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だから、あなたを意識してしまうのだ。
落ち着かない僕の耳に、カツカツと小気味よい靴音と甲高い話し声が聞えた。

「失礼しますー。ハルちゃん、おやつの時間ですよー」
 
女性の声に振り向いて、ぎょっとした。
化粧の濃いおばさ……、いや、お姉さんが二人も立っていたのだ。

「お姉様方、いつもありがとうございます」
「あらら、新人さん? 初めましてー。三階の商品部の松田と、こちらが竹中です」
 
名前よりも先に声を覚えそうだ。僕の母親と同じ年くらいに見えるけど、甲高い声だな。

「ど、どうも初めまして。バイトの……」
「ケンちゃんです」 
 
えっ? 声の主である鶴前さんを凝視したら、あははと豪快に笑われてしまった。

「いっ、犬山ケンタです」
「僕の番犬です。よろしくお願いします」

「まあ、ハルちゃんの番犬なのね。賢そう」

松田さんが持参した甘い香りのする白い箱を開けて見せてくれた。
なんとも可愛らしいケーキが四つ並んでいる。

「パティスリーマツダの新作よ。さあ、どれが良い? 最初に選ぶ権利をケンちゃんに与えましょう」
「僕ですか?」

 ケーキは好物なので嬉しい。だけど隣で指を銜えて見ている人が。

「あの。鶴前さんはどれが良いですか?」
 
順番を譲ると「いいの?」と鶴前さんの唇がゆっくりと動いて溢れんばかりの幸せに満ちた笑顔が広がった。
瞳が輝いて眩しいよ!

「ちょっと聞いた? 竹中さん」
「ええ、松田さん!」
「ケンちゃんたら、やさしい子ねえ! ご主人に忠実な犬だわ」
 
僕の幸せムードをぶち壊す、この甲高い声を辞めてほしい。
でも、そんな事は人として口に出してはならない。


「まるで大和さんとハルちゃんみたい」
 

その声にドキンとした。
何故だろう、胸騒ぎがする。

「嫌ねえ、竹中さん。大和くんとハルちゃんはコンビよ。やんちゃな大和くんを陰で支える役目なのよ、ハルちゃんは」
 
支える? どういう事だ。
驚いて隣の鶴前さんを見つめたけど、そ知らぬ顔でケーキの銀紙を剥がしている。

「つ、鶴前さん」
「なあに?」

「あのっ。大和さんって人は……」
「ケンちゃんがさっき電話で話した相手で、仕事上の僕の相方だよ。どうかした?」
 
鶴前さんがチョコレートケーキを食べている姿を見ながら、この胸騒ぎは深読みしすぎだと自分を落ち着かせた。

「どうかしら、ハルちゃん?」

「美味しい」

「やった! その笑顔が見たくて毎日通っているのよー。嬉しいわ、さあ、エスプレッソも飲んでね」
 
まるでアイドル扱いだ。驚いたけどお姉さん方が舞い上がる気持もわかる。
こんなに可愛い笑顔を見られるのなら、僕も明日からスイーツを持参したい。

「ケンちゃん、食べないの?」

 聞かれて、はっとした。僕は手元にチーズケーキを置いたまま悶々としていたのだ。

「あ、いただきます」
「食べて、食べてー」
 
一口食べて「おお!」と唸った。
甘さが控えめで、しつこくない。
もやもやした気分を一掃するにふさわしい。

「美味しいです! これは凄い!」
「まあ! 嬉しい事を言ってくれる。可愛いわねえ、この子」
 
松田さんが僕の頭を撫でている。
皆で僕を子供扱いなのか。
でも悪い気はしないなあ。

「良い子でしょう。よろしくお願いします」
 
鶴前さんが微笑んでいる。で、でもその唇の端にチョコレートがついている。

「あの、鶴前さん。チョコがついています」
「どこ?」

「舐めてあげたら? ケンちゃん」
「なっ?」
 
松田さんは何を言い出すのだ! 

「あら、照れているの。可愛いわねえ!」
「私達はこれで失礼するから、舌で綺麗にしてあげなさいよ」

「そんな事は出来ません」


8話に続くのだ―。

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