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2009.06.02 室内の湿度・2
「裸にされた挙句に写真まで撮られて?おまけに暴行か。これはいけないな」
 駆けつけた警官に凱が事務所で説明をして店長の携帯の画面を見せている。

「これは、きみか?」
 警官は携帯の画面を杏樹に見せた。
それは杏樹の裸体で、思わず目をそむける杏樹に警官は「本人だね」とぼやいた。

「じゃあ、暴行の詳細を聞かせてもらおうか」
 なんともデリカシーのない警官だ。
恐らく性的暴行ではなく、殴ったとか蹴られたと思い込んでいるのだろう。
杏樹が言うのをためらっていると凱が側にきて「俺らは外にいますから」と気遣った。
 その姿を見送り、安堵した杏樹は警官に「…尻に指を挿入されました」と正直に話した。
すると警官は目を丸くして手帳を床に落とした。
「…そんなことをされるなんて。辛かっただろう」
 警官は先程までの気配りのなさが消えていた。
同じ男だからわかるのか「屈辱的だ」とさえ言う。
「余罪があると聞いているから店長は引っ張っていく。きみは早くこの件を忘れたほうがいい」
「はい」
 杏樹が警官と一緒に事務所を出ると、コンビニのお客さんたちが驚いて静かになった。
さらに店長が身柄を拘束されて出てきたので、なにごとかと訝る視線が注がれた。
「お騒がせしまして、すみませんね」
 警官がお客さんに向かって言うがお客さんは固まったように動かない。
しかし中には「強盗ですか?」と聞く若者がいて、警官は「違いますよ」とかわしていた。

 店長はパトカーに乗せられてコンビニを後にした。
杏樹は自分も事情聴取されると踏んでいたのだが、あっさり解放されて内心ほっとしていた。
 さ、帰ろうと歩き出すと「杏樹さん!」と凱の声がする。
またしても凱は仕事を抜けて杏樹の元に来てしまったのだ。
「今日はありがとう。でも仕事に戻りなよ、人手が足りないんだろう?」
「だってこのまま別れたら、2度と会えない気がしたんです」
 たしかに杏樹はこのコンビニに2度とくるものかと思っていた。
「これ」
 凱が差し出したのはレシートで、その裏には携帯の番号とアドレスが書かれていた。
「かけてください」
 随分と積極的な子だなあと杏樹が見上げると、凱が照れくさそうに微笑んで腰に手を当てた。
「俺、あなたの何番目の彼氏でもいいですから」
「はあっ?」
「本当は2番…いや1番くらいがいいんですけどね」
「あのさ…」
 杏樹が問い返そうとしたら凱が慌ててコンビニに戻っていく。
「杉本ー!レジはいいからビールを補充してくれよー」
「わかった、すぐにやる」
 仲間の声に返事をしながら、ふと凱が振り返った。
杏樹はなんだろうとその顔を見ると、凱は笑顔で大きく手を振った。
「また、会ってくださいねー」
 杏樹は、ただ呆然としながらもぎこちなく小さく手を振り返した。




 翌朝、杏樹が出社すると同期の大島麻人(あさと)が総務部で誰かと大声で話している。
「だからー。いくら不況だからって、通勤のガソリン代を全額支給しないなんて困りますよ!」
「いや、これは決定事項だから」
 相手は総務の課長のようだ。
「そんなことを勝手に決めて!これからどうやってここに来いって言うんですか!」
 
 麻人がかなり激している様子なので、ここは関わらずに自分の部署に行こうとした杏樹だが足音をたててしまい、麻人に見つかった。
「杏樹、おはよー」
「おはよう」
 杏樹はばつが悪そうに作り笑顔で応対した。
すると麻人が課長との話を勝手に中断して歩み寄ってくる。

「なあ、聞いてくれよ!ガソリン代を支給しない会社なんて、どこにあるって言うんだ?」
 息巻く麻人に杏樹は「しー」と指を唇に当てた。
「声が大きいよ、麻人。それに決定事項に反論するなら上司をとおしたほうが角が立たない」
「あ、そうか!」
 つい先程まで鬼のような剣幕だった麻人は急に笑顔になり「わかった!そうする」と言って、
杏樹と一緒に部署に戻ろうとする。
「麻人、順番が違う。課長に謝ってきな」
「え、そうしないとマズイ?」
「まずいよ…印象が悪いだろう?」
 
 麻人は「ここで待ってて」と言い残して課長に謝りに行った。
これもまた大きな声で「出すぎたことを言いました、すみません!」とはっきり聞こえてくる。
思わず杏樹が吹き出すと、戻ってきた麻人は「なんで笑っているの?」と首を傾げた。
「麻人といると楽しいよ」
 杏樹がそう答えると麻人が「そうか?」と、はにかんだ。
プライドも高くて強気の男だが、誉められたり持上げられたりすると弱いのだ。
まるで子供のような面を持つ麻人だが容姿も優れていた。
鼻筋のとおった男前で、着ているスーツもブランドものだ。
身なりの整った・しかもいい男のわがままが通用してしまうこの会社で、
営業部に所属している麻人は自分の容姿を武器にして顧客をつかみ、営業成績を伸ばしつつある。
 
 杏樹は麻人とは別の部署であるシステム管理部にいるのだが、彼の風評はよく耳にする。
「凄いな」と感心するものもいれば「まぐれが続いているだけ」と評価しないものもいる。
味方もいるけど敵もいる、そんな麻人を杏樹は評価しているほうだ。
 自分とは違って、理解できない事柄に対して相手が誰であろうと真意を確かめるこの姿勢に、
杏樹は惹かれるものを感じていたのだ。


