日楽しんでいるからねー」
 誘っておいて先にデスクへ戻る琉の後ろ姿を見ながら、創は「いいかげんな奴だ」とつぶやいた。

3話に続きます
「子供じゃないんだから、机の上くらい綺麗にしろ。見苦しい」
 営業先から帰社した藤川創(ふじかわ はじめ)は眼鏡を直しながら、
目の前の席に座っている同僚の秋山琉(あきやま りゅう)を叱り付けた。

「毎日同じことを言わせるんじゃない、聞いているのか?」
「ああ、聞いているよ。だから少しずつ片付けているじゃん」
 
 しかし琉の片付け方は創の思うようなものではなかった。
ファイルを一冊しまうと「あ、思い出した」と騒ぎ、違うファイルを取り出してパソコンに向かう。
そして「あの店に納品した型番はなんだっけ」などと言いながらまたファイルを取り出す。
 そんなときに琉宛ての電話が鳴れば収集がつかない。
「毎度ありがとうございます。●●商事です」
 そう言いながらメモを取り出す。
そして用件をメモに書くと、わざわざポストイットに清書してパソコンに貼り付ける。
これで乱れたデスクの出来上がりだ。

「要領が悪い!」
 この商社で営業成績ナンバー1の実績を持つ創は怒り心頭に達した。
「なんでそんなに怒鳴るかなー」
「見ていてイライラするんだ、琉、おまえにはな!」
 またしても創の怒鳴り声が室内に響く。
しかし琉はおびえたり怯む様子もなく、あっけらかんとした態度である。
これでは何を言おうと馬の耳に念仏の状態だ、大抵の人はここで諦めるのだが創は強かった。
眼鏡のズレを直しながら「早く片付けろ!」と続けた。
「俺のデスクにまでファイルが流れ込んでいるじゃないか!」
「目の前の席だから仕方なくね?」
「琉!」
 創が両手でデスクを叩くと、室内が静まり返った。
この空気に琉が周りを見渡すと事務員の女性が給湯室に逃げている。
そして遠巻きに見守るほど、創と琉の仲は悪かった。


――2人は昨年同期入社したのだ。
年は共に23歳、怒鳴りあうほど子供ではないのだが創の短期と琉の自己中な性格が災いだった。
 創は黒髪のベリーショートで縁なしの眼鏡をかけているせいか、知的な雰囲気の漂う営業マンだ。
180を越える身長も彼の存在を際立たせている。
そして琉は今どきの髪にエアリー感を持たせたパーマをかけ、しかも茶髪。
165センチの身長も手伝って、とても一流の商社に勤める営業マンには見えない。


「早く片付けろ。部長が帰社したら俺よりも怒鳴るぞ」
「はーい」
「伸ばすな!」
 
 ようやく落ち着きそうな空気を感じ取った事務員たちがデスクに戻ってくる。
そしてひそひそと噂話を始めた。
「藤川さんって、怒鳴りすぎてそのうち脳の血管が破れちゃうんじゃない?」
「イライラしすぎよねー。秋山くんだって頑張っているのに」
 どうやら女性陣には仕事のできる創よりも、2番手の琉のほうが受けはいいらしい。
「藤川さんって女嫌いって聞いたことがある」
「えー!じゃあ彼女がいないの?」
「いるわけがないじゃない。あんなにイライラする人よ?」

 この噂話がたまたま琉の耳に入ってきた。
「創は彼女がいないの?」
 琉はファイルで扇ぎながら目の前で渋い顔をしている創に聞いた。
「いない。だが、それがどうかしたのか」
 創は「扇いでいないで、さっさと片付けろ」と手で払う。
「好きな人もいないの?」
 まだくだらない質問を続ける琉に、創は呆れてため息をつきながら「好きな人はいる」と答えた。
「しかしおまえに教える義理はない。早くデスクの上を片付けろ」
「鉄壁だねー。個人情報は教えないタイプだ」
 琉が茶化しても創はびくともしない。
「定時で帰りたいんだろう?だったら無駄口を叩いていないでさっさと片付けろ」
「はーい」
「伸ばすな!馬鹿っぽい!」

 言い争いばかり続ける2人だが、帰宅する方向が同じなので自然と一緒に帰る羽目になる。
この商社はエコを推奨していてマイカー通勤を禁止し、公共交通機関を使うことになっていた。
「僕、混んでいる電車ってマジ苦手」
「…いい加減に妙な言葉使いを改めろ。お客の前でそんな言葉使いをしたら契約が取れないぞ」
「はー。そういうもんですかねー」
 同意していないのは明白だ。
「だからおまえは2番手なんだ。俺を抜くことができない」
「2番手で十分。僕は上を目指していないから」
「はあっ?」
 これは予想外だったらしく、創の声が裏返った。
「男が上を目指さなくてどうするんだ!」
「わかっていないなー。僕は創を抜く気にはなれないんだ。それだけのこと」
 琉が「ふふ」と笑うが、創には意味が伝わらなかった。

「抜けるはずがないからって言い訳か」
「はあ?…なんか面倒くさい人だなー」
 
 琉は目を丸くしつつ、創を見上げた。
「2年もこうして一緒に通勤しているのに、どうもわかってもらえない感じ」
 その言葉さえ創には理解不能だ。
「ま、いいけど。怒鳴られるよりはマシだ」
 含みをもたせる琉の言葉に、創は首をかしげるばかりだった。

2話に続きます
自転車に乗る女の子のむき出しの足が眩しすぎます
ショートパンツの丈が短すぎる!と思うのは私くらいでしょうか…

夏が来ましたね~ まだ名古屋は梅雨明けしていないみたいですけど
いいな~夏休み
大手を振って遊べるのがうらやましいのです


ここのところほぼ毎日ホモを書いていましたが、これからも…ホモです
暑いので毎日の更新はできないと思いますが、
お時間のあるときにでもお立寄りくださると嬉しいです

なかなかお礼が書けませんでしたが拍手をありがとうございます!
真夏とか小町とか高尾太夫も読んでいただいているようで嬉しいかぎりです
少しでも癒しになればと思う次第です


ではまた ホモなお話でお会い出来たら幸いです


柊リンゴ

本店は相変わらず停滞中ですみません
2009.07.17 視界良好・22
 シャツを着ると乳首が布と擦れて痛くなる、涼真は初めてそんな経験をした。
セックスを終えてシャツを着ようとしたら擦れるのだ。
以前にも唯斗に「擦れて痛くなかった?」と聞かれた場所だ。
「…マジで痛いし、なんか恥かしいし」
 そんな独り言をつぶやいて、今日はシャツの上に何か着ないといけないなと思う。
まだ隣で寝ている唯斗を起こさないように部屋を出て、自分の部屋に戻ると大学へ行く準備をした。


「この暑いのに上着なんか着るか?」
 友人の里田が驚いて「風邪でもひいた?」と心配する。
なにせ今日は35度を越える真夏日、皆が薄手の服を着ているというのに涼真は重ね着なのだ。
「見ているだけで汗をかきそう。だって今は最高に暑い昼間だぜ?どうしたんだよ」
「…なんでもないよ」
 涼真は事情を話す気にもなれないし、上着も脱げない。
乳首のこともあるが、唯斗が鎖骨にキスマークをつけたからだ。
これはとんでもないことをしてくれたと涼真が心の中で嘆いていると、
窓から覗く駐車場に見慣れた車が停車したのを見つけた。

「事務所に行ってくる」
「え?どうしたんだよ、涼真?」
 里田を置いて事務所まで賭けて行くと、はたしてそこに唯斗の姿があった。

「お、涼真だ。あれっ上着?」
 唯斗は目を丸くして涼真を眺めている。
「暑くないの?」
「もちろん暑いですけど…着ていないと大変なことになるんです!」
 涼真の言い方で気付いたらしく、唯斗が「あはは」と笑い出した。
「あそこに絆創膏でも貼ったらいいのに」
「その手がありましたか…」
 涼真が素直に応じると唯斗がまた吹き出す。
「かーわいいねー。ところで今日は何時に終れるの?」
「もう講義は終ったので帰りますけど」
「じゃあ、送ってあげるよ。今日は会社には直行直帰って連絡してあるからさ」
 涼真は「直行直帰?」と言葉の意味を尋ねた。
「会社に寄らずに自宅からお得意様のところに行って、そのまま帰宅しますってこと」
「そんなこともあるんですか…」
 会社勤めをしていない涼真には新鮮な響きだ。
「でもまだ16時ですよ?」
「いーのいーの。たまには楽をさせてもらわないとねー。息が詰まるでしょ」
「そんなことで会社員が勤まるんですか」

「俺は大丈夫なの。営業成績の良い営業マンだし」
「へえ…」

 唯斗から聞く話は別の世界のことのように思えた。
会社の仕組みを知らない涼真は、唯斗の言葉に興味すら覚える。
「じゃ、ここの納品も済んだし・帰ろうか」
「あ、はい」
 涼真は素直に従った。
気分が上向きになるのを感じながら事務員さんに頭を下げて事務所を出る。

「やっぱり躾の行き届いた子だよねー」
 事務所を出ると唯斗が涼真の髪を撫でた。
「は・恥かしいことをしないでくださいよ」
「そう?」
 唯斗は首をかしげて涼真を眺める。
「あんまり見ないでください」
「赤面症は治らないねー。そんなところも好みだけど」
 これではいじられているのか、それとも誉められているのかわからない。
唯斗にはからかわれっぱなしだと涼真は思う。
だが不快ではない。
これは距離が縮まったおかげだろうか。
 
「さ、乗って」
 涼真は素直に唯斗の車に乗り込み、シートベルトを締めた。
その姿を見て唯斗が咳払いをする。
「奥ゆかしいなー。助手席においで」
「いいんですか?」
 涼真は改めて助手席に座った。

「隣に若い子を座らせるのは初めてだなー」
「え。いつもは誰が乗っているんですか?」
「部長とかー。偉い人ばっか。運転していてもつまらん」
「これって唯斗さんの車でしょう?」
「そうだけどねー。社用車が足りないから俺だけ自家用車で仕事をしているの」
 唯斗は「行くよー」と言いながら車を発進させた。
その横顔を涼真はじっと見つめている。
「前を向いたら?俺ばかり見ていても何も出ないよ」
「…スリムなスーツ姿が映えますね」
「あれっ。誉めているの?なーんか嬉しいな」
 唯斗は口角を上げて、まんざらでもない表情だ。
涼真はその横顔を見ながら勇気を出して無防備な唯斗の膝に手を伸ばした。

