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2009.06.22 視界良好・1
 ベランダの窓を開けると向かいのマンションの一室で、若い男が着替えをしているのが見えてしまった。
ローウエストの黒い下着1枚の姿で、左肩に蝶々の刺青が入っている。
その肩に色目を抑えた茶色い髪がかかっていて、白い肌を際立たせていた。

(えー!)
 
 涼真(りょうま)は声を押し殺し、ただその姿を呆然と見続けてしまった。
 念願だった1人暮らし初日に、まさかこんな光景を見てしまうとは縁起がいいのか悪いのか。
着替えている男が女性だったなら願ってもない光景なのだが、視力の良い自分が悔やまれる。
 涼真はため息をつくとベランダにカーテンを取り付けにかかった。
これで半裸の男は見なくて済む。
そう思ってふと眺めると、半裸の男と目が合ってしまい鼓動が早まった。
慌てて背を向けると後ろ手でカーテンを引き、胸を抑えてフローリングの床にしゃがみこむ。
「…とんでもないマンションに越してきてしまった」
 涼真は着替えを覗いていた自分を恥じ、そしてこのカーテンは常時開けられないなと思った。


――2週間前のことだ。
 大学に通う涼真は以前から考えていた1人暮らしを両親に話し、あっさりと了承された。
両親にしてみれば車を持たない涼真が、自宅から大学まではJRと地下鉄を乗り継ぎ、
しかも駅からスクールバスで通う姿が不憫だったのだろう。
それに定期代も馬鹿にならない。
いっそ近場のマンションに住まわせたほうが安いくらいだったのだ。
 涼真は両親の許可をもらい、不動産屋に通いつめてようやく大学の近場のマンションを借りられた。
ここは学生がよく借りるそうでこの街中にしては格安な家賃なのが嬉しいが、
反面・隣のマンションとは隣接していて日中は日影になるのがネックだった。
 しかし昼間に部屋にいることはないので、涼真は悩まずにこの部屋を選んだのだ。
「ベランダから隣のマンションが見えてしまうので、気をつけてくださいね」
 確かに不動産屋はそう言ったが、涼真は聞き流していた。
1人暮らしができることに嬉しさが隠せず、舞い上がっていたからだ。



「まだドキドキするー」
 涼真は胸を抑えながら深呼吸をした。
自分と同じ男の半裸にどうして取り乱すのか、涼真は「なんで」と自分が理解できずに頭を抱える。
「…はー。やばかった」
 落ち着いてみればなんのことはない。
それは覗いていたという後ろめたさと、自分より若干年上らしい男の引き締まった体に見蕩れたからだ。
「顔、見られたなー」
 隣のマンションとはいえ、外で会う確率は高い。
もしも出会ってしまったらどんな態度を取ればいいのか。
知らん振りでスルーしようか、それとも謝るか、どちらにしても、とっさの判断ができなさそうだ。
 涼真は首に巻いたタオルで汗をぬぐった。
そして半裸の男を忘れようと首を振って引越しの後片付けを始めた。
考えてみたら大体向こうも悪い、カーテンを開けて堂々と服を脱ぐなんておかしいと涼真は思う。
もう関わらないことだ、そう結論づけると作業ははかどった。

 空の段ボール箱を抱えて、ゴミとして出そうとマンションの出入り口に行くと「こら」と男の声がする。
「ダンボール箱はリサイクルの対象だから、資源回収の日に出すんだよ」
「は、すみません」
 涼真は頭を下げて謝ると、先の尖った革靴が見えた。
まさかと思いながら顔を上げると、果たして先程の半裸の男に間違いがなかった。
タンクトップ姿なので蝶々の刺青がはっきり見えたからだ。

 動揺してしまい凍りついたかのように動けない涼真に、
「ちなみに回収は明後日だから。部屋に持ち帰りな」と男が教えてくれた。
「この辺りは物騒で、外に置いておくと無用心だから」
「あ、はい」
 
 ぎこちなく体を反転させて部屋に戻ろうとした涼真は、急に「うっ」と息が苦しくなった。
思わず首に触れると後ろから襟をつかまれていた。
「今日、越してきたのか?」
「はい、そうですけど…」
 見返ると男の端整な顔立ちがよく見えた。
鼻筋のとおった男前で、涼真は生唾を飲み込んだ。
「ふーん。で、名前と年は?」
 言う必要があるのだろうかと思いながら、抵抗できない空気を感じて涼真は口を開いた。
「大谷涼真です。…年は18です」
「へえ、大学1年かー。に・してはやけに幼く見えるなー」
 放っておいてほしいと涼真は心の中で思う。
好んで童顔になったわけではないからだ。
「俺は榎木唯斗(えのき ゆいと)。24才のサラリーマン」
「サラリーマン?!」
 涼真は突然素っ頓狂な声をあげてしまった。
肩に蝶々の刺青をしたこんなリーマンはありえない、騙されていると思ったのだ。
しかも昼間からこうしてふらふらしているのもおかしい。
リーマンは普通、土日休みではないのか。
「なに?おかしい?」
「いえ、別に…」
 怯える涼真に唯斗は鼻で笑う。

「結構、いい体をしているでしょ。見てもいいけど触らせないから」
 
 堂々と腰に手を当ててやや前傾姿勢の唯斗に、涼真は何も言えなかった。
唯斗もしっかりと涼真の視線に気付いていたのだ。
「お向かいさん、よろしくねー」
 唯斗は手をひらひらと振って歩き出した。
涼真はそれを見送りながら、腰が抜けそうなほど動揺して抱えていたダンボールを落としてしまった。
 
2話に続きます
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