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「いや、そんな。店長さんだけが頼りなのにそんなことを言われると僕は…」
 創の目の前で琉が顧客と電話で話し込んでいる。
しかも目を潤ませて「お願いです」と話しているあたり、注文がキャンセルなのかと創は思った。
だがそれだけの理由で涙をこぼす理由になるだろうか。
大の男がみっともないと、創は呆れていた。
 無言でテイッシュを箱ごと琉のデスクに置くと、琉が一瞬だけ創を見上げた。

「ん?」
 なんと泣いているはずの琉が微笑んだのだ。

「ええ、店長さん。僕にできることならなんでも。ええ、はい」
 顧客には涙声で訴えるのだが、どうやらこれは演技だと創は気付いた。
「とんでもない俳優だ…」
 
 創が驚いていると部長が「今日も切れ味がいいな。これでまた注文をとるぞ」とにやりと笑う。
「部長、これは…」
「なんだ。知らなかったのか?秋山の隠し技・泣き落としとすがりつきだ」
 あまりにもあっさりと部長が言うので、創は目を丸くした。
「秋山は小顔で可愛い容姿だろう?それに背が低いのを武器にして顧客の懐に飛び込むんだよ」
「えっ?」
「顧客には元々可愛がられているから、お願いをすれば十中八九・注文を取れる」
 創は「なんてあざといんだ」と言葉を失う。
「ははは。1度秋山と一緒に顧客に挨拶したらどうだ?」
 部長は満足げに笑うと「うちのエースだな」と琉を見てうなづいた。

 その言葉に創は心中穏やかではない。
自分がナンバー1だったのに、覆される日が間近に来ていたのだ。
しかもそれが出世欲のない琉だとは。
 
 混乱しかけた創の前で受話器を置いた琉が「なに?」と聞いてくる。
「僕の顔ばかり見て、どうかした?」
「いや、なんでもない」
「あ、そう」
 琉は立ち上がると部長のデスクに駆け寄り「のし紙ライターの注文を受けました」と報告した。
「おお!凄いじゃないか!あれは130000円の機械だぞ?」
「あ、1台じゃなくて5台です。他店にも使ってもらうことになりました」
「素晴らしい!」
 部長が喜んで立ち上がり、琉に拍手をした。
「ありがとうございます。ちなみにのし紙も当社で請け負うことにしてもらいました」
「そつがない」
 部長は深くうなづいて背の低い琉の頭を撫でている。
「これでわが部署の今月の成績は昨年割れを回避したぞ」
「わー。部長。髪が乱れます」
「元々くしゃくしゃじゃないか」
 事務員たちも一斉に拍手をして「さすが、やるわねー」と賛辞の声を惜しまない。
 
 しかし創は複雑な気持ちでいた。
携帯を持って喫煙室に向かうと顧客に連絡を取る。
買い物カゴの件で色よい回答が欲しいのだ。
だが、店長は忙しいらしく取り次いでもらえなかった。
 
 琉のように姑息な手段で注文を受けるのは邪道だと創は思っている。
だが逆に、今まで正攻法で受注してきた自分が馬鹿らしくも思う。
 ナンバー1の実力を持つはずの創は、追い込まれた気がした。
これで買い物カゴの注文を取れなければ今月の営業成績は2番手に落ちることだろう。
 男としてのプライド、そして出世欲。
創は心の中で葛藤しながら、それでも不思議と琉をうとましくは思えなかった。
毎日口ケンカをしている割に少しは琉のことをかっていたようだ。

 それが同僚だからなのか、それともデスクがお見合い状態なせいなのか。
創ははっきりとしないこの想いを持て余していた。

4話に続きます
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