「運転中だからおさわり厳禁」
 唯斗に注意されたが、涼真はこのスーツに隠された蝶々が気になる。
「唯斗さん自身が蝶々みたいにひらひらと捕まえにくいから、蝶々を彫ったんですか?」
「んー、そうでもないけど。あれは趣味だし。だけど俺ってそうなの?捕まえにくい?」
「そうですよ。『好き』って言われても、僕はからかわれてばかりだし」
 涼真が思いのままに話すと、唯斗は「へえー」と唇を尖らせた。
「初めて言われたかも」
「えっ。そうなんですか?」
 涼真が意外そうに声を上げると唯斗が吹き出す。
「俺自身は誰にも捕まりたくないからかわして生きてきたけどね。初めて指摘された」
「…今までの交際が浅かったからじゃないですか?」
「言えてる」
 唯斗はなにやら上機嫌でハンドルをつかみ「とうとう捕まったってわけだ」とつぶやいた。
「離しませんよ?」
「上等だね」
 涼真の啖呵を受けて、唯斗が微笑んだ。
「俺も離れる気はないから」
 
 車は国道を抜けて一路マンションへと急いだ。
「さーて、涼真?今日はどちらの部屋で寝るのかな?」
「唯斗さんの部屋がいいです」
「もう引っ越してきたら?」
「それは…」
 口ごもる涼真に「それは?」と唯斗が聞き返す。

「しばらくは通います。僕だって部屋が必要なんですから」
「へーえ?それでまた俺の部屋を覗くの?」
「しませんよ、そんなことは!」
 唯斗は顔を赤くしながら反論する涼真を見て「あはは」と笑う。
「ま、気が向いたら引越ししてきな。いつでも俺は受け入れちゃうから」
「は、はあ」
 涼真は耳まで熱くなったので顔を見られたくなくてうつむいた。
想いが届いた嬉しさと、もしかしたら数日後には一緒に住むことになる感激で目が潤む。
 あの蝶々を触るまで長かった。
そしてこの気まぐれな蝶々を捕まえるのにも時間がかかった。
しかしようやく気持ちを受け止めてくれたのだ。

「年下と付き合うのも悪くないなー」
 唯斗が涼真をちらりと見て微笑んだ。
「いつまでも初心な感じで、楽しい」
 車はマンションの前まで来た。
唯斗はスムーズに駐車させると「おいで」と涼真を誘った。
涼真がシートベルトを外して唯斗の体にしがみつくと唇が重なった。
 やはり離れたくない。
涼真はそう思いながら唯斗と長いキスをした。


終わり

読んでくださってありがとうございました
2009.07.16 視界良好・21
 唯斗に下着の上から股間を揉まれてしまい、涼真は次第に下着が濡れていく。
「は、はあ…や、やめてくださいっ、恥かしい」
 涼真は自分の腕で顔を隠しているが、体は素直で悶えてしまう。
早くも汗を帯びた体に唯斗は満足そうに口角を上げた。
そして下着から顔を出そうとする茎よりも睾丸を揉み始め、これには涼真の体が跳ねた。

「痛いっ!…ウッ、ウウン!」
「いい声になってきたねー」
 
 唯斗は涼真の濡れた下着を下ろすと、とろんとした精液がこぼれる。
それは腿を伝い、なんとも淫猥に涼真の足を濡らした。

「やだ、なんか変な感じが…」
「どうかした?」
「なんか漏れるような感覚がするんですけど…」
「いいんじゃない?気にしないでさ。だけど、そんなことを言うなんて色気も出てきたんだ?」
 それを見ながら唯斗は涼真の勃起した茎をつかんだ。
「も、もう触らないでください!出ちゃいます!」
 切羽詰まった涼真の声に、唯斗がうなづいてみせる。
「いいじゃん。出せば?」

「顔にかかっちゃう!」
 
 もはや涼真は絶叫に近い声を上げた。
「それくらいは覚悟しているって。あれだけ我慢させたんだし?」
「汚したくないんです!」
「出せって。ほら」
 唯斗は中腰になって涼真にキスをした。
潜り込んでくる舌を受け入れると、涼真は腹に力が入らない。
こらえていたものがぴゅっと飛び出して、唯斗の腹を汚した。
その光景を見てしまった涼真は顔が熱くなり、唯斗の唇から離れた。
「すみません!」
「謝ることじゃないでしょ?元気な証拠。可愛いものだよ」
 唯斗はタンクトップを脱ぐと涼真の体勢を変えさえて、その体に圧し掛かった。
「不思議だねー。毎日しても飽きないって感じ」
「唯斗さん!」
 涼真は思いきって唯斗にしがみついた。
「こらこら。俺が動けないだろー?」
 苦笑しながら唯斗が涼真の耳を舐めると、涼真は肩を震わせて力を抜いた。

「はあ、熱い…」
 涼真の体は火照っていた。
その熱を冷ますには唯斗しかいないのだが『欲しい』の一言を躊躇してしまう。
言わなくてもわかって欲しい・涼真はそう思っていた。
 しかし相手はなかなか心をかたむけない唯斗だ。
涼真の想いを知っているのか、それとも気付かないのか、唯斗は涼真の鎖骨にキスをする。
くすぐったくて悶える涼真だが、欲しいものはこれではない。
 我慢を強いられた目には涙が浮かんでしまう。

「もたない感じだねー」
 ようやく唯斗が涼真の涙を指でぬぐい取り、再び股間に手を伸ばす。
「唯斗さん、唯斗さん!」
「もう少し足を開こうか?ねえ、涼真」
 穏やかな声とは逆に、唯斗は大胆に涼真の股を割る。
「ひゃっ!」
 涼真は膝を震わせながらこの恥かしい格好に頬を染めた。
勃起した茎と睾丸、そして秘部までが丸見えの状態だ。
それに汗をかいたのか、ヘアーがしっとりと濡れていて淫靡な光景でもある。

「このまま入れてもイけそう」
 唯斗は軽くうなずくと自分の隆起した茎を握り、涼真の秘部に当てた。
「アッ!」
 触れ合う感触だけで涼真は再び爆ぜてしまう。
「ところてん状態だなー。そんなに感じちゃうんだ?」
「だって、凄く待っていたんです!」
「うん、わかる」
 唯斗は涼真の想いに応えるように茎を挿入した。
そしてやさしく抜き差しを始めると、涼真が「ん、ん、そ・それが好き」と喘ぎだす。
「もっと奥に来てください、もっと・唯斗さん!」
「焦るなよー」
 欲しがる涼真の姿を見て唯斗は悪い気がしなかった。
それどころか自らも奮い立たせられ、力が入り荒っぽく抜き差しをする。
「あっ・あああ!いい、凄くいいっ!」
 涼真は次第に奥に迫る唯斗の茎を感じた。
突き上げてくるそれは腹を破ろうとするかのように暴れる。
「唯斗さんっ」
 何度も名を呼ぶ涼真は次第に恍惚とした表情になっていく。
「あ、いいかも…そこが、そこがいいっ…」
「ここね?」
 唯斗が角度を変えずに突き上げると「う、うううん!」と涼真は体を反らす。
狭いソファーの上で涼真は唯斗の送り出す衝撃を甘受して「ああん!」と叫んだ。
途端に涼真の茎から精液がぴゅっと吹き出て、自分の体はもちろん、唯斗も汚した。

「すぐにイッちゃうなー。そんなところも可愛いものだけどねー」
 唯斗は涼真と肌を合わせてなおも突き上げていた。
肌の合わさるパンパンとした小気味良い音が涼真の耳をくすぐる。
しかし何度も精液を放出したせいか涼真の体力は徐々に失われてしまい、荒い呼吸をしながら、
ただ唯斗に揺らされるままになっていた。
 涼真のだらりと伸びた腕を見ながら、唯斗は「もう少し付き合ってよ」と呼ぶ。
「唯斗さん、僕、もう…」
「その声で十分。すっごくいい感じ」
 唯斗はたたみ掛けるように素早く抜き差しをして「あっ」と珍しく声を上げた。
その声と同時に涼真はあたたかいものを感じた。
唯斗は涼真の中で爆ぜたのだ。
「あー…凄くよかった」
 唯斗は涼真の体に重なった。
「重い?」
「いえ、全然…」
「しばらくこうしていたいんだけど」
「は、はい」
 涼真は唯斗の体に手をまわした。
そしてぎゅっと抱き寄せると小声で「あなたが好きです」と言った。
「うん、知ってる」
「唯斗さんは…」
「俺も好きだから・さ」
 唯斗は涼真と唇を重ねた。
それは短いキスだったが、涼真を安心させるのに丁度よかった。
 唯斗の肩の蝶々を見ながら、涼真はようやく唯斗をつかまえたと感じたのだ。


22話に続きます
2009.07.15 視界良好・20
 涼真は相手が女の子なら、自分のペースに巻き込んでセックスができるのにと思う。
朝から恋焦がれて、ようやく会えたのに自分の体を求めない唯斗に不信感が湧いてしまうのだ。
本当に愛されているのか、わからなくなる。
うつむいたままの涼真に「おなかすいた?」と聞く唯斗が憎らしくもある。

「今は胸焼けがして、食欲がありません」
「ふーん。昼にトンカツを食べたから?」
「えっ!どうして知っているんですか!」
 涼真は驚いて顔を上げた。
「俺は出入りの業者だよ?納品ついでに学食を覗いたら、おまえがいて」
 唯斗はその光景を思い出したようで吹き出した。
「この暑い日にトンカツを食べていたからさ、笑えた」
 そして目に涙を浮かべて大笑いをするので、涼真はなんだか恥かしくなる。
「なかなかガッツがあるんだなーと思った。さすが、若いね」
「…唯斗さんだって若いじゃないですか!」
「俺は無理。こんな日は冷麦で十分」
 
 唯斗は目元を指で拭きながらキッチンに向かい、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
「飲む?」
「いえ、苦手なんです」
「あ、そ」
「…ひゃっ?」
 なんと涼真の頬に唯斗が缶ビールを押し付けたのだ。
「冷たくて気持ちいいでしょ」
「びっくりしました!唯斗さんって子供の頃からいじめっ子だったんでしょう!」
「いじめていないよ?」
「絶対、嘘だ…」
 
