FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 十九時五十分。
僕は携帯を片手に待ち合わせのファミレスに向かった。
 気持的には電車に乗って駅前のパン屋まで迎えに行きたかったが、そこまでしたら気持が高ぶる。
僕は忍耐と言う言葉を胸に言い聞かせていた。
 ファミレスに着いたのは二十時一分。
バスに乗ったせいか、早く着いてしまった。
 店内を見渡すと家族連れが目立つ。
その中に湊の姿はまだない。
 とりあえずテーブルを案内して貰い、湊を待った。

 二十時十分。
湊はまだ来ない。
 気になって携帯をちらちらと見るが着信もない。
何だか、このまますっぽかされる予感がした。
 注文したコーヒーが運ばれてきたのは二十時二十五分。
混んでいるから遅くなったのだろう。
それは構わないのだが、湊が来るか来ないかと気になってコーヒーを飲む気さえしなかった。
 僕は今までに、付き合った彼女を待った最高時間は三十分だ。それを過ぎたら「忘れているな」と判断して、帰宅する。
 湊を何分待てるだろう。
しかし今までの経験からすれば、もはや忘れているとしか思えない。
時計は二十時三十八分だ。

(会いたかったけどな)
 
 立ち上がり、会計を済ませた。
そして店を出ると、空に小さく瞬く星を眺めて、港が今頃は楽しく笑っていたらいいやと、溜息混じりに思った。
 残念なことに帰宅途中も、帰宅してからも、携帯は鳴らなかった。


 翌日、僕はそれを責めずに、いつもどおりの時間を過ごした。
授業中の教室は湊の私語で煩いし、郊外学習の件で皆が文句たらたら。
 その郊外学習は明日だ。いっそ雨でも降れば水族館にいけるかもと呟く女子に賛同したい気持だ。
(そういえばおやつかー。別に要らないけど、軽いものくらい準備するか)
 
 放課後、帰ろうとしたら湊の姿がなかった。
相当、バイトに入れ込んでいるのだろう。
奈々さんに、指輪をプレゼントしなくちゃいけないからな。
 僕は一人で帰宅の途についた。
途中でコンビニに立寄り、ガムでも買おうと店内をうろうろしていたら、聞き覚えのある声がした。
 
 その声の主は雑誌コーナーにいた。
巻き髪で頬がうっすらと赤い、奈々さんだ。
 これはもの凄い偶然だなと驚きながら、奈々さんが一人ではないとすぐに気がついた。
 スーツ姿の男性が奈々さんと雑誌を立ち読みしながら話をしている。
時折見せたあの可愛らしい笑顔が、その男性に惜しみなく注がれていた。
 奈々さんは携帯のショップで働いているのだから、相手は上司とか会社関係の人だろう。
そう思ってあえて挨拶をせずにガムを買って外に出た。
 何となく振り返って店内を見たら奈々さんと目が合った。
手でも振ろうかなとしたら、奈々さんは両手で口を抑え、目を見開いて驚いていた。

(そんなことってあるんだ)

 僕は奈々さんの左手の薬指に銀色の指輪を見た。
視力がいいことがこんなに皮肉めいたものを見せると、初めて体験した。
僕は何の合図も送らず、その場を去った。
 
 帰宅してから最初にしたのはオレンジの携帯の電源を消すことだった。
これは、湊から貰ったけど、奈々さんも絡んでいる。
僕はこの携帯を使う気になれない。
 そして前から使っている携帯はマナーモードに変更して、ベッドの上に放り投げた。
今日は誰とも話す気力がないからだ。
 明日は郊外学習だ。しかも湊と同行だ。
雨が降ればいいのにと、僕はニュース番組を眺めていた。
降水確率七十パーセントと聞いて、安心した。
行き先が変われば班も何もあったものではないだろう。
僕は湊に話しかける気力さえ失くしていたのだ。

 風呂に入り、タオルで髪を拭く。
もう寝ようとしたら携帯の着信があった。
見ると湊から五回もかかってきていた。
しかし掛け直す気になれない。
携帯に、ごめんと呟いて僕は横になった。
なかなか寝付けない夜中、枕の辺りで何度も携帯が震えていた。
 それをとらないのは卑怯だとわかっている。
堪えきれない涙が零れた。
湊が可哀想だと、心の中で叫びながら枕に突っ伏した。


 翌朝は皆の願が天に通じ、雨が降っていた。
これは水族館に行けるのかなと楽しみにしながら朝食のパンドーロを食べていたら、携帯が鳴っているようだ。
無視していたら母に「ブンブン煩いから出なさい」と叱られた。
開けると案の定、湊だ。

「はい、悠里です」
『……何回かけたと思う? どうしてシカトするんだよ』
「していないよ」
 朝から勘弁してくれと思った。
『俺、何か悪いことをした?』
 
 本当に罪のない奴だ。

「何もしていないよ」
 そう、何もしていないのが困るんだ。
『悠里』
「なに?」
 僕は努めて冷静を保ったはずだったが、横から母が「こぼすんじゃないわよ、子供じゃあるまいし」と言いながらテーブルを拭くので、笑いがこみ上げてしまった。

『悠里が遠いんだけど』
「はは、遠くないよ。同じクラスだし、今もこうして話しているじゃないか」

『茶化さないで』
 湊の声が僕の笑いを止めた。

『俺、今、悠里の家の前にいるんだけど』
 咄嗟に立ち上がった。そして玄関まで駆け出して、息を弾ませながらドアを開けた。
「……おはよう」
 携帯を耳に当てたまま、傘をさした湊がいた。
「おはよう……」
 僕は頭の中が真っ白になった。


10話に続きます

スポンサーサイト
デリヘルもソープもイメクラも気に入った子がきっと見つかる
超大型リニューアル中の大好評風俗情報サイト!
[PR]

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。