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本気で勘弁して。
お姉さん方が出て行く後姿に一礼して何気なく隣を見たら、鶴前さんが手を振っていた。
でも相変わらずチョコが付いたままで唇を拭いた形跡が無い。

舐めたいけど我慢の僕はハンカチを差し出した。
「これを使ってください」

「汚れちゃうから、いいよ」
 笑って押し返すその腕をつかんでしまった。

「え、だって。そのままでは、折角の顔が台無しですよ!」
「え? 」
「あ、いえ、その。何でもないです」
 
自分が可愛い顔をしているという自覚が無さそうだ。これは天然かもしれない。

「大きな体をして可愛いね、ケンちゃんは」
「そ、そのケンちゃんって呼び方……」
「ダメかな?」
 
どうしてこんなに甘い声なのだろう。

「いえ、是非そう呼んでください……」
 
この人には何一つ敵わない気がする。


正午を過ぎて十三時。
鶴前さんに連れられて社員食堂に入った。
まるで学食の様だけど、スーツ姿のビジネスマンや綺麗なお姉さん方を見ると、違うなあと思う。
僕も大学を卒業したら、こういう場所でランチを楽しむビジネスマンになるのも良いな。

「ミックスサンドをお願いします」
「おや、ハルちゃん。今からランチかい?」
 
食堂の人にも好かれている、やっぱり会社の華だ。
納得していたら袖を引っ張られた。

「この子には大盛りで、オススメの物を」
「新顔だね。坊主、良い体をしているなあ。沢山食べそうじゃないか!」
「よく言われます」

 頭をかいたら鶴前さんが微笑んだ。

「ケンちゃんを見ていると、何だか世話をしたくなるのですよ」
「ああ、わかる。大和さんと同じだねえ」
 
ま、また大和! その名前が出るとイライラするぞ。


「あれ? 似ていますか?」
「外見は違うよ。この子はがっちりした体格、大和さんは細身、だけどハルちゃんを見ているとわかる。気に入っているのだろう、この子の事。大和さんと同じで」
「そうですね」
 
僕を気に入ってくれているのは嬉しい! 
だけど大和さんと同じ? それは、どうなのかな。喜んで良いのか?

「ハルちゃんの素直な性格がおじさんは大好きだ。さあ、食べておいで」
 
出されたのはミックスサンドの大盛りだ。

「二人分だよ!」
 
オススメがミックスサンドなのか。

「ここのミックスサンドはね、潰したゆで卵が入っているから好き」
「僕も同じです。サンドイッチの具はゆで卵ですよね!」
「一緒? あ、嬉しいな」
 嗜好が同じと知ると話が弾む。
好きな服や雑誌の話と続いて、鶴前さんに僕の大学生活を聞かれたりしてランチも楽しく過ごせた。
 食べた後は眠くなるといけないからとコーヒーを飲んで、仕事再開。
データの入力とたまに電話の取次ぎをした。
 
単調な時間が流れている。
退屈しないのかなと横目で鶴前さんを見ると、真剣に入力を進めている。
会社員だ。子供みたいな仕草をするけど、やはり大人なのだよね。

「どうかした?」
「あ、いいえ。一応、出来ました……」
「もう出来たの? 見せて」

僕を見て微笑んでくれるから勘違いしそうだよ。

「あ、はい」
 
入力したデータの画面を開くと「わ」と小さな声をあげて目を瞬かせた。
ミスの無い様に慎重に入力したつもりだ、正確さには少しだけ自信がある。

「凄いね、大助かりだよ」
 
頭を撫でてくれた。嬉しくて照れていたら、何と喉も撫でられた。


「あ、あのう?」
「犬はここを撫でると嬉しいのだろう」
 

犬扱いなのか? でも他人に、それも真っ昼間から喉仏を触られるなんてありえない。

「気持良い?」



9話に続くのだ。
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