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2009.05.20 RUSH・2
「こんな納期の注文は受けられない。お客様に相談して出直してこい!」
 仕事が始まると決まって櫂の怒鳴り声が商品部に響き渡る。
「急ぎなんだよ。どうにかならないか?」
 営業部の人間が頭を下げても櫂は引き受けない。
「工場は今フル稼働なんだ。これ以上の無理は言えないぞ」
 そして注文書を机にたたきつけた。
「納期をずらせ。そうしないと手続きをとらない」
 櫂はまだ20代だが、頭を下げている営業部は30代。
年下の櫂に怒鳴られて、感情をおさえてはいるが怒りを覚えた表情だ。
「櫂、それを貸して」
 前の席に座っている蓮音が手を出した。
「僕から頼んでみます。だけど楽観はしないでください」
「大貫くん、よろしく頼むよ」
 営業部は安堵した様子で商品部から出て行った。

「植田、言いすぎだぞ」
 経緯を聞いていた部長が釘を刺す。
しかし櫂は納得できないようで「自分の仕事をしているだけです」と言い切る。
「まあ、たしかにメーカーや工場に急ぎの仕事ばかり押し付けては貸しができてしまう。
いつなんどき『先日の急ぎを引き受けたから』と言って価格交渉をしてくるか知れたものではない。
だが、おまえはやりすぎだ」
 
 部長も憤慨している中で蓮音は工場に連絡を入れて納期の確認を取っていた。
しかし当然ながら工場側はいい返事をしない。
だが蓮音は頭をひねり、先に入れた注文を後回しにして、こちらにかかって欲しいと願い出た。
『大貫、先にもらった注文は納期が2週間しかない。これもやらないとまずいだろう?』
「工場長なら1週間でできますよね?それを踏まえたうえでお願いしています」
『大貫には敵わないなー。わかった、すぐに工場に注文書をメールしてくれ』
「わかりました。工場長、ありがとうございます」
 蓮音が電話を切ると部長が「おまえも困った奴だ」と笑った。
「あの工場長を動かせるのは大貫くんしかいないな」
「そうなんですか?」
「工場長には娘さんがいてな、その婿に大貫くんが欲しいと相談されたことがあるんだ」
「えー?」
 蓮音には初耳の話だ。
「僕は婿になりませんよ。長男なので」
「ははは、そう言っておこう。しかしそれで納期が延びたら大変だから、片付いてからにしよう」
「部長も悪い人だ」
 蓮音も笑うと櫂が「あのさあ」と割り込んできた。
「いつも無理をとおしていたら相手が甘えるだけだぜ?」
「わかっているよ」
「蓮音はわかっていない。営業部に一言言うべきだ。そうですよね、部長」
 部長は話を振られて苦い顔だ。
「まあ、そうだが。あまりカリカリするなよ植田くん」
 櫂がむすっと口を結んでいると、部長は「さー、仕事だ」と明らかに話をそらした。
そのせいで櫂の怒りの矛先がなくなってしまった。

「櫂、円滑に進めばいいんだよ」
「円滑じゃないよ。いつ無理がきかなくなるかわからないぞ」
 まだこだわる櫂に、蓮音は「お茶でもいれようか」と声をかけた。
すると横で聞いていたのか女性社員が「おやつがありますよ、私がお茶を入れましょう」と嬉しそうに給湯室に入って行った。
「昼ごはんを食べたばかりだから結構ですよ」
 蓮音が慌てて追いかけると、女性社員は「お取り寄せしたんです。食べましょうよ」と誘う。
どうやら女性というものは食事を終えたあとでもスイーツが胃袋に入るらしい。
蓮音は苦笑いをしながら「あとでいただきますから」とやんわり断った。

「大貫くんは植田くんとタイプが違うのね」
「そうですか?同じだと思いますが」
 女性社員は首を振る。
「こう言うと悪口に聞こえるかもしれないけど、出世するのは大貫くんだと思う」
「はあ?」
「メーカーや工場に迷惑はかけているけど、お客様には喜ばれているはずだから」
 お客様の示した納期を守るのは営業の仕事だ。
しかしそれを支えるのは商品部であり、本来ならば無茶な納期でない限り受けるべきなのだ。
「難しいですね」
 蓮音は自分のすることが正しいとは思っていない。
櫂が言うようにメーカーや工場と円滑な取引をするため、極端に短い納期の注文は再度検討すべきなのだ。
「櫂のしていることも正しいと思うんです」
「あら、大貫くんは大人なのねー」
 女性社員は「ふんふん」とうなづきながら蓮音の話を聞いた。
「だったら植田くんをフォローするのは大貫くんの役目ね。私は止めておくわ」
「はあ」
 入れかけたお茶をそのままにして女性社員は席に戻っていく。
蓮音は迷ったが、お茶を入れて櫂に渡した。
「さんきゅー」
 そして湯飲みに添えられたメモに気付き、すぐに目をとおした。
読み終えた櫂は蓮音を見た。
「…別にいいよ」
「ありがとう」
 メモには『今夜は飲まない?』と蓮音が書いていたのだ。

 そのメモを読んでからの櫂は、やや落ち着きを取り戻していた。
営業部からくる注文には「納期が厳しい」と相変わらずの態度だが、「検討しなおせ」と言わずに保留扱いにして工場やメーカーに連絡を取るようになった。
 おかげで蓮音は自分の仕事に集中でき、注文した商品の納期確認や納品のチェックなどの作業が進んだ。

 作業をひととおり終えると丁度定時だった。
蓮音が机上を片付けて帰り支度を始めると、櫂がその姿を眺めている。
「櫂も帰る準備をしなよ」
「疲れて動けない」
「はあ?」
「普段、蓮音がしているようにメーカーや工場に連絡をし続けたから疲れたー」
 甘えているのかと蓮音は耳を疑った。
普段はクールな態度を取りながらもすぐに怒る性格なのだが、甘えてきたのは初めてだ。
 対処に困った蓮音はカバンを持ちながら「…それならおいて帰る」と言う。
「冗談だよ、俺も帰る」
 櫂がため息をつきながら立ち上がる。
今日はやけにため息をつくなあと蓮音が思っていると、櫂は「うーん」と腕を伸ばした。
疲労したアピールのようだ。
「仕事をしたら誰でも疲れるよ。じゃ、行こうか」
「ああ、そうだな」
 蓮音は櫂と連れ立って会社を後にした。

「どこに行く?」
 初夏の爽やかな夜風を受けながら櫂が聞いてきた。
「このまえ行った居酒屋でいい?」
「あそこか。近いからいいよ」
 居酒屋はリーズナブルな値段でお酒が飲めるので、薄給の2人には丁度よい店だ。
「その前にさあ」
「なに?」
「俺、間違ってる?」
 唐突な問いかけだが、仕事のことだろうと蓮音は気付いた。
「間違っていないよ。櫂の取る方法もありだと僕は思っている」
「ありがとう。よかったー」
 櫂がようやく笑顔を見せたので、蓮音は嬉しくなった。
「蓮音に言われると自信がつく」
「そうか?」
「俺、蓮音が好きだからさ」
「…は?」
 風がそよぎ木々の葉を揺らす中、さらりと告白された蓮音の足が止まった。

3話に続きます
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