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「先輩の事が好きだったんですけど、手が届かないから諦めます! ごめんなさい!」
は? 顔も名前も知らない子に、俺は振られたの?


「おお、逢原(あいはら)。後輩に呼び出されて、何だって?」
友人の笑顔が照明より眩しすぎる。
「よく分からないけど振られたらしい」
「おまえが?!」
俺も判然としないんだけど。この妙なへこみ感は何だろう。
「はー。そう言われてみれば、あの後輩。よく逢原を目で追いかけてたぞ」
「気付かなかったよ」
知るかよ、人の視線なんて。
「おまえは周りを見ないし、気付かないからな」
個人の範囲で精一杯だ。
「17才で、その態度は社会に出た時、激しく後悔するぞ」
先の事が読めていたら、周りも見ていると思うけど。

「今さあ、すごく人参とか野菜をガガガッと、みじん切りしたい気分」
友人には分からないだろうな、この腐れた気分が。
「そんな逢原に、いい情報がある!」
家政婦ならやらないぞ。家事手伝いもやりたくないぞ。
「レンタルお兄さん、やらないか?」
「……は? 何だって?」

俺は興味が無かったので知らなかったが、NPO法人が運営する『レンタルお兄さん』が存在する。対象は引きこもりなどの若年無業者をはじめ、親子関係がこじれた児童で、レンタルお兄さんは社会とつながり自立するために話し合い、親子の関係が修復できるように提案する役。

「報酬はコーヒーとケーキ。30分1本コース」
「おまえ、流暢に話すあたり、もう俺の事を勝手に登録したんだろ?」
「さすがは賢い逢原だ。16時に駅前のロータリーで待ち合わせ。目印は、えーと」とスマホを見ている。
「貸せよ」と奪い、見ると俺の写真が添付されている。正気か。
「隠し撮りか、変態」
「さっきみたいな後輩に売れるんだぜ。待ち受け画面にしてる奴、多いよ」
気持ち悪い。
「まあまあ。人の話を聞く姿勢を持ついい機会だと思うぜ? とりあえず行ってみたら」

人の話ねえ。友人も「本当は18才以上でないと受け付けてくれないんだけど、今、需要が多いんだって」と無責任な発言したし。
学校帰りに立ち寄るか。
どうせ駅前のバス停に用事があるし。

『16才の高校生です。話をしたいです。駅前のロータリーで待っています。目印は紺のスクールバッグに付けた白いウサギです』

男か女か分からないな。
ウサギ。女子か?
どうして俺は写真バラまかれているのに、指名した本人が顔出しNGって、何?
見つけろって事?
向こうは俺の顔を知って指名したんだから、見つけてくれるのが筋じゃないか?

「こんな時間に何してんのかなあ?」
あ、しまった。16時過ぎたら用心しないといけない場所だった。
この駅前は夕方から客引きや、風俗関係者、それに出会いを求めるハッテン場に姿を変える、それは周知の事実なのに油断した。
「待ち合わせです、よそを当たってください」
「かわいいねえ、高校生?」
制服着てるから分かるだろ。低能か。
「おいおいおいおい、待てよ」と腕を掴まれたので肘で応戦して腹を突いた。
「……なんだあ、このガキ」
「触るな、クズが」
こんな場所に長居したくない、やっぱりバスに乗って帰ろうかな。

「ユズリハさん!」
は?
制服を着た男子が駆け寄ってくるぞ?
「本当にそっくりだ、でも、ユズリハさんじゃないんですよね?」
何、言ってるの、この子。
あらら。紺のスクールバッグにウサギが付いてるよ。こいつが?
「ユズリハさんですか?!」
期待をこめて輝く目に圧を感じる。
「ユズリハさん!」
「何、そのユズリハさんて。俺は逢原……」
「あー。別人か」
どさりとスクールバッグを歩道に落とした。
「そうですよねえ、でも、似てるんです」
男子が一礼して「僕、すごくあなたに会いたかったんですよ」と言い始めた。
その勢いに腰が引けた。
「見てください」とかざしたスマホに、え? 俺……じゃないな。でも5年後くらいの俺みたいな感じがする。俺と似てる。何なの、この人。

「僕が会いたい人です。ユズリハさんて言います。雑誌モデルです」

何なの。

「で。似てるから、俺に会いたいと? その人に会いに行けばいいんじゃない」
「もう会えないんです」
あ、まずい事を言ったかな。
「ごめん。気を悪くさせた」
「ユズリハさんはそんな言い方しませんよ」
おいおい。生きてるのか。
「ああ、すみません! 何か、本人に見えて仕方なくて、本当に」
何か、面倒くさい雰囲気だな。
「……で、顔が見たいとか、そのユズリハさんかどうか確認したくて、俺を指名した?」
「そうなんです。誰かにこの話を聞いてほしくても、僕は人見知りで」
え?
「なかなか気を許せる友人が出来なくて」
うわ、長丁場の予感。
「ネットで相談出来る場所を探したらレンタルお兄さんがヒットして、それで見てみたら」
うーん、どうしたらいいのかな。

「おいおいおいおい、お兄ちゃん、さっきはよくも」
あ、しつこいな。
「きみ、ちょっと離れてて」とウサギを押してバス停の陰に追いやると、相手探しのゲスの脇腹に蹴りを入れた。
「また寄って来たら警察呼ぶぞ、社会のクズ」
「このガキ……」
簡単に姿勢を正せないはずだ。

「ユズリハさん、すごい! 僕のヒーローだ!」
陰からウサギの男子が恐る恐る歩み寄る。
「だから、違うって」
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