 ひんやりする頬を抑えながら、涼真は唯斗を見上げた。
セックスができなくてもいい、こうして側にいられるだけでも十分だと思えたのだ。
 唯斗との距離は近い。
お互いが意識していないからなのか、出会った頃のような違和感を覚えない。
むしろもっと近づきたいくらいだ。

「近くにいるのに拒まないねー」
 涼真は自分の気持ちを読まれた気がした。

「ようやく俺に懐いたか」
「そんな言い方がありますか!僕は犬や猫ではありません」
「わかっているよー。俺のことが好きだって。俺もそうだけどねー」
 涼真の胸の鼓動が高鳴った。
「今日はデートしようか?」
「外に行くんですか?僕は暑いから出たくないです」
 涼真はこの鼓動が悟られないように唯斗から顔を背けるが「もう涼しいんじゃない?」と唯斗が迫る。
「陽が落ちたし、風も出ているからさ」
「ここにいたいです」
 涼真としては2人で出歩くのが恥かしいのだ。
先日のように、また知らない女性が唯斗を見て振り向く姿を見るのかと思うと、
つりあわないと言われているようで居心地の悪さを覚えるからだ。

「んー。じゃあ、どうしたい?」
「言わせるんですか」
 わかりきったことを尋ねられて、涼真は頬を赤く染める。
知らぬうちに汗をかいていたようで、じんわりとシャツが肌に貼りつく感触もする。

「ふふ。凄く可愛いなー」
 唯斗は涼真を急に抱きしめると、その頬を突いた。
「俺に溺れさせようかなーと思ったけど、俺のほうがはまったみたい」
「ええっ?」
 そんな風には見えないのだが、と涼真は目を見開いた。

「体がうずくんでしょ?」
「は、はい」

「正直だねー。そこも可愛いけどさ」
 唯斗は腕時計を見て「結構、我慢できたね」と涼真を誉めた。
「俺はセックスだけが目的じゃないからさ。涼真を連れて歩きたいし、遊びにも行きたい」
「僕の背が伸びてからにしてください」
「へえ?どうして」
「他人に比べられるみたいで嫌なんです」
 涼真は胸のうちを話したが、唯とは「そんなこと関係ないんじゃない?」と言う。
「たしかに背の高さが違うけどさ、それで萎縮することはないでしょう」
 
 唯斗は軽々と涼真を抱き上げるとソファーに座らせた。
「不服そうな顔をしない」
「だって、唯斗さん」
「俺は涼真が好きだから。それでいいじゃない?」
 そして唯斗は涼真のシャツをまくり上げると「擦れて痛くなかった?」と聞く。
「なにが…ですか」
「これ」
 唯斗は起き上がった乳首をつまんだ。
と同時に涼真が「あっ」と呻いて体を反らす。
「やだやだ、なんか痛いし、それなのに気持ちいいなんて!」
「涼真。そのまま座っていろよ?」
 唯斗は膝をつき、涼真の股を割ると自分の体を入れて再び胸元に手を伸ばす。
「アッ、やっ、やだ!」
「嫌じゃないでしょ。じっとしていなよ」
 そして唯斗は涼真の乳首を舌で舐め、口にふくむと吸った。
「ああっ!」
 涼真は体を震わせているが、無意識に胸を張っていた。
唯斗の愛撫に慣れてきた証拠だろう、自分がどう動いたら気持ちがよくなるのか知りつつある。
胸を張るのは『もっと』の意味があった。
「いやらしい体になってきたなー」
 唯斗は涼真の腰に手を這わせて、そのままジーンズを片手で下ろしてしまう。
そしてあらわになった腰を撫でると手をまわして尻を撫でる。
 その手の冷たさに涼真はぞくりとしながらも唯斗にいいようにさせていた。
「腰がくびれてきた。なーんかいい感じ」
 涼真の息はすでに上がっていた。
荒い呼吸をしながら唯斗に体をゆだねると、一瞬のけぞった。
唯斗が秘部に指を入れたからだ。
「唯斗さん、唯斗さん!」
「指じゃ嫌って感じなのかな?随分と俺に慣れたなー。そこもいいんだけど」
 唯斗は不敵な笑みを浮かべながら片手で股間を、そしてもう片方で秘部に指を入れてかき回す。

「涼真、声を出していいんだよ?」
「唯斗さんっ…」
 前と後ろを同時に攻められて、涼真は感じてしまい唾液が溢れてくる。
それを飲み込むと唯斗が微笑んだ。
「俺が触るとすぐに勃起するんだねー」
 余裕のある唯斗の表情に、涼真は恥かしくなり股間を抑えようとする。

「こんな姿を見ると止まらないな」
 唯斗は小声でつぶやいた。
「もう我慢しなくていいよ。俺がしてあげる」
 そして涼真のジーンズはかかとまで下ろされてしまった。

21話に続きます
2009.07.13 視界良好・19
 夏は女性が薄着になる季節だ、先程から涼真の目の前をキャミ姿の女性が何人も通り過ぎていく。
大抵の男はその無防備な胸元や露出した腕に目を奪われるのだろうが、
涼真は気が抜けたようにぼんやりとしていた。

「涼真ー。もう夏バテかよ」
 友人の里田が心配するが、涼真はポケットから取り出した鍵を見ながら返事もしない。
「それ、どこの鍵?」
「うーん。なんていったらいいのかな」
「もしかして彼女ができた?」
「違う…と思う」
 彼女ではない、言うなれば彼氏だ。
「なんかはっきりしないなあ。やっぱ夏バテっぽい」
「バテてはいないんだけど」
 
 そう言いながら涼真は鍵をポケットにしまった。
これを唯斗から預かったはいいが、返したくない気持ちが湧いている。
このまま自分が持っていてはいけないだろうか?そう思うたびに胸の鼓動が高鳴る。

「1人暮らしだから食事が適当でバテたんだろう。栄養のあるものを食べないと」
 里田はそう言って涼真の腕をつかんで学食に連れて行こうとする。
「トンカツでも食べればいい」
「そんなもの、暑くて食べられないって」
 文句を言いながらも里田の気遣いに安堵した涼真は、連れ立って廊下を歩いた。
そして学食に行く前に「ちょっとごめん」と言って事務所を覗く。
目当ての唯斗は来ていないようだ。
見るからに肩を落とす涼真を見て、里田は「なにかあった?」と詮索し始めた。
「なんでもないよ」
「…そうなのか?」
 里田はできた友人で、涼真が話さないならそれ以上は聞かないようだ。
「さ、トンカツを食べるぞー」
 気落ちしている涼真を引っ張って、里田は学食に向かった。

 
 選択した講義を受け、帰宅した涼真は胸焼けがひどかった。
まぎれもなくトンカツのせいなのだが、里田に知られる前に帰れてよかったと思う。
また気を使われると困るからだ。
「はー…」
 ため息をついても1人だ。
ベランダに出て唯斗の部屋を覗くが、カーテンは閉め切られたままだ。
「何時に帰ってくるんだろう」
 涼真は思わず独り言をつぶやいて、頬が熱くなった。
会いたいと思うときに会えないなんて辛いものだ。
特に涼真はどうやら我慢がきかない。
「せめて携帯の番号を聞くべきだったなー」
 しかし聞いていたとしても唯斗は仕事中なので、かけても出なかっただろう。
涼真はベランダの手摺につかまり、やや前傾姿勢で唯斗の部屋を眺めた。
 今まで恋愛経験はあるが、待ち合わせ場所などでも自分が待たせるほうだった。
なので余計に涼真は唯斗を待つ・この時間に耐えられない。
 ポケットに指を入れて合鍵を取り出した。
これは部屋にいてもいい、そういうことだろうかと涼真は悩んだ。
『涼真の分』と言って渡されたわけではないので扱いに困る。
 しかし鍵があるのならここで待つよりも唯斗の部屋で待っていたほうが早い、
そう思った涼真は部屋を出て唯斗の部屋に行くことにした。
 シャワーを浴びて汗を流すと、服を着替えて唯斗の部屋を目指した。
どうしても早く会いたいからだ。

 唯斗の部屋の前に立ち、少しためらいながらも鍵を差した。
カチャンと小気味良い音が鳴り、これでドアを開けることができる。
それなのに涼真はドアノブを持つのに躊躇した。
勝手に部屋に入って唯斗を待つなんて、唯斗に呆れられないだろうか?
もしや怒られたらどうしよう、そんなことをこの期に及んで考えてしまうのだ。

「いいや!」

 涼真は腹を決めてドアを開けた。
そして暗い部屋に入ると照明をつけて、ソファーに腰掛けた。
 時計を見るとまだ17時になったばかりだ。
唯斗は何時に帰るのだろうか、待つ時間は非常に長く感じるもので涼真には耐え難い。
「何か作ろうかな」
 涼真はキッチンに立つが、食器棚を見て愕然とした。
1人暮らしにしては食器が多いのだ。
それに唯斗がマメに自炊しているとは思えない。
「出入りする人間が多いってことなのか…?」
 唯斗の交友関係は知らないが、あれだけの男前だ、しかも華やかさがある。
女性どころか男性も来ているのではないのか、そう考え出すときりが無い。
 もしかして、こうして自分がここで待っていても友人を連れて帰ってくる可能性があるのだ、
涼真は急に自分が待っていることに後ろめたさを感じて玄関に足を向けた。
 そして唯斗が帰らないうちに部屋に戻ろうとしたらドアが開いた。

「お待たせ。ちゃんと留守番ができたのかな?」
 涼真の姿を確認しながら涼しげな顔をしたスーツ姿の唯斗が入ってきた。

「唯斗さん…」

 涼真は思わずスーツ姿の唯斗の後方を目で探る。
「何をしているの?」
「いえ、あの。誰か連れてきたのかなーと思って…」
「どうして?」
「僕の思い違いです、なんでもないです」
「ふーん?」

 唯斗は靴を脱ぐとスタスタと部屋に上がり、上着をハンガーにかけた。
そして「あー。暑かった」とネクタイを外す。
汗1つかいていなさそうな表情なのに、暑かったのかと涼真はその後ろ姿を眺める。
「定時で上がれてよかったー。今日は涼真がいるからさ、早く帰ろうと思っていたんだ」
「そ、そうなんですか!」
 涼真が思わず声を上げると「あはは、嬉しそうな声!」と唯斗が笑う。
そして振り返ると「こんな可愛い子を部屋に置いておくのもアリだなー」などと言い出した。

