FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 女子高生を拉致してハメ動画を売ろうとしたなんて謝って許されることではない。
煌は授業にまったく身が入らず、女子高生の苦悶の表情ばかり思い出しては罪の深さを悔やんだ。
いくら仲間に金を餌に誘われてもはっきり断るべきだったのだ、
しかしそれができずに流されて、あろうことかビデオカメラを持ってしまった。
しかるべき罰を受けるのだろうと煌は体を小刻みに震わせた。

「調子が悪そうだねー。体調を崩した?」
 気がつくと授業は既に終わっており、匠が側に立っていた。
「いや、なんでもないよ」
 煌は頭を振ってため息をついた。
「ふうん?そうは見えないけどなあ。でも平気なら早く着替えなよ」
「え」
 女子たちが「マジでー」などと騒ぎながらジャージを持って教室を出て行くのを見て、次は体育の授業とわかった。
その光景を見ているからか、仲間が「ブルマーじゃないんだよなあ」と笑っているのが煌の耳に入る。
「JKのブルマー姿も売れそうじゃね?」
 仲間は少しも凝りていない、それが煌の苛立ちにつながった。
煌は席を立って仲間のところに行く。
「もう止せよ、そんな話」
「はあ?上原はびびりすぎだぜ」
 仲間は煌を嘲笑した。
「あれはしてはいけないことだったんだ」
「今更言うか?自分も参加したくせに」

 それを見ていた匠は何も言わずに自分の席に戻り、着替えを始めた。
煌は何も言わない匠を恐れた。
事情を知っているのかもしれないと思うと頭痛がしてきた。
本当に調子を崩したかと煌はジャージを持ちながら何気なく振り返ると、皆がジャージに着替え始めている。
その中に匠もいて、堂々とボトムを脱いで下着姿で近くの男子と話しているのが見えた。
白い肌に杢グレーのボクサーパンツがやけに際立つ。
  
 この瞬間、煌は胸の鼓動が高鳴った。
同じ男なのに自分よりも爽やかな印象で、屈託の無い笑顔が煌の感情を刺激した。
しかも下着姿に気を取られるなんて、今まで経験したことがない。
 昨日、拉致した女子高生の下着が見えてしまったときはまったく興奮しなかったのに、
今のこの感情はなにか煌にはわからない。
だが自分が匠を意識しているのは自覚がある。
 
 こうして匠を眺めていても視線が合わないのは淋しい。
 近くにいる男子と何を話しているのか耳を澄ますと、植物のことのようだ。
「手をかけてやると綺麗に咲くんだよ」
「匠は偉いな。普通、そこまでできないぜ」
「植物がわが子だと思っていたりして?」
「あー、そうかもね」
 匠の笑顔につられて皆が笑っている。
「手塩にかけたわが子って感じ?」
 
 煌はそれを聞きながら、あの集団の中に入りたいとさえ思った。
匠に近づきたいのだ、しかしそれさえ自ら動けない。
煌は奥手で自分から行動ができない性格なのだ。
だからこそ、昨日の誘いも断れなかった。
 しかし自己主張のできない煌が、このクラスの委員長を努める優等生なんて皮肉なものだ。
 ちなみに副委員長は女子だが、コミュニケーションをとった日はない。
女子のほうはなにかと煌に相談をもちかけるが、煌は判断ができない。
そんなことがたびたび続いて、すっかりその女子からの信用をなくした。
委員長なんて責務は、もはや看板でしかなかった。

 煌がジャージに着替えて教室を出ると匠が「煌ー」と呼びながら追いかけてきた。
「今日は短距離走だってさ。煌なら走るのが速いからいいな」
「え。そうでもないよ」
「謙遜するなあ。僕はバスケの試合を見たんだよ?足、速いじゃないか」
「…試合を見たのか?」
 煌は匠との接点を見出したような気がした。
「うん、先月の対抗試合」
「へえ…。バスケ、好き?」
「バスケじゃなくて、煌が好きだなー」
「はあっ?」
 煌は面食らった。
まさかの告白に、どう答えていいのかわからない。
「僕とは違って真面目だし、成績も優秀だし、典型的な優等生だもんね」
「誉めすぎだよ」
「そうか?見た目もいいし、いつも落ち着いているから性格もいいんだろうなって思っていたよ」
 匠は首に巻いたタオルを口元に当てて微笑んだ。
「互いに名前で呼び合えて嬉しいよ」
 その仕草に煌は見蕩れてしまう。

「顔、赤いよ?」
 匠に指摘されていよいよ動揺する煌に、匠は吹き出した。
そしてつまさきだちになって、口を開く。

「僕のことが好きなんだ?」
「え、えー?」
「あはは。わかりやすい」
 匠は両手を打って笑うと「急がないと遅れるよ」と急に駆け出す。
煌はそれを追って走り出した。
「お、男に惚れられるのに慣れているのか?」
 走りながら匠に聞くと「まあね」と満更でもない答えが返された。
「付き合ったことはないけど、告られた数は僕が告った数より多い」
「そうなのか…」
「でも僕は植物が好きだからね。誰のものにもなるつもりはない」
 匠の言葉は煌を落胆させていた。
『誰のものにもなるつもりはない』と釘をさされた気がしたのだ。
 しかし煌はふと思い出して「園芸部に女子がいるよな?その子とも何も?」と聞いてしまった。
「ああ、隣のクラスのカオルちゃんのこと?」
「と・隣?」
「カオルちゃんとは身の上相談もしているよ。だけど付き合いじゃないな」
 煌はなぜか遠まわしに攻撃される悪い予感がした。
匠は知っている、そう直感したのだ。

「会えないかな、そのカオルちゃんに」
 煌が勇気を振り絞って匠に聞くと、匠は立ち止まった。

「謝る気なら付き合おうか?」

 見上げた目は非難しているようには見えないが、言葉が煌に突き刺さる。
「1人では言えないだろう」
 匠は「早く解決したほうが身のためじゃない?」と続け、下駄箱を目指してまた走り出した。
しかし煌は追いかける気力をなくしてしまった。
知られていた事実が煌の背中に重く圧し掛かるのだ。
「どうしようか…」
 ぼやいても結論は出ない。
もはや人影もまばらな下駄箱に行くと、制服姿の誰かがしゃがみこんでいるのが見えた。
「どうかしたのか?」
 煌が声をかけると、その子はゆっくりと立ち上がった。
そしてスカートの裾を手で整えてお尻を払い、顔を上げた。
「見つけた」
 煌を指すその子は、なんと昨日の女子高生・カオルだったのだ。


4話に続きます









スポンサーサイト
[PR]

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。