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2010.12.05 えにし.3
穣は先に靴を脱いで部屋へあがり、片膝をついて智梓の靴を脱がせた。
その間の無言が智梓には気掛かりだったが、
『しゃべらなくていいよ』を反芻して自分に何も言わせないよう気遣っているのかと思いなおす。

しかし靴まで脱がせなくてもと恥かしさは隠せない。

人に靴を脱がせてもらうなど、恐らく幼児の頃以来だ。

それも自分にはかすかな記憶の破片しかない、
こんなにかまわれるのは困惑してしまう。

だがお礼もいえないまま部屋の隅まで抱えて連れられ、
視線を合わせられないまましゃがみこむと、前髪に何かが触れた。

「酔わないよう連れ出したのに、なんかごめん」

「は」

恐る恐る上目遣いで見やると穣が額を合わせていた。
互いの鼻の頭がぶつかりそうで、
智梓はこの距離に面食らう。
あわてて目を反らそうとするが自分の体を抱え込むように穣の両腕がガードしている。
その細腕には筋肉がついているのか、
はりつめた質感を目の当たりにした智梓は言葉を発せない。

「思ってた以上に、か弱いんだ?」

穣の呼吸が智梓の唇にかかる。
体温を思わせるあたたかな息に思わず智梓がぎゅっと目を瞑る。

「まつげ、なが…」

ささやくような小さな声だった。

しかも今までかけられたことのない言葉に『それは僕ー?』と驚き、
その目と唇を開いた智梓だが、
ぬるい体温のなにかが唇に一瞬触れ、
ためらうようにすぐ離れた。

それが穣の唇だと直感でわかった。

顔の角度からしても唇以外にありえない、
智梓は取り乱しそうになり、
右手を伸ばして穣の頬に触れた。

「な、なにして…?」

「…したかったから」

ばつが悪そうに口を尖らす穣に「するのは、話だろ…?」と問いを重ねる。

「かすっただけだし」

「…したかどうかもわからないキスなんて、1番対処に困るよ」

「…経験あるような言い方をする。こわがってたくせに」

穣は自分の頬に遠慮がちに張り付いたままの智梓の手を取ると、
「手、つなぐだけでもよかったのに。ほんと」
「はっ?」
「ずっと見てたって言ったのは、いつか智梓と手をつなげたらなと思ってたから」

ここまで言われたら先刻まで言葉を交わしたことのない相手であろうとも、
口説かれていると理解する。

しかも穣の視線は揺るがない、
デッキで遊んでいた連中もそのうちこの部屋へ戻ってくるだろうに、
その靴音が聞こえてこないか気になり聞き耳を立てる智梓とは対照的に、
智梓だけを見つめているその瞳は光りを帯びていた。


「触れたかった。すごく」


穣が智梓の指の間に自分の指をあわせ、
そしてきゅっと絡ませる。

その指には少しずつ力がこもっていく。
初めは絡ませるだけの指が、
次第に智梓の指を圧していく。


「智梓に触れてみたかったんだ」


募る思いが噴出しそうなのを堪える姿を黙って見続けることはできない、
智梓が手首を軽くひねり、その力に応えた。


「…智梓?」
この反応に驚いたのか、
意外そうな顔をする穣に「誰か来たら困るんだ…」と返事をしつつ徐々に視線をそらしてしまう。

「僕、ど・どうしたらいい」

「…こっち、来て」

穣は指を絡めあったまま、それを突然引いた。
「んっ?」
反射的に左手で穣の胸を抑えたものの、智梓の唇は穣のそれと重なった。

慌てて離れようとする背中を穣が片腕をまわして制し、
舌の先で唇を舐めた。


「…開けて」
『えっ』

「入りたい」

それは消えそうなほど小声なのに智梓の胸を大きく揺らし、
左手を下ろすのに十分な力を持っていた。


早鐘を打つ胸を悟られないよう祈りながら、
智梓は目を閉じる。


『だ・誰か来たら…見られたら』

困惑しつつも唇を開けると穣の舌が潜り込んでいく。
それは歯列をなぞり、明らかに智梓の舌を突こうとしている。

『あ、やっぱり困る!こんなところ見られたら』

智梓が無意識に絡めたままの指に力をこめてしまうと、
穣はちょんと唇を舐め「俺が相手じゃ困る?」と首を傾げた。



4話へ続きます
拍手をありがとうございます
ちゃんと書こう、書きたかったものだけを…これからもと思いました

いつもあらららららなものばかり書いてるからあれなんですけど、
読んでくださる方のやさしさに助けてもらっています、感謝しきりです

ブログに載せてた話は年内から他所に移転予定で、
途中書きのものは今現在の自分が書きなおす…ので別物になりそうですが、
もしも…お時間ございましたら…
よろしくお願いします

他所で二次を書いてみて学ぶことが多くてよかったです、
まだ書きそうですが自分のエリアはBLのどほもと思ってます
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