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「子供じゃないんだから、机の上くらい綺麗にしろ。見苦しい」
 営業先から帰社した藤川創(ふじかわ はじめ)は眼鏡を直しながら、
目の前の席に座っている同僚の秋山琉(あきやま りゅう)を叱り付けた。

「毎日同じことを言わせるんじゃない、聞いているのか?」
「ああ、聞いているよ。だから少しずつ片付けているじゃん」
 
 しかし琉の片付け方は創の思うようなものではなかった。
ファイルを一冊しまうと「あ、思い出した」と騒ぎ、違うファイルを取り出してパソコンに向かう。
そして「あの店に納品した型番はなんだっけ」などと言いながらまたファイルを取り出す。
 そんなときに琉宛ての電話が鳴れば収集がつかない。
「毎度ありがとうございます。●●商事です」
 そう言いながらメモを取り出す。
そして用件をメモに書くと、わざわざポストイットに清書してパソコンに貼り付ける。
これで乱れたデスクの出来上がりだ。

「要領が悪い!」
 この商社で営業成績ナンバー1の実績を持つ創は怒り心頭に達した。
「なんでそんなに怒鳴るかなー」
「見ていてイライラするんだ、琉、おまえにはな!」
 またしても創の怒鳴り声が室内に響く。
しかし琉はおびえたり怯む様子もなく、あっけらかんとした態度である。
これでは何を言おうと馬の耳に念仏の状態だ、大抵の人はここで諦めるのだが創は強かった。
眼鏡のズレを直しながら「早く片付けろ!」と続けた。
「俺のデスクにまでファイルが流れ込んでいるじゃないか!」
「目の前の席だから仕方なくね?」
「琉!」
 創が両手でデスクを叩くと、室内が静まり返った。
この空気に琉が周りを見渡すと事務員の女性が給湯室に逃げている。
そして遠巻きに見守るほど、創と琉の仲は悪かった。


――2人は昨年同期入社したのだ。
年は共に23歳、怒鳴りあうほど子供ではないのだが創の短期と琉の自己中な性格が災いだった。
 創は黒髪のベリーショートで縁なしの眼鏡をかけているせいか、知的な雰囲気の漂う営業マンだ。
180を越える身長も彼の存在を際立たせている。
そして琉は今どきの髪にエアリー感を持たせたパーマをかけ、しかも茶髪。
165センチの身長も手伝って、とても一流の商社に勤める営業マンには見えない。


「早く片付けろ。部長が帰社したら俺よりも怒鳴るぞ」
「はーい」
「伸ばすな!」
 
 ようやく落ち着きそうな空気を感じ取った事務員たちがデスクに戻ってくる。
そしてひそひそと噂話を始めた。
「藤川さんって、怒鳴りすぎてそのうち脳の血管が破れちゃうんじゃない?」
「イライラしすぎよねー。秋山くんだって頑張っているのに」
 どうやら女性陣には仕事のできる創よりも、2番手の琉のほうが受けはいいらしい。
「藤川さんって女嫌いって聞いたことがある」
「えー!じゃあ彼女がいないの?」
「いるわけがないじゃない。あんなにイライラする人よ?」

 この噂話がたまたま琉の耳に入ってきた。
「創は彼女がいないの?」
 琉はファイルで扇ぎながら目の前で渋い顔をしている創に聞いた。
「いない。だが、それがどうかしたのか」
 創は「扇いでいないで、さっさと片付けろ」と手で払う。
「好きな人もいないの?」
 まだくだらない質問を続ける琉に、創は呆れてため息をつきながら「好きな人はいる」と答えた。
「しかしおまえに教える義理はない。早くデスクの上を片付けろ」
「鉄壁だねー。個人情報は教えないタイプだ」
 琉が茶化しても創はびくともしない。
「定時で帰りたいんだろう?だったら無駄口を叩いていないでさっさと片付けろ」
「はーい」
「伸ばすな!馬鹿っぽい!」

 言い争いばかり続ける2人だが、帰宅する方向が同じなので自然と一緒に帰る羽目になる。
この商社はエコを推奨していてマイカー通勤を禁止し、公共交通機関を使うことになっていた。
「僕、混んでいる電車ってマジ苦手」
「…いい加減に妙な言葉使いを改めろ。お客の前でそんな言葉使いをしたら契約が取れないぞ」
「はー。そういうもんですかねー」
 同意していないのは明白だ。
「だからおまえは2番手なんだ。俺を抜くことができない」
「2番手で十分。僕は上を目指していないから」
「はあっ?」
 これは予想外だったらしく、創の声が裏返った。
「男が上を目指さなくてどうするんだ!」
「わかっていないなー。僕は創を抜く気にはなれないんだ。それだけのこと」
 琉が「ふふ」と笑うが、創には意味が伝わらなかった。

「抜けるはずがないからって言い訳か」
「はあ?…なんか面倒くさい人だなー」
 
 琉は目を丸くしつつ、創を見上げた。
「2年もこうして一緒に通勤しているのに、どうもわかってもらえない感じ」
 その言葉さえ創には理解不能だ。
「ま、いいけど。怒鳴られるよりはマシだ」
 含みをもたせる琉の言葉に、創は首をかしげるばかりだった。

2話に続きます
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