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2009.05.25 mellow・3
 駅の階段の隅で中学生らしい女の子が下着を握っているのを健は見かけた。
女の子の隣に同じく小柄の男子が座っており、女の子のスカートをじわりじわりとめくっている。
 性に目覚めて盛りがついたのかと、健は呆れた。
あんなところでまさかセックスはしないだろうと思い、やり過ごしたが駅員が気付いたらしく2人に駆け寄っていく。
 
 注意できる大人がいてよかったと健は感じた。
しかしクラスメートの盗撮と彼女らが健の脳内で重なり、他人事とは言え、嫌な気分だ。
性に群がるものは人目を気にしないのかと、ため息をついた。
恥じらいがないと、ただ性欲にまかせて動物のようにセックスをするだろう。
こんなことを考えるのも無駄だと健は思い、改札を抜けてホームに立った。

 上り線のホームで電車を待っていると「健!」と声をかけられた。
見ると光だ。
嬉しそうに歩み寄ってくる光を見て、健はくすぐったい気持になる。
「今日は何もおとがめなし?」
「ああ、すぐに帰れてよかった」
 委員長である光は担任に学級日誌をつけさせられていて、この提出と報告にいつも時間がかかる。
なのでこうして健は光と一緒に帰るなんて珍しいことなのだ。

「いつも思うけどさ、どうして時間がかかるんだ?」
「日誌の内容を先生が読んで『それで授業中に騒いでいた奴をどうして注意しないんだ』とか言われるんだ。だけど俺はどうしてもクラスの状態に気配りができなくて」
 
 健は「あ、そう」と聞き流したふりをしながら、別のことを考えていた。
たしかに授業中に誰かが騒げば注意をするのは委員長の仕事でもある。
しかし光はいつも「じきに静かになるだろう」と思うらしく、それではクラスはまとまらないし光に人望は集まらない。
 建はそのことに気付いているが指摘をしなかった。
授業中に騒いだ奴は光のいないときに「騒ぐんじゃねーよ」とにらみをきかせているからだ。
 健は身長が160センチほどしかなく、おまけに小顔で童顔だが、そんな子が怒ると迫力があるらしく、大抵の奴はそれでおとなしくなっていた。
 たまに刃向かってきて手をだしてくれば頬を叩いてやる。
そして「委員長に迷惑をかけるな」とすごみ、場を終結させていた。
 こんな影の努力を光は知らなくていい・健はそう思っている。
無事に卒業して進学するのみだ、そのために光の経歴に傷があってはならないと健は拳を握り締めた。

 やがて電車は2人が降りる駅に到着し、2人は並んで歩きながら帰途についた。
「電車の中で、ずっと黙っていたね」
 不意に光に声をかけられて健は驚いて光を見上げた。
「やっぱり、なにか悩みでもあるんじゃないか?」
「なにもないよ」
 即答したが光は口をとがらせて、健の言葉を信じていない表情だ。

「幼なじみだからわかるんだよ。健は悩んでいる。だけどそれは俺に言えないこと」
 光がまだ明るい空を見上げながらつぶやく。
「あー。まだ眩しいね。暮れていく夕方の空が健は好きなんだよね」
「…そんなことを言ったっけ」
「小学生のころだよ。俺、忘れないんだー。健が言ったことって」
 そんな昔のことを出されてもと健は口を閉じたが、それを見てなぜか光は「それでさ」と続ける。
「オレンジとか紫とか色々な色が一度に見れるからって、健が言ったんだよ?」
「覚えていないよ」
「でも夕方の空は好きだろう?」
「まあね」
 光は「ほら、やっぱり」と笑顔を見せる。
その笑顔さえ、健の心を惑わせてしまう。
胸の鼓動が激しい、今夜も眠れない夜を過ごすのかと思うと息苦しくなる。
 健は思わず自分の胸を抑えた。
この鼓動を知られたらこうして並んで歩けないだろう。
 焦る健とは対照的に光は空を見上げて楽しそうだ、健の異変にも気付いていない。
隣にいる自分のことさえ気付かないのだからクラス全体が見られなくて当然だなと健は皮肉まじりに思う。
「覚えていてよかった。俺、最近…本当に健とは距離を感じていたんだ」
「まだ言うのか」
「うん、なんだか遠くに感じたよ」
 素直な光の言葉に健は心を動かされた。
「それは…僕のほうだよ」 
 健は胸を抑えながらつぶやいた。
しかしその声は通り過ぎるトラックの走行音にかき消された。
「どうしてかなー。健が遠くに感じるって」
 光はのんきに話を続けている。
健は大きくため息をつくと胸から手を離し、背を正した。
「ん?どうかした?」
 今頃気付くとは鈍感もいいところなのだが、健は救われた気がした。

「もう、家に着いたから」
「あ、そうか」
 健は「じゃあ」と手を振る光に手を振りかえして家に入ろうとした。
しかし、急に胸の鼓動が高鳴った。

 今日も眠れない夜を過ごすのか?気持ちを押し隠したままでいいのか?と自分に問う。
とても耐え切れない、健は家のドアを開けずに門を開け、遠ざかる光の姿を見つけて駆け出した。
 歩みの遅い光にはすぐに追いついた。

「どうかした?」
 走ってきた健を見て、光は目を丸くしている。
声をかけられても息が荒い健は膝に手をあててがくりと腰を折り、息を整えるのに必死だ。
「もしかして、俺に相談事?話してくれるのか?」
 しかしまだ健の息は上がっている。
黙ったまま数秒が流れ、健がようやく顔を上げると心配そうな光と視線が合った。

「なにかあった?」
 光はアスファルトに片膝をついて、健に視線を合わせようとしていたのだ。
すると健はまるで誰かに背中を押されたかのように光にキスをしてしまった。
 それは3秒ほどの短いものだったが、健自身も驚いてしまい声が出ず、光は健以上に衝撃を受けたようで両膝をアスファルトにつけて視線が泳いでいる。

「な…なにが…」
 光が声にならないほどの小声でつぶやく。
「今、なにが起きたんだ…?」
 健は胸を抑えながら光を見た。

「距離を感じていたのは僕のほうだ。離れていたくないんだ」
「えっ…」
 光は何度も瞬きを繰り返して、緊張していることをその仕草で健に伝えてくる。
「僕は寂しかったんだぞ」
 そう言うと健は光に背を向けて再び走り出し、家に着くと門を閉めてドアの向こうに姿を消した。
残された光は思わず唇に指をあて、途方に暮れてしまった。


「寂しいって…」
 そう言われても光にはわからない。
よろよろと立ち上がり、カバンを持ったつもりが指が滑って落としてしまい、自分が混乱していることを理解した。
「寂しいって言われても…」
 光は残念なことに思い当たる節がない。
健をどう慰めていいのかさえわからない。
 勉強はできても光は洞察力が欠けていたのだ。
カバンをはらいながら光は歩き出し、明日健に具体的な悩みを聞こうと決めた。

4話に続きます

 
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