「1人暮らしって、部屋に帰ると孤独感を覚えるでしょ。照明がついていないからさ」
「あ、そうですね」
「涼真がいれば、そんな寂しさは感じなくてすむから俺は気分がいいんだ」
 シャツをはだけながらそんなことを言われると、涼真は顔が熱くなってしまう。

「もう少し性欲を抑えることができたら最高なんだけどね。まだ覚えたてだから仕方ないか」
「ひっ、人を動物扱いしないでください!覚えたてなんて…」
「あれ。そうでしょ?セックスが気持ちいいんでしょ?」
 手を腰に当てて前傾姿勢をとる唯斗に、涼真はまったく勝てる気がしなかった。
「はい…そうです」
「ふふ。素直な子は好きだよ?」
 そして唯斗は涼真の目の前でスラックスを脱いで下着姿になった。
痩せているのに筋肉がついて締まった体つきだ、これを見るだけで涼真は落ち着かない。
「唯斗さんっ!」
 涼真は唯斗に抱きついてその胸元に頭を擦りつけた。
「もー。お子様だなー。少し我慢しろって」
「見せ付けるように脱いだくせに!」
「俺はそういうことをするの、好きだからさ」
「…え」
「冗談。言葉をそのまま受け止めるなよ」
 唯斗は吹き出して大笑いをしているが、涼真は笑えない。
こうして抱きついていても唯斗の心をしっかりとつかんでいるとは思えないからだ。

「はい、少しどいていてねー」
 軽く体を離されて、涼真は悲しそうに見上げる。
「そんな顔をするもんじゃないよ」
「だって!側にいたいのに」
「あのな。いつでも側にいてあげるけどさ、四六時中というわけにはいかないでしょ」
「えー、だって」

「少しは大人になりなさいって」
 唯斗は脱いだシャツを涼真に渡して「洗濯機に入れておいて」とだけ言うとタンクトップを着てしまった。

20話に続きます
2009.07.11 視界良好・18
「ほら、起きろ。大学に行くんだろう?」
 涼真が目を覚ますと、シャツをはだけた唯斗に頬を触られていた。
「わ!」
 そのぬくもりに異常に反応して飛び起きると「あはは。元気だなー」と唯斗が吹き出す。
「唯斗さんがそんな格好をしているから驚いたんです!」
 裸のままの自分を恥じて、シーツを手繰り寄せながら涼真が反論する。
「これ?まだ着替えの途中だったからなー。いっそ裸で起こして欲しかった?」
「そ、それは困ります!」
 涼真は赤面症かもしれない、唯斗にからかわれるとすぐに顔が熱くなるのだ。
今も熱くてたまらない。
その姿を唯斗が楽しそうに眺めている。
「困る?嬉しそうだけど?」
「そんなことはありません!」
「りきんでいないで服を着たら?そこに置いておいたけど」
「あ」
 涼真は慌ててシャツをつかみ、それを羽織ると今度は下着を探した。
「あれっ…?」
「何が見つからないの」
「下着です。おかしいな…」
「ジーンズと一緒に脱いだんじゃね?」
「あ、そうか」
 助かった・と感じながらも、涼真は唯斗が自分の脱ぐ様を見て覚えていたことが恥かしい。
「いい脱ぎっぷりだよねー。いつも思うけど」
 まるで心の中を読まれたようだ。
涼真は言い返そうとして唯斗のほうを見たが、ネクタイを締める姿に見蕩れてしまう。
これが働く男の姿なのだと、ネクタイをしゅっと音を立てながら締める唯斗から目が離せない。

「どーかした?」
「い。いいえ、別に」
 涼真は下着を履くとジーンズも身につけ、「じゃあ、僕は部屋に帰ります」と挨拶をした。

「あれ。本当に大学に行くの?」
「講義が1つありますから」

「なーんだ。留守番でもさせようかなと思ったのに残念」
「…起こしたくせにそんなことを言わないでください」
 涼真がぼやくとその唇を塞がれた。
「ん!」
 いきなりのキスに涼真が戸惑うと、唯斗は相変わらず涼しげな表情で舌を入れてくる。
舌が絡み合い、唾液をこぼし、無意識に下半身を擦り合わせていると唇が不意に離れた。

「ここにいたら?」
「でも、唯斗さんは…会社に行くんですよね」

「留守番してよ。帰る楽しみが増えるんだから」
「…一方的だ」
 涼真がそれでも迷った表情をすると「焦れる?」と唯斗が聞く。
「発情期みたいだなー。このままじゃ外に出られないよ?」
 涼真は知らぬうちに息が上がっていた。
そして擦りあった下半身が痺れている。
体が唯斗を求めているのだ。

「俺は会社に行く。だけど5分だけ付き合ってあげる」
 唯斗は涼真のジーンズの中に手を入れて腰を撫でた。
「あ、そんな、困ります!」
「擦るくらいならしてあげるってこと」
「や、やだー…」
「ちゃんと立っていろよ」
 唯斗は下着の上から涼真の股間をまさぐって、擦った。
すると敏感な茎が頭をもたげる。

「苦しい!唯斗さん!」
 涼真が思い切って唯斗に抱きつくと「しょーがない子だなー」と言いながらも受け止めた。
「唯斗さん、僕…!」
「せっかく服を着たのに脱がす羽目になるじゃん」
 唯斗はそう言いながら涼真のジーンズのジッパーを下ろした。
「甘えん坊さん。時間がないけどイけるかな?」
「やだ、セックスがしたいんです!」
「こらこら」
 
 頬を染めて唯斗を求める涼真の前で、唯斗は片膝をつくと茎を取り出して舐めた。
「あっ!で・出ちゃう…」
「早すぎるでしょ。少し我慢しろって」
「唯斗さんっ」
「好きだよー?涼真。我慢できないのもわかるけど、それじゃ楽しみが半減しちゃうよ?」
 唯斗はそう言うと涼真の茎をくわえて出し入れを始めた。
「あっ、あっ…唯斗さん、唯斗さん!」
 涼真は足元がふらつきそうだった。
手コキよりも体温を直に感じるフェラが涼真を駆り立てていく。

「唯斗さん、も・もうダメ!」
「…じゃあ、出していいよ?」
 
 唯斗が茎を口から出して舌を見せた。
唾液で濡れた茎もそうだが、赤い舌が淫猥だ。
「俺の口の中に出せばいいじゃん」
「そんなことっ…できません!」
 涼真は恥かしさのあまりに抵抗したが、茎は素直だった。
再び唯斗がくわえると涼真は全身に電流が走ったような感覚がした。
「うっ、うんっ!くうう!」
 唸ると同時に体の力が抜けた。
ふと我にかえって唯斗を見ると「にがっ」と言いながら何かを飲み下した後だった。

「唯斗さん…?」

「気持よかった?俺も朝から涼真のイく顔が見れて嬉しいよ?」
「…ご・ごめんなさい!口に出してしまって!」
 すると唯斗は口を拭きながら「出せって言ったのは俺だから、いーの」と立ち上がる。
「そろそろ行かないと遅刻だなー。じゃあ、後はよろしく」
 唯斗は涼真に鍵を渡した。
「あ・あのっ!」
「それ、合鍵だから。失くすなよ?」
 慌しく唯斗が上着を抱えて「じゃあ、行ってきまーす」と出て行った。
残された涼真はしばらく動くことができず、呆然と立ち尽くしてしまった。

19話に続きます
2009.07.10 視界良好・17
 涼真は唯斗の隆起した股間よりも、ちらりと見える蝶々の刺青に目を奪われた。
自分の体にまたがった体勢だと、腿の蝶々がなんとも淫靡に映る。
羽ばたく前と言うよりも腿に貼りつき、涼真の様子を伺うかのようだ。

「そんなに蝶々が好き?」
 唯斗が涼真の視線を追って聞く。
「いえ、本物は逆に苦手なんですけど。絵とかなら…」

「ふうん。俺の体だからかと思った」
「え!」
「蝶々を口実に体を見たいのかなーと」
「そ、それは」
 涼真は生唾を飲んだ。
悪戯を見つけた子供のように唇に指をあてる唯斗の仕草が、涼真を狂おしく駆り立てるのだ。
その様子は涼真の勃起した茎とよがる腰使いで唯斗には明白だ。

「一晩で随分慣れたね」
 唯斗がわざと勃起した互いの茎を擦り合わせるように体を重ねていくと、涼真が悲鳴を上げる。
「やだ、ゴリゴリしてるっ…」
「それがいいんでしょ?」
 唯斗は腰を振って互いの茎を擦る。
「や、やだやだ!この感覚っ…!」
「俺はこれでもかなりクるけどね」
 そして唯斗は涼真の胸に手を伸ばし、赤みを帯びた乳首に触れた。
乳首は待ちかねた様子で隆起しており、汗を浮べたせいか唯斗の指にくっつく。
「体も素直」
 唯斗は乳首を指先でくるくると回し、そしてそれを口に含んで吸った。
「は!」
 涼真の体が、ぐんと反る。
「そこは…」
「昨日覚えたところ。乳首も感じるなんて可愛いものだねー」
 唯斗は再び腰を揺らしながら涼真の乳首を両手でなぶる。
「いっ!やだ、嫌だー!」
 口では逆らっても体は従順だった。
唯斗を迎え入れるために涼真は自然と膝を立てて開脚していた。

「誘い方も無駄が無い。欲しいならあげるよ?」
 唯斗は唇の隙間から舌の先をちらりと見せた。
「俺も、結構限界だし。こんな誘いなら無碍にできない」
「唯斗さん、あのっ…僕は…」
「名前を呼び続けていいよ。そのほうがもっと感じるかも」

 唯斗は自分の茎をつかむと涼真の秘部に先端を挿入した。
「…あっ!こ・これっ!」
「これが欲しいんでしょ?」
「う、ううん!」
 涼真は膝を震わせながらも自ら腰を揺らした。
「そうそう、いい子だね。わかってきている」
 唯斗は茎を進ませて、根元まで実にスムーズに挿入した。
「あっ、なんか、中で突いてる…」
 顔を赤くしながら涼真がつぶやくと「感じてるねー」と唯斗が微笑む。
「回数を重ねると、こんなに馴染むものなのかな?俺もいい感じ」
 唯斗は満足そうに前髪をかきあげた。
そして涼真の足を抱えると「動くよ」と言って荒々しく抜き差しを始めた。

