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 翌朝、いつもどおりに登校したら、友人が駆け寄ってきてやたらと心配された。
「南波が煩くてさ、自宅を教えちゃったよ、ごめん」
「いいよ、別に」
 頭をかく友人に構わず席に座るが、内心は落ち着かない。
「でも、昨日おまえ達だけ休んだから、心配したよ」
「あ。そ、そうなんだ? 僕達だけか?」
 鼓動が高まってしまう。
顔が赤くなりそうで焦ってきた。
「家に押しかけてきたから、何となく話をしていて、さぼっちゃったんだ」
 背中を冷や汗が伝う。
苦しいいいわけだが、通るだろうか?
「ありがちだなー、森下。あれ、どうした?頬が赤いぞ?」
「あ、暑いね、今日は」
 下敷きで扇ぐと冷風が発生して、ぞくりとした。
「え。今日の最高気温は十五度だぞ?」
「あ、ああ、そう?」
「森下。いい加減にあの南波を甘やかすのを止めろよ。調子に乗りそうだから」
 友人の忠告はありがたいが、遅かった。
 昨日のセックスは互いの想いが成就した結果だと思うが、リードがやや湊よりな気がしていた。

「はよー」
 湊の声に反応してドアのほうを見てしまう。
「あ、南波だ」
「湊、おはよう」
 平常心を自分に言い聞かせて、声を掛けた。
「……悠里!」
 教室に入ってきた湊は一目散に僕の元に来て、友人を押しのけると、座っていた僕に抱きついた。
「は、離せ!」
「はよー、悠里」
 湊は愛おしそうに僕の項を撫でる。
「おいおい、南波―! 何をしているんだよ、おまえの彼女じゃないんだぞ」
「寝ぼけているな? よく見ろ。森下だぞ」
 友人が呆れて湊の肩をぽんと叩く。しかし湊は離れない。
「湊!」
 僕が叫ぶとようやく離れてくれた。
「え。迷惑だった?」
急におどおどとした態度に力が抜ける。
「悠里、怒っているの?」

(この自己中野郎―!)

「湊、席に着けよ! そろそろ厄介な日本史の先生が来るぞ」
「あ、そっかー」
 相槌を打つとようやく自分の席に向かうが、周りの友人達とのおしゃべりが始まる。
反省の色が見えない湊に、どうしたものかと余計な不安がこみ上げてくる。
 あの性格では僕との関係を言い出しかねないのだ。
秘密にして欲しいのは当然だが、口止めするのを忘れていた。
 あの天然な湊は、きっと口を滑らかす。
そうしたら僕の人生は、まっさかさまに落ちていくのだろう。
他人に後ろ指を指されては生きられない、おしまいだ。

「湊、どうして昨日休んだんだよ? 水族館もなかなか楽しめたぜ? 白熊が獣臭かったけどさ」
 のん気な声が聞えてきた。
しかし僕はそれに反比例して鼓動が高まる。
嫌な予感がする。
「白熊って言っても、汚れてベージュ色だけどな。可愛げがないよなー」
「ふーん」
「ん? どうしたんだよ、湊。マジな顔をして、何かあったか?」
「白熊よりも優先したいことがあったんだ」
 
 湊の声にどきりとした。
この展開では、僕との関係を言い出しかねない!

「みな……」
 注意しようとしたら日本史の先生が入ってきた。
「起立―」
 がたがたと椅子を動かして皆が立つ。
「礼―。着席―」
「おお。資料を忘れた。悪いが誰か、取りに行ってくれないか?」
「えー?」
 皆が、自分で行けよといわんばかりの表情を浮かべたとき、湊が手を上げた。
「資料なら図書室ですか? 行きますよ」
「悪いな。貸し出しの窓口に三冊置いてあるから、頼む」
 険悪の仲だったのにレポートの成果か、あの下種な先生が湊を頼っている。
それが面白くて眺めていたら、何と湊が僕に手招きした。
「悠里も行こうよ」
「三冊なら一人でもてるだろう」
「いいじゃない」
 何がいいんだ、と呆れていたら「誰でも良いから早く行け」と先生が言う。
 その言い方に何だか腹立たしくなり、僕は立ち上がった。
「じゃあ、行ってきます!」
 


「何を怒っているの?」
 廊下を歩きながら、湊は僕の機嫌ばかりを気にしている。
「湊は、先生にあんな言われ方をして頭に来ないのか?」
「別に? 先生はお年寄りだから、仕方ないんじゃない? 逆に生徒に気遣うような教師はおかしいと思うし」
 言われて見れば、納得できた。
「……そうだね。何か、僕はダメだ」
「昔の俺みたいだよ、悠里」
「あ」
 確かに、あの先生に憎まれてレポートを強要されたあの頃の湊と同じかもしれない。
「だけど昔って。そんな前じゃないだろう」
「まあまあ。俺はじっとしていられない性分だからさ、あの先生には嫌われたし、俺も嫌いだけど。でも、俺は悠里のお蔭でこれでも丸くなったんだよ」
 何だか恥かしくて咳払いをした。すると湊が手を繋いでくれた。

 図書室に着くとドアが開いていて、あの先生が慌てていたのが手に取るようにわかった。
 言われたとおりの窓口に本がある。
これを持っていけばいいのだな。
「行こうか」
 湊に声を掛けると「えー」と言う。
「どうかしたのか?」
すると湊が僕の腰に手を回して「十五分、くれない?」と聞いてくる。
「な、何が?」
「んー。どうしてわかってくれないのかな。俺の欲望が今ひとつ伝わらない」
 そんなことを言われて平常心でいられない。
 まさかとは思うが、これは誘われている。
「あのさあ」
「なあに?」
 見上げると微笑まれた。
「あの先生を待たせたら、また余計な作業を押し付けられるよ?」
「そうか。じゃあ、昼休みならいい?」
「……欲望に取り付かれたのかよ?」
「悠里を見ていると落ち着かないんだ」

 この自己中な湊には勝てない、惚れた弱みにつけこまれている気がした。

「……毎日は嫌だ」
 わざとささやかな抵抗を試みた。
「毎日じゃなきゃ、嫌だよ。どうして突き放すんだよ?」
「とりあえずここは学校だから。目を覚ませよ、湊」
「何処でも構わないんだけど」
 その我侭な言い方に、気持が救われていると気がついた。
 本当は強引でもいいんだ。
何処でも一緒にいたいし、触れていたい。
我慢してきた分が昇華されつつある。

「……家に来る?」
「うん」
(そんな、あっさり)
 誘うだけで意識してしまって、心臓に悪いのに、湊は平然としている。
場数を踏んでいる奴は違うと、自分の振り絞った勇気を無碍にされ、少しへこんだ。
「俺、悠里に誘われるのも好き」
 そんなことを言われて顔が熱くなり、気持が浮上する。
想いが伝わっているのを実感できて、とても幸せな気分になれた。
「早く教室に戻ろう」
 本は湊が持ってくれた。


14話に続きます


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