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2009.07.05 視界良好・13
「どうして裸で逃げているんだよー。恥かしいの?」
 慌てて下着に足をとおしている涼真の目の前に唯斗が来てしまった。
「恥かしいですよ!見ないでください」
 セックスの間は羞恥心がなかったが、終ったあとは気恥ずかしさが残るものだ。
「ふーん?」
 納得していないような唯斗の声を背中越しに聞いて、涼真は耳まで熱くなる。
しかしゆっくりとしていられない。
 涼真は股間を手で押さえて唯斗に背を向け、下着を履き終えると一安心だ。
そして床に散らかした自分のシャツを拾い上げて羽織る。
しかし乾かしの足りない髪から雫が落ちて、シャツを濡らした。

「ちゃんと拭かないと」
 着替えを眺めていたらしい唯斗が、タオルを涼真の頭に載せるので涼真は振り返った。
「…見ていないでくださいよ!」
「顔が赤いよ。そんなに恥かしい?」
「当たり前でしょう!」
 涼真が叫ぶと、唯斗が大笑いをする。

「なにがおかしいんですか!」
「あーんなことをしたくせに?面白いなあ、どんな思考をしているんだろう?」
 唯斗は涼真に顔を近づけると「もっと知りたくなる」と不敵な笑みを浮かべている。
その微笑に涼真は惹きつけられるものを感じてしまう。
「なにを、ですか。お互いのこととかですか?」
 涼真の胸の鼓動が高鳴る。
自分のことを知ってほしいとは思わないが、唯斗のことは知りたいからだ。
唯斗のほうから『もっと知りたくなる』なんて誘いをかけられたら平常心ではいられない。
胸の鼓動が激しくなり「何から話せば…」とか細い声で聞いた。

「涼真のプロフや過去には興味が無いんだけど」
 しかし唯斗の答えは肩透かしだった。
「…酷い言い方」
「今、俺の側にいる涼真がどんな子なのかを自力で知りたいだけ」

「それって、どういうことですか?意味がわからない」
「やたら懐く野良猫を飼った心境。これからどう変わるのか見ていたい」
 ひょうひょうとしたものの言い方で、涼真ははぐらかされた気がする。
唯斗が一体何を考えているのか、涼真には読めない。
ただからかわれているような気もするし、自分に興味を持っている気もするのだ。
 そうだとしたら、唯斗の心の隙間に入り込めないだろうか。
涼真は希望を捨てることはできなかった。
なにしろ、今日はここに泊まるからだ。
話す時間は十分にある・そう思ったが時計を見ると残念なことに0時をまわるところだった。

「唯斗さん。もう寝ませんか?」
「そうだなー。涼真はベッドを使いなよ。俺はソファーで寝るから」
「僕がソファーでいいですよ」
「んー。でも腰が痛いでしょ?」
「あ」
 たしかに涼真は腰の重さ・だるさが気になっていた。
「ひと晩寝たら治るからベッドを使いな。俺は平気だから」
「あ、はい」

 しかし涼真は唯斗のベッドに1人で寝るのは困難を極めた。
唯斗の残り香のするベッドでは眠れるはずがない。
1人・悶々として眠れないまま時間が過ぎていき、午前5時にはあくびをしながらベッドから降りた。
 そしてリビングに行くとソファーで唯斗が寝ていた。
寝顔を見るのは初めてで、それだけで涼真は鼓動が激しくなる。
瞼を閉じていても唯斗の端整な顔立ちは遜色ない。
 こんなにかっこいい人が自分の相手をするなんてと、涼真は胸が苦しくなる。
本当に付き合うんだろうか・セックスをまたしたりするんだろうか、そんなことが頭をかけめぐり、
涼真は思わず寝ている唯斗の頬に触れてしまう。
「あ」
 冷えた頬だった。
ちゃんと生きているのか不安になって床に膝をついて顔を近づけると、かすかな寝息が聞こえる。
安心したがこの近さから離れられない。
 涼真は唯斗の頬にキスをすると立ち上がり、玄関に向かうと後ろ髪を引かれる思いでドアを開けた。



「涼真、目が充血してる」
 いつもより早めに大学に行くと、友人の里田が手鏡を見せた。
「寝ていないのか?目薬が無いなら瞼を冷やしたほうがいいよ」
「そうする」
 涼真はハンカチを濡らして瞼にあてる。
「わー。ひんやりする」
「それはよかった、じきに治るさ。しかし昨日何かあったのか?」
「…別に」
 涼真はこのまま居眠りをしたい気分だ。
セックスと徹夜が響いて、かなり眠い。
「ノートはとってやるから寝たら?」
 里田はいい友人だ。
感謝して涼真が机に伏せようとすると急に室内が喧騒に包まれた。
女子の「誰だろう?」と浮ついた声や、男子の気に食わない様子が伝わる。
「な、なに?」
 涼真が顔を上げると「おはよー」と声がする。
よくよく見れば、スーツ姿の唯斗だった。
今日も上から下まで完璧なほどスリムに着こなしていて、涼真はその姿に言葉を失い、
見蕩れそうになる。

「どうかした?」
 不敵な微笑も健在だ。
「こっ、こんなところまで営業に来ないでください!」
「営業じゃないよ。立寄っただけー」
 語尾を延ばされると馬鹿にされた気がするのは睡眠不足だからなのか。
「お。にらんでる。面白いなー、これは飽きない。見に来た甲斐があった」
 唯斗は両手を叩いて笑った。
 まさに涼真はからかわれている、この事態に気付かない涼真ではない。
「元気そうでなにより」
 意味深なことを言う唯斗のせいで、涼真は体が熱くなってきた。
ノートで熱い顔を扇ぎながら「出て行ってください」と力強く拒む。
「ここは営業マンの来る場所じゃありません!」
「つれないなー。ま、いいけど」
 唯斗は涼真の頭をぽんぽんと軽く叩いて出て行った。
「ペット扱いかよ…」
 不満げに涼真がつぶやいた言葉を里田が聞き逃さなかった。
「なに、涼真はあの人と何かあったのか?」
「お向かいさんだから色々とねー…」
 そうはぐらかすのが精一杯だった。

14話に続きます
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