「あっ、あ・あ・あ・あ・くっ、くううん!」
 よがる涼真に「名前を呼んでよ」と唯斗が誘う。
「ゆ・唯斗さんっ!は、はげし…!」
「昨日よりいいでしょ?俺もこのほうが好き」
 唯斗は余裕があるらしい、涼真を見ながら満足そうに微笑んでみせる。
「ああんっ!唯斗さん!奥まできちゃうっ!」
「それがいいんじゃないの。なっ、涼真?」
「ぁあっ、んっ、くっ・串刺しにされそう」
「だーから、名前を呼べって」
 唯斗はわざと強めに突き上げた。

「ぐっ!う・ううん!…い、意地悪だ」
「誰が?」
 
 涼真は涙目になりながら「唯斗さん」とつぶやいた。
「まだ平気そうな声だなー。もっとしてもいい?」
 唯斗は茎を抜くとつかんでいた涼真の足を持上げて抱え込んだ。
「えっ!なにをする気ですか」
「体を起こしな」
 言われるままに涼真が体を起こすと自然と唯斗の首に両手をまわす。
「しっかりつかまっているんだよ?」
 唯斗は再び挿入して、涼真の体を持上げた。
まさかの駅弁の体位に涼真は慌てた。
唯斗の鎖骨に顔を当てながら、容赦なく突き上げてくるこの衝撃を受け止めている。
「えっ!あ、や、やだ!さっきより奥に来てる!」
「密着度も角度も違うもん」
 唯斗は腰を振って涼真を揺らした。
「やっ、やっ」
「そうやって腰を揺らすといいね。感じ方が変わるでしょ」
「唯斗さんっ、や、やだっ、なんかおかしくなりそう」
「いいんじゃない?もっと乱れたら」
 なんと唯斗は突き上げながら部屋を歩き始めた。
その衝撃も涼真を直撃するので、唯斗が1歩踏み出すたびに「あああん」と喘ぐ。

「や、も・もう、変になる」
「おかしくなった姿も見せてよ?そこまで言うならさ」
 唯斗は容赦なく突き上げ続ける。
おかげで涼真は早くも爆ぜて唯斗の腹部を汚してしまった。
それが潤滑剤のように2人の体を密着させ、しかも滑らかにすべらせる。
「あ、ちょっといい感じ」
 涼真は唯斗が眉間に皺を寄せるのを見た。
「唯斗さん、イク顔が見たいっ」
 しがみつく涼真に唯斗は荒い息を吐いた。
「存分に見れば…?くっ…うううん」
 うめき声が聞こえたと思ったら涼真の秘部から茎が抜けた。
その喪失感に涼真はもはや狂いそうだったが、足を伝う精液に冷静さを取り戻すことができた。

「唯斗さん…」
「すごく、いい感じだったー」
 唯斗は涼真を床に下ろすと、力強く抱き締めた。
「ありがとう、涼真」


18話に続きます
2009.07.09 視界良好・16
「俺がセックスを教えるって言う快楽があるんだよ、まだ子供の涼真にさ」
 玄関で頬を膨らませている涼真に、唯斗が微笑みながら言う。
「手がかかるとか・子供とか、失礼です!僕は大学生なんですから!」
「そお?からかっていないよ?面白いなあ。なーんか不慣れなところがそそるんだけど?」

「不慣れ…?」
 
 なにを指して『不慣れ』なのかと考えこむ涼真を置いて、唯斗はさっさと靴を脱いで部屋に上がる。
そして玄関に立ったままの涼真に「おいで」と手招きした。
「はい、お邪魔します…」
 涼真は子供扱いをされたことが許せないのだが、靴を脱いで部屋に上がり、
「ん?」と首をかしげている唯斗を見ると何故か怒りが治まってしまう。
 そればかりかようやく2人きりになれた気恥ずかしさがあり、顔が熱くなる。

「まーた、顔が赤い」
 唯斗が涼真の鼻を指先で軽く突いた。
「構わないでください」
「俺のことを意識しすぎ」
「それは…だって仕方ないです」
 唯斗のむきだしの肩には蝶々が彫られている。
そしてジーンズに隠された腿にも蝶々がいることを涼真は知っている。
 あの蝶々に触れたい。
思わず腿の辺りを凝視してしまう涼真を見て、唯斗が「わかりやすい」と吹き出した。

「よーく我慢したね。誉めてあげるよ」
「こんなことを誉められても!」
 興奮して声を荒げる涼真の前で唯斗が膝を折った。
これで目線は合う。
「な・なんですか」
「限界だった?」
 この穏やかな声に涼真は怯んだ。

「涼真。俺が聞いているんだよ?」
「そ…」
 
 涼真が口を開けたとき、唯斗が狙いを外さずに唇を重ねた。
そして舌を潜り込ませて涼真のそれと絡み合う。
互いの唾液が淫靡な音を立てる中、唯斗は姿勢が不安定だからか涼真の肩をつかんだ。
体が触れ合う距離に、涼真は胸の鼓動が早まる。
 思わず手を上げて唯斗の肩の蝶々に触れた。
すると股間が熱くなってしまい『まずい』と感じた涼真は唯斗から離れようと試みる。
しかしなかなか唯斗はキスを止めなかった。
下唇を舐めて甘噛みをし、まだ欲しいとばかりに唾液を吸う。
 涼真はこんなに長いキスは初めてだ。
我慢をしていたのは自分だけではないと知ると、唯斗が愛おしくなりその体にしがみついた。
 すると体勢が変わり、唇が離れてぐらりと体が揺れ、涼真は床に尻をついた。
唯斗はそれに覆いかぶさるようにして圧し掛かり「立てる?」と聞く。

「尻が痛いけど、立てると思います」
「そお?じゃあ、腕を伸ばしてごらん」
 涼真が言われたとおりに腕を伸ばすと唯斗がそれを受け取り、立ち上がらせた。
「熱い手。子供みたい」
「また!僕は…」
 涼真が言い返そうとすると唯斗に抱き締められた。
「な・なんですか…」
「俺も限界なのがわかる?」
 肌に触れると鼓動が伝わる。
そして下半身に硬いものが当たっている感触がある。

「口でして」
 
 唯斗に言われるまま、涼真は唯斗のジッパーを下ろし、硬い茎を取り出した。
そしてひざまずくと茎をくわえて舌で舐めた。
「濡らすくらいでいいよ、涼真」
 しかし涼真はこれが欲しかったのだ。
先端を丁寧に舐めると裏側まで舌を這わせて、根元もそつなく唾液で濡らす。
「ジーンズが濡れちゃうな」
 唯斗は自分でジーンズを脱ぎ、下着も下ろした。
涼真は一瞬、腿の蝶々に気を取られたが、もっと欲しいものが目の前にある。
「もういいよ」と唯斗が言っても、涼真は茎を舐め上げていた。
「これが、ずっと欲しかったんです」
「うん、わかってた」
「唯斗さんの、これで僕を愛してくれたら…」
 涼真は高ぶってしまって唯斗の茎を両手で握った。
「ん!強くするなよ、出ちゃうだろ?」
「でも、ようやく…」
 また口を開けて茎をくわえようとする涼真の髪を唯斗が撫でた。

「脱ぎな。もう、いいから」

 涼真は唯斗の目を見つめながら茎から手を離してシャツを脱いだ。
そしてジーンズにも手をかけて下ろすと、股間を片手で隠しながら下着も脱ぎ去った。
「いい子だ」
 唯斗は裸の涼真を抱き上げるとベッドに運び、あおむけに寝かせるとその体の上にまたがった。
「いつまで隠しているんだよ?」
 涼真は両手で自分の股間を隠していたのだ。
「恥かしいんですよ!」
「今更言うか。昨日から存分に見ているのに?」
「だ・だって」
 顔を真っ赤にした涼真の指の間から白い液体がにじんできた。
「わ、ああ…」
「脱いだだけで出ちゃうか。本当に我慢させすぎたね、悪かった」
 唯斗は口角を上げて微笑むと、涼真の手を股間からどかせた。
すると先走りで濡れた茎が頭をもたげている。

「もっと出させちゃうから覚悟しなよ?」
「えっ」
 唯斗は涼真の体にまたがりながらタンクトップを脱いだ。

17話に続きます
2009.07.08 視界良好・15
 今日も唯斗の部屋でご飯とセックスかなと期待を寄せる涼真だったが、唯斗は外に連れ出した。
「外でご飯ですかー」
 渋々唯斗の後をついて歩く涼真は不満だった。
いつの間にか手を離されたし、昼寝はしたが盛りがついたのか食欲よりも性欲が勝っている状態だ、
唯斗の部屋なら昨日のようになしくずしにセックスができるとのにと思い、口を尖らせている。

 触りたい腕はすぐ目の前にある。
しかし容易に触れられないオーラを感じるし、なにより人前で唯斗に触れることなんてできない。

「涼真、後を歩くなよ。隣においで」
「はあ」

「気の抜けた声だなー。どうかした?」
 ようやく唯斗が振り返り、手招きをする。
「何が不満?」
「僕は、唯斗さんの部屋がいいです」

「…直球だ」
 唯斗は吹き出して膝を折り、おなかを抱えている。
「なにがおかしいんですか!僕は真剣なのに」
「はー、おかしい。もしかして、昨日のセックスで虜になった?」
 ずばり言い当てられると恥かしいものだ。
涼真は言葉に詰まってただうなづいた。
 体が熱い、本来なら待ったなしの状況なのだが唯斗は微笑むだけだ。
「正直だな。でも俺はまだその気じゃないから少し我慢ね」
「…男は我慢がききません」
「それはそうだけどねー。仕方ない子だなあ、ま・そんなところも悪くないんだけど」
 
 我慢を強いられて苛立つ涼真とは対照的に、唯斗は涼しげな表情だ。
道行く女性が唯斗を見て、通りすがりに思わず振り返っている。
見知らぬ人をも惹きつける魅力があるのだ、涼真は改めて唯斗とはつりあわない気がする。
 この背が伸びれば一緒にいてもおかしくないのだろうか。
早く大人になりたい、涼真はちくりと痛む胸を抑えた。

 

 2人は早早に晩御飯を食べ終えると、夜道を並んで歩いた。
「あんまり食べなかったねー」
 唯斗に言われて「すみません、なんだか胸がいっぱいで」と涼真が頭を下げる。
「大学生は馬のように食べるものだけどなー。ガツガツしないんだ?」
「元々あまり食べません」
 そう言うが、涼真は唯斗とつりあわない自分を卑下して食欲が失せたのだ。
今もこうして一緒に歩いていても、違和感を覚えてしまう。
 それに唯斗への欲望が消えない。
いつになったらセックスができるのかと頭の中で葛藤していた。

