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あははと笑い出した前鶴さんにドキドキが止まらない。
まさか、の展開だ。

「お酒くらい、いいじゃない。ダメかな?」
 小首を傾げられて、卒倒しそう。
「喜んで、どこへでもお供します」
 心の中でガッツポーズだ。

 
営業部に戻るとメタボリックな部長が帰り支度をしていた。
「部長、お疲れ様です」
「ハルくんも、お疲れ。大和の奴は勝手だな。どうにかしないといけない」
「でもあれがあの人の良い所ですから」
「そうやってハルくんが甘やかすから、あいつが図に乗るのかもしれないぞ」
「すみません」
 
鶴前さんが謝る事なのか? 元はと言えば大和さんだろう。


「ああ、犬飼くんもお疲れ」
「犬山です」
「おお、すまん」
 部長がのそのそと出て行くのを見ながら、ふっと噴出した。

「名前の呼び違いは多々ありましたが、犬飼と呼ばれたのは初めてです」
「失礼な部長でごめんね、ケンちゃん」
「気にしていませんから。早く飲みにいきましょう」
「そうだね」
 
 先に外に出て前鶴さんを待った。気分が高揚して、手にしたカバンを振り回しそうだ。
「まだかな」

普段はした事も無いのに夜空を見上げた。
瞬く星が今夜の僕を祝福しているみたい。鶴前さんと二人で飲むなんて、感激だ!

「ごめーん。お待たせ。行くよー!」
 え? この甲高い声は商品部のお姉さんではないか。えっ、人が増えている。
「つ、鶴前さん?」
「賑やかなほうが良いでしょう?」
 
あなたは何て罪な人なのだ。僕は五秒前まで二人きりで飲むと思って喜んでいたのに!

「ケンちゃんたら怖い顔-。どうしたの」
「いっ、いいえ。何でもありません……」
「さすが番犬ね! 私達にまで威嚇しているみたいよ」
 

その通りだよ、帰れ・帰れ!


「違いますよ。ケンちゃんは照れているのです。大きな体なのに控えめな性格で、僕に対しても緊張するくらいですから」
 
鶴前さん、少し違います。

「そうなのね、可愛いわ!」 
「ケンちゃんには悪いけど、急なお誘いだから一杯だけね。後はハルちゃんと気の済むまでお話でもしたら良いわ」
 
よし! そういう事なら大歓迎だ。

「行きましょう!」
 元気を取り戻した僕は皆と連れ立って、近場の居酒屋に入った。
 賑やかな店内は勤め帰りのサラリーマンが席を占めていた。
僕達はカウンターに並んで座って、チューハイに始まり揚げ出し豆腐やソーセージをつまみながら話に花を咲かせた。

「ハルちゃん、週末に海へ行かない? 私が車を運転するわよ」
「海ですか。もう何年も行っていないな」
 飲み始めて、かれこれ一時間は経過している。
それなのにお姉さん方が帰る気配が全く感じられない。話が違うじゃないか。

「あれ、ケンちゃんたらムスッとしているわね。お酒を飲んだらテンションが下がるタイプかな?」
 近寄るな、酔っ払い。しなだれかからないでくれ。

「ケンちゃん。ハルちゃんを頼むわよ」
「えっ?」
 チューハイを噴出しそうになった。
「ハルちゃんって、皆に気を使いすぎなのよ。まあ、特にあの迷惑小僧に対してだけど」
「それは……大和さんの事ですね?」
「勘が良い。大当たりよ、ケンちゃん」

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