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2010.11.08 えにし・1
まだ吐く息が白く濁らない初冬だった。

あまりの寒さに目が覚めた智梓(さとし)は、霜が降りているんじゃないのかと疑い、
パジャマにフリースの上着を羽織ってまだ暗闇の外へ出た。

裸足のつまさきに冷えたスニーカーの感触に身を震わせながら、
空を見上げるとそこには冬の星座が広がっていた。

星は凍えた空気でちかちかと輝き、
大きく見えた。

「落ちてきそう…」

智梓が小学生の頃、遠足で行った隣町のプラネタリウムよりも迫力があったのだ。

自然と子供の頃を少し思い出すが、
まだ眠気の残る頭は冴えない。

智梓はじきに家へ帰り、ドアを静かに閉めた。



時計は5時前を指していた。
いつもなら6時に起きているのであと1時間寝たいところだが、
寝過ごしたら一大事である。

仕方なく服を取り出したが、それはまだショップの袋に入ったままの新品だ。

智梓は服の選択を面倒に感じると新品を着る妙な癖がある。

しかもタグを外すのは着てからだ。

鏡の前でハサミを持った右手を後ろへやり、
タグを切り落とすと「あ」と小さく呟いた。



『最近、新しい服ばかり着てるの。なんで?』

懐かしい声が頭の中に響いた。
それは、とても大事な声だった。

つられて友人の『智梓、そのうちタグつけたまま学校へ来るんじゃね?』とはしゃぐ声も思い出す。

智梓の胸が高鳴った。

『もしもタグつけて学校へきたら、俺が外してあげるよ』

大事な声が続いていたのだ。

『誰にも見つけられないうちに』

微笑むその声の主に会えなくなったのは5年前だ。


「あ。あいつ…」
名前はおろか、顔も姿も覚えている、それは自信があった。
しかし声まで覚えていた自分に恥かしくなってきた。

「穣(みのる)だ」



穣は高校の同級生だ。
常に折り目のついた清潔感のあるシャツを着、黒髪で真面目そうな容貌のせいか、
智梓は穣と出会った当初は少しも親しみがも湧かなかった。

クラス内で優秀な生徒として名を挙げられる穣は堅物にしか見えず、
ゲームだ・バイトだとバタバタ毎日を生きる智梓とは縁遠い存在だった。


しかし転機は訪れる。


修学旅行で九州へ向かう貸切客船の中、
船酔いを警戒して部屋に閉じこもった智梓は別のものを訪ねて来た穣と目が合った。

「…ひとりで何してんの?」

「留守番だよ…」

ぎこちない。
これがクラスメートとして半年経過し、初めてのちゃんとした会話であった。
しかし開けたドアからそれ以上近づけない穣と、
部屋の隅で揺れを恐れて膝を抱えたままの智梓はどこか似ている空気があった。

それは互いを意識しすぎる面だ。


「…寂しくないの?」

「別に。ゲームでもやればいいし」

校則違反のゲームを取り出してみせる智梓に、穣は瞬きをした。

「そんなもの見てると船酔いするよ」

「えっ?」

驚き慌てる智梓は、すっかり見透かしたような穣の目を見つめた。
船の部屋の床は波でかすかに揺れている。
そこに手をついただけで智梓は戦慄した。

「どうせ、こうして揺れているんだからさ」

穣は部屋のドアに凭れかかった。

「一緒に波でも見ない?」

「…なにそれ」

智梓は穣がどうして自分を誘い出すのか理解できない。
今、初めて口を聞いたような相手だからだ。

「気晴らし」

なんだそれ、とますます智梓は警戒した。

「いいよ、僕はパス」

「行かないとゲーム持ってたこと担任に言う」

「はあっ?!」

こいつ裏切り者かと驚く智梓に、穣は床に膝をつき、手を差し伸べたのだ。

「行く気になった?…智梓」


その低く響く声に智梓は急に胸が苦しくなってしまった。

どうして微笑んでいるのだろうか、
なぜ手を差し伸べているのだろうか、
なにが楽しくて見つめてくるのだろうか?

そして、どうして自分の下の名前を知っていたのだろう?と。

意識しすぎた結果なのか、
智梓はまるで磁石に引き寄せられる蹉跌のように穣へ歩み寄り、
思わずその手に自分の手を重ねてしまい、
「うわあ」と動揺した。

しかし穣は揺らぐことなくその手を軽くにぎる。

「…智梓。手、冷たいんだ?」

会話も初めてで、目を見たのも恐らく初めてだろう。
そして、手をつなぐのも初めてのことだった。

「…あったかい手、してるんだー。ね。」

目をあわせられないまま返事をするのがやっとだった。

「うん」

穣はぎゅうと両手で智梓の手を包み込んだ。

「ええっ?」

「もっとあったかいでしょ」

「あ、ああ、そうだけどさ、あのさ?」

智梓は誰かがこの部屋へ入ってこないか、覗き込まないか心配になってきた。

「心があたたかいひとは手が冷たいって誰かに聞いた」

「へ、へえ?」

「智梓がどんな人か知りたくなった」

ささやくようなその声に智梓の力が抜けていく。

「あ、あのさ。手、はなし…」

勇気を振り絞り顔を上げると間近に穣の顔がある。

「目、大きい。顎も尖って。かわいい顔してるよね、そう言われる?やっぱり」

「あのさ!…み・穣のほうがきれいな顔してる・よ。目、黒いし。顔小さいし。僕の主観だけど、ね!」

言い切ってしまった智梓は今更ながら照れ、首を振るといたたまれない様子で唇を震わせた。


「…意識してくれてたんだ?」

弾んだその声に、涙さえにじんだ目を向けた。



2話へ続きます
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最近、すごくそう思います。
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