「昨日もあまり食べなかったな。だから細いんだよ。少し肉をつけたら?抱いたときに痛くないし」
「そうですか?」
「でも太られても困るな。抱き上げられないし」
「…どっちなんですか!」
「俺の言うことを聞くわけ?面白いなー、なんだろうこの子は」
 大笑いをする唯斗に焦らされていると感じた涼真は「あなたが好きだからですよ」とぼやいた。
「なに?聞こえなかった」
「2度も言いません!」
 憤慨する涼真を見て「落ち着けよ」と唯斗が真面目な顔つきで言う。
「俺はセックス目的でおまえと付き合うつもりじゃないから。たまにはこうして外に連れ出したいと思う」
「え…本当ですか」
 涼真は自分が恥かしくなった。
抱かれたいと思い続けて、肝心の気持ちが置き去りになっていたのだ。
「俺は会社員で涼真は学生だから話は合わないだろうけど、惚れたんだからおざなりにできない」
 その場限りではなく、ちゃんと自分のことを考えてくれていたと知って、涼真は嬉しくなった。
舞い上がってしまって腕に飛びつきたいくらいだが、周りの目が気になり手を伸ばすのを止めた。

「ふうん?ちゃんと場をわきまえているんだ?本当に躾が行き届いた子だねー」
 心を見透かされた涼真は自分の頬に両手を当てた。
熱い頬を感じてますます気恥ずかしくなる。
「暗闇であんまり顔色が見えないけどさ」
「な、なんですか?」
「顔、赤いでしょ?」
「…はい」
 涼真が素直に答えると意外にも唯斗は笑わなかった。
からかわれると思っていた涼真は驚いて唯斗の横顔を見上げた。
すると唯斗が口を開いた。
「俺、マジだから。不安がらなくていいよ、ヤリ捨てなんてしないから安心して」
 涼真はこの言葉に感激してしまい、声が出ない。
ただ口を手で覆って、唯斗を見上げるだけだ。

「さてと。お待たせしたから早く部屋に行かなくちゃねー」
 唯斗は涼真の尻を軽く叩くとマンションの階段を上がり始めた。
「わ、待ってください」
 涼真が慌てて駆け出すと唯斗が振り向いて笑う。
「手がかかるけど、俺の選択に間違いは無いなー」
「僕は手がかかるんですか」
「ま。色々とね」
 言葉を濁して唯斗が再び階段を上がる。
涼真はそれを追うために駆け上がった。

16話に続きます
2009.07.07 視界良好・14
 唯斗のスーツ姿に欲情してしまった涼真は、もはや眠れない。
私服のタンクトップ姿とはギャップが激しいのだが、どちらもよく似合うし色気さえ感じてしまう。
 睡眠欲に打ち勝った涼真は、もう我慢ができなかった。
突然立ち上がると里田に「ごめん、ノートお願いする」と言い残して講義室を出てしまった。

 目指すは事務所、そこに唯斗がいるはずだからだ。
階段を駆け下りて事務所までダッシュした涼真は、事務所に唯斗がいないのを見て力が抜ける。
「どこに行ったんだろう」
 辺りを見回し、ふと玄関から外を見ると1台の車がエンジンをかけている。
これは!と直感した涼真は駆け出して、その車の前に行った。
果たしてそこには唯斗がいた。
「あれー?」
 唯斗は涼真を見て驚きもせずに窓を開けた。

「どーかした?そんなに慌てちゃって」
 いつ見ても涼しげな表情である。
余裕すら感じる空気に、涼真は声を詰まらせる。
「きょ・今日は納品じゃなかったんですか」
「涼真の顔を見に来ただけ。今朝方何も言わずに出て行くからさ、少し気になって」
 唯斗はそう言いながら「ふふ」と吹き出した。
「真っ赤になっちゃって。俺に会いたくてたまんないって顔をしてるよ?わかりやすいなー」
「…そんなつもりは!」
「じゃあ、どうして追いかけてきたのかな?」
「それは」
「うつむくなよ。抱きたくなるでしょう」
 唯斗はハンドルに両手を預けて「わかる?男はわがままな生き物なんだよ。あ、涼真もか」と言う。
「押さえがきかない。だから今は離れていたほうが懸命」
 涼真は胸がチクリと痛くなる。
こうして追いかけてきたのは何かを期待したからだ。
しかし涼真は自分のことだけしか考えておらず、唯斗の立場を忘れていた。
「俺、会社に戻るから」
 離れるように促す唯斗に「今日も会えますか?」とだけ涼真は聞いた。
「昨日みたいに残業がなければ・ね」
「営業マンでも残業があったりするんですか」
「定時を過ぎていても、顧客から急用の連絡が入ったりしたら行くでしょう?普通は」
 涼真は学生なので会社の仕組みがわからない。
首をかしげて「そうなんですか」と答えるのがせいぜいだった。

「定時で帰れたら、またおいで」

「あ、はい」

「素直だなー。そうやって知らない人についていくんじゃないよ?」
「ついていきません!」
 唯斗は「あはは」と笑いながら手を振るので、涼真は焦った。
「あ、あの。唯斗さん!」
「言うことを聞きな。学生は勉強が第一だよ」
 そう言い残して唯斗は車を動かした。
ぐんぐんと遠くなる車を見送りながら、涼真はうずく体を持て余しそうだった。
 しかし初夏の日差しは厳しい。
こうして立っているだけで汗がにじみ、気力は萎えていく。
「これじゃ発情期みたいだ」
 涼真は自分の愚かさを知り、深呼吸をして講義室へ戻った。



「涼真、なにか悩み事なのか?」
 里田が心配するほど涼真は見るからに憔悴していた。
様子のおかしい涼真に、里田はノートのコピーを渡しながら「今日は帰ったら?」と帰宅を勧めた。
「今・帰ってもなあ…」
 口から出るのはため息ばかりである。
 いつもならセックスをしたからと言って相手を意識したり、側にいたいなどと思う事はなかった。
涼真は相手に対して冷めたところがあると自覚していた。
 それなのに唯斗に対しては我慢ができない。
最初は顔を見ながらのセックスで、次にバックを経験したと思い出せば気持ちが落ち着かない。
セックスの最中の唯斗の表情ときたら、いつでも余裕そうで穏やかなくせに、
爆ぜるときだけ一瞬眉間に皺がよるのだ。
その顔が頭から離れない。

「今日は帰れって」
 とうとう里田は涼真にカバンを持たせた。
「早く寝たほうがいい、また明日な」
「ん、ごめん」
 
 涼真はカバンを持つと帰宅の途についた。
ベランダのカーテンを開けるが、向かいの部屋は閉ざされたままだ。
「少し、寝ようかな」
 昼寝のつもりでベッドで横になり瞼を閉じるが、ふと目覚めたら辺りは真っ暗だ。
「えっ?えーっ?」
 慌てて起き上がると照明をつけるために部屋を駆け回り、時計を見たら20時を過ぎていた。
「そんな!」
 焦ってベランダに飛び出すと、唯斗の部屋はカーテンが開けられているうえに明かりがついていた。
唯斗の姿が見えないので涼真は身を乗り出すが、中の様子は伺い知れない。
 涼真は玄関まで走り、急いで靴を履くとドアを開けた。

「お」
「…えっ!」
 なんと、ドアの向こうに唯斗が立っていたのだ。
蝶々の刺青が鮮やかに映えるタンクトップ姿で、流行の先の尖った靴を履いている。
「ゆ・唯斗さん」
「全身を眺めて、どーしたの」
「あ、いえ。その…来てくれるとは思っていなくて」
 言いながら照れてしまい、涼真がうつむくと「さ、ご飯食べに行くぞー」と予想外の誘いを受けた。

「えー?」
「なに・その『期待はずれ』みたいな声は?」
「いっ。いえ、その…」
 図星だった涼真は手に汗をかいてしまう。
「せっかく来てくれたのに、ご飯…なんですか」
「ふーん。言いたい事はわかるけど、俺は腹が減ったの。ほら、行くぞー」
 涼真は唯斗に手首をつかまれて、引きずられるように連れ出されてしまった。
昼間から悶々としていたのに、これではまたしてもおあずけだ。
「唯斗さんっ」
「駄々っ子だなー。顔を上げな」
 涼真が顔を上げると唯斗に頬を突かれた。
「…馬鹿にしてる」
「してないよ?」
 唯斗は涼真のお尻を片手でぐいっと持ち上げてつま先立ちにさせると、そっと唇を重ねた。
「これで少し我慢しなさい。俺は何か食べないとエンジンがかからないの」
 キスは涼真にとって予想外の一撃で、しかも効果は絶大だった。
「は、はい…」
 涼真は素直にうなづくと、先を歩き始めた唯斗の後を追った。

15話に続きます

2009.07.05 視界良好・13
「どうして裸で逃げているんだよー。恥かしいの?」
 慌てて下着に足をとおしている涼真の目の前に唯斗が来てしまった。
「恥かしいですよ!見ないでください」
 セックスの間は羞恥心がなかったが、終ったあとは気恥ずかしさが残るものだ。
「ふーん?」
 納得していないような唯斗の声を背中越しに聞いて、涼真は耳まで熱くなる。
しかしゆっくりとしていられない。
 涼真は股間を手で押さえて唯斗に背を向け、下着を履き終えると一安心だ。
そして床に散らかした自分のシャツを拾い上げて羽織る。
しかし乾かしの足りない髪から雫が落ちて、シャツを濡らした。

「ちゃんと拭かないと」
 着替えを眺めていたらしい唯斗が、タオルを涼真の頭に載せるので涼真は振り返った。
「…見ていないでくださいよ!」
「顔が赤いよ。そんなに恥かしい?」
「当たり前でしょう!」
 涼真が叫ぶと、唯斗が大笑いをする。

「なにがおかしいんですか!」
「あーんなことをしたくせに?面白いなあ、どんな思考をしているんだろう?」
 唯斗は涼真に顔を近づけると「もっと知りたくなる」と不敵な笑みを浮かべている。
その微笑に涼真は惹きつけられるものを感じてしまう。
「なにを、ですか。お互いのこととかですか?」
 涼真の胸の鼓動が高鳴る。
自分のことを知ってほしいとは思わないが、唯斗のことは知りたいからだ。
唯斗のほうから『もっと知りたくなる』なんて誘いをかけられたら平常心ではいられない。
胸の鼓動が激しくなり「何から話せば…」とか細い声で聞いた。

