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「そうですか。では、今から何をすればいいですか?」
「データの入力です」

 分厚いファイルの中には手書きの書類が挟まれていた。
鶴前さんがパソコンを起動させながら言うには、ここは事務用品全般を扱う商社で、
取引先は主に中小企業。
常にメールでの受注なのだが、パソコンが導入されていない企業からの受注が営業担当を通してあり、その際は間違いの無い様に別に入力したデータを管理する必要があるのだ。

「一人だとなかなか進まなくてね。犬山くんが来てくれたから助かるよ」
 
期待されると頑張ろうという前向きな気持になる。
しかし入力を始めると「へえ」と小さな声が聞えて、
しかも隣に座られたのですぐに集中出来なくなった。

「あれ? そんなに焦らなくても大丈夫だよ。急ぎの仕事では無いから、安心して」
 
焦るのではなくて、あなただ。
あなたがいると僕は良い所を見せたくなり、張り切りすぎてドジを踏む……。

「僕も隣のパソコンで入力しているから、わからない所があったら聞いてね」
 
隣はやめて。あ、でも横を見なければいいか。
しかし椅子に座る姿も眺めてしまう僕には、どこでも同じかもしれない。

「……」
 
鶴前さんはいきなり真剣な表情だ。
長い指を存分に生かして、マウスをクリックしたりテンキーを打ったり忙しそう。
……しまった、ぼんやりしてはいけない、僕も頑張ろう。

「……」
 
でもファイルの十頁分を入力したら背伸びがしたくなった。
手を休めると、やけに鼻がひくひくする。何かが香る。何だ?

「あ、やっぱり大型犬だ」
「え?」

「鼻が良いね」
「何の事ですか」

「この時間になると、お姉様方が差し入れを持ってくるのだよ」
「はいい?」
 
左手の袖を捲くり、腕時計を見せてくれた。

「ね。十一時半、覚えておくと良いよ」
「は、はあ」
 

時間は見ていなかった。
時計をはめた手首の細さが心臓に悪い。
男性用の腕時計が重そうに見えるなんて、初めての経験だ。

「犬山くん、どうかした? 顔が赤いよ」
「あ、いや。その」
「まだ緊張している? 僕しかいないのに」
 

7話に続くのだ。
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