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 お昼の時間になると女子が煩くなる。
持ち込んだ雑誌をめくりながら「このメイクが鉄板」だの「これ、超良くない?」と、弁当を食べながらよくもまあ、あんなに話せるものだと感心する。
 僕はパンを食べながら、求人情報誌を見ていた。
湊がバイトをすると決めたなら、勧めた僕もやろうと思い立ったのだ。
「森下もバイトをするのか? おまえなら、何処に行っても可愛がられる気がする」
「器用だもんなあ。あのレポートを読んで、見直したよ。行動力もあるからさー」
 同じグループの男子が応援してくれる。
「何だかんだ言って、真面目だからな」
 よく見てくれていると嬉しくなる。
僕は手を抜くことができない性分だ。
そのせいで世の中を渡り辛い自覚はあるけど、これが生き様なんだろうな。

「悠里、何を読んでいるの」
 湊が焼きそばパンを食べながら寄ってきた。
「おお、湊。最近、森下とよくつるむなあ。今も離れていられない感じ?」
 茶々を入れられたけど僕は下種に返す適切な言葉を知らない。
「何を言われようと、俺は悠里がいないと生きていけない」

(何だと?)

「おいおい。そういう言葉は彼女に言ってやれよ」
 聞いていた連中が苦笑いだ。
「彼女は別だよ。悠里も別」
「何だ、それ。一度、湊の頭の中を覗いてみたいな」
「止したほうがいいんじゃない? きっと森下のことしか入っていないから」
 女子の鋭い指摘に皆が笑いに包まれた。
「なあ、森下。バイトをするならそこで彼女を見つけろよ」
「へ?」
 意外な言葉が飛んできた。
「おまえももてる口だと思うぜ? いつまでも湊の面倒を見ずに、自分も幸せを掴めよ」
「そうだ、伝説の二組目は森下になるように祈ってやるよ」
 何だかクラス中が僕の味方になっているようだが、本当は逆だ。
僕の心の中にしまってあるものは、誰にも言えない。
それなのに日々成長してしまうのは、湊のせいだ。

「彼女、欲しいの?」
 湊が聞くので顔を上げた。
すると湊のひょうひょうとした表情が映る。
「どうしてもってことはないけどさ、僕も男だし」
「ふうん。何か、ショックだな」
「はあ?」
 湊が空いている椅子をひきずってきて、僕の隣に腰掛けた。
「彼女ができたら、そっちにかまけて、俺と遊んでくれなくなりそうで嫌だ」
「……何を言っているんだよ。正気か? 湊にも彼女がいるんだから、いいじゃないか」
 ひきつりながら話していると、他の連中が呆れ顔だ。
「森下、これはとんでもない子供に懐かれたなあ。ご愁傷さま」
「湊の彼女に相談したら? 『湊を野放しにされると困る』って」
 それは一理ある。
だが奈々さんに相談したところで湊はクラスメートだから、毎日顔を見る。
矛盾しているけど僕は湊に毎日会えるのが嬉しかったりするんだ。
この思いを断ち切らないと、僕はいつまでも堂々巡りだ。

「ねえ、悠里。俺がバイトを始めて、その休憩時間とかに悠里と話ができないと困る。
俺が電話をかけて、出てくれないと嫌だ。
だからバイトなんかしないでよ」
「……はー」
 それを聞いた皆が溜息をついて項垂れた。
 勿論、僕もそうだ。
こうも甘えられると嬉しさを通り越して、思い切って抱き締めたくなってしまう。
矢張りバイトをして気を紛らわすのだ。
あわよくば、出会いがあるかもしれないし。
(想いを断ち切るんだ)

「背が高くて男前なのに、とんだ甘えん坊だ。
湊、甘える相手が違うぞ。彼女に甘えろよ。さっき、年上だって言っていたよな。丁度いいじゃないか?」
「悠里に甘えてはいけない理由なんかあるのか? 俺は悠里がいないと嫌だ」
「はー……。ベタ惚れかよ」
 皆がもはや笑えなくなっている。
「南波―。あんたのこの実態を他校の子達に言ったら、さぞや人気が落ちるんじゃない?
森下に頼りすぎ。見ていて苛立たしいわよ、いい加減にしなさい」
 前髪をダッカールでとめた女子が叱り飛ばした。
それでも湊は僕の側から離れない。
「好きになっちゃ、いけないのかなー」
 そのとどめの一言に、クラス中が笑いに包まれた。
僕も少し吹き出したけど、本音は嬉しかった。
皆は冗談と取るだろうな。
「はあ」
 溜息をついてまた求人情報誌を見ると、不意に取り上げられた。
「湊?」
「だから、バイトをしないでよ」
 そういって、自分のグループに戻っていく。
「あいつ、大丈夫か?」
 聞かれても答えようがない。僕だって、あの思わせぶりな態度に困惑しているんだ。
「相当、森下が好きなんだろうな。これは親友になるのかな。それとも厚い友情か?」
「……愛情でしょう」
 誰かの言った言葉に、皆が食欲を失った。


8話に続きます

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