「涼真のプロフや過去には興味が無いんだけど」
 しかし唯斗の答えは肩透かしだった。
「…酷い言い方」
「今、俺の側にいる涼真がどんな子なのかを自力で知りたいだけ」

「それって、どういうことですか?意味がわからない」
「やたら懐く野良猫を飼った心境。これからどう変わるのか見ていたい」
 ひょうひょうとしたものの言い方で、涼真ははぐらかされた気がする。
唯斗が一体何を考えているのか、涼真には読めない。
ただからかわれているような気もするし、自分に興味を持っている気もするのだ。
 そうだとしたら、唯斗の心の隙間に入り込めないだろうか。
涼真は希望を捨てることはできなかった。
なにしろ、今日はここに泊まるからだ。
話す時間は十分にある・そう思ったが時計を見ると残念なことに0時をまわるところだった。

「唯斗さん。もう寝ませんか?」
「そうだなー。涼真はベッドを使いなよ。俺はソファーで寝るから」
「僕がソファーでいいですよ」
「んー。でも腰が痛いでしょ?」
「あ」
 たしかに涼真は腰の重さ・だるさが気になっていた。
「ひと晩寝たら治るからベッドを使いな。俺は平気だから」
「あ、はい」

 しかし涼真は唯斗のベッドに1人で寝るのは困難を極めた。
唯斗の残り香のするベッドでは眠れるはずがない。
1人・悶々として眠れないまま時間が過ぎていき、午前5時にはあくびをしながらベッドから降りた。
 そしてリビングに行くとソファーで唯斗が寝ていた。
寝顔を見るのは初めてで、それだけで涼真は鼓動が激しくなる。
瞼を閉じていても唯斗の端整な顔立ちは遜色ない。
 こんなにかっこいい人が自分の相手をするなんてと、涼真は胸が苦しくなる。
本当に付き合うんだろうか・セックスをまたしたりするんだろうか、そんなことが頭をかけめぐり、
涼真は思わず寝ている唯斗の頬に触れてしまう。
「あ」
 冷えた頬だった。
ちゃんと生きているのか不安になって床に膝をついて顔を近づけると、かすかな寝息が聞こえる。
安心したがこの近さから離れられない。
 涼真は唯斗の頬にキスをすると立ち上がり、玄関に向かうと後ろ髪を引かれる思いでドアを開けた。



「涼真、目が充血してる」
 いつもより早めに大学に行くと、友人の里田が手鏡を見せた。
「寝ていないのか?目薬が無いなら瞼を冷やしたほうがいいよ」
「そうする」
 涼真はハンカチを濡らして瞼にあてる。
「わー。ひんやりする」
「それはよかった、じきに治るさ。しかし昨日何かあったのか?」
「…別に」
 涼真はこのまま居眠りをしたい気分だ。
セックスと徹夜が響いて、かなり眠い。
「ノートはとってやるから寝たら?」
 里田はいい友人だ。
感謝して涼真が机に伏せようとすると急に室内が喧騒に包まれた。
女子の「誰だろう?」と浮ついた声や、男子の気に食わない様子が伝わる。
「な、なに?」
 涼真が顔を上げると「おはよー」と声がする。
よくよく見れば、スーツ姿の唯斗だった。
今日も上から下まで完璧なほどスリムに着こなしていて、涼真はその姿に言葉を失い、
見蕩れそうになる。

「どうかした?」
 不敵な微笑も健在だ。
「こっ、こんなところまで営業に来ないでください!」
「営業じゃないよ。立寄っただけー」
 語尾を延ばされると馬鹿にされた気がするのは睡眠不足だからなのか。
「お。にらんでる。面白いなー、これは飽きない。見に来た甲斐があった」
 唯斗は両手を叩いて笑った。
 まさに涼真はからかわれている、この事態に気付かない涼真ではない。
「元気そうでなにより」
 意味深なことを言う唯斗のせいで、涼真は体が熱くなってきた。
ノートで熱い顔を扇ぎながら「出て行ってください」と力強く拒む。
「ここは営業マンの来る場所じゃありません!」
「つれないなー。ま、いいけど」
 唯斗は涼真の頭をぽんぽんと軽く叩いて出て行った。
「ペット扱いかよ…」
 不満げに涼真がつぶやいた言葉を里田が聞き逃さなかった。
「なに、涼真はあの人と何かあったのか?」
「お向かいさんだから色々とねー…」
 そうはぐらかすのが精一杯だった。

14話に続きます
2009.07.04 視界良好・12
「あっ。…う、うううん!や、やだ!無理矢理に入れないでくださっ…」
「もう馴染んでいるでしょ?さっきよりも楽に入るんだけど?」
 涼真は後ろから挿入された驚きと、それを簡単に受け入れた自分の体に戸惑った。
「やっ、やだっ!」
 いつのまにか壁についていた手は拳に変わり、衝撃に耐えようとしている。
「やだー…」
 ぎりぎりと拳を握り締めながら上体が滑るように落ちていく。
それを唯斗が「こらこら」と片手で持上げて体勢を立て直す。

「ただでさえ身長差で苦しい体勢なんだから、これ以上沈むなよ」
「そんなこと、言われても」
 苦しげに息を吐く涼真に、唯斗は「顔が見えないのが辛い?」と聞く。

「そうじゃなくてっ!こ・怖いんです」
「怖いかー?することは同じなのに?」
「犯されるみたいで、嫌です!」
 涼真は壁に向かって思いをぶつけた。
このセックスに愛情があるのか、信じがたいのだ。
ただ自分をいいようにしたいだけじゃないか?と涼真は不安を感じているのだ。

「ふーん」
 しかし唯斗は涼真の腰をつかむとさらに茎を押し入れた。
「犯す気はないよ。ただ、止まれないだけ」
 この言葉が涼真をさらなる不安に陥れる。
「あああ!くっ…やだ、動いてる…」
「動くでしょ、普通」
 涼真の体は震えが止まらず、膝がガクガクとしている。
しかし唯斗は構わずに突き上げ始めた。
「アッ!うっ、うううん!やだ、やだ」
「拒まずに腰を振ったら?そのほうが気持ちいいよ」
 しかし涼真は動かない。
セックスの快楽よりも愛情が欲しかったのだ。
ようやく自分の気持ちに気付くと「唯斗さん…」と名を呼んだ。

「は、どうかした?」
 唯斗も息が上がっているらしく、吐息まじりの声だ。
「僕のこと、どう思っているんですか」
「セックスしながら聞くの?」
 唯斗は「あはは」と笑うと「前に言ったこと、忘れたんだ?」と挑発する。

「俺は付き合っている相手にしか体を触らせないよって」

「付き合うってことは、僕を好きなんですか?」

「涼真が俺を好きなんでしょ?」
「意地悪だ…」
 涼真がぼやくと、また突き上げが始まった。
「あっ、も・もう!そこは嫌だー」
 拒みながらも体位が変わるとこんなに感じ方が変わるのかと、涼真は思う。
ピンポイントに直接突かれている気がするのだ。
「くっ…そこ、そこが…」
 まさに今突かれている場所が、涼真にはくすぐったい感触だ。
「そこ、もっと強くしてください、あ・あ・ううん!な、なんか…こらえきれない」
 涼真は自分の茎が爆ぜたのを知った。
後ろから攻められる快感を覚えてしまったのだ。
 尻を突き出して「そこ、そこがいい!」と悶える涼真に、唯斗は茎の角度を変えて応えた。
「やだやだ!感じちゃう!」
 とうとう涼真は指を口の中に入れ、それを舐めながらセックスに溺れ始めた。
「あ・く・クウウン…」
 涼真の足に精液が滴り落ちていく。
それを見た唯斗は満足げに微笑んだ。

「な、涼真」
「えっ、なんですか…」
「俺もおまえが好きだから、もっと感じていていいんだよ?」

「唯斗さん…」
 涼真はこっそりと見返り、唯斗の顔を見た。
前髪をかきあげて水滴を頬に落としている唯斗は、艶めいて見えたのだ。
「唯斗さんっ…」
「わかっているって。もっと気持ちよくしてあげるから」
 そして唯斗は涼真の中を茎でかき回し、腰を振ると涼真の体も揺れた。
「あ…もう…」
「湯冷めしちゃうか」
 唯斗は激しく5回続けて突き上げると茎を抜き出してバスルームの床に精液を放った。

「だ…出してくれてもよかったんですけど」
「また指でイかせちゃうとまずいかなーと思って」
 唯斗は涼真の体の向きを変えて、笑顔を見せた。

「惚れちゃう体だなー。具合がいいし、声もなかなか」
「セックスが目当てなんですか?」
「うーん。難しい質問だなー」

「難しくないですよ!もう、僕を馬鹿にして!」
 涼真はバスルームを出ると「タオルを借ります!」と声を荒げながらリビングへ逃げた。

13話に続きます

2009.07.02 視界良好・11
 涼真はシャワーに打たれながら唯斗とのセックスを想い、また興奮が冷めなかった。
満足げな唯斗の顔を思い出すと、体が疼くのだ。
『いい体』だなんて言われたのは初めてのことで動揺しているし、今のこの喪失感はなんだろうか。
唯斗の大きな茎を挿入されたときは痛かったが、抜かれたときに覚えたこの感覚。
そっと自分で秘部に触れると「違う」とつぶやいた。
 唯斗の茎と指がいいのだ。
そう気付いてしまうと、悶えてしまいそうだった。

「僕のことを少しでも好きなのかな」

 独り言はシャワーの音にかき消された。
そして涼真は壁に手を当てて、頭からシャワーを浴び、気持ちを落ち着かせようと努力した。
『付き合おう』と言ったのは唯斗なので、少しは期待してもいいのかもしれない。
 しかしあの男前が本気で自分を好きだなんて信じがたい。
からかってばかりだし、涼真は自分では唯斗につりあわないと思うのだ。
 まだ学生の身分なのに社会人が付き合ってくれるなんて考えられない。
だが、セックスをした。
これは愛情の表現ととらえていいのだろうかと、涼真の悩みはつきない。