「杏樹、今夜は空いている?」
「え、なんで?」
 唐突な誘いに杏樹は面食らった。
「杏樹と一緒に飲みたいんだ」
 こんな誘いは初めてで、杏樹は「どんな風の吹き回しなんだ?」と聞いた。
「珍しい。麻人が男を誘うなんて」
「茶化さないでくれ。俺、実はさあ…」
「僕を好きなんて言わないでよ?聞きすぎて頭がおかしくなりそうだ」
 先手を打った杏樹に、麻人は敵わない。

「俺の気持ちを知りながらさあ?」
「声を抑えろって。だから、1度だけ寝たじゃないか」
 杏樹がつぶやくと麻人は「たったの1回」と不満げに口を尖らす。
「俺たち、付き合わない?」
「セックスが目的なら、他を当たれよ」
「そうじゃないって。俺は杏樹が好きなんだからさあ」
 杏樹は凱が言うとおり童顔だ。
こんな自分のどこがいいのかわからない。
社内でも容姿が優れていると評判の麻人に惚れられても、とても本気には思えないのだ。
自分が惹かれているだけでいい、そう杏樹は思っていた。

「2番目じゃなくて1番目か」
 杏樹は思わず昨日の凱の言葉を反芻した。
「え、なに?俺の1番になりたいの?」
「違うよ」
 杏樹はすぐに否定したが、麻人は満更でもない様子だ。
「1番の席は空けてあるよ」
 そう言って麻人は杏樹の腰に手をまわした。
「したいなあ」
「セックス?」
 杏樹が眉間に皺を寄せても麻人は気付かない。
「具合がいいんだからさ。離れられないよ」
「…そんな言い方があるかよ」

――杏樹は半月前の新入社員歓迎会でお酒を飲みすぎて酔ってしまい、麻人に介抱された。
そして杏樹が目を覚ますと、そこは麻人の部屋だった。
「可愛い顔をしているから気になっていたんだ」
「…顔?」
「抱かせろよ」
 麻人もお酒を飲んでいたので、お互いが酔ったままセックスをしたのだ。
部屋の湿度が高いのか、やたらと体が火照る杏樹に麻人はキスをしてベッドに組み敷いた。
そして抗う力もない杏樹のスラックスを脱がせて下着をまさぐり、茎を取り出した。
「あ、嫌だ!」
 杏樹が腰をひねると麻人は「いいねえ」と腰を撫で回した。
「俺と一緒にイかないか?」
 麻人は自分のすでに勃起した茎を取り出すと、杏樹の茎とあわせ持ち、扱き始めた。
「あっ!あああ、やだっ、この感覚が嫌だ!」
「そのくせ腰をまわすんだから、たまんないな」
 杏樹は麻人に強引に爆ぜさせられて、ぐったりとシーツに体を沈める。
しかしセックスは続いていた。
麻人は杏樹の足を開かせて股座に顔を突っ込み、秘部に指を入れてかき回した。
「あ、やだやだ!恥かしいことをするなって!」
「すげえ…もう入れたい」
 麻人は自分の茎を秘部に押し込み始めた。
「ちょ、痛いって!」
「我慢しろよ、そうしたら快楽に変わるんだから」
「女じゃないんだぞ!」
「知っているって。俺と同じものがついているもん」
 麻人は足をばたつかせて抵抗する杏樹を押さえつけると、とうとう根元まで挿入してしまった。
「すげえ…なんか悶えそう」
 そして抜き差しを始めると次第に杏樹が「ウン、ウン…」と苦しげに喘ぎだす。
「はあ、気持ちいい」
 麻人は腰を打ちつけながら杏樹の上着を脱がせ、シャツの上から胸を撫でる。
「杏樹、好きなんだ」
「…はあ?」
「すごく欲しいんだ!」
 麻人は抜き差しのスピードを速めて杏樹を追い込む。
「あ、あ、こっ困る!こんな…ァああ!」
 杏樹が体をくねらせたとき、麻人が爆ぜた。
秘部から流れる精を見ながら、麻人は「いい体」とつぶやいた。
「俺だけが杏樹をイかせるんだ」
 何を根拠にそう思ったのか知れないが、恐らく独占欲が生まれたのだろう。
元々わがままな男だ。
「…まだ何か挟まっているみたい」
 杏樹は秘部を自分の手で押さえてみて、精がついたので驚いた。
「熱さの原因はこれか…」
 杏樹は男に抱かれたのはこれが初めてだった。
放心しかけた杏樹の隣で居眠りを始めた麻人を見て、頬にキスをした。
「好き・かー。『愛している』だったら考えたかもな」
 杏樹はこれきりの関係にしようと決めていた。
 
 しかし杏樹の思惑とは違い、麻人はよく近づいてくる。
どう考えても体目的としか思えず、杏樹はなるべく距離を持とうと思った。
麻人に惹かれてはいるが、セックスだけの関係は辛い。
 今夜も「飲む」といいつつホテルに行く段取りなんだろう。
ふと杏樹は昨日登録しておいた凱の携帯番号にアクセスした。
5回・6回鳴らしても凱は出なかった。
「誰に電話?」
 麻人が頬を膨らませている。
「誰でもいいじゃないか。気にすることじゃないよ」
 杏樹は余裕があるのか視線を逸らさないので、麻人はそれ以上深入りができなかった。

3話に続きます
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