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「えーと『女子高生の森』に『オトナの揺らめき』、『エクストラバージン』と…」
「皆藤ー。いちいち引くエロ本のタイトルを読み上げるなよ」
 理仁たち夜勤組は深夜に業者から新しい雑誌が届くので、残っていた先月号などを返品する作業に追われていた。
「わ、すげえ。この本、乳首が見えてるじゃん」
「おまえこそ表紙を眺めているんじゃないよ。早く終らせよう」
 コンビを組んでいる仲間に呆れながら理仁が雑誌を箱詰めしていると、ドアが開いた。
今は午前3時だ、こんな時間に来店する客は水商売の人と思われる。
「いらっしゃいませ」
 理仁は慌てて立ち上がり、レジに向かった。
お客様はどこにいるのかとレジから眺めるとドリンクコーナーに立っていた。
ビールでも買うのかなと理仁がぼんやり眺めていると、お客様が理仁を見て微笑んだ。

「あ」

 理仁を苗字で呼んだお客様だった。
「寒い中、よく頑張っているね」
「店内は暖かいですから」
 理仁が言うとお客様は軽くうなづいた。

「今夜はこれをもらっていくよ」
 お客様はビールを1本レジに置いた。
「それから、これ」
「え?」
 理仁に渡されたのはお金ではなく、名刺だった。
「あの、これ…」
「私は矢吹崇。ここにメールアドレスが書いてあるからメールを送って欲しい」
「はっ」
 メールを送る意味も、名刺を渡されたことも理仁には理解できない。
「あの、どういう用件でしょうか…。俺はここの単なるバイトなんですが」

「きみを気に入ったんだ。できればこのお店から引き抜きたい」
「えっ?」
 
 矢吹崇と名乗ったこのお客様は何を生業としているのかと、理仁は名刺をよく見た。
聞きなれない会社名だが部長と書かれてあって驚いた。
「俺はまだ大学生です、会社では働けません」
 渡された名刺を返そうとしたら崇は口角を上げた。
「皆藤くん。引く抜く意味がわからないかな?」
「ええ、はい」
「会社で働かせようとは思わない。私の側にいてくれたらそれでいい。月収はいくらが希望だ?」
 思いもかけない申し出に理仁はあっ気にとられてしまった。
「ここの時給はいくらだ?」
「夜勤なので950円もらっています」
「そうか。じゃあ月収50万円で手を打たないか?」
「ごじゅ…」
 理仁は視界が歪む気がした。
こんなことは有り得ない、からかわれているんだと自分に言い聞かせてビールのバーコードをスキャンした。
「そんな作業よりもきみには充実した仕事を任せたいんだ」
「ですから俺は…」

「まわりくどかったかな。私の愛人になってほしいんだ」
 理仁は思わず口を両手で抑えて硬直した。
「返事は?」
「あのっ。からかっているんですか?俺は男だし、矢吹さんも男ですよね」
「私はどうやら両刀なんだよ。JK…いや、女子高生は苦手だけどね、皆藤くんみたいな可愛い子がいたら側におきたくなる。これが私の性質らしい」
 崇はレジ台に手をついて前のめりになった。
距離が縮まるので理仁は体を反らした。
「50じゃ不足か?」
「いえ、そんなにいただけるような人間じゃありません」
「この若さで謙遜か。親御さんの躾がいいようだな。しかし私はきみに惚れている」
 理仁は目を丸くした。
「惚れているから通っているんだ。全然顔を覚えてもらえなかったけどね」
「すみません」
 理仁は素直に頭を下げた。
「じゃあ、その罪滅ぼしに私の愛人になりなさい」
 崇は財布から札束を5つ出した。
「50万円。先払いだ」
「困ります!ここのバイトはすぐには辞められません。ただでさえ夜勤をやる子は少ないんだし」

「可愛いきみをこき使う店なんて気にするな。しかしそこまで言うならアフターケアも私からしておこう」
「アフターケア…?」
「後釜を推薦しておくってことさ」
 崇は自信ありげに微笑んだ。
「このコンビニは誰でも勤まるが、私の愛人はきみしかできない」
 その言葉に理仁は少なからずショックを受けた。
責任を感じながら毎日働いていたお店だ、自分がいなければ成り立たないとさえ思い始めていた。
しかし崇は否定した。
誰でもできるとごく一般的な解釈をしたのだ。
だがこれは真実でもある。
理仁がいなくても店は営業をするのだから。

「50…くださるんですね?」
「ああ」
 理仁はお札を受け取ると財布にしまいコンビニの制服を脱いでみせた。
「俺があなたにするべきことを教えてください」
「…実にいい顔だ。私は良い買い物をしたらしい」
 崇はビールを片手に「明日の9時に迎えに来る」と言って店を出て行った。
理仁はそれを見送りながら、自分の人生が大きく変わる予感がしていた。


3話に続きます




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