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 蒼生が立ち止まって見上げると、亮輔の視線とぶつかった。
「…なに見ているんだよ」
「俺はそのときの戸田の姿が目に焼きついているんだ」
「はあ…?」
「後から同じ営業マンと知って、戸田には負けるかもしれないと思った」
 写真を撮っただけで何故仕事が絡むのだろうか。
蒼生には理解ができない会話だ。
 それに社内では王様の割りに、今は弱気なのが蒼生には引っ掛かった。

「取り巻きがいないと、随分態度が違うんだな」
 蒼生は先に歩き始めた。
その後を亮輔がついていく。
「戸田、歩くのが早い」
「そうか?」
「置いていくつもりだろう?」
「1人でも帰れるじゃないか。浅尾とは話すことが無いし」
 蒼生がそう本音を言うと、亮輔はカバンで蒼生の尻を叩いた。
「わ、なんだよ!」
「車道側を歩いているから、こっちに来いよ」
 確かに蒼生は歩道だが車道側を歩いていた。
「それがどうしたんだ」
「危ないぞ。俺の隣に来いって」
「…女性じゃあるまいし。なんだよ、その気配りは!そんなことができるなら新入社員を泣かすな」
 蒼生はカバンを亮輔の腰にぶつけて、さっさと早足になった。
駅に着けば別れられる、蒼生はただ前方を見て歩きすすめる。
 しかし後方から靴音がする。
「どうして新入社員の話になるんだ!俺は蒼生に用事があるのに!」
「あ、あおいー?下の名前で呼ぶな!」
 振り向いてそう怒鳴ると亮輔が今度は蒼生の上着の裾をつかんだ。
「離せ!」
「用事があるって、言っているだろう!それに早く隣に来いって。車にはねられるぞ!」
「ここは歩道だ!事故なんか起きるもんか!」
 蒼生はカバンを亮輔の胸元に押し付けて、力任せに手を振り切った。
「お疲れ!」
 再び歩き出すが「おとしものー」と亮輔の声がする。
何も落としてはいないはずと思いながらも、蒼生は再度振り返る。
「俺を忘れている」
 その言い草に蒼生は心底呆れた。
「僕の持ち物じゃない。1人で帰れ!」
 
 蒼生は強い調子で拒んだのだが、亮輔は諦めが悪いようだ。
とうとう駅の前まで一緒に来てしまったのだ。
「…お疲れ」
 今度こそ離れられると思った蒼生の腕を亮輔がとった。
「まだ何か用事かよ」
「話をしたいんだ」
「はあ?話?それなら明日、社内で聞くよ」
「急ぎの話なんだけど!」
 亮輔の剣幕に、蒼生は一瞬怯んだ。
「な、なんだよ」
「ちょっと付き合え」
 蒼生は亮輔に連れられて歩かされ、どんどん駅から遠ざかっていく。
しかも歩いていく先には歓楽街しかない。
キャバクラやホストクラブ、それにホテルしかないはずだ。
「どこに行くんだよ!」
「…俺の気持ちを聞いてくれそうな場所まで行く」
「そんな場所なんてあるもんか!何が言いたいんだ、ここで言えよ」
 蒼生が怒鳴ると、亮輔が不意に立ち止まった。
そして膝を折って蒼生に視線を合わせると息を吸い込んだ。
「好き、なんだ」
「何が?」
「…鈍すぎる」
「意味がわからない」
 蒼生はお手上げとばかりに首を振った。
それを見て亮輔もため息をつく。
「蒼生が、好きなんだよ」
「有り得ない」
 
 蒼生はその容姿のせいで同性に言い寄られた経験がある。
それは当然ながら全部断ってきた。
 亮輔が本気で好意を持っているのかもしれないが、応えるわけにはいかない。
蒼生はノーマルだからだ。
「好きであろうとなんだろうと、僕に何も期待するな」
「固いな。1回くらい付き合っても減るもんじゃなし」
 亮輔は口角を上げて微笑んで見せた。
その余裕のある笑顔に、蒼生は身の危険を感じて亮輔の尻を叩いた。
「いたっ!」
「じゃあな!お疲れ!」
 しかし上手く逃げられなかった。
立ち回りは亮輔のほうが経験を積んでいた。
こうやって獲物を逃がさずにいたのだろう。

「1回って、言っているだろう?」
 亮輔は蒼生の頬を指先でつまむと、ぐいっと引っ張った。
「いた!」
「いいだろう?後悔はさせないからさ」


5話に続きます




 



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