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『いつものことだよ。謝れば全部済むと思いやがって、いらない知恵だけついた』
 蒼生が持つ受話器の向こうからは、新入社員を罵倒する亮輔の声がする。
『1人でできやしないのに仕事を抱え込むから、ポカをするんだ』
「どういうことだよ」
『お得意様の発注分を納品していなかったんだ。勿論、あいつが伝票を切り忘れたんだけどね』
 蒼生は怒りに満ちた亮輔の声を聞きながら、ここで話を聞くのはまずいと感じた。
いつ新入社員が席に戻るかわからないので気を使い「かけなおす」と言って電話を切った。
 そして自分の携帯を取り出すと部署を出て廊下に立つ。
「戸田です。事情を聞かせろよ」
『は?今、どこにいるんだ?』
「彼女に聞かれないように廊下に出た。遠慮なしに話していいよ」
 蒼生は片手でペンを持ち、それをカチカチと鳴らしながら亮輔を促した。
『じゃあ言葉どおりに。あいつは使えない』
 断言する亮輔に、蒼生は呆れる。
「まだ入社したばかりだからミスの1つくらいするだろう。フォローしてやれよ」
『どうして俺が?』
「コンビだからだよ。それに先輩だから教育してやれって」
 蒼生は苛立ってきた。
自分も仕事がある、だがしかし部長の指示なので従っているだけだ。
『蒼生、怒っているのか?』
「怒っていないよ」
『ペンをカチカチ鳴らす音が聞こえる。うざいんだけど』
 蒼生はペンを上着のポケットに入れた。
「ごめん。片付けた」
『素直なんだな。やっぱり蒼生のほうがいい』
「コンビのことか?部長に言われたばかりだろう」
 蒼生がきっぱりと断ると亮輔は『はあ』と溜息をついた。

『仕事だけじゃなくて、俺と付き合えよ』
「何を言い出すんだ」
『好きだって、何回も言われたいのか?』
「その話は聞かない!」
 蒼生はすぐに携帯を切った。
そして胸の鼓動が激しいのを感じながらも電源まで落とすと、デスクに戻った。

「浅尾はなんだって?」
 部長は新入社員がまだ席に戻らないのをいいことに、蒼生に聞いた。
「彼女がミスをしたらしいです。でもまだ挽回できますから、作業の指示だけしておきます」
 今からすぐに注文の商品を納品すれば間に合うと蒼生は踏んだ。
「先方におわびも入れさせます」
「よし。それでいいだろう」
 部長は満足げにうなづき、蒼生に書類の準備を指示するとお得意様の元に出かけていった。
 するとようやく新入社員が戻ってきたので、蒼生は納品の準備をさせてこの件は片付けた。

「浅尾にも連絡を入れておいて。安心するから」
「え、でも…」
 ためらう新入社員を見て「もう怒らないだろうし」と言葉を添えた。
しかしなかなか受話器を持とうとしない。
蒼生はしかたなく受話器を持ち、亮輔に電話をかけた。
「戸田です。今話しても平気?」
『ああ、運転中じゃないからいいよ』
 意外にも明るい声だ。
「先の件は10分前に出荷したし、先方におわびも入れたから片付いたよ」
『蒼生がしてくれたのか?ありがとう!』
「ちが…」
『やっぱり優秀だな。…なあ、どうしても俺と組まないのか』
「何度も言わせるな」
 蒼生が電話を切ろうとした『待って』と亮輔が言う。
『今日も会いたい』
「は?社内で会っただろう」
『そういうことじゃなくて!わかるだろう?夕食はご馳走するよ』
「…無理」
 蒼生は電話を切った。
しかしすぐに電話が鳴る。
「はい、●●商事です」
『蒼生!俺の気持ちは無視かよ』
 まさかとは思ったが亮輔だ。
「…答えかねる」
『ん?脈はあるってことか?それなら無駄な出費じゃなかったな』
「なにが?」
『プレゼントがあるんだ。だから夜は空けてくれよ』
「…誕生日でもないんだけど?」
『俺の気持ち。じゃあ』
 ツーツーと機械音がして蒼生は電話を切った。
ゆっくり受話器を置きながら(気持ちって、なんだ?からかっているのか?)と蒼生は思う。
しかしこの胸の高鳴りはどうしたことだろう。
蒼生は亮輔の存在を、初めて意識し始めたのだ。



11話に続きます







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