 思い出せば、元は蝶々の刺青が見たかったのだが、触れられなかった。
ただただ唯斗に突かれて喘ぎ、絶頂を感じたことしか記憶にないのだが、
蝶々に触れられなかったので満たされたわけではない。
それが不完全燃焼を来たしていて、敏感な涼真の茎は起き上がってしまった。
「わ、ヤバイ」
 涼真は1人でいることに安堵して、自分の手で慌てて擦り始めた。
このままでは外に出られない・焦る気持ちが逆効果で茎はますます硬くなるばかりだ。
「どうし…」
 困惑している涼真の背後で突然ドアが開いた。

「はあっ?」
 振り返るとタンクトップにボクサーパンツ姿の唯斗が立っている。
「遅いなーと思ったら自慰するの?もったいないねー」
「な、なんで」
 動揺する涼真の側まで唯斗が遠慮なしに来てしまう。

「シャワーで濡れますよ!」
「別に構わないけど?」
 その、ひょうひょうとした言い方が涼真にはたまらない。
なにか企んでいるような、それとも誘いをかけているのかわからないのだ。

「俺のをくわえろよ。そうしたら、また手コキをしてあげる」
「そんなことを求めていません!」
「今度は蝶々に触れるだろ?」
「あ…」
 
満たされなかった想いは唯斗に筒抜けだった。

「ところでさー、涼真は蝶々が好きなの?」
「いえ、そうじゃなくて」
「俺の肌だから、触れたいんだろ」

「…断言しないでください!」
 
 すると唯斗が腹を抱えて大笑いだ。
「笑うところじゃないでしょう!」
「はー。面白いなー。素直になればいいのに。涼真は言当てられると顔が真っ赤になるんだもん」
 唯斗はバスタブの縁に腰掛ける。
出しっぱなしのシャワーが容赦なく唯斗を濡らしていくが、構わないようだ。
「涼真。イかせてみせろよ」
 足を開いて挑発する唯斗に、涼真は思わずすがりつくように抱きついた。
「熱いなー」
「僕だって熱いです」
 そして腿に彫られた蝶々に触れると、ぞくぞくとした快感を覚えてしまう。
思ったとおりの柔らかい肌だ。
「それで満足しちゃうわけ?俺が言ったことを忘れてるぞ」
 涼真は唯斗の下着に手をかけて「脱がせますよ?」と上ずった声で聞く。
「いーよ。どうぞ?」
 唯斗は少し尻を上げて脱がせやすいように配慮する。
それを見て涼真は一気に下着を下ろした。

「で・でかい…」
 すでに勃起している唯斗の茎を間近で見ると、触れるのをためらってしまう。
涼真の胸の鼓動は激しくなり、躊躇している間に茎はシャワーで濡れていく。
その雫をこぼしながらも屹立している茎はたくましく、そしてじっと涼真を見つめているようだ。

「焦らしはなしだ。くわえろよ」
 唯斗に急かされ、ようやく涼真はバスルームの床に膝をつくと唯斗の腿に手をつきながら茎をくわえる。
しかし茎が大きすぎて息苦しくなり「けほっ」とむせてすぐに口から出してしまう。
「どーしたの」
「あの、唯斗さんのが…。顎が割れそうです」
「先端から舐めればいいよ。慣れれば口に収まるから」
 慣れた様子の唯斗が憎らしい。
だが、お互い勃起していて待ったなしの状況だ。
 涼真は意を決して茎の先端を舌で舐め、そして少しくわえるとフェラを始めた。

「素直でいい子だなー」
 唯斗は涼真の髪を撫でながらフェラを続けさせる。
次第に唾液で濡れてきた茎は口から出し入れをする際に「じゅっじゅっ」と音をたてる。
その音に比例して、唯斗の茎はさらにたくましくなっていく。
「よし、いいよ。立って、壁に手をついて背中を見せな」
「えっ」
「わかるでしょ?俺も限界なんだ」
 唯斗はきょとんとしている涼真にキスをすると腕を取って立ち上がらせた。
そして強引に壁に手をつけさせ「バックもいいもんだよ?」と耳元でささやいた。

12話に続きます
2009.07.01 視界良好・10
「全部、はいっ…た」
 唯斗は涼真と皮膚を密着させ、呼吸を整えながらつぶやいた。

「どう、動ける?」
「動けません、無理です!」
 涼真は腕で顔を隠して絶叫する。
「差し込まれて違和感があるのに、どう動けって言うんですか!」
「へえ、まだまだ元気だなー」
 唯斗は「ふふ」と鼻で笑うと勃起している涼真の茎を撫でた。
「さ・触らないでください!限界なんです」
 涼真は腰を震わせながら懇願する。

「なーるほどねー。我慢しているわけだ?出せばいいのに俺に遠慮しているの?」
「汚れちゃいます…」
 言いながら涼真は顔を赤く染める。
そして「熱い」とぼやき、手で扇いだ。
 
 涼真はどうして唯斗とセックスをしているのかわからない。
隠された蝶々が見たかったのもあるのだが、だからと言ってセックスありきなのが理解できない。
 もちろん、惚れた弱みもある。
だが『抱かれたい』とは思っていなかった。
こんなに痛い思いをするなら唯斗の裸を見て、触らせてくれたらそれでもよかったとさえ感じる。
 
 秘部はじんじんと痛み、しかも挿入された茎がおとなしくない。
頭をもたげて、いつ突いてやろうかと待ち構えているのが唯斗の表情でわかる。
唯斗は唇を舐め、涼真の様子をうかがっているのだ。

「は…」
 触れ合う体に汗がにじんでくる。
こうしてじっとしているのも辛い。
 
 涼真は開脚しているところから手を伸ばして、唯斗の腿に彫られた刺青を触りたい。
あんなに柔らかそうな場所に刺青を彫るなんて淫靡だからだ。
 着替えを覗いたときは気付かなかった腿の蝶々、色鮮やかなそれは涼真を誘惑する。

「落ち着いた?」
「…何が、ですか」
「そろそろ動くよ。もう待てないし」
 唯斗は腰を揺らすと茎を抜いた。
「えっ?」
 涼真が動揺すると再び勢いをつけて茎が挿入され、抜き差しが始まった。
「あっ!あ・あ・くっ!う・うううん!」
「啼き声が猫みたい」
「や、やだ!擦らないで!あ、あああ、なんか変、くぅっ、ゆ・唯斗さんっ!」
 秘部は麻痺したのか痛みを伝えず、ただ滑らかに茎の進入を許した。
「やだ、やだぁ!」
 涼真の耳にかすかにじゅっじゅっと挿入される音が聞こえてくる。
強引に入れられたときはそんな音は聞こえなかった。
「やめて、やだ」と喘ぎながらも、なんだろうと思うと涼真の茎が先走っていた。

「どうかした?」
 額に汗を浮かべた唯斗が微笑む。
「なんか…滑らかに動くから…」
「ふーん。気持ちいいんだ?」
「ちがっ…」
 涼真は頬を赤く染めながら否定するが効果が無い。
「俺の茎に涼真の先走った精液をつけて挿入したんだよ。おかげで俺も楽チン」
「は…」
 精液が潤滑油になっていたのかと唖然とすると、唯斗が「もっと早くしても平気?」と聞く。
「わかんない…です」
 涼真の息は上がっていた。
それに今までの抜き差しで興奮を覚えてもいる。
頭がぼんやりとしてしまうが、涼真は強い光を持つ唯斗の目を見て口を開いた。

「どうせするなら…もっと強くしてください」

「聞いてみるものだなー。そそのかされそう」

 唯斗は先程よりもスピードを速めて抜き差しを始めた。
「あっ、あっ!あああん、怖いっ!」
「怖くないって。楽しいでしょ?」
「や、やだ、体を貫かれそう、あ・あっ!唯斗さんっ!あああん!」
 互いの肌がパンパンとぶつかり合う小気味良い音が聞こえる。
「や、もうっ、限界っ!」
「まだまだでしょう?まだイかせない」
「やめて、出ちゃう!イッちゃう!」
「かーわいいな。も少し我慢ね」
 唯斗は腰を振りながら涼真の胸に手を伸ばして撫でる。
「やだぁっ!」
 涼真は首を振って抗うが、敏感な乳首は唯斗を求めてしまう。
薄茶色のそれは唯斗に舐められ、吸われたいと起き上がる。
「やめて、もうやめて!」
 乳首をいじられ、抜き差しも手加減なしで擦られた涼真は「やっ、あ・アアン!」と絶叫して爆ぜた。
胸の鼓動が激しく、呼吸を整えようとするのだが唯斗がまだ突き上げてくる。
「は、はあ…も、無理…」
「結構…いい体じゃん」
 涼真はガクガクと体を揺さ振られたうえに強く突き上げられた。
「はっ…」
 その瞬間、唯斗が涼真の中で爆ぜたので秘部からとろりと精液がこぼれてくる。

「あー。ごめん。中で出しちゃった」
 唯斗は茎を抜くと涼真の秘部を丁寧に拭った。
「おなかに出そうと思っていたんだけどなー。こんなに気持ちがいいとたまんない」
「気持ち、よかったんですか?」
「まあねー。俺は凄く良かったよ」
「は…そうですか」
 涼真は秘部に指を入れられているのがわかる。
しかし抵抗せずに、唯斗に体を預けた。
「おとなしいね」
「体がだるいんです」
 涼真は汗を浮かべながら起き上がろうとして腕が震える。
このだるさはなんだろうと、またソファーに体を沈める。

「蝶々は見えた?」
「はい、見えました。…綺麗でした」
「なかなか人に見せないんだから、貴重なものを見たと思っていいよ」
「はあ…」
 唯斗が指をようやく抜いて「これでいいかなー」と言うので精液をかきだしたのかとわかった。
しかし指を抜かれただけで喪失感を覚えるとは、余程感じていたのかと涼真は自分に驚く。
恥かしさに身悶えしそうだが、よくよく思い返せば唯斗のケアに場慣れしたものを感じた。
 おそらく同性を抱いたのは初めてではないだろう。
言い寄られたのは2回目だとか言うが、セックスは勘定に入っていないなと涼真は思った。

「唯斗さん、あの…」
「ん?なに」
 涼真は『自分が何人目』と聞こうとして口を閉じた。
過去はどうでもいい、自分はこれからどう接していくのかが問題だと気付いたのだ。
涼真はゆっくりと起き上がると唯斗と目が合った。
「お風呂、入ってもいいですか」
「どーぞ。あ、一緒に入る?」
「…1人で入ります」

11話に続きます
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