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 1人寝の夜は長くて寂しい。
杏樹はベッドの上で寝返りを打ったり、不意に起き上がったりして全く眠れずにいた。
 部屋を暗くしていてもこの有様なので、杏樹はベッドに腰掛けて暗闇の中で携帯を開いた。
凱にメールを打とうと思ったのだ。
時刻は午前1時、凱はコンビニで働いていることだろう。
休憩時間に見てくれたらと思い、杏樹は『頑張ってね』と一言だけメールを送信した。
 本当は『早く会いたい』とか『凱がいないと眠れなくて困る』などと書きたかったのだが、我慢した。
凱を困らせるだけだからだ。
「…甘えん坊か」
 凱によく言われる言葉を思い出して吹き出した。
「そうかも知れない」
 
 携帯を閉じると杏樹は背中からベッドに倒れた。
そして両手を広げて「暑い」とぼやいた。
 クーラーは<おやすみモード>に切り替えてあったので、とうに運転を止めている。
杏樹は「はあ」とため息をつきながらリモコンを取り上げ、スイッチを入れた。
 数秒待つと冷風が送られてくる。
その風を浴びると気持ちがよくなってきた。
 杏樹は再びベッドに倒れこみ、瞼を閉じて凱のことを想った。


 梅雨の時期といえども朝方は冷える。
あまりの寒さに杏樹は飛び起きて、まずクーラーを切り、大きなあくびをした。
時計を見ると午前5時だ、もう一眠りしようとベッドに横になったが凱に会いたいと思い直し、
まだはっきりしない頭を振って起き上がった。

 空は曇天で今日は雨が降るかもしれないと思いながら、杏樹はコンビニへ向かった。
外から店を覗いてみると、またしてもあの店長がレジにいた。
店長に顔を見られたくないのでこれでは店内に入れない。
 無駄足を踏んだと肩を落としながら歩き出すと後方から話し声が聞こえてきた。
段ボール箱を潰す音がするので、ゴミの処理をしているのだろう。
「杉本の奴、とうとう断るんだってさ」
「ああ、あの可愛い子?早朝に杉本に会いに来るくらいだったから、相当惚れてたのになー」
「なんか、もったいなくね?」
 杏樹の足は凍りついたかのように動けず、振り返ることもできなかった。
「しつこくされるのが嫌だって言ってたぞ。杉本、禍福じゃね」
「そうそう。ま、あいつくらいの容姿なら誰でも釣れるだろうからいいんじゃね?」
 杏樹は一息吐くと駆け出した。
真実とは残酷なものだ。
惚れていたのは僕だけか・と杏樹は溢れそうな涙をこらえて部屋に帰った。


 杏樹はリビングの床に座り込むと足を抱えた。
静かな空気が耐え難くてテレビをつけたが、画面を見る気になれない。
 しかもぼんやりとしているうちに時刻は8時を過ぎた。
もうすぐ凱が来ることになっているのだが果たして来るのだろうか。
そして「別れましょう」などと言い出すのだろうか。
 杏樹の視界は歪み始めた。
頬を伝う涙はなかなか治まりそうにない。
「好きだったのにな」
 つぶやいた言葉にまた泣けてしまう。
こんなに恋焦がれていたとは、自分でも思わなかっただろう。
セックスだけじゃない、付き合うと決めた相手なのにセフレ扱いを受けたのだろうかと疑問が残る。
 そして時計は9時を指した。
しかし凱は来なかった。


 杏樹は気持ちを入れ替えようと服を着替えて、街に出ることにした。
本来なら明日、凱と出かけるはずだったが来ないのだろうと思ったのだ。
 街に出ると百貨店のショーウインドウに黄色いバラが飾られていた。
父の日はもうすぐだからだろう、気合の入ったディスプレーを見ると自分もなにか贈ろうかと思う。
ふらりと百貨店に入ると、すぐに男性の店員が歩み寄ってきた。
眼鏡をかけて理知的なイメージだが年は20代だろう、下手をしたら同じ年かもしれない。
「いらっしゃいませ。父の日の贈り物でしょうか?」
「はい、どんなものがあるのかなーって」
「ご案内します、どうぞ」
 その店員に案内されて売り場を見ていると携帯が鳴った。
見ると凱からだ。
とても出る気になれず、杏樹は携帯を切った。

 杏樹は買い物にも没頭できず、結局その店員がお勧めするシャツを買うことにした。
「喜ばれると思いますよ」
「はあ、そうだといいな」
 適当に話していると店員が首をかしげた。
「失礼ですが、どこかでお会いしたことがありませんか?」
「え?」
 杏樹はまじまじと店員の顔を見たが、記憶にない。
「会っていないと思いますよ?」
「それは失礼いたしました。お客様の華やかな雰囲気に惹かれたみたいです」
「はあ?」
 誉め言葉なのだろうか・それともからかわれたのかと、杏樹は瞬時に対応ができなかった。

