FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 涼の脳内にはサイトで見た犯されて泣きわめく子の動画が再生されていた。
その子を悠に置き換えて、ハンドルを握りながら沈黙を保つ。
まるで妄想に酔っているかのようだ。
「どういうことだ」
 悠は自分がいつからつけられたのかわからない。
だが「こんな奴の相手をする時間は無い」とつぶやき、車を無視して立ち去ろうとした。
 すると急に車がバックし始める、これでは悠は轢かれてしまう、焦って駆け出すが傘が邪魔で体勢が崩れそうだ。
 悠は粉雪の舞う中で傘を閉じ、本気で走り始めた。
その行く手を涼が追う。
「しつけー!」
 一方通行の細道に逃げ込んでも涼は構わずに突っ込んできた。
『次の狙いは悠だ』、クラスメートが告げた言葉が頭を駆け巡る。
 閉じた傘が家々の壁に当たってべきっと鈍い音を立てていた。
それでも構わずに、悠は走り続ける。

「やっぱり警察に突き出すべきだったんだ!」

 悠は呼吸を乱しながら親友の家からどんどん遠ざかる。
それは今この瞬間に自分が襲われようとしているのに親友を思う気持ちが強いからだ。
 携帯に連絡を入れたくても、そんな隙は見せられない。
悠はただ走りぬけ、大通りに出ると傘をさしたクラスメートたちが歩いていた。
「危ない!」
 悠の叫びに驚いた子が見返って「車が突っ込んでくる!」と大声を上げた。
皆が一斉に走り出すと、涼は諦めたのかバックを始めた。
そしてキュキュとタイヤを鳴かせながら走り去った。

「おい、悠。なにがあったんだ」
 クラスメートが顔色を失った悠を気遣った。
「どこの誰がおまえを追いかけたんだ?」
 クラスメートが聞いたとき、様子を見ていたらしい女子たちが「石原先輩じゃない?」と言う。
「小松くんを追いかけながら笑っていたよ。なんか、キモかった」
「あの人、今日は卒業式なのになにをやっているんだろうねー。おかしくね?」
「え、石原先輩だって?」
 悠は無言で肩に積もった粉雪を手で払い除けると携帯を取り出した。
親友に「ごめん。むかえにいけないから」と告げると、溜息混じりに携帯をカバンに突っ込んだ。
「おまえ、相当執着されているぞ」
 クラスメートは悠が心配なのだが悠は何もなかったかのように歩き始めた。
「悠?」
「早く行かないと卒業式に遅刻しちゃうぞ」
 悠は見返って笑顔で促した。
「おい、悠!大丈夫なのか?」
 クラスメートが傘をささない悠を不審に思い、自分の傘の中に悠を入れた。
「傘、壊れたのか?」
「え」
 よく見ると骨が曲がっていた。
家々の外壁に傘が当たったせいだろう、悠は嫌な気分になった。
この傘のように自分を犯そうとしている涼の思惑に気付いたが、震えはなく、むしろ怒りを覚えた。

「執着しているなら返り討ちにしてやる」
「悠、血気盛んなところはいいけど無茶をするなよ」

 クラスメートがたしなめても悠はとどめをさすべきだと考えた。
それには教師の協力が要る、だが教師に受けがいい涼を罰することができるのだろうか。



 悠たちが歩いている頃、涼は一足先に学校に着いた。
そして職員室に行くと開口1番に「ご迷惑をおかけしました」と謝罪した。
「石原、おまえは十分に反省しただろう。もうあの件には触れないつもりだ」
「今日は晴れがましい卒業式じゃないか。笑顔で参加しろよ」
 教師たちはこぞって涼を慰めた。
強姦をした男を許すあたり、事情はよく伝わっていないようだ。
涼はこの現実にほくそ笑んだ。
誰も彼もが自分の味方だと判断し、運の強さを実感した。
 なにをしてもとがめられないだろう、これであの勝気な悠を襲うことができる・涼はそう信じた。


 いよいよ体育館で卒業式が始まり、在校生が着席している中を卒業生が入ってくる。
このおごそかな雰囲気の中で、悠は爆睡していた。
ものごとを考えすぎて疲れたのだ、しばしの休息を注意するクラスメートはいなかった。
 式は予定どおりに進み、卒業証書授与が終ったころに悠は目を覚ました。
「卒業生が出て行くから、立つぞ」
 隣にいたクラスメートが悠を促し、拍手をしながら卒業生を見送った。

 これですべてが終るはずだった。
しかし体育館を出たあたりで在校生と卒業生が「おめでとうございます」などと挨拶を交わしたり、
教師もその中に入って「おめでとう」と騒ぎ始めた。
「俺たちは帰るか」
 悠は親友と連れ立って体育館を出ようとした。
だが混雑していてなかなか出られない。
 卒業生の写真撮りがあちこちで始まっていて、その中をかいくぐるのは至難のわざと思えた。

「裏口から出るか」
 悠が閉ざされていた体育館の裏口のドアを開けると、粉雪が舞い込んできた。

「悠、そういえばどうして今日は迎えに来てくれなかったんだ?」
「ごめん、それがさ…」
 上手く誤魔化そうとした悠の目の前に涼が現われた。
「多分、こっちから出てくると思ったよ。予想どおりで退屈をせずに済む」 
 その勝ち誇った表情を、悠はにらみつけた。
「…あんたは一体、なにが目的なんだ!朝から走りまわされて俺は不愉快だ!」
「きみに興味があるからだよ、小松悠。今日こそ付き合ってもらうぞ」
 そして涼は卒業証書の入った筒を振り上げて悠の首筋を殴りつけた。
「…つっ!いてーなー!」
 悠は首筋を抑えながら、頭痛を感じた。
首への衝撃は頭にも伝わるらしい、悠は右に首がまわらなくなった。
しかしこの状況でも、悠は涼の腹を蹴り飛ばした。
「ぐっ」
 涼が体を曲げたとき「先に帰れ!」と悠は親友を外に出した。
「悠!」
「大丈夫、後で追いかけるから」
 悠は親友に笑って見せたが、緊張感は否めなかった。
「…今日でけりをつけてやる」
 悠の言葉に涼は体を曲げながらも鼻で笑う。
「ふっ。それは俺の言葉だ。小松悠。おまえを抱いてやる」
「そんなこと、望んでいない」
 悠は吹雪く粉雪を体に受けながら、まっすぐに涼を見た。
そして足を振り上げ、蹴ろうとしたが、その足を涼に取られてしまった。
「は、離せ!」
「誰が離すものか。小松悠、ここで啼かせてやる」
 体育館の裏口には滅多に人が来ない。
それを知ったうえでの発言だろう。
「啼かせるだと?」
「おまえを抱いて啼かせるんだ」
 涼は再び筒で悠を殴った。
「け、けほっ!けほ」
 むせる悠を見下ろして、涼は口角を上げた。


9話に続きます



スポンサーサイト
FC2公認の男性用高額求人サイトが誕生!
稼ぎたい男子はここで仕事を探せ!
[PR]

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。