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2007.07.26 真夏と桃。1
ガラスのケースに行儀よく並んだスイーツたち。
銀紙に包まれた中にはふわふわのスポンジの上に淡い色のムース、
そしてこの季節ならではの瑞々しい果実をあしらい、
真っ白いクリームを絞り、薄くゼリーで光沢を出した可愛らしさは、
食べるのが勿体無くて眺めていたいものです。
勿論、定番のショートケーキやレアチーズケーキもつやつやした姿を惜しみなく見せて、お客様の微笑を誘っています。

「どれを食べても美味しそうですね。綺麗で、見ていて飽きません。
このスイーツを作られた方はどなたですか?」
上品な奥様がスタッフに尋ねると、
「黒木と言うパティシエです。
まだ若いのですが、丁寧な仕事をする子です」
スタッフが笑顔で答えました。
「はあ、黒木さん。雑誌とかではお見かけしない名前ですね…」
「表には出たがらないんですよ。自分は裏方だからって。
表に出るのは、自分が作ったスイーツであるべきだと」
「まあ」
職人気質のパテイシエと聞いて、奥様が興味をもたれたようです。
「お顔を拝見したいのですが、お願いできますか」
「はあ、それが…今は厨房で仕事中でして。すみませんが」


「どう思う、冬至」
「そう言われても、見た目ではさっぱりわかりませんね」
パテイシエの皆が、届いたばかりの桃を見ながら汗を浮かべています。
ここは厨房、気温が30度を越す猛暑の日でも冷房はエコスタイルを強いられている灼熱地獄です。

「こうも暑いと思考が定まらない。冷房をガンガン入れましょう」
黒いブーツを履いたパテイシエの黒木冬至が早足で冷房に向います。

「やめろ、冬至!
今はスポンジを焼いているんだ、微妙な膨らみ加減に影響が出るだろう!」
慌てて仲間が止めに走ります。

「でも、この室温では折角の桃も腐りますよ」
後ろ髪をダッカールで止めながら、ぴぴっと室温を下げています。
「大体、そんなに桃が届くからいけないんだ」
厨房の巨大な冷蔵庫にも入りきらない、大量の桃。
業者のミスで届いてしまったのです。

冬至が腕を組んで壁にもたれると、ため息ひとつ。
猫のような瞳で、台に置かれた桃を見ています。
「うーん、どうしようかな」
日持ちのするものではありません、鮮度が命の果実です。
「冬至、どうする?」
皆の視線はすがりつくよう。

「とりあえず、少し貰います」

バイクに跨り、飛ばした先は坊っちゃんのお屋敷でした。
玄関に並べた桃を見て、立秋が騒ぎます。
「待ちたまえ、将軍!
我が家は物置き場では無いぞ、
この甘い香りを早く何とかしてくれないか。
僕はこのままでは悶々として、眠れぬ一夜を過ごしてしまいそうだ!」
「玄関で寝ているんですか、坊っちゃん」
冬至が携帯を取り出します。
「さあ、早くどこかに売りに出したまえ!」
「ごめんなさい、坊っちゃん。うるさいです」
その生意気な言い方に、立秋がヒートアップしかけたとき。

「今から真夏ちゃん、来ますから」





→真夏のお祭り、トップは冬至です。
こそこそ更新。

無事に原稿が上がりましたので…
見守ってくださってありがとうございました! 






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