「私はこういうものです」
 店員が差し出したのは名刺だ。
<紳士服売り場担当 副店長 郷田宏>と明記されている。
「若いのに副店長なんですか…」
 杏樹が驚いている郷田は指をくるりと回して見せた。
そのとおりに名刺の裏を見ると、メールアドレスが書かれてある。
「これは?」
「私個人のメアドです。御用がありましたらなんなりとお申し付けください」
 杏樹はこの名刺をお客全員に渡しているのかと勘違いをして驚いていた。
「行き届いたサービスなんですねー」
 郷田はそう言われて杏樹が鈍いと悟る。
そして咳払いをすると「いつでも呼んでいただいて構いません」と言葉を添えた。
 明らかに誘われているのだが、こう言われても杏樹はピンとこない。
そればかりか平然と「じゃあ、発送をお願いします」と送り状を受付からもらい、書き始めた。
 郷田は『やれやれ』と心の中で毒づいたが、様子を見ようと杏樹の側に立つ。
隙あらば再度誘おうという魂胆だ。
 しかし杏樹の携帯が再び鳴り始めて空気が変わった。
杏樹は何気なく携帯を取り出して凱からと知ると、ため息をついて出た。

「もしもし」
『杏樹さん、今どこにいるんですか?』
 凱の声だ。
昨日から焦がれていた凱の声を聞いてしまうと、心が揺さ振られる。
「買い物をしているんだ、凱はどうしたの」
『俺、杏樹さんの部屋の前で待っていたんですけど、今日は会えませんか?』
 ふと杏樹は腕時計を見た。
もうお昼を過ぎている、凱と会う時間が限られてしまう。
「ごめん、すぐに帰るよ!」
 あんな噂話を耳にしても、杏樹は自分の気持ちを変えることができなかった。
本気で惚れて、側にいて欲しいと願う相手だからだ。
 杏樹は急いで送り状を書き終えて精算を済ませると百貨店を飛び出した。
そして土曜日の昼間で賑わう繁華街を駆け抜けて、一路、自分の部屋を目指した。



「ご、ごめん」
 杏樹が息を切らしながら走りこむと、部屋の前で携帯を眺めていた凱が振り向いた。
「そんなに急いでこなくてもよかったのに、杏樹さん、どうかしたんですか?」
 約束を違えたことを責めずに、凱はまず杏樹の身を案じた。
「朝から、もしかして朝からここで待っていたの?」
「あ、はい。でも1時間も遅刻したから待ちぼうけは仕方ないです」
 微笑む凱に杏樹は胸が痛くなった。
「じゃ、じゃあ…凱は3時間も…?」
「ここは日差しが眩しいから日焼けしそうでした。あはは」
 屈託無く笑う凱に、杏樹は抱きついた。
「ごめん!本当にごめん!」
「杏樹さんが謝ることじゃないですよ。俺が遅刻したんですから」
 ふと杏樹が凱の顔を見上げると左の頬が赤くなっている。
「どうしたの、その頬」
「あー、ちょっと揉め事がありまして。でも無事に解決しましたから」
「まさか!麻人がまた来たの?」
「え?昨日のあの人のことですか?来ていませんよ。これは俺が悪かった印です」
 杏樹はなんのことかわからないまま、凱を部屋に招いた。
凱はスニーカーを脱ぎながら「遅刻した理由を言います」と話し始めた。

「俺、深夜に買い物に来る女性のお客さんに好かれていたんです」
 自分目当てで買い物に来ているのはわかったが、だからといって邪険にもできないし雑談もしない。
そんな日々が続いて、とうとう相手が「付き合って欲しい」と言い出した。
言われるたびにやんわりと断ったのだが早朝にも来店するようになり、凱は精神的にまいってきた。
 そこで今朝きっぱりと断ったら平手打ちを食らったというわけだった。

「僕のことじゃなかったんだ…」
 杏樹はコンビニで聞いたことが自分を指しているとばかり思い込んでいたのだ。
しかし人違いだった、おかげで杏樹の気は晴れてきた。
「ん?どうかしましたか?」
「なんでもないよ、あー、よかった」
 両手を頭上に挙げて「うーん」と伸びをしたら名刺が落ちた。
「なんですか、これ」
 凱が拾いあげて急に頬を膨らませた。
「どうしてプライベートのメアドつきの名刺を持っているんですかー?」
「あ、これは売り場でもらったんだ」
「…誘われていたんですよ!自重してください!」
 凱は杏樹を抱き締めて「本当に危ない。1人歩きもさせられない」と言う。
不安がる凱をよそに、杏樹は凱の心臓の音が伝わって体が熱くなってきてしまった。


21話に続きます
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